“失敗”から生まれたメニュー「パスタ焼きそば」
芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。今回は、うっかりパスタを茹ですぎてしまったときに思いついたという「パスタ焼きそば」。何も知らないまま食べたら、パスタだと気がつかないくらい、ソースの風味にしっくり馴染んでいるパスタをぜひお楽しみください。麺のふちをカリカリッと焼くのがポイント!
パスタ焼きそば
材料(1人分)
作り方
- 1. パスタを通常通り茹で、水気をきる。ウスターソース、オイスターソース、醤油、砂糖はあわせておく。
- 2. キャベツはざく切り、玉ねぎは薄い串切り、ねぎは薄いななめ切りにする。
- 3. フライパンに油を入れ、2を軽くしんなりするまで炒めて一旦取り出す。
- 4. 3のフライパンで食べやすく切った豚肉を入れて炒め、色が変わったらすみに寄せ、空いた部分に1のパスタを広げて焼きつける。
- 5. パスタのふちがバリバリしてきたら、パスタにソースをかけてほぐし、かつお粉と揚げ玉と3の野菜を加えてざっと混ぜて塩こしょうをふる。
- 6. お皿に盛り、目玉焼きをのせ、しょうが、⻘のり、かつおぶしをかける。
ある日の失敗から生まれた日常のレシピ
調理の最中にしばしば起こる「あっ!しまった」という瞬間。
「焼きすぎちゃった」「入れる順番を間違えた」「分量を間違えた」「思っていたような味にならなかった」などなど、生身の人間がやるものには、どうしたって失敗が起こるもの。
そんな失敗から誕生したのが、今回のメニュー「パスタ焼きそば」。
「10年くらい前、パスタを茹でるのにタイマーをかけ忘れて茹で過ぎてしまったことがあって。でもためしに焼きそばにしてみたらおいしかったんです」と関さん。
茹ですぎた麺を見てふと、富士宮焼きそば(コシのあるもちもち食感の麺が特徴的な静岡県富士宮市のご当地グルメ)のことを思い出して、ピン!ときたのだそう。
以来パスタ焼きそばは、関さんのレパートリーの一員に。仲間が集まったときに出すこともあるそうなのですが…
「言わないと、みんなパスタだってことに気がつきません(笑)。」
ふだん通り茹でても、茹で過ぎても大丈夫
まずはパスタを茹でておくところから。
「わざわざ長めに茹でなくても、ふだんの茹で加減で大丈夫です。でも、もし茹で過ぎちゃっても問題ありません!」と関さん。
茹で時間を気にしすぎなくていいのって、なんだかとっても気楽です。
茹でている間にウスターソースとオイスターソース、醤油、砂糖を混ぜておき…
野菜もざくざくカット。
玉ねぎにスッと包丁を入れながらふと、「やだ!間違えた!くし切りだった!いきなり今回のテーマ(失敗から生まれたレシピ)に即してしまった!」と告白する関さん。言った瞬間からすみやかに切り方をチェンジしました。
「そういえば、野菜をむいたあと、皮じゃなくて本体をうっかり三角コーナーに捨てちゃって、慌てて救い出したこととかもありますね。あれはすごく焦りました(笑)。」
キャベツはざく切り、長ねぎは薄く斜め切りに。豚肉も、このタイミングで食べやすい大きさにカットしておくと、あとの工程がスムーズに進められるのでおすすめです。
フライパンは途中で洗わない
油をひいたフライパンにお野菜一式をバサッと入れて…
しんなりするまで炒めたら、一旦取り出しておきます。
フライパンは洗わないで、再び火にかけたら豚肉を入れ、色が変わるまで炒めます。
色が変わったら、すみに置いて、茹でておいたパスタをどさっ。ででんと真ん中に入れて炒めます。
ここで大切なのは、パスタのふちがパリパリッとなるまで焼き付けること。フライパンに入れてからしばらくの間は、麺をあまり動かさずにおくと焼き目がつきやすいです。
焼き目をつけるのは、全部じゃなくて一部でOK。食感のバリエーションが生まれて、食べるときの楽しさが倍増します。
「ふちっこ(※)をパリパリにするんです!」と関さん。
パリッとしたところで、あらかじめ混ぜておいたソースたちを投入!
ジューッという勢いのよい音が響いてきて、心がぐっとわき立ちます。
さらに野菜を加えて、
かつお粉と揚げ玉を加え、
全体がしっかり混ざったら塩こしょうをシャシャッと振って完成です。もうこの時点では、どこからどう見ても焼きそばにしか見えず、パスタだったころの記憶は遠い昔のよう。
お好みの焼き加減の目玉焼きを添えたら…
完成!
転校初日から学校に馴染んでいるパスタ
目玉焼き、紅しょうが、青のりを添えると、色味がますます豊かになって気分が一層あがります。
特に卵は魔法。「栄養のあるものをちゃんと食べている!」という自己肯定感がわいてくるうえに、「いつ黄身を崩そうかな?」という楽しい計画を立てる必要性も生まれてきて、いまちょっと手に入りにくい状況ではあるけれど、やっぱりあなたの変わりはいないんだよね…って思いが込みあげてくる。
心して大事に食べますね。いただきます。
…焼きそばだ!
もうなんというかもう、全力投球で100%焼きそばだ。よくよく思い返してみると、普段よりも麺にコシがあってもちもちしているなぁとも思うけど、特になんの違和感もなく具材や味に馴染んでいます。転校初日から学校に馴染んでいる転校生。乾麺のこと、比較的順応性の高い食べ物だとは思っていたのだけど…パスタ、君もだったのか。
「野菜も一度取り出したあとに再度入れているから、シャキシャキとしているんですよね」と関さん。
野菜のみずみずしいシャキシャキ感、それからもちもちで一部パリパリしているパスタの食感が、口のなかで楽しく踊っています。もしいま家に焼きそばの麺のストックがなくても、パスタとソースがあれば、焼きそばを楽しむことは可能なんだ!と知りました。
ところで関さんは、このほかにも何か料理で失敗した経験、ありますか?
聞いてみたところ、「あります!」と力強い返答が。
「見た目で失敗することが多いです。自分が食べるだけならいいんだけど、お祝いのときなどに張り切って凝ったことをしようとして裏目に出ることが多いんですよね(笑)。
たとえば以前、藤井隆さんの誕生日をサプライズでお祝いしようと思って、緑と白、ピンクのお団子をマカロンタワーのように組み立てて、みたらしあんをかけたら、すごい気持ち悪い仕上がりになっちゃったことがありました(笑)。
お団子に海苔で作った『T』の字を貼りつけていたんだけど、それもべろべろにはがれちゃって(笑)。みんなに『呪いの団子』って言われました。今でも語り草になっています。
あと、別の子の誕生日のときにも、ミートローフをケーキのように丸く焼いて絵を描いたら、その絵が気持ち悪くなっちゃって(笑)。いつのまにかみんなに『こわいやつ』ってあだなをつけられていて、食卓で『ちょっとそのこわいやつ取って』とか『こわいやつおいしいじゃん』とか呼ばれていました(笑)。」
話を聞いているうちに、どんな姿なのかが想像しきれなくて、見てみたいという気持ちにかられてまいりました。なお筆者は、関さんとはまた違ったタイプの失敗が多くて、焼きすぎたり煮すぎたり、分量を間違えたりすることがよくあります。
とはいえ、失敗することがあっても、誰かとの共通の思い出になったり、リカバリーできる可能性があるのが料理の楽しいところ。
なんにせよ、失敗してもそれで世界が終わることはない。むしろ新しい地平が見えちゃうかもしれない。パスタ焼きそばのように。そんな気持ちで料理と向き合っていけたらいいなぁと感じます。