ちくわの2種揚げ
芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。今回のレシピは「ちくわの2種揚げ」。ちくわに2種類の食材を詰め込むのですが、その方法にポイントが!メインディッシュにもおつまみにもなる上、冷めてもおいしいから、お弁当のおかずにもぴったりというオールマイティな一品です。
材料(2人分)
作り方
- 1. ちくわに縦に切れ⽬を⼊れて開き、3本は中に紅しょうがを詰めて、⼤葉で巻いてつまようじでとめ、3本はチーズを詰めてカレー粉をふる。
- 2. マヨネーズと⽔を混ぜ、そこに小麦粉と片栗粉を⼊れて⾐を作る。
- 3. 1の紅しょうがの⽅を2の⾐にくぐらせ、180度ほどの油で約1分揚げる。残りの⾐に⻘のりを加えてチーズの⽅をくぐらせ、同じく約1分揚げる。
- 4. 半分に切って完成。
詰めるのが難しいなら、開けばいい
今回のレシピは、ちくわに2種類の具材を詰め込んで、揚げるというメニュー。まずはちくわにスッと切れ目を入れ……
ちくわを「開く」ところから始めます。
「バラバラした食材は、開いた方が楽に入れられます。いっぱい詰められる!」と関さん。
……そうか。開けばよかったのか!
これまで、せっかく穴があるのだからと、食材の方を無理やり迎合させてでも、どうにか詰めなくてはという義務感にかられていました。可能性の扉が開いた!
開いたちくわのうち3つには、紅しょうがをざくざく挟んでいきます。
「たこ焼きしかり、紅しょうがと魚介ってすごく合う気がしているんです。紅しょうがの天ぷらもおいしい。それで、この組み合わせもいけるのでは!と思ったんです。」
詰め終わったら、ちくわを閉じ、ぐるりと大葉で包んで、つまようじでぴったりとめておきます。
「うふふふふ。こういう作業は楽しい。」
慣れた手つきで、一度開いたちくわをきゅっと封じていく関さん。
続いては残り半分のちくわに着手。まず、スライスチーズを挟みます。
「チーズの量はお好みでいいのだけど、ちくわ1本に対して、スライスチーズ1枚だとたっぷりすぎるかも。3分の2くらいが丁度良いかもしれません。
チーズの種類を変えてみてもいいと思います。さけるチーズやモッツァレラを入れると、韓国のハットグのようにチーズがびよーんと伸びるので楽しいです。」
わ、それは楽しそう!
チーズを詰め終えたら、ぱらぱらとカレー粉を振りかけます。
「中に入れる具は、ポテトサラダや余った煮物など、自由にいろいろ変えてみていいと思います。あるもので全然いい。わりと何を入れておいしいんです。」
そういえば。熊本に「ちくわサラダ」という、ちくわにポテトサラダを挟んで揚げたローカルフードがあることを思い出しました。この作り方を応用すれば、ちくわサラダを自宅で楽しめそう……!いや、それだけじゃなく、あらゆる食べ方を試せるのではという期待がふくらみます。
詰めるのが難しければ、開けばいい。それを知っておくだけで、ちくわの調理法が、ワンルーム住まいから、ビル一棟住まいになるくらいの規模で広がる予感です。
衣には、卵の代わりにマヨネーズを
さて、ここからは衣づくりをします。ポイントはマヨネーズを使うこと。
家に卵がなかったときにふとひらめいた方法なのだそう。
「『マヨネーズにも卵入ってるし…』と思って入れてみたら、意外とうまくできて。揚げ物がサクサク仕上がるような気がしたんです」と関さん。
実はこの方法、調べてみたところ、マヨネーズのメーカーもおすすめしていました。乳化された植物油が衣に分散し、衣の中の水分を減らすことで、サクサクに仕上がるのだそう。
「マヨネーズは溶けきらないんですけど、残っていても大丈夫です。」
ある程度マヨネーズが水に混ざったら、小麦粉と片栗粉を加え、さらに混ぜていきます。
「おうちに天ぷら粉がある方は、天ぷら粉を使っていただいても良いです。天ぷら粉、仕事でたまに使ったりすると、『やっぱりサクッと揚がるわね〜』と感じるんですよね(笑)。」
青のりは好きなだけ、思い切り
衣ができあがったら、まずは紅しょうがを挟んだちくわをくぐらせ……
180度くらいに熱した油で揚げていきます。
紅しょうが入りのちくわを揚げ切ったら、残った衣に青のりをどばんと!
思いっ切り入れちゃってください。入れすぎかな……?と思うくらいに。そしてよく混ぜたら、ちくわに絡ませていきます。
余った衣を見ながら、「イタリア・ナポリの青のりパン、ゼッポリーネが作れそう!」と関さん。
「実家では、天ぷらをやるときには、余った衣を全部揚げて、次の日の朝ごはんの味噌汁に入れて食べるのが習慣でした。実家で暮らしていた頃、それがすごく好きで。『明日は天かす汁だ!』って、楽しみにしていました。」
今日はたっぷりの油で揚げていますが……
「揚げものは、油分と水分の交換作業だから、たっぷりの油で揚げるとおいしいんですよね。ラードを入れて揚げたフライとかも、すっごくおいしい!でも、日常的にやるのは難しかったりしますよね。この料理も、フライパンに食材がつかるくらいの量の油を入れて、揚げ焼きをするのでも作れます。」
……と話しているうちに、あっという間に完成しました。早い!
メインディッシュにもおつまみにもなりそうな一品。
斜めに切って断面をチェック。仕上がり、ばっちりです。
ちくわもきっと本望に違いない
さて実食。赤、緑、黄色、カラフルな色合いに食欲が刺激されまくります。
食べてみると……
おお、合います。これは合います。紅しょうがとちくわ、チーズとカレーとちくわ、いずれも君たちぴったりすぎるだろう……?とにやにやしてしまう組み合わせ。
ああ、ちくわってこんな姿にもなることができるのですね。ちくわがどう思っているのかはわからないけど(なぜなら、ちくわとは会話ができないから)、でも、ちくわもきっと本望なのではなかろうか。そんな思いがよぎりました。
ちくわをはじめ、紅しょうが、カレー粉、青のり、マヨネーズ……、それぞれの素材に風味がしっかりあるので、食べるときに何かをつける必要がないのもうれしい!
「冷めても意外とサクサクなんですよ」と関さん。
ならば、お弁当にもぜひとも入れたい。白いごはんの脇にあったら、それだけでもう、華やかなランチタイムになる予感。
ところで関さん、ふだんお弁当って作りますか?
「ケータリングでお弁当を頼まれて作ることがたまにありますね。40人前とか。何時から始めたら間に合うのかを計算してみたら、朝3時からだったり……(笑)。」
「昔は、新幹線とかで移動するときに、自分用のお弁当を作ったこともありました。お弁当、いいですよね。
お弁当というと、小さい頃、父が持っていっていたお弁当のことも思い出します。昔ながらの二段重ねのお弁当、炊飯ジャーで保温したごはんの、むわっとした独特のにおいがするやつです。ごくたまに、父親が食べずに持って帰ってくることがあったんですが、それを食べさせてもらうのがすごく楽しみでした。」
もちろんお弁当以外でも、さっと作れて一気に幸せな気分になれるちくわ揚げ。このレシピの具の組み合わせの最強っぷりを楽しむとともに、ぜひ、思い思いの具を挟んでみる応用編も楽しんでみてほしいです。