お肉の切り方にコツがある!大分名物「とり天」
焼く。蒸す。揚げる。いろんな調理が楽しめて、食べ応えがあってお財布にもやさしい食材、鶏むね肉。「鶏肉はももよりもむね肉派」という芸人ボルサリーノ関好江さんが今回作るのは、大分の郷土料理を関さん流にアレンジした「とり天」です。
調理法によってはパサついた食感になってしまうこともある鶏むね肉ですが、切り方を工夫して下味にごま油を加えれば、ふっくらやわらかく仕上がるのだそう。とり天にまつわる思い出を語ってもらいながら、くわしいレシピを伺いました。
とり天
材料(2人分)
作り方
- 1. 鶏むね肉を食べやすいサイズのそぎ切り(※)にする。下味調味料やねぎと一緒にビニール袋に入れ、20〜30分おく。
- 2. 衣の材料を混ぜる。
- 3. 1の半分に海苔を巻き、残りの半分はそのままで、どちらも衣にくぐらせ、170度の油で返しながら3〜4分揚げる。
- 4. からしとポン酢を添える。
※包丁を寝かせるように斜めに入れて、そぐように切る方法。
芸人になる前、名古屋で食べた「とり天」の思い出
今回作る「とり天」は、鶏肉の消費量が多い大分県の郷土料理。天ぷらのように衣がたっぷりついていて、鶏肉に醤油やにんにくの下味がしっかりついているのが特徴です。
「鶏肉のお料理っていろいろあるけれど、なかでも、はじめて食べたときにびっくりした、思い出深い料理がとり天なんです」と関さん。
とり天を知ったのは芸人になる前、CD問屋でアルバイトをしていた頃だったそう。
「一緒にバイトしていたUくん(仮名)という子が大分の出身で。あるとき『名古屋にはとり天はないのか?』って聞かれたんです。『手羽先はあるけど、とり天は聞いたことないな』って伝えたら、『大分では、全国チェーンのお弁当屋にも(地域限定メニューで)とり天弁当があるんだよ』って言われて。
それで、とり天が置いてあるお店を探したら、名古屋にも一軒だけあって。Uくんを喜ばせたくて、バイト仲間の忘年会はその店でやることにしました。Uくんは『ありがとう』って言いながら食べていました。」
「なんですけど…。」
「何年か前、大分で本場のとり天を食べる機会があって、そのときに気がついたんです。昔みんなで食べたとり天は“大分のとり天”じゃなかったんだ!って。名前は一緒だけど別物。味が全然違いました(笑)。
みんなが『ほらっ、なつかしいでしょ!』って感じでぐいぐいくるから、言い出せなかったんでしょうね。数十年経ってからやっとUくんの心遣いに気がつきました…!」
下味はとり天の証
数十年のブランクがあっても「違う」とすぐに気がついたのは、大分のとり天には「下味」がついていたから。
「名古屋でみんなで食べたとり天には、下味がついてなかったから…(苦笑)。ただの鶏肉の天ぷらだったんです。大分のは天ぷらと唐揚げのフュージョンぽかったです」と関さん。
というわけでまずは、下味をつけるための準備からスタート。大きめの生姜一片をすりおろします。おろした生姜はビニール袋に直接入れちゃいます。
酒、醤油、ごま油、さらにねぎの青い部分を入れ…
続いては鶏むね肉をカット。
「天ぷらは、唐揚げと違って皮があんまりカリッとならないから、皮は取り除くようにしています。皮は冷凍庫にためておいて、あとで一気に鶏皮フライにしたりして。」
切り方にちょっと気をつけるだけで、仕上がりがぐんと変わるそう。
「鶏むね肉は、脂が少ないぶんパサっとしがちなので、お肉の繊維を断ち切るように、包丁を斜めに寝かせて薄く切る、つまりそぎ切りにするといいんです。」
カットし終えた鶏むね肉をビニール袋に入れたらもみもみ。
「20〜30分漬けておくと、しっかり下味がつきます。でも、時間がない場合は少なめの漬け時間でも大丈夫!」
海苔を使って、ひとつの料理を2種類に!
下味をつけている間に衣を作ります。卵を溶いて、水を入れたら…
小⻨粉と片栗粉を入れて、しっかり混ぜ合わせます。
さて、ここからは30分後の世界。
下味をつけた鶏肉に衣をつけていくのですが、その前に。鶏肉のうち半分に、海苔をくるっと巻きつけます。
ひとつの料理を二種類にして、食卓を豊かにするための小さな工夫。
衣をつけたら、170度の油で揚げていきます。
「家だとついつい少なめの油で揚げ焼きにしちゃうけど、贅沢にたっぷりの油で揚げるのってやっぱりおいしそうですね。フライパンで揚げ焼きするのでも、もちろん大丈夫です。それぞれみなさんやりやすい方法で作ってください。」
衣がふわふわっと膨らんだら、きつね色になる前に油からすくいあげて完成!
1枚の鶏むね肉から、こんなにたっぷりのとり天が出来上がりました。
お皿に盛り付けたらさっそく実食。ポン酢とからしを添えていただきます。
わっ、やわらかい!鶏むね肉って、こんなにふわふわさせることもできるのか…!
衣のささやかなカリッとした食感と、頬張った途端にほろほろほぐれていく鶏むね肉。どちらともが優しいせいか、揚げ物らしからぬほどスルスルっと胃の中に吸い込まれていくので、目の前の皿を瞬殺で空にしてしまいやしないかと、どきどきしました。ああ、なんと幸せな動悸。
「すごくやわらかい!」と声を張り上げて感想を述べたところ、「うふふ。やっぱり切り方が大事なんだと思います。あとは、下味をつけるときにごま油を入れているから、それも効いているはず」と関さん。
ツーンとしたからしとの相性が抜群なことにもハッとなりました。
「合いますよね!ゆずこしょうをつけてもおいしいんですよ。」
今回のとり天の出来栄えを伺ってみたところ、にこにこ顔で「よくできました!」と答えてくれた関さん。
「 Uくん(仮名)に『これが本当のとり天だよね!』って伝えたいですね(笑)。ちなみにUくんは、とり天事件のあと、絵を描くために上京して、高円寺で数年暮らしたあとインドに渡ったと聞いています。でもそこから先はわからない(笑)。
急にアンビリバボーとかに出てきたりしないかな。今どこで何してるんだろう(笑)。」
下味がしっかりついていれば冷めてもおいしいから、お弁当に入れるのもおすすめなとり天。撮影後、スタッフみんなで食べたときにも「やわらかい!」「ふわふわ!」と大評判でした。
鶏むね肉ってこんな食感にもなれるんだ…!というエモーションをぜひ、みなさまのご自宅でも体感してみてほしいです。