冷蔵庫全部焼き
芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。今回のレシピは、冷蔵庫の余りものゼロを目指そうという気概が生み出した、おおらかなメニュー「冷蔵庫全部焼き」。じっくりグリルした食材の旨味と冷蔵庫の中がすっきりする喜び、まるごと味わい尽くせます。
材料(2人分)
作り方
- 1. 鶏もも肉は⾷べやすく切り、下味用の調味料に漬けて、1時間〜半⽇おく。
- 2. 天板 or 耐熱⽫(ホーロー製・陶器製など)にクッキングシートを敷き、刻んだイカの塩⾟を散らす。
- 3. 同じくらいの⼤きさに切った具材を詰めていく。
- 4. オリーブオイルを全体にまんべんなくかけ、塩・ブラックペッパーをふる。
- 5. 200℃に熱しておいたオーブンで30分焼く。
焼いている途中で、ピザソースやチーズをかけてピザ⾵にしたり、卵を入れたりしてもおいしいです。お好みでバゲットを添えても!
基本、何を入れてもいい
今回のレシピは、材料の記載はあれども限りなく自由です。「基本、何を入れてもいいです!」と、おおらかパワーがフルスロットル状態の関さん。
冷蔵庫全部焼き。なんともまっすぐな名前のこの料理は、昨年、自宅で過ごす時間が増えて、冷蔵庫の整理に凝るようになったのをきっかけに作り始めたものだといいます。
「今では、冷蔵庫の野菜室のなかに、中途半端な量になった野菜を入れる用の保存容器や袋を置いておいて、溜まってきたら作っています。」
肉の種類も自由
まずはお肉に下味をつけるところからスタート。今日は鶏もも肉を使っていますが……
「鶏もも肉じゃなくても、あるもの何でも大丈夫です。手羽元とかを使っても良いし、ウインナーを入れてもおいしい。あれば、ラム肉を入れてもおいしいです」と関さん。
レモンは、皮も実も一緒にすりおろします。(※防腐剤・防カビ剤不使用のものを使います。)
「レモン、レシピには小さじ1杯と記載していますが、もうちょっと多めでも大丈夫です。にんにくも、今日はスライスにしますが、すりおろしてもいいし、生のにんにくがなければ、チューブのものを使ってもいいし、お好みで!」
そこにさらに、風味づけのパプリカパウダー、お肉の臭み取り担当のローズマリー、オリーブオイルを加えて絡め、しばらく寝かせておきます。
焼いたきゅうりも意外といける
続いては野菜をカット。ざくざくと切り刻んでいきます。
「レシピには『同じくらいの大きさに切る』とありますが、火が通ればなんでも大丈夫です。どの食材にも、同じくらい火が通るようにしたいんです」と関さん。
「……そういえば。前に一度小松菜を入れたら、入れるタイミングを間違えて、石墨みたいになっちゃったことがありました。葉野菜は火が通りやすいので、入れる場合には、途中から入れるようにした方が良いと思います。」
「逆に、にんじんやじゃがいもなど、火が通りにくい野菜は、焼く前にちょっと加熱しておくと失敗が少ないです。茹でるのでも電子レンジでもお好みで!」
今日はじゃがいもを皮ごと、フライドポテト型に切ってみました。
「オーブンでじっくり火を通すから、いも類がめちゃくちゃおいしくなるんですよ。じゃがいもだけじゃなく、長いもや里いもを入れてもおいしいんです。そのほかにも、大根やかぶを入れてもおいしいし、キャベツをざくざく切って入れてもいいし。きゅうりも……どうなんだろうと思って入れてみたけど、意外といけました!」
ざくざく出てくる食材の選択肢。思いついた分だけ正解の数がありそうです。
「枝豆もね、代わりにそら豆を入れてもいいし、なんだって大丈夫です。」
「なすは……どう切ろうかしら。」
「火を通したアボカドやにんにく、ほこほこでおいしいんです。」
……と、かなり手際よく進めているようでしたが、ふと「まだ全貌をつかみきれていないんです。大丈夫かな」という発言が飛び出した関さん。
「いつもは、気の赴くままにがーっと並べているんだけど、今日はそれだといけないなと思って。でも、頭で考えて作ると、失敗することが多いんですよね。探り探りでやっています。」
具材を色ごとに分けてから詰める
食材の下ごしらえが完了したら、次はオーブンの天板に敷き詰めていく作業。天板がない場合には、ホーロー製や陶器製の耐熱皿でもOKです。
「入れる順番はなんでもいいんですけど、色をわけておくと、並べるときに、バランスがとりやすいです」と関さん。
この作業の際のポイントは、一番下にイカの塩辛を敷いておくこと。まずは、クッキングペーパーの上にぽつぽつとイカの塩辛を並べ、その上に食材を敷き詰めていきます。
「イカの塩辛は、アンチョビの代わりに入れている感じです。アンチョビよりも手に入りやすいかなぁと思って。でも、イカの塩辛もない場合は、味付けは塩だけでも大丈夫です。」
色の配置を考えつつ、てきぱきと食材を置いていきます。
「ぎゅっと詰まってきたら、隙間を見つけて、さらに間と間に詰めていくんですが、それが醍醐味だったりします。……おおっ。良い感じになってきました!残り物なのにゴージャスに見えるのが、この料理のお得なところです。」
並び終えたら、まんべんなく、たっぷりとオリーブオイルをかけ……、
余熱で温めておいたオーブンへ。
30分後。
「おお〜アメイジング!」
思わず声が漏れるほどの会心の出来栄え。
中までしっかり火が通っているかを確認したら、完成です!
地球と自分に良いことをしている気分になれる
天板から小皿に取り分けたら、いざ実食。眺めているだけでも、日頃の野菜不足が一気に補えそうという期待がふくらみます。
さて、口にすると……おっ。火がしっかり入っているオクラ、トロトロ食感でおいしい!アボカドもほっくり。プチトマトはラタトゥイユのような味わい。食材ごとにそれぞれの旨みがあって、食べても食べても飽きない。
「ボリューミーに見えるけど、結構さくさく食べられてしまうんですよね」と関さん。
下味がしっかりついたお肉はやわらかくて、パプリカとローズマリーの効果で風味もちょっと煌びやか。体だけじゃなく、心が潤う料理を食べているんだなぁという実感がふつふつと湧いてくる味わいです。……たとえ食材が残りもの達の集合であっても、そんなことは微塵も感じさせないぞ、という気概を感じます。
そして、さっきから、やけに磯の香りがしてくるなと思ったら、そうだ。イカの塩辛を忍ばせていたのでした。イカの塩辛、すっかり洋風の空気に馴染んでいます。
食材のエキスがたっぷり漏れ出したスープにパンを浸してもおいしい!
「好みでレモンを絞ってみてもおいしいです。」
野菜をもりもり食べている満足感と、冷蔵庫のものを余らせず使い切ったぞー!という達成感。自分と食材、そしてもしかしたら、フードロスの観点から考えると、地球に対しても、優しい食べものなのかもしれない。
……と、なんだか壮大な話にしてしまっている気もしなくはないけれど、冷蔵庫と世界は、巡り巡って繋がっているはずなのだ。
レシピを軸にしながら、好きなようにカスタマイズを楽しんでみてもよし。まずはレシピ通りに作ってみるもよし。ご自宅の冷蔵庫とにらめっこしながら、ぜひともおおらかな気持ちで楽しんでみて欲しいです。