「じゃがアリゴ」「大根のから揚げ」を有賀薫さんが作る
人気料理研究家リュウジさんと料理好きなゲストとが、お互いのレシピをトレードし、一緒に作りながら、料理についてあれこれ語り合う本連載。第1回目のゲストはスープ作家の有賀薫さん。事前に有賀さんに作りたいレシピを伺ったところ返ってきた答えは2つ。15万リツイートという空前のバズを記録した「じゃがアリゴ」と、リュウジさんが初めてバズを起こした「大根のから揚げ」でした。
じゃがアリゴ
材料(作りやすい分量)
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作り方
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1. じゃがりこを耐熱容器に移し、ほぐしたさけるチーズ、塩、熱湯を加え、ふたをして4〜5分待つ。
2. 根気よく粘りが出るまで混ぜ続ける(伸びが弱くなったらレンジで40秒温めなおす)。
大根のから揚げ
材料(2人分)
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作り方
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1. 大根は皮をむき3cm角に切ってフライパンに入れ、白だしと水を加えてふたをし、中火にかける。沸騰したら弱火にして1時間煮て、そのまま冷ます。
2. 1の水気をきり、片栗粉を厚めにまぶす。
3. 時間をおかず、180度の揚げ油で転がしながらキツネ色になるまで揚げて油をきり、塩をふって器に盛る。
さけるチーズの伸びる力が重要
「じゃがアリゴ」を作らないでその先には進めないって思っちゃった。さけるチーズを使うのがポイントですか?
ポイントですね。原材料がモッツァレラ(熱を加えると糸を引くように伸びる性質がある)と一緒なんですよ。
ふつうのモッツァレラでもできる?
できます。ただ、ふつうのモッツァレラだと300〜400円しちゃって手を出しにくいので……
レシピを作る時に値段も気にしますか?
かなり気にしますね。たとえば「じゃがアリゴ」だと、さけるチーズもじゃがりこも約100円。合計約200円ちょっとで伸びるマッシュポテトが作れるなら、やるわ!ってなるかなと。
じゃがりこ、売り場から消えましたもんね。
容器にじゃがりこと割いたチーズを入れたら、お湯を150ccくらい入れてちょっとふやかして、よく混ぜてください。結構つぶしちゃって大丈夫です。
(じゃがりこをつぶしながら)じゃがいもの匂いが……!
分解されてきたら、パラパラとお塩をふって、電子レンジで40秒くらい加熱します。ラップはしなくて大丈夫です。で、加熱が終わったらさらに混ぜます。
いくぞお〜〜(高速で混ぜる)
混ぜることで、じゃがりことチーズが一体化していくんですよ。
伸びてきたー!見てー!めっちゃ伸びてる!おもしろーい!!気持ちいい!
おお、これかなり伸びてますね。なんでこんなに伸びるんだろう。
腕がいいんじゃない?やった!
たぶん今までで一番伸びてる(笑)。
すごいすごい。食べてみてもいい?(食べる)おいしい!じゃがいもだ!
わりとじゃがいもの味がしますよね。
わりとじゃない。すごくじゃがいもだ!ポテトサラダともちょっと違いますね。ポテサラはマヨネーズ味だけど、これはチーズの味。何も言われないで出てきたら、じゃがりこだってわからないんじゃない?
夫にマッシュポテトだと言ってこれを出している人から、「すごく助かっています」って言われたことがあります(笑)。
点々がまっすぐついている大根は甘い
つづいては「大根のから揚げ」を作っていきます。まずは大根を切るところから。
(包丁で大根を切りながら)これじゃ大きいかな?
ちょっと大きいかもしれないですね。でも煮る時間が長時間あれば、奥までちゃんとしみるので、大きくても大丈夫です。
(生の大根をかじりながら)うまい!どの部位を使うのでも大丈夫?
煮込んじゃうので、そこまで変わりません。どこでも大丈夫です。
大根って、よくみると点々があるじゃない。これがねじれてなくて、まっすぐなやつが甘いんですよ。土の中ですぅーって素直に伸びてるんですって。おもしろいよね。
えー知らなかった!
味付けは、少し水煮してからする?それともいきなり?
僕はいきなりやっていますね。
じゃあ今日はリュウジくん方式でいきますね。白だしはけっこう入れた方がいい?
けっこう入れちゃって大丈夫です!濃いめのおすましくらい。
(白だしを入れ、大根を煮込みながら)大根は皮もおいしいんですよね。切って、しょうゆかけて、タッパーに入れて。お漬物にするとおいしいの。
赤ワイン1本使い切るレシピもやっている
有賀さんは、どうやって料理家になったんですか?
話すと長くなるんですけどね。元々は27年くらいライターをやっていたんです。家で、息子に出したスープをiPhoneで撮ってSNSに投稿しはじめて。写真が1年分たまったので「スープ・カレンダー」という展覧会を開いたんですよ。
趣味で絵を描いていたので、絵の展覧会を開いたこともあったんですけど、みなさんの食いつき方が全然違ったんです。絵で描いた食べ物も「おいしそうね」とは言ってもらえるんだけど、テンションが全く違うの。リアルな食ってすごいなぁと思ったんです。
それもあって、しばらくは趣味で作りつづけていたんですけど、徐々にお仕事の依頼を受ける機会が増えてきて。ならばプロでやってみようと決めて、本を出してくれる出版社を探しはじめました。
自分で探したんですか?
そうです。2年くらいかかったんですよ。
えー!
料理家としての経歴もないし、飲食店で働いたこともなかったから、全然相手にされなかったんですけど、拾ってくれるところがあって。
でも今、すごく売れてますよね。
リュウジさんから言われるとちょっと(笑)。
僕の場合はめちゃめちゃ売ろうとしているので。かなり考えているんです。でも、「じゃがアリゴの人」みたいになってしまうのはあんまり好きじゃない。
でも、やりきっているからすごい。
YouTubeチャンネルではけっこう好き勝手やっていて。赤ワインを1本使って手の込んだビーフシチューを作る……みたいなこともやっています。
人と料理するのは楽しい
さてさて、大根が煮えてきました。
大根の煮物に片栗粉をつけたら、すぐ揚げないとおいしくないんですよ。なので油を先にあたためておく必要があります。
(フライパンを出しながら)これでいけるかな?
大丈夫です。油の量、大根に被りきらないくらいでやっちゃうので。
なるほど……。人と料理するの、めっちゃ楽しいね!
楽しいんですよ、すごい楽しい。それこそ初対面の人とでも、料理という共通項があれば、トークしながら一緒に楽しむことができる。僕、料理家さんといっぱい仲良くしたいんです。
私もすごくそういう気持ち、あります。料理する人が少なくなってきているなか、料理家みんなでもっと盛り上げていけたらいいと思うんですよね。
料理家ごとに異なるレシピの書き出し方
続いては大根に片栗粉をつける作業を進めます。
こんな感じですかね。(ダマになっている部分をパタパタ叩きながら、大根に片栗粉をつけていく)
いいかんじですね。片栗粉の付け方がきれいです。
あ、でももしかして。私、大根についた片栗粉をパタパタと叩いちゃったけど、大根は水分が多いから、もっと厚めに片栗粉をつけた方がよいのかも……
僕は厚めにつけることが多いですね。
じゃあちょっと厚めにつけてみよう。こういうところでも、料理家さんによってやり方が全然違いますね。
違いますね。非常に勉強になるんですよね。ところで有賀さんはレシピを作る時に試作をしますか?
Twitterに毎日上げているスープは目分量で作っているけど、本で出すものは何度も試作していますね。みんなが作るためにはどうしたらよいのかを再考する。レシピを書くために、食材をものさしで測ったり。
すごいなそれ!
1センチと1.5センチは書き分けてます。0.7と0.8も。0.5と0.7と0.8は別の厚さですね。リュウジくんはどうやって作っているの?
僕は適当に……本当に冷蔵庫のあまりでしか作らないので。基本的には、冷蔵庫の中身と相談して、でもキャベツほしいなと思ったらキャベツだけ買ってくる感じです。
レシピにおこすときは?
食べたあとにばーーっと書き出してます。ほとんどのレシピが一発勝負。だから毎日新しいレシピができる。
そこが天才だよね。まったく、すごい数のレシピですよ!
おでんを揚げるというおもしろさ
片栗粉をまぶした大根を揚げていきます。
(揚がったようすを見ながら)わあ、おいしそう!良い色!これは、出来立てを食べたほうがよいのかしら。
そうですね、できたてを日本酒と一緒にやっちゃうともう……。でも、揚げたてじゃなくて、少し時間が経って、ぺたっとしてきちゃったやつがうまいっていう人もいます。
(揚げたてを食べてみる)おいしい!おでんフライみたい!
このレシピ、僕のレシピでいちばんはじめにバズったやつなんです。
うん。よく覚えてる。そのころにはリュウジくんのTwitterフォローしていました。たしか、何十人前とか作っていたじゃない。
当時、介護施設で働いていて。施設のイベントで、入居しているご高齢者の方に向けて作っていて、そのためのレシピだったので大根3本とか使っていました。
おでんの大根あげちゃうってどういうこと?みたいな楽しさがあるよね。リュウジくんのレシピは、みんなが「やってみたい!」と思うようなレシピになっているなと思う。