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リュウジさんの「至高の豚汁」を双松桃子さんが作る

リュウジのレシピトレード #15 後編

PEOPLE
2023.11.01

料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストは、リュウジさんの弟子で「モテ料理研究家」の双松桃子さんです。

後編の今回は、双松さんがリュウジさんのレシピ「至高の豚汁」を作ります。リュウジさんのレシピを500以上も作ってきたという双松さん、はたして豚汁の出来栄えは…?

どうしたら料理研究家として売れることができるのか、師匠と弟子の本音トークも満載です!

至高の豚汁

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材料

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  • 豚バラ肉…280g
  • 塩…ひとつまみほど
  • こしょう…適量
  • ごぼう…150g
  • ⼤根…200g
  • こんにゃく…250g
  • にんじん…100g
  • ⽣姜…10g
  • にんにく…2⽚
  • ⻑ねぎ…1本
  • ごま油…⼤さじ1
  • ⽔…1リットル
  • ⽩だし…⼤さじ4
  • 味噌…⼤さじ4
  • みりん…⼤さじ2
  • 酒…⼤さじ2

作り方

1. にんじんは半⽉の薄切り、⼤根はいちょう切り、⻑ねぎは斜め切りにする。にんにくは底を切り落として⽪を剥いておく。こんにゃくはぬるま湯で洗い、スプーンで適当な⼤きさにくり抜く。ごぼうはアルミホイルを丸めたもので洗い、斜め切りにする。豚バラ肉は塩とこしょうで下味をつけておく。
2. フライパンもしくは鍋にごま油を熱してごぼうを炒めたら、豚バラを半分ほどにちぎりながら加える。
3. 豚⾁に火が通ったら、⼤根とにんじん、こんにゃくを加え炒める。
4. 野菜に照りが出てきたら、⽔と調味料を加え混ぜ、⼀度強⽕で沸かす。
5. 沸いたら弱中⽕にして20分煮込む。
6. にんにくと⽣姜をすりおろして加え、少し煮込む。
7. 最後に⻑ねぎを加え、少し⽕が⼊るまで煮込む。

弟子なんだから、師匠の技を盗むのはぜんぜんアリ!

双松

リュウジさんの豚汁、にんにくと生姜がきいていておいしいですよね。

リュウジ

もつ煮みたいな味付けだからね。豚汁って味噌汁をベースに作ることが多いけど、僕の豚汁はもつ煮がベース。だからすごく流行ったんだと思う。

双松

たしかにもつ煮とか鍋っぽい。具だくさんで食べごたえがありますよね。

リュウジ

この豚汁さえ作っておけば、他のおかずはいらないくらい。この豚汁、いまだにYouTubeでたくさん再生されてるんだよ。

双松

ロングセラーですね。

リュウジ

桃子にもこういうロングセラーレシピを作ってほしいんだよね。定番の家庭料理レシピで、自信のあるものを一つ持っておくといい。そういうのある?

双松

今のところはないですね。本気の家庭料理よりも、簡単でバズりやすいレシピが多いです。

リュウジ

まあ、まだいいか。最初はバズるレシピを出し続けて、レシピ本が売れてきたら本気のレシピを出していけばいい。僕の「至高シリーズ」みたいな。

双松

参考にします!

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双松

リュウジさんの教えはいつも参考になります。レシピ本の撮影も、料理を作った直後に食べられるからすごく勉強になりますね。リュウジさんの技を少しずつ盗んでいます。

リュウジ

弟子なんだから、師匠の技を盗むのはぜんぜんアリ。でも、僕と桃子の料理ってあまり似てないよね。使う調味料とかぜんぜん違うし。

双松

たしかに、そんなに似てないかも。

リュウジ

まぁ、料理研究家は仕事すればするほど磨かれていくからね。まずは仕事をすることが第一だよ。

双松

はい!

「やらなくていいことはやらない」がリュウジ流

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にんじんは半⽉の薄切り、⼤根はいちょう切りにする

リュウジ

大根もにんじんも、皮はむかなくていいよ。どうせ煮ちゃうから、皮つきでもぜんぜん気にならない。僕は、やらなくてもいいことはやらないから。

双松

たしかに、煮込めば皮つきでも食感変わらないですよね。

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リュウジ

ねぎは斜め切りで。

双松

ねぎは最後に入れるんですよね。

リュウジ

そう、食感を残したいからね。クタクタにしないのがポイントです。

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こんにゃくはぬるま湯で洗い、スプーンで適当な⼤きさにくり抜く

双松

こんにゃくはボウルで洗ったほうがいいですか?

リュウジ

流水でさっと洗うだけで大丈夫だよ。刺身で食べるわけじゃないから。

双松

こんにゃく、リュウジさん以前は手でちぎってましたよね。

リュウジ

そうしてたんだけど、手でちぎると爪に黒い粒が入るから、今はスプーンでくり抜いてる。衛生的にもこっちのほうがいいし。包丁で切るより表面積が多くなるから、味が染みやすくなるんだよね。

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スタッフ

ごぼうはささがきじゃなくて薄切りなんですね。

リュウジ

ささがきは面倒だから。

双松

リュウジさん、ささがきのレシピってありましたっけ?

リュウジ

ないと思う。細くしたいときは、半分に切って斜め薄切りにすればささがきと大差ないしね。ごぼうサラダのときはそうしてる。

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豚肉を切る

双松

リュウジさんのレシピには「豚バラを半分ほどにちぎりながら加える」って書いてありますけど…。

リュウジ

ちぎってもいいし、切ってもいいよ。こだわりがあるわけじゃないから。僕は面倒だから手でちぎることが多いけど、 せっかくまな板と包丁が出てるし、切ってもいいんじゃない。

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リュウジ

僕の汁物のレシピって、味噌汁というよりは鍋やラーメンスープに似てるんだよね。にんにくと生姜もかなりきかせるし。

双松

そういう味が好きな男性は多いですよね。

リュウジ

なぜかテレビ局関係者ってみんなラーメンが好きなんだよ。だからテレビ業界に僕のファンが多い(笑)。

味噌を先に入れる、アクはとらない!斬新な豚汁

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鍋にごま油を熱してごぼうを炒めたら、豚バラを加える

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双松

肉が鍋底にくっつくなぁ。

リュウジ

くっついても水入れるから大丈夫。具材、もうぜんぶ入れちゃっていいよ。

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ねぎ以外の具材を鍋に入れる

リュウジ

豚肉の脂が全体に回って野菜に照りが出てくるまで炒めて。

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リュウジ

あ、いい感じに照りが出てきたね。そしたらもう水を入れていいよ。

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水を入れる

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調味料を加え混ぜ、⼀度強⽕で沸かす

リュウジ

ポイントとしては、味噌も含めてすべての調味料を入れて煮込むこと。「味噌を沸かすなんて信じられない!味噌は最後でしょ!」と言う人もいるけど、あえて先に味噌を入れてるの。それがうまいんだから。

双松

調味料は入れるけど、にんにくと生姜はまだ入れないんですよね。

リュウジ

そう。にんにくと生姜は、煮込むと風味が消えちゃうからね。

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双松

ポコポコしてきましたね。

リュウジ

そしたらふたをして、中弱火にして20分待つ。

双松

リュウジさんの豚汁はアクを取らないんですよね。

リュウジ

そう。食べればわかるんだけど、この豚汁は雑味がないとうまくないから。アクを取るとさっぱりしちゃって物足りないの。

仕上げににんにく、生姜、ねぎを加えて

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20分ほど煮込んだのち、にんにくと⽣姜をすりおろして加え、少し煮込む

リュウジ

桃子、にんにくすりおろすの遅いなぁ。

双松

どうやったら早くなりますか?

リュウジ

鍋のふちでおろし金を固定すると早いよ。こんな感じ。まぁ、力の差もあるけど。

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双松

にんにくと生姜を入れたら一気に香りが変わりましたね!もつ煮のような匂いがします。

リュウジ

でしょ。これで2、3分煮込んで。

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リュウジ

じゃあ、ねぎも入れちゃうか。ねぎは超重要。入れると入れないとでは味が90度ぐらい違う。

双松

90度!

リュウジ

ねぎの青いところが入ると彩りがよくなる。にんじんのオレンジと合うんだよね。

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リュウジ

フライパンで作った場合は煮つまり具合が変わってくるから、この時点で味見してください。味が足りなかったらちょっと味噌を足せばいいので。

双松

なるほど!

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リュウジ

これで、誰もが喜んでくれる豚汁の完成!

双松

いい香り!おいしそう!

双松さんは飲食店の卓上調味料をやたら使う!?

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リュウジ双松

いただきます!

双松

うーん、やっぱりこの豚汁大好き。染みます。にんにくと生姜がきいていてめっちゃおいしいです!

リュウジ

やっぱりいつ食べてもうまいな。

双松

この豚汁、居酒屋で出してほしい。お酒の締めに食べたいです。

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双松

豚汁ってごま油を入れすぎたらごま油の味になっちゃうけど、このレシピはちょうどいいんですよね。

リュウジ

火を入れてるから、香りがいい感じに飛ぶんだよね。火を入れたごま油と入れないごま油はぜんぜん違うから。

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スタッフ

リュウジさんから見て、双松さんの料理の特徴はどういうところですか?

リュウジ

桃子は感覚派。僕は、食材や調味料の合わせ方がデータ化されているんだよね。過去にこういうレシピがあったからコレとコレは合うだろうとか、作る前にロジックで考える。桃子はもっと思いつきで、「これ入れてみようっと」って感じで足していく。

双松

たしかに思いつきかも…。

リュウジ

よく一緒に飲みに行くんですけど、桃子って卓上の調味料をめちゃくちゃ使うんですよ。食べものに異常なこだわりがあって、「おいしいものを食べたい!」って気持ちがすごく強い。僕はレシピを作って提供するのは好きだけど、桃子ほど食べることへの情熱はないですね。

双松

食いしん坊なんですよね(笑)。

料理研究家になるにはどうしたらいい?

リュウジ

僕もそうだけど、桃子もこれから認知が広がるにつれて、人からいろいろ言われることが増えると思うよ。「料理をちゃんと習ってきてないんじゃないか」とかね。

双松

リュウジさん、今まで一番言われた言葉はなんですか?

リュウジ

「料理研究家のくせに味の素を使うな」だね。不思議なもので、白だしや鶏ガラスープやコンソメを使ってもなにも言われないのに、味の素だけいろいろ言われるの。味の素って、グルタミン酸とイノシン酸がぜんぶ入ってる万能調味料なのにね。

双松

料理研究家で味の素を使う人、リュウジさん以外ほとんどいないですしね。

リュウジ

桃子も使わないよね。

双松

使わないですね。なんで使わないのか、自分でも説明できないんですけど…。

リュウジ

感覚派だから説明できないんだね。弟子なんだから、僕の「味の素使い」を受け継いでよ。

双松

じゃあ使っていくんで、使い方教えてください!

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リュウジ

基本的に、桃子の料理はおいしいんだよね。だから僕は、桃子の料理には口出ししない。SNSの使い方とか、マーケティング的なことはアドバイスするけど。

双松

弟子になったらもっと料理を教えてもらえると思ってたから、ぜんぜん教えてもらえなくてビックリしました(笑)。

リュウジ

だって僕が料理を教えたら、それは僕の料理になっちゃうから。だったらリュウジでいいじゃん。僕は「リュウジのコピー」じゃなくて「料理研究家の双松桃子」を育てたかったわけだから。

双松

結果的によかったと思います。

リュウジ

たまに「めちゃくちゃ僕の影響受けてるな」ってわかるアカウントがあるけど、二番煎じはトップにはなれないじゃない。だから、桃子には「僕のやり方を真似するのはいいけど、どこかに自分の個性を入れて」と言い続けてます。実際、桃子は僕がやっていないことを積極的にやってるし、オリジナリティがあるよ。

双松

こんなにリュウジさんに褒めてもらえたのはじめて(笑)。

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双松

リュウジさんに弟子入りしてから、SNSでの発信がうまくなったと思います。「作ってみたくなるような文章の書き方」はリュウジさんから学びました。

リュウジ

「バズってるレシピ投稿をぜんぶ書き出して、どうしたらみんなに見てもらえるのかを研究して」とか言ったもんね。最初はぜんぜんだったけど、最近は桃子のレシピもバズるようになってきた。もちろん僕も拡散してるけど、やっぱり元の投稿がよくないとバズらないんですよ。だからバズるようになってきたのは桃子が成長した証拠。

双松

3年やって、少しは成長できました。

リュウジ

実力はあるから、あとはしゃべりがもうちょっとうまくなれば仕事がバンバン来ると思うよ。

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スタッフ

双松さんみたいに料理研究家になりたい人は、まず何からはじめればいいですか?

リュウジ

僕にDMすればいいんじゃないですか(笑)。

双松

そんなこと言ったらリュウジさんにいっぱいDM来ちゃいますよ(笑)。

リュウジ

今のうそだから本気にしないでね!僕はもう弟子はとりません。桃子だけで手一杯です。

双松

じゃあ、これから料理研究家になりたい人はどうしたらいいんでしょう?

リュウジ

発信を継続していくしかないと思います。継続しないと、咲くものも咲かない。種をまいて絶えず水を与えていかないと、花は咲かないからね。

双松

がんばります…!

リュウジ

継続も大事だし、どうやったらバズるかを考えるある程度のクレバーさも必要。誰にも見られなければ芽は出ないからね。でも、まずは本当においしいものを作れること、それが第一。おいしいものを作れて、発信を継続できるようになったら、あとは見せ方を考えればいいと思います。

双松

これからも、見せ方を学んでいきます!

前編はこちらく

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取材・文:吉玉サキ
撮影:村上未知