有賀薫さんのレシピ「焦がしキャベツのスープ」を作る
次から次へと魅惑のバズレシピを生み出す料理研究家リュウジさん。かねてから「料理好きな人ともっと仲良くなりたい!」と強く思っていたそう。そこで誕生したのが本連載。料理好きなゲストを呼び、お互いのレシピをトレードし、一緒に作りながら料理のあれこれについて語り合います。第1回目のゲストはスープ作家の有賀薫さん(アイスムで「耳で楽しむおいしいスープレシピ」を連載中)。有賀さんの名作レシピ「焦がしキャベツのスープ」にリュウジさんが挑戦します。
焦がしキャベツのスープ
材料(2人分)
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作り方
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1. キャベツ1/4個は半分のくし切りにする。葉がバラバラにならないよう、つまようじを差しておく。
2. 深めのフライパンにサラダオイル大さじ1をひいて熱し、キャベツを並べて焦げ目がつくまで中火で4分ほど焼く。キャベツをひっくり返してサラダオイル大さじ1/2を足し、ベーコンをキャベツの脇に加え、裏面も同様に焼く。
3. キャベツに焦げ目がついたら水600mLと塩を加え、沸騰したら弱火にし、やわらかくなるまでふたをして15分ほど煮る。最後に味見をして、塩でととのえる。
キャベツの焦げ目は何役もこなす
まず、キャベツをくし形に切っていきましょう。4分の1をザクッと半分に……
8分の1ですね(包丁でザクッ)。
それで、切り終わったら葉の外側から中心に向かって、つまようじをぐっと刺しておくんです。そのままだと調理しているうちにキャベツの葉がばらけちゃうから。
ほー、なるほど!こういうワンポイント僕も言いたいです。料理家っぽいじゃないですか。
ふふ(にこにこしながら)。油は、サラダオイルをだーっと。オリーブオイルでも大丈夫。お好みでにんにくを入れてもOKです。
じゃあ、にんにく入れましょう。
(フライパンに油を注ぎ、キャベツを置く。にんにくを剥き、包丁の背で叩いたあと、キャベツの脇に置く)
キャベツは、フライパンの上に置いておくだけだと焼きムラができちゃうから、フライパンの底に押し付ける。こうすると、きれいに焦げ目がつくんです。
おおお、こうやって……(素手でキャベツを押し付ける)
キャベツの断面にしっかり焦げ目をつけるのが、このレシピ最大のポイントなんですよ。焦げ目は、香りにも、旨味にも、スープの色にもなって、ひとりで何役もこなすんです。「けっこう焦げちゃったかな?」と思うくらい焼いても大丈夫です。
おお……香りがいいですね。すっごい、そそられます!
アブラナ科の野菜は、焦がすと独特のすごく良い香りが出るんですよね。キャベツや菜の花。あとブロッコリーも。
(キャベツを断面を見ながら)おお、これはいい感じでは?
いいですね。裏返したら油を足してください。キャベツが油を吸っちゃっているので。あと、ベーコンを少し焼いてもいい。どうする?リュウジくんらしい雰囲気になったらいいな。
ちょっと焼きましょうか!
落とし蓋がなければお皿で大丈夫
キャベツにしっかり焦げ目がつくまで焼いたら、にんにくやベーコンと共に、やわらかくなるまでぐつぐつと煮込みます。……と、有賀さんが何かを探し始めました。
何をお探しでしょう……?
落とし蓋……(と言いながら、近くにあったお皿を落とし蓋の代わりに、鍋にドボン)
こ、これは!僕がYouTubeでやりそうな感じだなぁ。
落とし蓋がなかったらお皿でいいんですよ。もしくはクッキングシートやアルミホイルとかでも大丈夫。何かしら蓋をしておくのが大事なんです。水面より上に飛び出した部分のキャベツにもスープがまわってちゃんと煮えるので。
(煮込まれてゆくキャベツスープのようすを見ながら)色がすごい!めちゃめちゃ出ていますね。
そうなんです。だから、ちょっと焦げたかなっていうくらいがいいんです。
うまみ調味料は臨機応変に使うのがいい
有賀さんは、素材のうまみで出汁をとってスープを作るんですよね。
はい。でも、コンソメを使うときもあるんですよ。野菜は日によってコンディションが違うから。冷蔵庫に数日置いていて古くなっちゃったときには、コンソメでうまみを足したほうがいいし、新鮮でおいしいときは、野菜のうまみだけでも十分だし。臨機応変な構え方がいいと思うんです。だからコンソメは常備しておいたほうがいい。
リュウジくんはよくうまみ調味料を使っているよね。うまみ調味料は、ニュートラルだからいいと思っていて……
意外と個性が出せるんですよね。でも僕も、うまみ調味料を使わないでやることもあるんですよ。あるんですけど、レシピの難易度が高くなっちゃうんです。「食材からうまみをとる」というのがハードルが高いから。
僕は、ハードルをどんどんどんどん下げていこうとしていて、だから、あんまり料理が得意じゃない人でも、おいしく仕上がる方法を推しているんです。
そういうのって大事だと思います。食べて「あ!おいしい」って思えるのって成功体験だから。特に初心者の人は、作ってみておいしくなかったら、がっかりして「もう二度とやるもんか!」と思ってしまうこともある。最初に作ったものがおいしいってすごく重要なことだと思いますね。
麦茶はスープ
有賀さん、お茶とかでスープを作っているじゃないですか。ああいうのすごいなぁって思っていました。お茶って料理に使えるんだなぁと。
お茶を使うなら麦茶がいいんですよ。麦茶はタンニンが含まれていないから渋くならない。それに麦茶自体がもうすでにスープだから。焙煎した麦から、香ばしさとうまみと色が出てきたのが麦茶。キャベツのスープと構造は一緒なんですよね。焦がして、水で煮る。同じなんです。
香ばしさかぁ。いま(この記事の)サブタイトルが決まりましたね。「麦茶はスープ」。素材をじっくり煮ると味に深みが出るんだなぁっていうのを、やっぱりね、忘れがちになるんですよね。すごく新鮮ですね。
素材から出たうまみだけを使って調理すると、一瞬わかりにくい味なんだけど、奥行きのある味になるんです。口に入れた時に、こちらから味を感じ取りにいくというか。
すごくいいと思います。
あと、ごはんやおかずと合わせる場合、スープ単体でおいしい味にしすぎてしまうと、しょっぱすぎてしまうというのもあります。一段階か二段階くらい塩味を下げると、飲みきれるような味になる。
それでいうと僕は、単体でおいしく感じることを目指してレシピを作っている感じですね。だから、他のものと組み合わせて食べると、しょっぱいと感じる人もいるようです。そういう場合には、アレンジしてもらえたら良いですよね。
僕はがっつりいきたいから調味料をたっぷり使うんですけど、しょっぱいと感じる人は半分に減らしてもいいし、むしろ入れなくてもいい。そういうことを、どこかで発信していかなきゃいけないのかなと思っています。
レシピそのままじゃなくても、味見しながら、自分の好みに合わせてもらえると良いですよね。リュウジくんのレシピは、食材の組み合わせ方が斬新で、取り入れられるアイデアがいっぱいあるから、味付けだけで合わないってなっちゃうのはもったいないですね。
これさえあればご馳走になるスープ
レシピの話が盛り上がりをみせるうちに、スープが出来上がりました。
このスープは……非常にシズル感がありますね。こんなに色がでるんだ!
これでもう、なんの出汁ですか、フォンドボゥですか?って……
なりますなります、コンソメみたいな色!これは本当におもしろいですね。
最後につまようじを抜くのを忘れずにね。
(スープを飲みながら)うまい!
やったあ!
この一皿でメインディッシュですよ。ここにパンがあれば、それだけで一食になる。すごくシンプルなのに奥が深い。びっくりするくらいうまみがありますね。あと、にんにくの香ばしい香りが合います。
にんにく、結構入れたからぜんぜん違うと思う。
スプーンをさすだけで、とろっとろに崩れていきますね……。僕、煮込んだ柔らかいキャベツが大好きで。
ロールキャベツはちょっと手間がかかるけど、これだったら、ザクザクって切るだけだから簡単に作れますよね。
超満足。めちゃめちゃうまい!
ちなみにこのレシピ、カレー味にして、スペアリブを入れてみても良いんですよ。スペアリブは焼いて下準備をしておいて、一緒に茹でられるようにしておくんです。で、さらにそこにパセリを入れるんですよ。死ぬほど刻んでどわあああああ、って。
パセリは肝機能の働きを助けるビタミンが含まれているから、いっぱい食べたほうがいいですね。特に酒飲みは。