チキンチキンクミンごぼう
芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。今回のメニューは、山口県のローカルフードを関さん流にアレンジした「チキンチキンクミンごぼう」。カレーのスパイスとして知られるクミンは、あらゆる食材とよく馴染み、醤油味との相性も驚くほどバツグン!クミン好きな人はもちろん、クミン未体験という人にもぜひ試してみてほしい一品です。
チキンチキンクミンごぼう
材料(2人分)
作り方
- 1. 鶏肉を食べやすい大きさに切り、下味調味料をまぶして30分以上おいた後、衣用の粉をまぶす。ごぼうは大きめのささがきにして15分ほど水にさらす。
- 2. フライパンに1センチほどの油を入れ、水気をふいたごぼうをカリッとするまで揚げ、皿に盛る。
- 3. 鶏肉を揚げ焼きにする。
- 4. フライパンにたれ用の油とクミンシードを入れ、弱火で加熱し、香りがたったら他の調味料を加えてひと煮たちさせる。
- 5. 4に鶏肉と枝豆を加えてからめ、ごぼうの上に盛り、残ったたれもかけて小口ねぎを散らす。
思わず声に出したくなる名前
今回のメニューは、山口県のローカルフード「チキンチキンごぼう」に関さん流のアレンジを加えたメニュー。
「芸人仲間のオコチャ、椿鬼奴と一緒にやっているYouTube『在宅グルメ紀行』で全国各地のご当地メニューを扱っていて、そのなかで『チキンチキンごぼう』を知りました。元々は学校給食のメニューとして生まれた料理なんですって」と関さん。
「今から20数年前、山口市の大歳小学校の先生が給食のメニューを募集した際に、児童のお母さんから寄せられたのが始まりで、そのうちに、ほかの学校でも取り入れられるようになって、今では居酒屋などでも出されているんだそうです。
この名前を考えた方は天才だと思うんです。子どもたちが食べたくなるような、思わず声に出したくなる名前ですよね。」
そんな『チキンチキンごぼう』を食べてみて、「クミンと合いそう!」とひらめいたという関さん。
「そのままでもおいしいんだけど、クミンを入れたらよりおいしくなる気がしたんです。あと『チキンチキンクミンごぼう』って言いたいなぁと思って。声に出したい名前(笑)。」
クミンは何にでも合う万能スパイス
調理は鶏肉の下ごしらえからスタートです。
「今回は胸肉で作りますが、もも肉でも良いと思います。お好みで!」と関さん。
「皮もお好みで!私は取ります。取った皮は冷凍しておいて、ある程度たまったら、焼いたり電子レンジにかけたりして、せんべいのようにカリカリにして食べるのが大好きです。
鶏肉の切り方は、そぎ切りでも、一口大でも、ぶつ切りでも、各々が食べやすいと感じる大きさに切れば大丈夫です。ただ、今日は揚げ焼きにすることをふまえて、そぎ切りほどではないけど、小さめに切っています。」
切り終えたら、袋に入れ、調味料と混ぜて30分ほど置きます。ここでさっそくクミンパウダーを投入。スパイスカレーを彷彿とさせる香ばしい香りがキッチンに漂ってきました。
普段から、炒め物に加えたりするなどして積極的にクミンを使っているという関さん。
「クミンの存在をはっきり認識したのは、ここ10年くらいのことかもしれません。その味を口にしたことこそあったものの、『これは一体なんの味だろう?』ってずっと思っていたんです。
ある時、カレーのイベントでクッキーを作っている人がいて、食べさせてもらったらすごくおいしくて、何が入っているのか聞いてみたら『クミンです』とおっしゃっていて。そこではっきりとクミンの味を認識しました。」
「クミンは本当に何にでも合うんですよね。あと、ちょこっと入れるだけで、すごく料理ができる人だと思ってもらえることがある(笑)。ふだん料理をしない人からすると、クミンが使われている料理は玄人っぽく感じられるみたいです。」
ごぼうをカリカリにするのは関さん流
続いて、ごぼうを大きめのささがきにします。
「本家『チキンチキンごぼう』のごぼうは、もっと太くカットされているんですけど、私はごぼうをカリカリに揚げたいのでささがきにします。
名古屋の『ピカイチ』っていう中華料理店に、揚げたごぼうと甘辛く味つけた豚肉を組み合わせた料理(ごぼうと細切り肉の炒め)があって。それがすごくおいしいので、カリカリにしてみようと思ったんです。」
水に浸したら、アクを抜くために15分ほど置いておくのですが……
「アク、抜かないのが好きな人はそのままでもOKです。私はアク抜きしない方が好き。でもお腹が弱い人は、アクをちゃんと抜いた方がいいと思います」と関さん。
フライパンに油を深さ1センチほど注ぎ、温まった頃に水気を切ったごぼうを入れ、カリカリになるまでじっくり揚げていきます。ごぼうがきつね色になり、少し縮んだように感じられたら……
サッと取り出します。
「こんがり揚がりました!でも、やわらかいごぼうが好きだわっていう方は、ここまでカリカリにしなくてもOKです。お好みで!」
揚げ焼きをするときは、あまりいじらずに見守る
次は鶏肉を揚げる番。下味をつけた鶏肉に、1:1の割合で混ぜた片栗粉と小麦粉をまぶし……
ごぼうを揚げた油と同じ油で、揚げ焼きにします。
「揚げ焼きをするときは、油の温度が下がっちゃうので、あまりいじらずに見守るようにしています。忘れてる?っていうくらいほうっておいた方が、しっかり揚がる気がするんです。」
こんがり揚がったら、フライパンからいったん取り出して……
揚げ油を処理したあと、たれを作るべく、新たにサラダ油を注ぎ、クミンシードを入れ、弱火で炒めていきます。スパイスのいい香り!
「私、クミンシードのぷちぷちした食感が好きなんですよね。炒め物の最後の仕上げとして入れることが多いです。ほのかに感じさせたいときにはパウダーを、がっつりアクセントにしたいときはシードを……という感じで使い分けています。」
クミンの香ばしい香りが立ち込めてきたら、調味料を入れ……
ひと煮立ちさせたら、先ほど揚げた鶏肉と枝豆を投入します。枝豆は、むかれた状態で販売されている「むき枝豆」が便利でおすすめ。
甘辛いたれがまんべんなく絡まったら、並べたカリカリごぼうの上に……
つやつやになった鶏肉と枝豆をのせて、小口ねぎを散らします。
「もしお好きであれば、ねぎのかわりにパクチーをばさっとのっけてもおいしいですよ!」
香りとビジュアルの両方が、思いっきり食欲をそそり、口にするのが待ち遠しくてたまらない……!
「できあがりました!」
クミンと醤油味はものすごく合う
さて実食といきましょう。チキンチキンクミンごぼう。(声に出して呼びたい)
「クミンとお醤油の味はすごく合うんですよ」と関さん。
口にしてみたところ……本当だ。とんでもなく合う。なんでこんなに相性最高なんですか、あなたたち。しかもクミンは、ごぼうの土っぽい風味とも、枝豆のほっくりとした甘さともよく合います。
クミン先輩、あなたがもし人間だったとしたら、アウェイの飲み会に急に呼ばれたとしても、秒で馴染めてしまうんじゃないでしょうか。和風の味付けのなかでも、自分らしさはそのままに、どの食材とも仲良くできるという類まれなるしなやかさ。
クミンといえばカレーのコアな部分を担っているスパイスですが、ここで感じるクミンは、カレーで感じるのと似ているようで少しだけ違っていて、香ばしくもあり、さわやかでもあり。口の中にふわっと余韻を残していく感じもたまりません。
「クミンを入れると一気に初夏向けの照り焼きになるというか、異国のムードが生まれますよね。おいしいですよね!」とにこにこ頬張る関さん。
「今回は胸肉を使ったのでさっぱりした感じになりましたが、もも肉でやるともうちょっとジューシーな感じになります。」
今、手元にクミンがないという方へ。これまでにクミンを使ったことがない方もいるかもしれませんが、クミンの日常使いはかなりおすすめです。調理中に食欲中枢をぐいぐい刺激してくる香ばしい香りが楽しめるところも含めて。
にんじん、じゃがいも、アスパラ、玉ねぎ、ピーマン、空豆。これはほんの一例で、そのほかどんな食材と合わせてもおいしく仕上がります。
このレシピを皮切りに、クミンと大親友になってみませんか。