名古屋のソウルフード「たません」
芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。今回のメニューは、縁日の屋台などで親しまれている名古屋のローカルフード「たません」。フライパンひとつで、ごくわずかな時間で作れます。
たません
材料(1人分)
作り方
- 1. フライパンに油をひき、卵を割り入れて黄身をつぶし、干しえび、刻んだ紅しょうがをのせて、お好みの固さになるまで焼く。
- 2. えびせんを半分に割り、片方にお好み焼きソースの半量をぬって、チーズと1をのせる。
- 3. ねぎ、揚げ玉、かつおぶしと青のりをちらして、お好み焼きのようにソースとマヨネーズをかけ、もう一枚のえびせんではさむ。
- 4. 下の方をアルミホイルなどで包んで完成。
名古屋の縁日の味を自宅で楽しもう
「卵を使ったレシピをお願いします!」とアイスム編集部がリクエストをしたところ、関さんから送られてきたのが今回のレシピ。
たません。ご存じでしょうか。初めて聞いたという人もいるかもしれません。
たませんは、関さんの出身地・名古屋周辺に根付くローカルフードの一つで、ざっくり言うと、お好み焼き風に味付けした目玉焼きが、えびせん(もしくはたこせんべい)にサンドされている食べ物です。昭和中期の駄菓子屋で誕生。駄菓子屋で見かける機会が減ってしまった今でも、縁日の屋台などでも見かけることがあるのだそう。
関さんがたませんを初めて見たのは高校生の頃だったといいます。
「名古屋の下町の方にある祖父母の家に行った時、小学生くらいの子たちがみんなで、駄菓子屋で買ったたませんを食べていて。なんだろう〜と思って眺めていたんです。
実際に食べたのはその後、ある程度大人になってからでした。自宅の近所のお祭りで売られているのを見かけて。屋台でたませんが作られていく様子を眺めているのって、楽しいんですよね。なんだかずっと見ちゃうんです。今では家にえびせんがあると、小腹が減った時などに自分で作っています。」
目玉を崩しながら焼くのがポイント
たませんは、材料さえあれば、ほんの数分で作れます。まずはフライパンに油をひき、目玉焼き作りをするところからスタート。ポイントは、黄身をつぶしながら焼くこと。
「私はしっかりめに焼きますが、卵の固さは好みなので、半熟が好きな人は半熟でもOKです。ただ、あんまり柔らかすぎない方が、食べやすいと思います」と関さん。
「ちなみにね、ホットプレートを使って作る場合には、卵を焼いている隣でえびせんを少し焼くと、おいしいんですよ。」
干しえびと紅しょうがを散らし、好みの固さになるまで焼いたら……
この時点でたませんの8割強が完成したといっても過言ではありません。
卵を焼くのがおっくうな時には、卵なしでもいける
あとはもう盛り付けるのみ。
まずはえびせんをまっぷたつにします。躊躇せずに思い切り割るのがポイント。勢いよく包丁を下ろします。
きれいに割れたえびせんを見ながら、「よし!いけた!」とうれしそうな表情の関さん。
「フライ返しを使って割るのもアリです。屋台だと、お好み焼きを作る時に使うヘラ(起こし金)を使って割ったりしていますね。正円状のえびせんを使う場合は、割らずに2枚使うのが良いと思います。」
割ったえびせんの半面にお好み焼きソースを塗ります。まんべんなく
塗り終えたら、スライスチーズを置き、その上に目玉焼きをのせます。目玉焼きの熱でチーズが溶けるので、熱々のうちに勢いよくのせちゃいましょう。とろけるチーズを使うのもおすすめです。
お好み焼きにトッピングをするように、揚げ玉、ねぎ、青のり、かつおぶしを散らし、ソースとマヨネーズをかけたら……
もう半分のえびせんではさんで完成。アルミホイルや紙などで包むと、より一層食べやすくなります。
「もうね。卵を焼くのさえめんどくさいって時には、卵を入れずに食べちゃうこともあるんですよ。ソースを塗るだけ、トッピングを散らすだけでもおいしいんです。」
何を入れても自由
かくして、ごくわずかな時間で完成したたませんは、ガレットのようないでたちでテーブルの上に置かれました。
駄菓子屋生まれ。縁日の屋台育ち。こんなおめかしをする日が来ようとは、たません自身もまったく想像していなかったのではないでしょうか。
早速実食してまいりましょう。……はむっ。
「うん!おいしい!」
いつもの味に満足そうな関さん。そんな関さんの姿を参考にしながら、筆者も思い切り、がぶっと食らいついてみました。お。パリパリのえびせんとやわらかい卵。食感のコントラストが、なんだかおもしろい!
単品だと軽やかな印象のあるえびせんが、ずんと重みを持ちました。実際以上に、ボリュームがたっぷりあるように感じられる。それはもしかしたら、香りの情報量が多いから、というのもあるかもしれません。
えびせんの、えびの香り。よく焼かれた卵のにおい。青のり、かつおぶしの磯のにおい。ソース、マヨネーズなどなど、食べるたび、あらゆる香りがぎゅっと押し寄せてくるので、たくさん食べているような気持ちになるのかなと思うのです。
大の大人が今食べてももちろんおいしいのですが、小学生の頃、おこづかいを握りしめてたませんを買いに走り、同級生たちと一緒に頬張っていたとしたら、どんな気持ちを抱いていたんだろう。たぶん、忘れようにも忘れられない思い出になった気がします。小さい頃、たませんを駄菓子屋で食べた思い出を持つ人が心底うらやましい人生でした。
「キャベツを入れても、辛子とかを入れてもおいしいですし、焼きそばを挟んでもいい。中に入れるものは、これこそ自由です。お好み焼きを挟んじゃっても、おいしいんじゃないかしら。汁気の多いものじゃなければ、なんでもいけると思います。」
そうそう。この日撮影で使っていたえびせんのパッケージの裏面には「バニラアイスを合わせてもおいしい」と書かれていました。
えびせんが最寄りのスーパーには見当たらない……という場合には、通信販売で購入するのがおすすめです。たませんを食べたことのない人も、ある人も。ぜひ気軽に試してみてほしいです。