芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。今回のメニューは、先輩の藤井隆さんはじめ、芸能界にもファンが多い関さんの「卵プリン」。卵や生クリームをたっぷり使ったプリンはすこぶる濃厚!「す(細かい泡のような穴)」が入らないようになめらかに作るコツや、卵黄だけ使ったあと残った卵白の活用法を教えてもらったので、ぜひ参考にしてみてほしいです。
材料(プリン型6個分)
作り方
- カラメル
- 1. フライパンに水20㏄と砂糖20gを入れ、弱火で加熱しながら溶かす。溶けたら残りの砂糖を2回に分けて加える。
- 2. フライパンを回しながら茶色に色づくまで加熱する。
- 3. 好みの色になったら火を止め、お湯を加えて混ぜ、カップの底に入れておく。
- プリン
- 1. 全卵と卵黄を混ぜる。
- 2. 鍋に牛乳と生クリーム、砂糖を入れ、周りがふつふつしたら火を止める(沸騰させないように)。
- 3. 1に2を少しずつ加えながら混ぜる。
- 4. 3をザルなどでこし、カラメルの入ったカップに加え、アルミホイルでふたをする。
- 5. オーブンを150度に余熱し、天板にカップの半分くらいがひたる量のお湯(60度くらい)をそそぎ、4を並べて25分ほど加熱する。
- 6. 揺すってみて全体にプルプルしたら完成。冷蔵庫で冷やしてカップの周りを串などで一周し、お皿に出す。
ポイント
卵はおしみなくたっぷりと
無性にプリンを作りたくなる周期が10年、20年ごとに訪れるという関さん。最初は小学校時代。次は20歳前後のころ。そして現在。いろいろ作ってみたけれど、今は「昔ながらの固めプリン」が良いのだそう。
「このプリン、バブル世代の人には『マハラジャのプリンだ!』って言われます。ディスコ『マハラジャ』のプリンは固いプリンだったんです。」
今回のレシピをプリンに決めた理由は2つあるといいます。ひとつめは、5月が5月病に代表されるように、ちょっと鬱々しがちな時期であること。
「卵には、気分を上げてくれる栄養素が含まれているんです。」
もうひとつは、俗説的に卵は春と秋のものが良いといわれていること。
「春は新芽の季節で、秋は実りの季節。今はすべてのにわとりが放牧されているわけではないけれど……、放牧されているにわとりにとって、特に餌が充実しているのがこの2つの時期なんです。にわとりのごはんが充実していると、卵の栄養も充実するんですよね。」
卵はおしみなくたっぷりと、ぜんぶで6個(!)使います。多いと感じる方もいるかもしれません。でもここは思い切って使うのが吉。
カラメルは茶色くなってからがあっという間
さっそくプリンを作っていきます。まずはカラメルから。フライパンに砂糖とお水を入れ、弱火でじっくり溶かしていきます。
「このフライパンは白いから、そのままでも色の変化が見やすいですが、黒いフライパンの場合は、傾けると色が分かりやすいです。」と関さん。
砂糖は、沸騰してからもしばらくの間は透明色のまま。でも、急にふっと色づいたかと思うと、みるみる焦げ茶色に変貌します。
「色が変わりだしたらあっという間。一瞬なんです。気が抜けません。」
この色だ!と思ったら速攻で火を止めて、お湯を加えて混ぜます。あたり一面にカラメルの香りがたちこめてきました。
次に卵を割りほぐします。ここでのポイントは卵を泡立てないこと。なめらかな舌触りのためには、混ぜる段階から注意を払うのが大切なのです。
スッスッと、切るように混ぜていきます。
ところで関さん、卵黄だけ使ったあとに残った卵白はどのように活用していますか?
「余った卵白は食品保存用袋に入れて、冷凍保存しておきます。泡立ててメレンゲを作ったり、お菓子作りに使ったり。卵白だけでかきたまを作ったりもします。」
卵白をどうしようか悩んでいた方、ぜひ参考にしてみてください。
卵に牛乳を入れるとき、逆にすると固まるので注意
続いては牛乳と生クリームを混ぜた液を鍋であたため、そこに砂糖を入れ、溶かします。ここで大切なのは、沸騰させないこと。
「砂糖が溶ければOKです。あと、バニラエッセンスはなかったら、入れなくても大丈夫です。」
砂糖が溶けたと思ったところで鍋の火を止め、先ほど溶いた卵のなかに、液を何度かに分け、やさしく注ぎ込んでいきます。
「これ、逆にすると(牛乳の液の中に卵を注ぐと)固まっちゃうんですよ。だからこの順番が大事です!」と関さん。
卵と牛乳の液を混ぜ合わせたらザルでこします。この工程をはさむことで、プリンのなめらかさがまた一段と高まります。
気泡は着火ライターで消す
舌触りをなめらかにするための工夫はまだまだありました。プリン液を容器に分け入れたあと、表面にできた泡を、着火ライターで消していくのです。
料理の工程でありながらDIYをしているかのよう。なんだか楽しそう……。
「これ、楽しいです。みんなやりたがります(笑)。」
着火ライターがない場合には、つまようじなど、先が尖ったもので泡をつついて消せばOK。泡を消したら、いよいよ予熱で温めておいたオーブンでプリンを加熱します。
「このとき、プリンの容器が半分浸るくらいお湯を入れておくと『す』が入りにくくなります。」
「ちなみにオーブンがない場合には、フライパンでも作れるんですよ。」
フライパンでも……!ぐっとハードルが下がったような気がします。
「フライパンで作る場合も、アルミホイルでふたをしたプリンの容器を並べてお湯にひたします。その上から、さらに全体を覆うようにアルミでふたをして、15分くらい蒸したら出来上がりです。フライパンのほうが短時間でできるかも。ただ、火加減だけは気をつけてほしいです。火が強すぎると、プリンがぶつぶつしてしまうので。」
そのほか蒸し器でも作れるそう。ぜひ好きな方法で試してみてください。
存在感のある、なめらかな舌触りがたまらない!
さてさて。オーブンの音が鳴り響きました。容器ごとプリンを揺すってみて「プルプル」っとしたら、しっかり固まっているサインです。
冷蔵庫で冷やして……完成したプリンがこちら。
スッとスプーンをさしてみると、弾力がスプーンをとおして伝わってきました。そして口にしてみると……とんでもなくなめらか!
いままで施してきた工夫の数々がひとまとまりになって、しっかり活きているのがよくわかりました。
そして、なめらかなだけでなく密度が高い。こんなに贅沢をしていいの……?とオロオロしてしまうほど、濃厚な味わいが口の中に広がり続けます。スプーンを近づけるたび、ふわふわと鼻をくすぐってくる甘い香りもたまりません。これは、全方位から手放しで甘やかされているかのよう。
実は筆者、正直に言うとやわらかいプリンが好きだったんです。いやいやすみません、固いプリン、とんでもなくおいしいぞ……。
「ところで、お菓子を作っているときって、『え、こんなにお砂糖いれるんだ!』ってなったりしますよね。」と関さん。
はい……。すごくなります。「えっ、こんなに入れていいものなの?」と毎回どきどきしてしまいます。何度やっても慣れません。
でも、関さんのプリンを食べながら思いました。せっかくおいしいものを作るんだもの。躊躇せず、「もう、今日はとことん贅沢するぞ!」の心持ちで、卵も生クリームも砂糖も、思いっきり使って、幸せの味を追求してみてもよいのではないかなと。