「至高のポテトサラダ」をはらぺこグリズリーさんが作る
料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、作り合いながら語り合う本連載。今回のゲストは手抜き料理研究家のはらぺこグリズリーさん。リュウジさんの自宅キッチンから、はらぺこグリズリーさんの自宅キッチンへZoomをつなぎ、リモートで進めていきます。
はらぺこグリズリーさんが選んだリュウジさんのレシピは「至高のポテトサラダ」。調理をしつつ、レシピを完成させるまでの試作の回数や「世界一」の定義について……、制作の内側についてもじっくり語り合いました。
至高のポテトサラダ
材料
作り方
- 1. にんにくと玉ねぎ、じゃがいもをカットして耐熱容器に入れ、大さじ3杯の水を入れてラップをかけ、電子レンジ(600W)で6分〜6分半加熱する。
- 2. ベーコンをダイス状のみじん切りにして、鍋にオリーブオイルを引き、香ばしさが出るまで弱火でじっくり炒める。
- 3. 電子レンジで加熱し終えた野菜の上に、ベーコンを油ごと入れ、スプーンなどでじゃがいもを少し崩しながら混ぜていく。混ぜ終わったら、人肌くらいに冷めるまで置いておく。
- 4. マヨネーズ、黒こしょう、塩、砂糖、味の素を加え、よく混ぜる。盛り付けたら、黒こしょうを適量振りかけて完成。
「世界一」の定義
リュウジさんのYouTubeを見させていただいたんです。めちゃくちゃ楽しそうにやられてて、すごくわかりやすくて。見ていると料理がしたくなりますね。
料理にはエンターテイメントの側面があると思っていて。だから、ああやってキャラクターを立てながらやっている……といっても、半分素なんですけど。
しゃべるの、昔からそんなにうまいんですか?
僕は……、しゃべるのは得意というか、家族がみんな、めっちゃしゃべるんですよね。それに慣れちゃってるから、よく話す方かもしれません。しゃべらないと生き残れなかったんですよ。おもしろくないと「つまんないな」と言われる。僕が一番話へたなんです。それくらい笑いに厳しい家柄だったんで。
ああ〜〜〜、さすがです。
今回作る「至高のポテトサラダ」は、僕のレシピのなかでも、少し手間をかけて、さらにおいしいものを作るというコンセプトでやっている「至高シリーズ」のものです。
誰に向けても、本当に胸をはっておいしいといえるレシピには、特別な名前をつける……という感じでしょうか。
たぶん気持ちは同じで、自分のレシピにめっちゃ自信を持つのが大事だと思っています。自分が自信を持ててないレシピを相手におすすめするのって、失礼じゃないですか。グリズリーさんは、ひとつのレシピを作るのに、かなり試行錯誤するほうですか?
決まれば一発ということもありますが、本当においしいと思えなかったら、何度でも作ります。リュウジさんは、どうされていますか?
僕はほぼ一発なんですが、至高シリーズは何回か試作をしています。でも、実際に作る前に、頭の中で味をイメージして、構築してから作るので……例えば、甘味がもう少し欲しいとしたら、煮込み時間をもっと増やしてみようかとか。なので、だいたい3回くらいで完成します。
すごいです。僕、「伝説の卵かけご飯(改)」(著書『世界一美味しい手抜きごはん』に収録)のレシピを作ったときには、1日で卵50個くらい割って……
それ、すごいな!それだけデータに基づいていればおいしいはずですね。
でも、試行錯誤したからこそ、本のタイトルに「世界一」とつけられました。それができてなかったら、世界一おいしいって言えないんです。メンタルの面で。
僕は全然すぐ「世界一」って言っちゃいますね(笑)。でも、僕の場合は「僕が作って僕が食ったものを、僕が世界一うまいって言うのは当然」という目線なんです。
自分の舌にチューニングを合わせて、自分にとっての「世界一おいしいもの」を作れるのは自分だけだから。どんなに著名なシェフでも、僕の舌に合わせては作れない。だから、そこに自信を持つことは、大切だと思っています。
電子レンジで「野菜を蒸す」
このポテトサラダは、ガーリックペッパー味なんです。むかし働いていた厨房に置いてあった業務用のガーリックポテトサラダが好きで、当時よくつまみ食いしていたんですけど、その味の記憶を完コピしています。
作り方は、まずは野菜を切ります。玉ねぎは50グラム……
計ってあります!切り方にポイントはありますか?
野菜の切り方については、ぶっちゃけね、ありません。つぶしちゃうから。でも、細かめであればあるほど、あとで混ぜるのは楽になりますね。
ベーコンの切り方もお好みで、ポテトと混ぜ込んだような感じが好きな場合は、細かめが良いと思います。ごろっと感が欲しい場合はごろっとさせても。
切り終わったら、耐熱容器にお野菜だけ(じゃがいも、たまねぎ、にんにく)を入れて電子レンジであたためてください。
入れる順番とかはありますか?
特にないです。ぼこぼこ入れてください!それで、入れ終わったら、水を大さじ3杯入れます。お水を入れることによって、仕上がりの蒸し加減がいい感じになるんです。
蒸し調理みたいになるということですか?
そうです。蒸すことで食材を一体化させちゃうんですよ。食べてみるとわかるんですけど、わりとクリーミーな舌触りになる。食感が、ベーコンのごろっと感だけになるんです。
……(ラップを探しにさまようグリズリーさん)
どうされましたか?
撮影のために片付けをしたら、わけわかんなくなっちゃって……。
大丈夫ですか?今、ラップの箱、飛んでいきませんでしたか?
大丈夫です!(ラップを力技で引きちぎろうとするグリズリーさん)
この様子、YouTubeとかにしたらおもしろいよ!
すみません、めっちゃ緊張してて……。
ぜんぜんゆっくりでいいですよ!
(無事ラップのカットを完了して)できました!
そうしたら、6分〜6分半電子レンジで温めて、その間にベーコンを炒めちゃいましょう。
はい!
焼き加減は、カリカリ…いや、カリッ、くらいでもいいかな。お好みで大丈夫です。全然アレンジしてもらっても構わないというか、むしろアレンジしてほしいくらいな感じです。
黒こしょうはガッツリと
野菜のレンチンが終わりました!
そうしたら、潰していきましょう。人肌くらいに冷ますのがポイントです。耐熱容器の縁とかにぺたぺた貼り付けながら潰すと、冷めやすくなるのでおすすめです。
水を含んでいるからすごく潰しやすいですね。
じゃがいもはもう、鍋で茹でる気がしない。
レンチン、楽でおいしくて良いですよね。僕も、じゃがいもを鍋で茹でるのと、電子レンジとで比べてみたことがあるんですが、味はほとんど変わりませんでした。
潰し終わったら、冷蔵庫で10分くらい冷やしておいてください。熱いままやると、マヨネーズが分離しちゃうので。
じゃあ一旦冷蔵庫に入れますね。
〜約10分後〜
あ、そろそろポテサラ冷えたと思う。触ってみてどうですかね?あつあつではないですか?
熱くないですね。
じゃあ大丈夫ですね。ベーコンを油ごと入れちゃってください!続いて黒こしょうを小さじ1くらい。けっこう入れます。ここ、ポイントです。僕が酒飲みなので、ピリピリ具合強めな感じです。
おいしそうですね。
あと砂糖と塩。少し甘さがあるとおいしい。塩はお好みで大丈夫です。そして味の素ですね。味の素、ありますか?
はい!
わ、めっちゃある!!で、全部混ぜて完成です!
こしょうのにおいがおいしそう……。ベーコンを炒める一手間があることで、いっそう旨みを引き出しているのではと感じます。
ベーコン炒めると油と香りが出て、ポテトに染み込むので、そのあたりもポイントのひとつです。
「口の中での一体感がすごい」
食べますか!
いただいていいですかね、じゃあ……
………うまっ!!(おいしさの衝撃で、スプーンがかちゃんと皿に落ちる)
うぃ〜〜〜!ありがとうございます!
いいですね。黒こしょうとベーコンの塩気とがよく合ってて、じゃがいもが本当にクリーミーでやわらかくて。口の中での一体感がすごいです。
ちょっとマッシュっぽくなるんですよね。
本当においしいです。
世界征服する勢いで「料理」を広めたい
料理が本当にお好きなんですね。
はい。めちゃくちゃ好きです。小さいころからおいしいものを食べるのがすごく好きで、自分でおいしいものを作れたら、いつでもおいしいものを食べられると思って料理をするようになりました。
中学生のときとかも、調理実習がめちゃめちゃ好きで。学校で習ったクリームシチューを家で作ったりしていたんですよ。とにかく作るのが楽しくて。学生時代のバイトも全部飲食店で。最初は漠然とでしたが、料理に関わる仕事がしたいと思っていました。
料理がものすごく好きな人って、簡単に作ることに抵抗があると思うんですが、葛藤があったんじゃないでしょうか。僕もそうなんですけど。
ほんとうに、その戦いですよね。目的のために、縛りプレイをしている感じです。勝手に自分ルールを作って挑戦する……みたいな。
何回もやっていると、どれだけ武器を使わずにクリアできるか、みたいな感覚になってくるんですよね。初期装備でラスボスを倒す。もしくはタイムアタック。そう思うようになってくると、時短料理を開発するのが楽しくなる。
僕の場合は、とにかく料理を広めたいんです。まだまだ全然足りないんです。この世の中に料理ができない人がいる限りは。ほぼほぼ世界征服したいっていうのに近いですね。
みんな、文字を書けるじゃないですか。料理もそんな風に「みんな」ができるものになったらいいなと思っていて。だから、まずは簡単なものから作ってもらって、徐々に沼に落とし込んでいきたい。それが僕の目標なんです。料理を広めるためならば、なんでもやる。
僕も、まずは料理に興味を持ってほしいと思っています。難しくないところから始めて、少しずつ世の中全体の料理のスキルが向上していったら良いなと。
そこはもう、まったく僕と一緒ですね。僕、料理を広めようとしている人はみんな仲間だと思っているんです。「誰々の本が売れているようですが、ライバルとしてどう思いますか?」とか、よく言われるんですけど、ライバルっていう感覚はなくて。なぜかというと、僕の目的は料理を広めることだから。
そもそも持ち味も違うんですよね。誰が一番とかじゃなく共存するのがいい。どっちもあっていいじゃないすか。今日はリュウジのレシピ、明日はグリズリーさんのレシピにしようでいいわけだから。それがさ、いっぱい増えたっていいわけだから。だから、ライバルにはなりえないんです。
僕も、仲良くやれたらいいなと思っています。協力して、みんなで料理を盛り上げて。その結果、料理の選択肢が広がって、どれもみんなおいしい……みたいなことになったらいいですね。すごく。
ところで、グリズリーさんは顔出しはしないんですか?
はい。まだ人前に出られる域には達していないと思っていて……
全然だよっ。僕より本、売れてるじゃないですか(笑)。顔出し、したほうがいいです。野菜とかもいま、生産者の顔出しているじゃないですか。要は、誰が作ったのかが重要視されている。その人だということが絶対にわかる何かががすごく大事なんです。それだけで信頼がつきやすくなるし、活動がしやすくなる。
顔じゃなくても、例えば「料理の妖精」みたいなキャラをつくるとか。もしくは「MAN WITH A MISSION」の狼のように、ずっと白くまの着ぐるみかぶっているとか。たぶん、めっちゃうけると思います。
そうですね。今顔の出てこない動画を制作している途中だったんですが……それが終わったら、何かしらアバターのようなものを設定して、ライブ感のある動画を作ってみようかと思います!