スナップえんどうのタルタルソース添え/スナップえんどうの炊き込みごはん
「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらうこちらの連載。今回のテーマは、「スナップえんどう」です。豆野菜はその時期にしか出回らないものも多く、スナップえんどうもその一つ。旬をじっくり味わい、楽しむことのできるレシピ2種、ぜひお試しくださいね。
豆野菜が旬を迎えるシーズン。今時期はさやつきのグリンピース、きぬさや、そら豆、スナップえんどうなどが出回り、夏が近づくにつれて、さやいんげんや枝豆へとバトンタッチされていく。
夏野菜が冬に手に入ることは普通になったけれど、豆野菜は他の季節だと見かけないものもある。だから、初夏の豆野菜は今しか食べられない「旬」をじっくりと味わうのにぴったりだ。
今回は豆野菜の中でも汎用性が高く、甘くて子どもも好きなスナップえんどうを料理してみたい。小ぶりで使いやすく、さやを開けば豆が等間隔に並んだ姿がかわいらしい。料理やお弁当の彩りで使われることが多いが、もっと主役になることができる野菜だと思っている。
スナップえんどうを選ぶ時は、さやがふっくらとハリのあるものが良い。色はきれいな薄緑色で、傷が無いものをしっかり見て選びたい。豆野菜は鮮度が命なので、できるだけ買ってきた日に食べてしまうのがベスト。
スナップえんどうの筋は上下両方にある。そんなにで硬くはないので、爪でちょっと切れ目を入れて指先で手前に引けば、筋を取ることができる。もしくは包丁で切れ目だけを入れて、筋とりをお子さんに手伝ってもらうのも、きっと楽しんでもらえるはず。(以下、スナップえんどうは筋を取った状態のものを使用する。)
筋取りや千切りなどの単純作業をしている時は、「やれば終わる」ことを体感できて心地がいい。原稿を書く仕事やレシピのブラッシュアップは、細かいところにこだわれば終わりが見えない。だから、こういうシンプルな仕事を目の前にした時、ある種の幸福感に包まれる。
スナップえんどうのタルタルソース添え
スナップえんどうといえば、茹でてそのままマヨネーズで食べる人も多いのではないだろうか。さやのパリッとした食感としっかりとした甘みに、マヨネーズのコクとほのかな酸味がよく合う。
私もこの食べ方が好きなのだが、今回はちょっと豪華にタルタルソースにしてみよう。「タルタルソース、時間がかかるから大変…」と思ったあなた!実はレンチンでお手軽にできてしまうことをお知らせしたい。
スナップえんどうは1分間茹でて、ざるにあげる。
耐熱容器に卵を割り、卵黄にようじで数カ所穴を開ける。それをレンジで1分ほど加熱し、お好みの具合に卵黄を固める。
フォークなどで卵を潰し、あとは玉ねぎやピクルスなど歯応えのある野菜類のみじん切り、マヨネーズ、お酢、塩などをお好みで加えてソースを作る。タルタルソースのために卵を茹でなくても、それなりのものができてしまう。
仕上げは写真のようにタルタルソースを別添えしてもいいし、ボウルでスナップえんどうと和えてもきれいに仕上がる。
スナップえんどうの上にタルタルソースを乗せて口に運ぶと、パリパリと音を立てながら豆の香りが広がり、間に軽めのタルタルソースが入ってくる。
爽やかな香りとソースのコクのバランスがよく、おやつ感覚でぺろりと食べてしまう。
これを作っているとき、スナップえんどうの茹で汁に色がついていることに気づいた。茹で汁からはパッと豆の香りがひらく。一口すすってみると、ほのかではあるが、スナップえんどうの味がする。
この「スナップえんどうだし」とも言える茹で汁を捨てるのがもったいなくて、炊き込みごはんを作ってみることにした。
スナップえんどうの炊き込みごはん
「スナップえんどうだし」だけだと、炊き込みごはんにするには少し物足りない感じがしたので、ハーフベーコンを1パック加えてみる。
仕上げに茹でたスナップえんどうも加えたいので、食べ切ってしまった人はぜひ追加で買ってきてもらいたい。
まずお米を一合洗い、炊飯釜に加える。粗熱をとった茹で汁を一合のメモリまで注ぐ。そこに1cm幅に切ったベーコンを適量加え、塩をひとつまみ加える。あとは普通に炊飯するだけだ。
炊き上がったら、茹でて半分に切ったスナップえんどうを加えてさっと混ぜ合わせる。薄ピンクのベーコンと、スナップえんどうの緑色が美しい。
素材そのものを味わいたい時は、何も加えずに食べてもらいたい。
リッチな気分で味わいたい時にはバターを少量、ピリリとさせたい時は胡椒を引けばグッと味が締まる。コンソメは入れていないのに、ベーコンの旨みが効いてまるでピラフのような炊き込みごはん。スナップえんどうの食感がアクセントになって食べ飽きない。
これを作った時、あまり外で食べられないタイプの料理だなと思った。炊き込みごはんの素は数あれど、季節の野菜を使って自分で作る「創作炊き込みごはん」は、家ごはんの醍醐味なのだろう。
初夏の豆野菜は、まだまだ可能性がありそうだ。