ゆかりごはんの「天巻き」と菜めしで作る「いなり寿司」
芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。今回のメニューは、三重県発祥といわれる「天巻き」と菜めしで作る「いなり寿司」、二つのメニュー。ふくふくとしたボリューミーな姿がたまらない!お弁当にもおすすめしたい一品です。
天巻き
材料(作りやすい量)
作り方
- 1. ごはんにすし酢、ゆかりを混ぜて冷ます。
- 2. たれの材料を⼩鍋に⼊れ、沸いたら⽔溶き⽚栗粉でとろみをつける。
- 3. まきすに海苔をのせ、1の半量、⼤葉2枚、2をくぐらせたえび天ぷら、刻んだしば漬けをのせて巻く。もう1本も同様に巻く。
- 4. しばらく落ち着かせ、濡らした包丁で切り分けお好みで白ごまをふる。
いなり寿司
材料(作りやすい量)
作り方
- 1. 油揚げを箸でコロコロとつぶし、半分に切って熱湯をかけて油抜きし、裏返す。
- 2. 鍋に1を並べ、煮汁の材料を混ぜたものをかけ、沸いたら落としぶたをして弱⽕で20分ほど煮て、そのまま冷やす。
- 3. かぶや⼤根の葉を茹でて冷⽔にとり、絞って刻んだら塩をまぶす。
- 4. ごはんにすし酢とわさび、⽔気を絞った3と⽩ごまを加えて10等分する。
- 5. 軽く絞った油揚げの半分は表に戻し、半分は裏のままにして4を詰める。
しば漬けも入れちゃう!関さん流「天巻き」
今回のレシピは、食欲の秋にちょっとがんばって作ってみたい、もりもりの2本立て。助六寿司のようなスタイルで巻き寿司といなり寿司を作っていきます。
まずは天巻きからスタート。天巻きとは、ゆかりを和えたごはんでえびの天ぷらをくるっと巻いてつくる、三重県発祥といわれるご当地グルメ。
「名古屋っぽいけど違うんですよね」と関さん。ちなみに名古屋めしと呼ばれて久しい「天むす」も、実は三重県津市のお店「千寿」がルーツといわれているのだそう。
まずはすし酢とゆかりをごはんに混ぜ、冷ましておきます。
「すし酢、我が家にも常備しています。お寿司以外にも、醤油を足してドレッシングのようにしたり、南蛮漬けに使ったり。意外と使い勝手がいいんです。」
続いては、たれの材料(めんつゆ、砂糖、醤油、⽔)を小鍋に入れて煮立て、水溶き片栗粉を入れて、とろりとさせます。
このメニューのおもしろいところは、いろんな味と食感がぎゅっと凝縮されているところ。えびの天ぷらにたれを絡めることで衣のしっとり感が高まるので、たれ作りは大切なポイントです。
下準備ができたら、まきすでくるくる巻いていきます。ゆかりごはんを薄く敷いたら、大葉をのせ…
さきほどのたれをくぐらせた、えびの天ぷらをのせます。
ちなみにえびの天ぷらの調達方法は自由。お惣菜コーナーで見つけるのでも、冷凍食品を使うのでも、自宅で手作りするのでもなんでも大丈夫です。
えび天を置いたら脇にしば漬けを添えていきます。ふわふわとカリカリの競演!
まきすをくるっと巻き…
ぎゅっと力を込めて。
「大丈夫、きっといけるはず…」
「お〜!やった!」
無事完成した天巻きは、巻いたあと少し置いてなじませてから、濡らした包丁で切り分けます。
油揚げは箸でコロコロすると破れにくくなる
続いてはいなり寿司作り。小さい頃はそれほどいなり寿司に熱心ではなかったという関さんですが、大人になってから、楽屋にいなり寿司を差し入れしたのをきっかけに開眼したのだそう。
「いなり寿司を持っていくとみんなすごく喜ぶんです。『いなり、大好き!』っていう人が周りに本当に多くて。それで定期的に作るようになりました。昔やんちゃだった後輩も、NYで活動している新進気鋭のデザイナーさんも、みんな好きだと言っていて。いろんな人に愛されている、いなりってすごいなぁと思います。」
まずは油揚げを準備するところから。ここでのポイントは油揚げをお箸でコロコロするところ。
「こうすると、はがれやすくなってやぶれにくくもなる。この工程を加えると、おいなりさんがすごく作りやすくなるんです。」
熱湯を注いで油抜きをしたら…
油揚げを二つに切り分け、ここで一度、くるんと裏返します。
なぜ裏返すのかというと、
裏返した油揚げを鍋の底に並べたら…
水と酒、醤油、みりん、砂糖を混ぜたものをかけて弱火で煮ます。
「酒、醤油、みりんは大さじ3だけど砂糖だけ大さじ2.5にしているのは、わたしが甘さ控えめのいなりが好きだからです。甘いのが好きな人は砂糖も大さじ3で大丈夫かも!」
煮る際には落としぶたをして。20分ほど煮たら冷まします。
「ここまでの工程を前日のうちにやっておいても大丈夫!」
いなり寿司の中身は混ぜごはんにしたい
関さんのいなり寿司の特徴の一つは「ごはんの色が真っ白ではないこと」。
「酢めしだけだとさみしくて、いろいろ入れちゃうんです。菜めし入りのいなり寿司は普段からよく作ります。じゃこを入れたり、ゆかりを入れたりもしますね」と関さん。
油揚げを冷ましている間に菜めし作りを。茹でたかぶの葉っぱを刻んで塩をまぶしたものとすし酢、白ごま、そしてわさびをごはんに混ぜていきます。
「わさびをちょびっと入れると、さわやかな味になるんです。葉っぱは大根の葉っぱでもOKです。だけど最近、葉っぱがしっかりついた大根をスーパーで見かける機会は少ないかな。」
菜めしが関さんにとって身近なのは、東海地方の郷土料理「菜めし田楽」に親しんできたからというのもあるようです。
「菜めし田楽は、愛知や岐阜ではわりとメジャーな料理なんです。菜めしと味噌のついた豆腐の田楽が3本くらいセットになったメニューが、蕎麦屋さんとかにあるんですよ。」
菜めしがしっかり混ざったら10等分します。
いなりのなかに入れたら見えなくなるので、形は気にせずにゆるーく握るようなイメージで。
軽快に握っていた関さんでしたが、ふと目の前のごはんを見たら、10個に分けたはずのごはんが9個しかないことに気がついて驚愕。
「あれ?…ごはんが足りない!なんで!?」
9個のごはんからちょっとずつ移植をして、最終的には無事10個になりました(笑)。
そんなごはんをいなりに詰め…
いくつかには、刻んだ新生姜やオクラ、とびこなどを飾りつけていきます。
「飾り方のポイントは自由にやること。そうそう、前に子どもたちにおいなりさんの作り方を教えたとき、いろんな素材を置いておいたらエディブルフラワー(食べられる花)をのせている子がいて、自由だな!って思いました。」
なんと鮮やかな助六寿司
…というわけで完成しました。育ち盛りの世代にも胸を張っておすすめできる堂々のボリューム感。
さっそくいただきます。まずは天巻きから。
おお!えびのぷりっとした食感、衣のしんなり感、しば漬けのカリカリと大葉の香りが一気に押し寄せてくるのがなんとも贅沢です。
ふと、以前とろたく(ねぎとろとたくあんの軍艦巻き)が好きだと高らかに叫んでいた人のことを思い出しました。なんでもその人は「ねぎとろだけでいいのに、なんでたくあんまで入っているんだろう…」と思いながらとろたくを口にしたところ、トロトロとカリカリの食感のアンサンブルにすっかりはまってしまったらしい。
その気持ち、今ならわかる。一口のなかにいろんな食感があって楽しいから、食べ終わると同時に何度も何度も口に運びたくなってしまうんだ。
いなり寿司も、口にした瞬間にじゅわっと汁が染み出す油揚げと、ピリッとわさびが効いたしゃきしゃきの菜めしのコントラストがたまらなくて、関さんが「酢めしだけだとさみしくて、いろいろ具材を入れちゃう」と言っていたこと、全力で納得です。
それに、味だけじゃなく見た目も楽しいのがまたうれしい!
「飾りいなり、楽しいんですよ。いなり寿司って本当にいろいろできるんです」と関さん。
「差し入れで持っていくときには、その子の顔を模したいなりを作ることもありますね。レイザーラモンRGが『DO THE パンダッ!』って曲を出したときには、パンダのおいなりさんを作りました。クリスマスにはサンタやトナカイを作ったり。トナカイの角はね、れんこんを半分に切って揚げるんです。」
いなり寿司って…キャンバスだったんだ!
飾りいなりに興味がある人はぜひ挑戦してみてほしいですが、もし、そこまでの気合いは自分にはないという人は、飾りなしのいなり寿司をぜひ試してみてほしいです。
ふとお腹が空いたとき、こんな天巻きやいなり寿司がそばにあったら、ほろっと笑みがこぼれてしまうし、もう一息がんばろうって気持ちになれると思います。とっても!