ひなまつりの郷土菓子「おこしもの」

ボルサリーノ関好江の笑食同源おしゃべりごはん #23

FOOD
2022.02.28

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芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。今回のメニューは、関さんの地元・愛知県に伝わるひなまつりの郷土菓子「おこしもの」。味はひとことで言うならとっても素朴。食べているうちに、古い記憶が呼び覚まされるような、何度も繰り返し食べたくなる不思議な味わいです。工作しているみたいに、楽しみながら作れるのもポイント!

おこしもの


材料(作りやすい量)

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  • ⽶粉…200g
  • 熱湯…200cc
  • ⾷紅(⾚・緑・⻩⾊)…少々
  • きなこ、砂糖、醤油…お好みで

作り方

1. ボウルに⽶粉を⼊れ、少しずつ熱湯を注ぎ、箸などで混ぜる。
2. 触れるくらいになったら⼿でこねて、1/10くらいの量を3つ取り分ける。
3. 取り分けたものに、それぞれ⾷紅を⽔でといたものを混ぜてこね、⾊付きにして丸め、⼩さい⽟をいくつか作る。
4. 2の残りの⽩い⽣地をクッキングシートにのせ、めん棒などでのばし、上に3の⽟を⾊よくちりばめる。
5. その上にクッキングシートをのせ、めん棒で1cmくらいの厚さにのばす。
(⽔⽟の⼤きな⽣地ができます。)
6. 型で抜き、蒸し器で15分ほど蒸す。

※お好みで、蒸したてに砂糖醤油やきなこをつけたり、冷ましてから醤油をぬって炙ったりしてもおいしいです。
※型がなければ、コップなどで抜いてもOK。余った⽣地を丸めてつなげたり、粘土のように好きな形を作ったりしてみてもかわいいです。

祖父の家の斜め向かいにあった和菓子屋さんがきっかけ

おこしものとは、愛知県名古屋周辺に古くから伝わる、ひな人形に飾る郷土菓子。名古屋生まれの関さんにとっては、子どもの頃からずっとひなまつりの日に食べ続けてきた、馴染み深い食べ物です。

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花、鯛、ひな人形など、いろいろな形がある

「昔、祖父の家の斜め向かいに小さな和菓子屋さんがあって、毎年ひなまつりの時期になると、おこしものが並んでいたんです。私、ひなまつりには絶対おこしものが食べたくて、毎年すごく楽しみにしていました。もうそのお店はなくなってしまったので、今は、毎年ひなまつりに自分で作っています。別に自分用だから、食べたい時に作ればいいんですけどね。うふふふ」と関さん。

「ちなみにこの前、相方におこしものを食べさせたら、最初『これは何?』と言っていて。餅が好きなのでおいしいって喜んで食べていたんですが、同じ名古屋出身でも今まで食べたことはなかったみたい。かなり局地的な文化なのかもしれません。」

食紅はごくごく少量だけ出してお水で溶く

まずは下準備からスタート。赤、黄、緑の食紅をそれぞれ小さめの容器に出して、お水で溶いていきます。食紅は、ごくごく少量だけ出すのがポイント。食紅に備え付けられている小さなスプーン1杯よりも少ないくらいでOKです。

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「入れすぎるとすごく濃い色になっちゃうから、本当にちょっとだけで大丈夫!」と関さん。

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「ちなみに本場のおこしものは、最初から色を付けるパターンと、蒸しあげてから、ハケでささっと塗って色を付けるパターンとがあるみたいです。昔ながらの色はこの三色。でも、今はいろんな色の食紅があるから、好きな色を使ってみても良いと思います。」

米粉は最初箸で混ぜて、冷めてきたら手でこねる

色の準備が完了したら、ボウルに米粉を入れ、お湯を注ぎ、箸でぐるぐると混ぜていきます。

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「熱湯を入れてからしばらくは生地が熱いので、最初は箸で混ぜ、冷めてきたら手でこねていく感じです。」

箸で混ぜている間は、少しパラパラしていてまとまりにくいですが、心配は無用。手でこねているうちに、一つにまとまっていきます。

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生地がいい感じにまとまってきました。そうしたら、全体の10分の1くらいの量を3回ちぎります。厳密じゃなくても大丈夫。

「色のある部分多めがいいなってい人は、もっと多めにしてもOKです、お好みで!」

水で溶いた食紅を生地の上にのせ……

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色がまんべんなく行き渡るように、さらにこねていきます。

「蒸すと色が濃くなるので、薄めに色付けします。」

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生地は、結構手にくっついちゃうこともあるので、気になる場合は都度、手を洗いながらこねるのがおすすめ。それぞれの色をコロコロと、飴玉サイズに丸めていきます。

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ファンシーな世界がまな板の上に生まれ始めました。かわいい!

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「この三色それぞれでちっちゃい玉を作ったあと、さっき残しておいた白い生地と合体させるんです。色が混ざり合うような生地にしたいなぁ。できるといいなぁ。」

ちっちゃい玉から生まれる水玉模様の生地

生地を結合させる時は、クッキングシートがあると便利です。

「クッキングシートを敷かないと、生地がまな板にくっついちゃうんです」と関さん。

まずは白い生地の上下をクッキングシートではさみ、めん棒などで伸ばします。このタイミングでは、薄く伸ばしすぎないのがポイント。伸ばし終えたら、上部のクッキングシートを一旦はがして、白い生地の上に三色のちっちゃい玉をランダムに配置していきます。

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そろそろいいかなと思ったら、再度キッチンペーパーをのせ、ガッと伸ばし……

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開くと……おっ。

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かわいい水玉模様の生地が完成。キキララのような世界。

「2回目に伸ばす時は、厚さ1cmくらいになるまで伸ばします。」

工作をしているみたいな気分

生地が完成したらいよいよ型抜き。お好みのクッキー型を使って抜いていきます。もし型がなければ、コップのふちを使ったり、粘土みたいにして好きな形を作ってもOKです。

「本当は、おこしもの用の木型に生地を詰めてから抜き出すのが本来の作り方なんですが、木型は持っていないんですよ。このレシピは、木型がなくても作れるように、クッキー型で抜きやすい分量にしています」と関さん。

「型を抜く場所がなくなったら、生地を丸めて伸ばしてを繰り返して再利用します。」

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「型が抜けない……ちょっと柔らかかったかな。抜けないな、抜けてくれ!…………………全然抜けない(笑)。」

型をチェンジしてみると……

「おーいけた!いけました!そうです、こうしたかったんです(笑)。よし!この型で抜いていこう。かわいいかわいい。よしよしよし!生地も今、やっとまとまってきました。耳たぶくらいの固さ。本当は最初からこうしたかった!(笑)」

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フードスタイリストさんが持ってきたこけし型でもチャレンジ。きれいに抜けた!

型抜きが終わったら、蒸し器(ない場合はフライパンなどでもOK)に入れ……

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15分ほど蒸したら、色がより一段と鮮やかに。

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完成しました!

シズル感を言葉にするのが…難しい。でもおいしい

そしてお皿に並べたのがこちら。砂糖醤油やきなこも添えてみました。

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おこしものの味は、関さん曰く「とにかく素朴な味です。冷めたお餅に近い感じで、米粉をこねこねした味。むちむちした食感です。そぼく!」とのこと。

食べてみると……たしかに!関さんの言った通りでした。シンプルという状態を味に変換するとこうなるのか!という、極限まで研ぎ澄まされた、いっさい余分のない味。シズル感を言葉にしようとしてみても……難しい!でも、でもおいしいんです。

記憶が確かならば、昔、こういう味のおだんごを、おばあちゃんちで食べたことがあるような気もしてきました。初めて食べるのに、初めてという気がまったくしない。自分でも意識したことのなかった深い場所にある記憶が急に呼び覚まされるような……。もしかすると、「DNAに刷り込まれている味」ってこういうことなのかもしれない。

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食感は、もちもちというよりもむちむち。噛むたびに、むち!むち!と強い弾力が跳ね返してきます。砂糖醤油やきなこをつけてみたら、お餅らしさが一気に上昇してますますおいしい。食べ終わる頃には、もう一個食べたいなぁという気持ちにさせられていました。

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「実家にいた頃から、ひなまつり当日はそのまま食べて、翌日は焼いて食べていました。当時はひなまつりの翌朝のごはんがすごく楽しみだったんです。お醤油をつけて少し炙ってもおいしいんですよ。これはみんなに食べて欲しい!」と関さん。

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もうすぐひなまつり。ひな人形を飾る人も、飾らない人も、なんならひなまつり以外の日でもよいので、食卓におこしものを添えてみるのはいかがでしょう。

工作気分で作ることができて、製作途中に何度となくわくわくきゃっきゃできるのも楽しいので、お子さんと一緒に作ってみるのもおすすめです。

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取材・文:ネッシーあやこ
撮影:美坂広宣(SHAKTI)
フードスタイリング:鈴木理乃(Smile meal)