丸ごと焼きピーマン/アジ刺身のピーマン和え/ピーマンとしらすのさっと煮

五感をひらくレシピ #5

FOOD
2020.07.30

旬の食材を使った「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらいます。第五回のテーマは、安くて栄養もたっぷり、おうちごはんの強い味方「ピーマン」。山口さんがおうちでよく食べるという、3つの食べ方を紹介してくれました。


スーパーの入り口に夏野菜がわんさか並び始めた。なす、トマト、きゅうり、とうもろこし、彩り豊かな野菜を眺めているだけで元気をもらえる。長い梅雨もそろそろ終わりそうだし、今年もまた夏野菜と会えてうれしい。

夏野菜は大好物ばかりなのだが、なかでもピーマンはいつでも冷蔵庫にあってほしい。安くて、栄養価も高く、使いやすいのでおうちごはんの強い味方だ。生で食べれば苦さにはっとし、火を入れて食べれば素朴な旨味がじわっと感じられる。肉や魚と合わせれば、主役にそっと寄り添ってくれる野菜だ。

それともう一つ。ピーマンは外食であまり見かけない。手頃な価格で料理しやすいからこそ、特別感や非日常感も大切にしたい外食ではあまり使われないのだろう。

だからこそピーマン料理はおうちごはんの特権。私が家でよく食べる、3つのピーマン料理をご紹介したい。

近所に「地産マルシェ」という、関東近郊のおいしくて新鮮な野菜が手に入るスーパーがある。この連載で取り上げている野菜はほぼこの店で手に入れている。

ピーマン

どの野菜を記事にしようかなと考えながら店を訪れると、大きくて立派なピーマンが目に入った。その横にはもう少し小ぶりのピーマン。一口にピーマンと言ってもいろんなサイズがある。重さを比べてみたら3倍も違った。

五感ポイント・目で楽しむ

両方切って生のまま食べてみると、小さい方がはっきりとした苦味を感じられた。同じ野菜でもサイズや硬さ、味や色などがそれぞれ異なるので、生で食べられる野菜は、料理をする前にそのまま食べてみるのをおすすめしたい。今回は大きくて苦味の少ないピーマンは丸ごと焼きに、小さくて苦味の強いピーマンは刻んで薬味のように使ってみた。

丸ごと焼きピーマン

ピーマンを切らずにそのままフライパンで焼いただけの、シンプルな料理。食材と料理の合い間にあるような「食材をおいしく食べるために手を添えた」くらいの食べ方だけれど、それも立派な料理だ。

やる気がでない、切るのもめんどくさい……というときでも、ピーマン一袋を買ってきて並べて焼けばいい。しかもピーマンの中でタネとヘタが蒸されて、それらも丸ごと食べられてしまう。お皿にはなにも残らない、栄養的にもばっちりな一皿だ。

ツヤのある肌と緑色が目に映えるきれいなピーマンに、箸で3箇所ほど穴を開ける。こうすることでパンッと弾けるのを防ぐ。油をさっと敷いたフライパンに並べ、油が飛ばないように蓋をして中火にかける。

五感ポイント・耳で楽しむ

しばらくするとパチパチという焼ける音とともに、焼けた香りがしてくる。なんと心地のいい時間なのだろう。あせっていたら聞き逃してしまいそうな音や香りも、このときだけは存分に味わいたい。

丸ごと焼きピーマン

フライパンが十分に熱くなっていたら弱火に落とし、たまにひっくり返しつつ蓋をして5〜7分ほど好きな柔らかさに焼く。皿に盛ったら、おかか醤油でいただこう。

五感ポイント・素材を味わう

ステーキのようにガブッとかぶりつけば、じゅわじゅわとピーマンのジューシーな汁が流れ出す。初めてこの料理を食べた時、「ピーマンってこんなにおいしかったのか!」と心底感動した。タネの周りもざくざくと噛み締めると、凝縮感のある旨味が感じられる。今しか食べられない肉厚ピーマンは立派なごちそうだ。

アジ刺身のピーマン和え

アイスムでも連載をしているスープ作家の有賀薫さんのスープで、ピーマンのみじん切りを使ったスープがあった。ピーマンの爽やかな苦味は薬味の大葉やみょうがなどに通じるものがあるなと思い、今回はアジのお刺身に合わせてみた。

みじん切りにした生ピーマンは青々しい香りが良いので、混ぜ合わせる前に香ってみてほしい。

アジのお刺身とみじん切りピーマン

2つを合わせたら、ポン酢とごま油をちょろっと。醤油にしたり、ラー油にしたり、この辺はお好みでどうぞ。

アジ刺身のピーマン和え

甘みさえ感じる梅雨のアジに、ピシッとした苦味がよく効いておいしい。柔らかい刺身にパリパリのピーマンが絡んで食感にもコントラストがある。さっぱりとしたものが食べたい夏の日にぴったりの、涼やかな一皿が定番入りした。

ピーマンとしらすのさっと煮

当たり前のことを言うが、ピーマンは苦い。好きな人は「その苦さがいいじゃない」と思うわけだか、苦手な人がいるのもわかる。特にお子さんがいるおうちでは、どうやって子供にピーマンを食べてもらうか頭を悩ませている人も少なくないのではないだろうか。

ならばおすすめしたいのが、煮物だしでさっと煮たピーマン。しらすやだしの旨みを吸ったピーマンは、苦さはどこに行ってしまったの?というくらい食べやすくておいしいのだ。

千切りにしたピーマン

作り方は簡単。ピーマンは種をとって、5mm幅を目安に千切りにする。幅はバラバラになってしまっても食感に差が生まれておいしいので、全く問題ない。蓋ができる鍋にピーマン3個分、じゃこやしらすをお好きな量、だし100〜150ml、みりん大さじ1、醤油大さじ1を入れる。蓋をして中火で加熱し2分経ったら、弱火に落として3分加熱する。タイマーを設定して入ればほったらかしていても問題なし。

ピーマンとしらすのさっと煮

あたたかくても冷めてもおいしい、へなへなピーマンのおかず。食卓に出したら一番先になくなるほど隠れた人気者だ。こういう地味なおかずが食卓にあるのは、慎ましくて豊かだなと思う。

今回は丸ごと焼いたり、薬味のように使ったり、だしで煮たりしてみたが、ピーマンの実力はまだまだ底知れないと改めて思った。おうちごはんならではのピーマン料理、ぜひ一緒に研究してみましょう!

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