かつおのたたきフライと変わりソース
芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。今回のレシピは「かつおのたたきフライと変わりソース」。春に旬を迎えるかつおを表面はカリッ、内側にレア感を残したフライにして、2種類の変わり種さっぱりソースでいただきます。かつおだけでなく、ソースそのものに確固たる存在感があるのがポイント!
材料(2人分)
作り方
- かつおのたたきフライ
- 1. かつお短冊に塩こしょうをし、小麦粉、卵、パン粉で衣をつけ、1cmほど油を入れたフライパンですべての面を揚げ焼きにする。
- 2. 余熱で火が通らないうちに、すぐ切り分ける。
- ザジキソース
- 1. ヨーグルトを水切りする(コーヒーフィルターに入れて1時間置いておく)。
- 2. きゅうりを半分千切りにし、塩を振ってから10~15分置いて水気を絞る。
- 3. 残り半分のきゅうりをすりおろし、水気を絞る。
- 4. 1ときゅうりに調味料を加えてよく混ぜる。
- ニラ香味だれ
- 1. ニラ、万能ネギは5mm程度にきざみ、大葉は細切りに。にんにく、生姜はみじん切りに。レモンスライスは8等分のいちょう切りにする。
- 2. すべての材料を混ぜ合わせる。
相方の影響でかつおを意識するように
今回のメニューは、春に旬を迎えるかつおを、大定番メニュー「かつおのたたき」とはまったく違うスタイルで味わう、かつおの新たな一面が楽しめる一品。
「相方がすごくかつおが好きで、お寿司の食べ放題に行った時とかにも、かつおばっかり食べているんですね。それを見るまではわたし、かつおを特に意識することのない人生を送っていたんですが、相方の影響で意識するようになりました」と関さん。
そして、かつおと並んで、今回の主役をつとめるのが、2種類の変わり種ソース「ザジキソース」と「ニラ香味だれ」……なのですが、「ザジキ」とは??どんなソースなのでしょう。文字の並びだけ見ていると脳裏に座敷わらしが浮かんでしまったのですが、たぶん、いや絶対違いますよね。
「ザジキは、ヨーグルトにきゅうりとにんにくを入ったギリシャのソースです。向こうでは、ピタで巻いたりお肉に添えたりして万能ソースとして使われているそうなんです。
わたしも知らなかったんですけど、事務所の先輩の藤井隆さんから『ギリシャのソースでめっちゃおいしいのがあるねん。ヨーグルトにきゅうりが入ってて、野菜とかクラッカーとかにつけて食べるやつなんやけど、作って〜〜』って言われて。
どんな料理なんだろうと思いつつ『ヨーグルト ギリシャ』と検索窓に入れて調べてみたら、ザジキという名前だとわかって。それで作ってみたのが始まりです。」
作り始める際はまずヨーグルトをコーヒーフィルターに入れ、ざるの上にのせ、水切りするところから始めます。
1時間ほど置いたあと、ヨーグルトを取り出そうとすると、水分をたっぷり吸収したコーヒーフィルターの下方に穴があいて、にゅ〜っと絞り出すことができます。
これは便利!
「たまに調子がいいと、すぽんときれいに絞り出せて、めちゃくちゃ気持ちいいんです。」
きゅうりの切り方は家庭ごとに違う
続いてはきゅうりをカットしていきます。
半分は千切りにして、塩をまぶして、10分くらい置いてから水気を絞ります。残り半分はすりおろしに。初夏を彷彿とさせるみずみずしい香りが立ち込めてきました。
「ギリシャでは家庭やお店ごとにきゅうりの入れ方が違うらしくて。輪切りで入れるところもあるらしいです」と関さん。
すりおろしたきゅうりはキッチンペーパーにくるんで……
ぎゅっと絞ります。
きゅうりといえば、大半が水分で構成されている野菜。思い切り絞ると容量が一気に縮小されるので、もしかすると、その縮小ぶりにどきっとする人もいるかもしれませんが、そのまま進めて大丈夫です。ぜんぶの材料をボウルに入れ、混ぜ合わせていきます。
一見さらっとした見た目のザジキですが、にんにくを入れることにより、パンチが効いた味わいになります。
「わたしのレシピでは、にんにくの量を控えめにしているけど、ギリシャ料理屋さんで食べた時は、にんにくが割とがっつり入っていて、うっおおお!ってなりました (笑)」と関さん。
思いっきり、うっおおお!となりたい人は、多めににんにくを入れてみてもよいかもしれません。逆にパンチを抑えたい人は少なめにするなどして調整してみてください。
「今日はチューブのにんにくを使っていますが、もし生のにんにくをすりおろして入れる場合には、辛みが出るので、翌日くらいに食べると味が馴染んでおいしいです。」
”名前のない料理”をたくさん作っている
続いてはもう一種類のソース、薬味がてんこもりの「ニラ香味だれ」を作ります。
「1つの料理に対して、ソースを2つくらい用意するのが好きなんです」と関さん。まずは細かめにニラを刻んでいきます。
「ニラ好きな方だったらもっと大胆に切っちゃっても大丈夫です!」
大葉や万能ねぎ、しょうが、にんにくもざくざく刻みます。
こういうソース、ふだんからよく作るんですか?
「家ではよく、冷蔵庫にあるもので即興で、名も無きソースのようなものを作ることが多いです。ドレッシングもその場で適当に作っちゃう」と関さん。
「わたし、基本的に仕事のとき以外は、作ったものをレシピに書き起こさないんです。残しておこうという気持ちがあんまりなくて。いろいろ混ぜてカレーを作ってみて、すっごいおいしくできた!って思っても、もう二度と同じものが作れない(笑)。何を入れたのかわからないから。」
ところでこのソースの特筆ポイントのひとつがレモンの入れ方。スライスしたレモンをいちょう切りで8等分して、そのまま入れます。
材料をぜんぶ切り終わったら、調味料を加えて……
しっかり混ぜていきます。薬味の総量が、ボウルの容量の3分の1から2分の1を占めるくらいにぎっしり。ソースという名前がついているけれど、サラダとも認識できるほどのボリューム感!
「わたしもこれはなかなか予想外(笑)。……なんでこんなに入れたんだろう。家にあるもの全部いれちゃえって感じだったのかな。ファッションチェックだったら、要素が多いって怒られちゃいそう。」
……と言いつつも、
「わたし薬味がすっごく好きなんです。しょうがとねぎのストックは絶対に切らさない!」
「実家もそんな感じだったんですよね。そうめんやひやむぎを食べるとき、たくさんねぎを用意するんです。ねぎを食べるために麺を食べているんじゃないかってくらい。」
「このメニューも、ソースを食べるために作っているみたいなところがあります。」
かつおは手早く揚げる
とはいえども、これから作るかつおのたたきフライは、単品でもがっつりパワーのある食べものです。ただでさえごちそう感があるかつおのたたきに、衣をまとわせるのがポイント。まずは塩こしょうを振って下準備します。
「今回は、旬のものをと思ってかつおを選んだけれど、まぐろやサンマで作ってもおいしいです」と関さん。
小麦粉、溶き卵、パン粉をそれぞれお皿に用意して、かつおにまとわせていきます。
準備ができたら、フライパンに深さ1cmほどの油を注いで、フライにしていきます。
「『揚げ物をするのがこわい』っていう話をよく聞くんですが、少なめの油でやれば、こわさが減るのではないかと思います」と関さん。
自身は揚げ物に恐怖を感じた経験はないそうなのですが……
「料理を教える企画で、揚げ物をしながら完全に腰が引けている人を見て、そんなにこわいものかな?と思っていたんです。でも、自分がスキーをしている写真を見たら、すごく腰が引けていて。わたしにとってのスキーが、その人にとっての揚げ物なのだろうと反省しました。こわいものはこわいんだなぁって。」
かつおのたたきフライは、内側にレアな部分を残しながら仕上げるのがポイント。なるべく手早く揚げていきます。
「すぐにあげちゃう感じでOKです!」と関さん。
「熱いうちに切らないと、余熱でどんどん火が通っちゃうので、急いで切ります。」
時間との勝負を経て……
美しいかつおのたたきフライができあがりました。
かつおの新たな一面に遭遇する
さて実食。テーブルの上にフライを置いたとたん一気に雰囲気が華やぎました。揚げ物とソース2種。ごちそう感がとてもある。
このお皿が、晩ごはんに急に出てきたらめちゃくちゃうれしいな……。いや、晩じゃなくても、急じゃなくてもうれしいけど。
関さん曰く「今日のは、にんにくが強すぎなくて、すごくいい具合にできている!」というザジキソースを、かつおが隠れるくらい盛っていただきます。
わ。きゅうりの香りがさわやか!さっぱりしているけど、味の輪郭がしっかりしている。クリーミーな見た目だけど、油は少なめだから、思う存分かけられるのもうれしい。
というかかつお、君、こんな食べ方もあったんだね……。衝撃でした。ポン酢やしょうがでさっぱり食べる食べものと認識していたけれど、カリッという食感も似合うしクリーミーなソースも合うんですね。
一方、ニラ香味だれはというと、薬味の薬味たる風味が口のなかで元気いっぱいに広がって、目が覚めるような味わい。それぞれがアイデンティティを主張しあった結果、高め合い始めちゃっている感じ。
ニラを生で食べるのは初めてだったのですが、薬味として食べるの、ニラの本領発揮!……っていう感じで最高です。あらゆる食べものにばっしゃばしゃかけたくなってきました。
「餃子にかけてもいいし、なんにでもいけます!」と関さん。
たしかにこれは、唐揚げにのせてもおいしいだろうし、刻んだサラダチキンに混ぜてもおいしそう。みるみる夢が広がっていきます。自分さえ作る気になれば即叶う夢。これはもう、叶えない手はないってやつですね。
新生活も始まり、過ごしやすい陽気になってきたものの、外の空気を思い切り吸えない日々が続いているいま。せめて食卓だけでも、春をたっぷり取り込んで、楽しい気持ちになりたい。そんな気分のときにぴったりのレシピだと思うので、ぜひ試してみてほしいです。ソースは作り置きしておいて、いろんなものにかけまくるのが吉。