春餅(チュンピン)とうまうま
芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。2月は「春餅(チュンピン)とうまうま」です。うまうまとは、カリッと揚げ焼きした豚バラ肉に赤味噌ダレをたっぷりと和えた関家直伝の料理。そんなうまうまを、薄く伸ばして焼いた小麦粉料理・春餅で包んで食べる今回のレシピは、思わず誰かと分かち合いたくなる一品です。
材料(2人前)
作り方
- 1. 薄力粉と強力粉を合わせ、熱湯を注いで菜箸で混ぜ、なめらかになるまで手でこねる。ラップをして20分ほどおく。
- 2. 1に打ち粉をして棒状にし、10等分にして丸める。片面にごま油をつけて2つずつ重ねて麺棒でのばす。
- 3. テフロンのフライパンで2を焼き、1枚ずつはがしておく。
- 4. 豚肉を幅1cm×長さ3〜4cmに切り、(a)を混ぜて10分ほどおく。
- 5. 4に片栗粉をまぶし、少し多めの油で揚げ焼きにする。
- 6. フライパンにごま油を入れて、(b)を入れて混ぜ合わせ、5を加えてからめる。
- 7. 春餅と白髪ねぎと一緒に盛り、巻いていただく。
作り方が独特な中国のクレープ「春餅」
春餅(チュンピン)とは、おおまかにいうならば、甘くないクレープのようなもの。中国北部に古くから伝わる料理です。
生地作りに使うのは強力粉と薄力粉。そこに熱湯をざざっと注ぎます。
菜箸で手早く混ぜ……
お湯がまんべんなく行き渡り、温度が下がってきたら、今度は手を使ってひとつにまとめていきます。
「春餅は、以前『龍にまつわるものを作る』というお題をもらってレシピを考えたのをきっかけに作るようになりました」と関さん。
なぜ春餅が龍に関連するかというと、中国で旧暦2月2日に開催される伝統行事「龍擡頭(りゅうたいとう)」の際に食べられている料理だから。
「龍擡頭の日には、龍にまつわるものを食べて豊作を願うんですけど、春餅は龍のうろこに似ているんだそうです。」
……龍のうろこ!
話しているうちに、生地がコロンとひとまとまりになりました。
「春餅は、例えばパンやピザほど発酵に左右されないので、そんなに神経質にならなくても作れるのがいいところです。」
ラップをしたら20分ほど寝かせます。
関家直伝の赤味噌&豚バラ料理「うまうま」
続いてはうまうまを作っていきます。が、そもそもうまうまとは一体……?
「正式名称はわからないんです」と関さん。
「子どもの頃、家族でこの料理を食べていたときに、4つ下の弟が『うまうま』と発したことから、関家では『うまうま』と呼ばれるようになりました。」
以来ずっとうまうまと呼び続けているというこの料理。まずは豚バラ肉を刻んでいきます。
縦3〜4cm、横1cmくらいになるようにカット。だいたい一口大くらいの大きさです。
切り終わったらボウルなどの容器に入れ、お酒、おろし生姜と……
青ねぎを投入。関さんは素手でねぎをちぎって入れていました。豪快!
お肉に馴染ませたら10分ほど置いておきます。
白髪ねぎはフォークで作ると簡単
「待っている間に白髪ねぎを作ろうかな。白髪ねぎはフォークで作ると簡単なんですよ」と関さん。
ねぎの白い部分にフォークを刺して一方向に引く。これを何度か繰り返すと、白髪ねぎがするする出来上がります。
「(写真の状態よりも)もう少し長い状態のねぎの方がやりやすいです。」
「私、あんまり白髪ねぎを作るのが得意じゃないんですけど、こうやれば……『っぽく』なる(笑)。すごく楽ちんなんです。」
出来上がった白髪ねぎは、しばし水にさらしておきます。
豚肉は揚げ焼きしてカリカリに
続いてはうまうまに絡めるタレの準備。赤味噌に水、砂糖、おろし生姜、鶏ガラスープを加え、ダマっぽさがなくなるまでしっかり混ぜておきます。
「赤味噌って甜麺醤のようにも使えるんですよね。」
混ぜ終えたらフライパンを用意。多めに油を引き、先ほどの豚肉に片栗粉をまぶして入れていきます。火は中火くらい。表面がカリカリとなるように、揚げ焼きをする感じで。中まで火が通り、焼き色がしっかり付くまで見守ります。
おお、良い色合いになってきた……!
いったん豚肉をフライパンから出し、キッチンペーパーで油を拭きとります。そこにごま油を入れ、さきほどの赤味噌のタレと絡めたあと、再び豚肉を投入し……
タレと豚肉が良い塩梅に絡まったところで取り出せば、うまうまの完成です。
春餅は2枚同時に焼く
包むものが出そろったところで、寝かせていた春餅の生地を起こし、焼いていきます。
まずは生地を棒状に伸ばし、包丁で10等分して……
コロコロと丸めます。
「ここからが、うまくできるか……。まず、丸めた生地の下半分にごま油をつけるんです。」
「で、こう。」
ごま油を付けた箇所を接点にして、生地と生地とを重ねます。
そのまま麺棒で伸ばし……
「2枚一緒に伸ばすんです。かたちは気にしなくても大丈夫。もちろんきれいに作ってもいいんだけど(笑)。」
……といいつつ伸ばした生地を見つめ、「これはちょっと不思議なかたちですね」と自己評価をし始める関さん。
「伸ばしたら、2枚一緒にフライパンで焼いていきます。」
「焼くと剥がれる……はずなんです。剥がれる……予定……なんですけど、ちょっと弱気です……。」
「べろんとはがれると気持ちがいいんですよね。」
ささやかに焼き目がついたあたりでフライパンから出し……
ぺろん。
「剥がれました!」
「焼いた面はパリッとしているんですけど、内側はごま油の効果でしっとりしてるんです。剥がれにくかったら、少し冷めるまでちょっと置いておくといいかもしれません。」
ちなみに春餅を先に作っておく場合には、食卓に並べる直前まで濡れたキッチンペーパーをかませてラップしておくと、乾燥が防げるのでおすすめです。
包むと特別な気持ちになる
さて実食。うまうまと白髪ねぎを春餅に包んでいただきます。
おお。豚肉と赤味噌の濃厚なうまみが重なり合って、口の中が一気に贅沢な雰囲気に包まれる……といいますか。どろりとした赤味噌ダレのなかから時折顔を見せる、豚肉のカリッとした食感もたまらない。うま味がぐいぐい畳み掛けてくる。これは確かに「うまうま」だ……!
そして春餅は主張しすぎず、だけど脇役になりすぎずの塩梅で、うまうまをふわっと包んでくれていて良い感じ。
「パリッとした面としっとりとした面、どちらを外側にするかはお好みで決めていただければ」と関さん。
うまうま、そのままでもおいしいのだけど、包むことで尚更に特別感が盛り上がって、なんでもない日でも特別なお祝いをしている気分になりそうな食べ物だな……。
「うん。いつものうまうまです。」
関家直伝の味がしっかり再現できたようすで満足そうな関さん。
包むものと包まれるもの。両方を一から手作りするのにも関わらず、とっても簡単に作れるのでぜひ試してみてほしいです。