育児 × 介護 = “戦略的”二世帯同居!への道 Step18:カオスな二世帯同時引っ越し~前編~
義理の両親との同居を決意し、曲者物件ぞろいの中古一戸建て探し、長い引っ越し準備期間を経て、いよいよ引っ越しの日が近づく甘木一家。
今までさんざん予想外の事態に振り回され、せめて引っ越しの日くらいは心穏やかに…という私の願いは聞き届けられるのか?答えはもちろんNOです!
「預ける?どうする?乳児と引っ越し」
紆余曲折あった二世帯同居の準備期間も、気づけばあと2週間あまり。いよいよ迫るその日の準備に、私たち若夫婦も義父母もてんやわんやでした。
特に、先日2歳を迎えたばかりの息子がいる我が家の引っ越し準備は混迷を極めていました。当時専業主婦だった私には、引っ越しの荷造りのために息子を預けることのできる場所がありません。今までならばこんな時には義父母に息子をお願いしていたのですが、あいにく今回は、義父母のマンションと私たちのアパートから、新居への二軒同日引っ越し。荷造りで忙しいのは義父母も同じなので、子守をお願いするわけにもいきません。
仕方なく、息子のお気に入りの機関車トー〇スのDVDを延々と見せながら、なんとか片手間に荷造りを進めました。
引っ越しを機に処分する家具や小物もたくさんありました。しかし、2歳の息子は家の中の様子が変わっていくことに幼心に不安を抱いているのか、私が不用品をゴミ袋に入れるのを見ると「ダメー!!」と泣いて嫌がり、ゴミ袋からものを取り出そうと抵抗するのです。
折しも悪名高いイヤイヤ期を迎えつつある息子です。この調子では引っ越し当日、生まれ育ったアパートの部屋から見慣れた家具がどんどんトラックに積み込まれていくのを見たら、どんなパニックを起こすことか…
息子には、こんど新しいお家におじいちゃんとおばあちゃんと一緒に住むんだよ、と折に触れ言い聞かせてはいましたが、2歳になったばかりの子がどれだけ理解できているか、大いに不安が残ります。
それならばいっそ、引っ越しの作業中は息子は託児所に預け、引っ越し作業の済んだ新しい家に連れて行った方が、目の前からお気に入りの家具やおもちゃが無くなる不安を感じさせずに済んでいいかもしれない。私自身も、当日は息子がいない方が引っ越し作業に集中できます。
託児料金は決して安くはありませんが、息子の心の平穏と、穏やかでスムーズな引っ越しのための必要経費だ。そう自らに言い聞かせ、息子を初めて他人に預けることを決意したのです。
引っ越しの日は迫っています。慌てて、乳児の一時利用のできる託児所を探しはじめました。幸い、近くの大型ショッピングモールに併設の保育施設が、一時預かりも受け付けていました。家族と長時間離れた経験のない息子を、いきなり知らない場所に半日も預けるのも不安だったため、まずは慣らし保育として数時間利用してみることにしました。
息子を預けている間の数時間、何をするでもなくショッピングモールの中をぶらつきながら、奇妙な解放感と、こっそり息子の様子を見に行きたい気持ちの両方がせめぎあっていました。
今頃は知らない大人や子供に囲まれて、不安で泣いているかもしれない…という心配と、トイレに行くのにも私のあとをついてまわり、そのくせ外出中など近くにいてほしい時に限って全速力であらぬ方向に駆け出す息子を必死で追い掛け回す必要がなく、ゆっくりと買い物ができる自由。
少しの後ろめたさを感じながらも、久しぶりにゆっくりとカフェでお茶を飲んで、束の間の自由を満喫しました。
そうして時間はあっという間に過ぎ、息子のお迎えの時間です。泣き疲れているかな、それとも私に置いて行かれて怒っているかな、数時間ずっと泣きどおしだったりしたらどうしよう…
不安でいっぱいの私の目に入ったのは、ご機嫌な様子で遊びに熱中し、母の姿が目に入っても、目をそらして再び手にしていた電車のオモチャで遊び始める息子の姿でした。
保育士さんに離れていた間の様子を聞くと、「一度も泣かずに、すんなり遊び始めましたよ!おやつも全部食べて、他のお子さんとも少しケンカしましたが、仲良く一緒に遊びました!」とのこと。
肩透かしをくらいつつホッとする気持ちと、少しくらい母を恋しがってくれてもいいんじゃないの…という微妙な悔しさを抱えつつ、とにかく預けるのに心配はいらなそうだ、と、引っ越し当日の託児の予約をして家路につきました。
「来ないトラック、進まぬ作業」
そんなこんなで、いよいよ引っ越しの当日を迎えました。
義父母が勝手に、相場よりもずっと高い料金で契約してしまった引っ越し業者ですが(第16話 参照)、お世話になると決めたからには信頼してお任せするしかありません。
当日はまず、朝早くから業者のトラックと作業員の皆さんが義父母のマンションに向かい、荷物を積み込んで新居となる一戸建てへ運び込みます。それから昼過ぎに、新居からほど近い私たちのアパートへやってきて荷物を積み込み、再び新居へと向かう、という段取りです。
全ての作業は16時には終了予定とのことで、息子の託児はお昼前から17時としました。もし作業が遅れて少しずれこんでも、私か旦那のどちらかが迎えに行けば済むことです。
当日は、最後まで仕舞えなかった子供用品などの荷造りに追われながら息子を預けに行き、お世話になったアパートの部屋の最後の掃除をしながら、引っ越しトラックがやってくるのを待ちました。
しかし、どうも様子がおかしいのです。
正午過ぎには来ると言っていたはずのトラックと作業員が、待てど暮らせど現れません。13時を過ぎても連絡がないので、道路が渋滞しているのかと義父母の携帯に電話をかけてみると、予想外の返事が返ってきました。
「何だか予想より荷物が多いとかで、まだまだ時間がかかりそうなの」と。
…ええ?業者の方、見積もりに来ましたよね?私たちのアパートは実際に見に来ることもなく安請け合いしたけど、義父母のマンションは全部屋ちゃんと見たんですよね?
頭にクエスチョンマークが大量に浮かびますが、見積もりに来た社員と作業員は別のかた。ここで怒っても仕方ありません。
とにかくなるべく急いでください、と伝えてもらい電話を切ると、段ボール箱だらけの部屋で、私たち夫婦は顔を見合わせました。
今頃は作業員の方への指示でてんやわんやのはずなのに、現状、何一つやる事がありません。
ぼんやりとペットボトルのお茶など飲みながら、待つこと更に数時間。やっと引っ越しトラックがやって来たのは、一般的には夕方と呼ばれる時間帯でした。
私は、新居のどの部屋にどの荷物を運び込めばいいのか分かりやすいよう、事前に新居のすべての部屋に番号を振り、家具や段ボール箱のすべてに、運び込むべき部屋番号を大きく記載してありました。その仕組みについて説明し、部屋番号を書いた新居の間取り図を作業員の方々に渡すと、もう息子のお迎えに行く時間です。
(…息子、預けた意味無かったじゃん‼)
日頃あまり怒りをあらわにすることのない私と旦那ですが、さすがにこの段取りの悪さには心底怒っていました。
しかし、朝早くから肉体労働で汗だくになりながら働いてくれている、アルバイトと思われる作業員のお兄さんたちを見ると、見積もりが甘かったのはこの方たちのせいじゃないもんな…と、気持ちを収めるよりほかありません。
やり場のない怒りをふつふつとたぎらせながら、夕暮れの街を息子のお迎えに向かう私でした。
ようやくやって来たトラック。しかし時は夕暮れ、我が家の引っ越しはまだ始まったばかり…!
次回、「カオスな二世帯同時引っ越し・後編」どうぞお楽しみに…!