育児 × 介護 = “戦略的”二世帯同居!への道 Step16: 引っ越し見積もり狂想曲

2018/10/03 UPDATE

中古の一戸建てを購入し、義父母との同居を決めた甘木一家。紛糾した新居のリフォーム問題にも何とか結論が出て、いよいよ具体的な引っ越しの準備にかかることに。
今までさんざん紆余曲折あった二世帯の終の棲家さがし、ようやくゴールが見えてきたものの、やはりスムーズにいくはずもなく…?

見積もれ!二世帯分の引っ越し

義父母との見解の相違でさんざんモメた新居のリフォーム問題も、なんとか二世帯がお互い譲歩できるラインを設定し、業者へ発注することができました。家の売主が退去する日が決まり、それに伴いリフォームの工事期間も決定。いよいよ具体的に新居への引っ越しに向けた準備が始まります。まずは何をおいても引っ越し業者を探さなくてはなりません。
今回の引っ越しは、新居(中古一戸建て)へ、義父母(同一県内のマンション)と、私たち息子家族(同じく県内のアパート)の二世帯が入居するというやや特殊な形。
まずは引っ越しの見積もりを依頼しなくてはなりませんが、当時はまだ引っ越し費用の一括見積サイトのような便利なものはなく、引っ越し業者のホームページを一件ずつ検索しては個別に問い合わせをする必要がありました。
「インターネットってよくわからないし、見積もりの依頼はお任せするわ」と義父母から一任された私は、信頼できる業者に、少しでもお得な価格で依頼してみせる…!と意欲に燃えていました。

業者に片っ端から電話で相談したところ、同じ日に二世帯分の引っ越しを任せて貰えれば、スタッフやトラックの手配も一日分で済むのでその方がお安いですよ、というところが数社ありました。
確かに、二世帯分の家財道具を一軒の家に運び込む作業はなかなか複雑です。同じ日に同じスタッフに作業をしてもらった方が、家具の移動や配置などもスムーズで、トラブルも少なかろうと思われます。
ホームページや口コミサイトを、目を皿のようにして見比べた結果、4社ほどに現地に訪問見積もりに来てもらうよう依頼しました。やや特殊なタイプの引っ越しでもあり、見積もりの金額にはかなり差が出ることも考えられます。とにかく安ければ良いというわけでもなく、まずは4社分の見積もり金額とサービスを吟味し、そこから値引きなどの交渉をしようという考えでした。
4社とも、まずは義父母のマンションへ見積もりに来てもらうよう依頼し、義父母にもその旨を伝えます。義母が「私もお父さんも、値引き交渉とかあんまり好きじゃないわ~、恥ずかしくてやりたくないの」と言うので、そこは私がやりますので、とにかく業者さんへの立ち合いだけよろしくお願いします!と伝え、1社目の見積もりの日を迎えました。
当日、私は予定があり、義父母のマンションで見積もりに立ち会うことはできませんでした。それがあんな恐ろしい結果を生み出すことになるとは、そのときの私は夢にも思っていなかったのです…

まさかの事態

忘れもしないその日、携帯の着信音が鳴った時。私は自宅アパートで夕飯の支度をしていました。
義父母宅の電話番号が表示され、ああ、1社目の見積もりの結果を教えてくれるのかな…と通話ボタンを押した私の耳に飛び込んできたのは、いつものように明るい義母の声でした。

「あっサカヱさん?さっき引っ越し業者の方が見積もりにいらしたんだけど、決めちゃったわよ」

…はい?

「大手の会社だし、間違いないと思って!」

…えっ??いえ、まだ私たちのアパートも見に来てないし、明日以降あと3社の見積もりも残ってますよね??

「あなた達のアパートの間取りだけ説明したら、見に行かなくても値段出せるっていうし、感じの良い方だったから決めちゃったのよ」

…(言いたいことは山ほどあるがとにかく胸に収めて)…それで、いくらですか?

「二世帯分で○○万円ですって」

(……高っっっっけぇえええええよ!!何がどうしたらその金額になるんだよ!!!という心の叫びを必死で押し殺して)…高くないですか。引っ越しシーズンでもないし、その金額だと、二世帯別々に引っ越した場合の概算金額の合計よりずっと高いんですが…荷造りとか荷解きも業者さんがやってくれるプランですか?

「ううん、荷造りも荷解きも自分たちでやるのよ。でも段ボール箱たくさん付けてくれるんですって。とにかく決めちゃってトラックの確保もしてもらったから、ほかの業者さんに断っておいてよ」

虚脱感とともに電話を切った時、鍋の中でグツグツとみそ汁が煮詰まっていたことを妙にはっきり覚えています。

なぜ…どうして…私の今までの下調べの努力はいったい…引っ越し費用は折半にすることになってるけど、半額でもびっくりするくらい高い…絶対そんな金額払いたくない…
やるせない思いを吐き出そうにも、旦那はその日も深夜まで仕事です。
眠れぬ夜に、幼い息子の胸をトントン叩きながら、私の胸の内は台風のように荒れ狂っていました。

割り切れ!同居嫁!

義母からの衝撃の電話を受けた次の日、私は息子を連れ、自らの荒れる心をなだめながら義父母宅へと向かいました。
とにかく喧嘩腰にならないよう、怒りを押し殺し冷静に…と自分に言い聞かせながら義父母宅に着くと、予想はしていましたが、全く悪びれた様子のない義母が迎えてくれました。

見積もりの際の話を聞いても、「感じのいい人だった」「すぐに決めてくれたら一万円値引きすると言われた(そもそもの金額が冗談のように高いので焼け石に水)」と、まったく要領を得ません。提示されたプランも特にめぼしいサービスもなく、なぜこんなに高い金額を提示されたのかという疑問は一向に解けません。
「とにかくこの金額にはどうしても納得いかないので、今からでも解約できませんか」
「せめてもう一度担当営業さんと話がしたい、私たちのアパートの現地も見ずに金額を出されたのはどうしても納得できないです」
「でも今更、その金額でいいと言ったものを…恥ずかしいわよ」
そう言う義母にあくまで食い下がり、粘り強く切々と訴え続けると、明らかにこの件について考えるのが面倒臭くなったらしい義母の口から予想外の一言が。
「じゃあいいわよ、私たちが全額出すわよ」


……
………
義父母が引っ越し費用全額出す…

じゃあ、まあいいか…

自宅の購入からリフォームに至るまで、私たち若夫婦は、たとえ義父母と収入や貯蓄に差があったとしても、なるべく平等に、かかる費用は折半にしようと心がけ続けてきました。

新しく始まるこれからの生活に、なるべくなら金銭的な意味で負い目に感じたくなかったからです。口を出すなら金も出せ、とは親戚づきあいなどでよく言われることですが、逆を言えば金を出したら口も出されるのが当然といえば当然。そのため、金銭的にはできる限り平等でいたかったのです。
リフォームの話し合いなど、どんどん設備のグレードを上げようとする義父母にあくまで抗ったのは記憶に新しいところです。
しかし積もり積もったその闘いの疲労は、そろそろ限界に達しようとしていました。そこにこの引っ越し見積もり騒動。
なんか疲れたな…
お金出してくれるなら、もうそれでいいか…
張りつめていた私の心がぽっきり折れ、それとともにこれから始まる同居嫁としての生活に、同じように妥協する場面がたびたび現れるだろうな…という予感が兆した瞬間でした。


世代も収入も性格もまるで違う二世帯が共に住む難しさ。
妥協もすれ違いもありますが、メリットとデメリットを天秤にかけて、メリットの方が大きいと確信してここまで進んできたのです。
親世帯側、子世帯側、どちらかの意向だけを押し通すことなく、また、時には思い切りしなやかに妥協していかなければ…
身をもって感じたこの引っ越し見積もり騒動でした。

つかさちずる

イラスト・つかさちずる

娘との日々をブログ「むすメモ!」に綴ったりLINEスタンプを作ったりしている絵描き。
回転寿司とゲームをこよなく愛するアラサー。
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