育児 × 介護 = “戦略的”二世帯同居!への道 Step15:リハウス、リフォーム、リ生活
数か月後に迫った、新居(といっても中古の一戸建て)への入居、そして二世帯同居のスタート。新居に入りきらない二世帯分の家財道具、親世帯と子世帯のどちらが譲るか?義父母の長年の思い出の詰まった(でも絶対に新居では使わない)品物の処分をどうするか?
引っ越しが迫るにつれ、つぎつぎ無限に湧き上がる問題たち。今回は中古住宅ならではの、入居前リフォームについてのお話です!
車庫の屋根は必要か…?激化する世代間駆け引き
入居する前に新居のリフォームをする。
それは、私たちの新居となる中古一戸建ての購入を決めてから、義父母と私たち夫婦の間ではなかば当然のように決まっていたことでした。
しかし、いざ具体的なリフォーム案の相談となると、親世帯である義父母と、子世帯である私たち夫婦の間には意見に大きな溝があることが判明したのです。
11話でも軽く触れましたが、私たちが購入した家は、築年数は約10年。建物自体も設備もまだまだ使える状態で、だからリフォームといってもせいぜい壁紙を張り替えるくらい…そう思っていたのは私たち子世帯だけ。
親世帯である義父母に希望を聞くと、出るわ出るわ。風呂場とキッチンの全面リフォームがしたい。駐車場が野ざらしなので屋根をつけたい。隣家との境目の塀を建て替えたい。庭のウッドデッキが高くて危ないので全面に壁を作りたい。部屋を仕切るふすまが和風なので洋風に作り変えたい、リビングの照明は今のマンションで使っている古くて重いシャンデリアを持ってきて付けたい(古いものでシーリングライトではなく、取り付けには電気工事が必要)などなど…挙げればきりがありません。まさかの認識の違いに、若夫婦である私たちが真っ青になったのは言うまでもありません。
特に風呂場とキッチンは、全面リフォームとなると、今回の住宅取得予算を丸ごと見直さなければならないほどの金額がかかります。
「まだ十分使えますよ!10年しか使ってないのに取り換えるのはもったいなさすぎます!何より予算がありません!」半ば涙目の必死の説得により、この二点については早期に諦めて貰うことができました。
それ以外の要望についてはひとまずリフォーム会社に相談して見積もりをお願いし、その結果次第で改めて家族で相談しましょう…と、親世帯と子世帯の闘いは一時休戦になったのです。
しかし、平和な時間はそうながくは続きません。そう、ついにリフォームの見積書が届いたのです。
壁紙の張り替えと照明の取り付け、ふすまなど建具のリフォームは、予想通りの金額でした。問題はその他の部分でした。
塀の建て替えやウッドデッキの改修費用は十数万円に達しており、決して気軽にお願いできる金額ではありませんでした。極めつけは駐車場の屋根の新設。
目を疑うような金額が見積書に記載されていたのです。金額を見るや否や貧血で倒れるかと思いました。
却下だ却下!こんなにかかるなら当然、全部却下ですよね!!
勢いよく義父母に見積書を見せたものの、二人は全くひるむ様子を見せません。リフォーム費用は義父と旦那とで折半の約束です。かたやお堅い職業を定年まで勤めあげ、更に再就職してそこもリタイアし、年金をもらって悠々自適の義父。もう一方の旦那は幼子とまだ働けない妻を抱え、ブラック企業で身を粉にして働く、決して高給取りとは言えないサラリーマン。両家の金銭感覚には大いに隔たりがあったのです。
そもそも駐車場に屋根が必要不可欠だとは、私にはどうしても思えません。しかも新居の駐車場にとめられるのは一台分で、同居が始まれば義父と旦那の車、合計二台分の駐車場が必要となります。しかし、なぜかろくな話し合いもなく、家の前の駐車場にとめるのは義父の車で、私たちが日常使う車は歩いて数分のところにある月極め駐車場(もちろん野ざらし)を借りるのだと、暗黙の了解ができているのです。
リフォームを巡っての話し合いは難航しましたが、最終的に塀やウッドデッキの改修を諦める代わりに、どうしても駐車場の屋根だけは付けたい、という義父母の希望を通すことになりました。
しぶしぶその希望を受け入れたものの、私はまだどうしても納得がいきません。そもそも見積もりでお願いした屋根のグレードが高すぎます。モノは良いのでしょうが、積雪地帯でもないのにそんなに頑丈な屋根が必要だとは思えません。義父の車だって特に高級車でもなく新車というわけでもないのだから、もっと簡易的な屋根でもいいのでは…?昔ながらのビニールシートを張ったテントみたいな車庫は…?などと悪あがきをしましたがまったく聞く耳を持ってもらえませんでした。
余談ですが、いざ同居を始めてみると、義父が車を使うのは、たまのゴルフや買い物など月に数回程度。私たち子世帯の車は息子の習い事の送り迎えや買い物などほとんど毎日使うので、離れた駐車場から重い食料品を運んだり、息子をなだめすかして歩かせたりしていました。あるいは家の前まで車をつけて荷物を降ろし、また駐車場へ車を戻しに行く…などという非効率極まりない行為を、多いときは日に何度も繰り返すことになります。しかもそのたびに自宅前の、屋根付きの駐車場で悠然ととまっている義父の車の脇を通りながら…年月を重ねるにつれ、私の心がどのようにして荒んでいったか、読者の皆様にご想像いただければせめてもの慰めとなります。
住み替える、と、移り住む
リフォームについての義父母との話し合いを思い返して、気づいたことがあります。それは、義父母はこれから移り住む新居を、自分たちが今まで住んでいたマンションの設備とそっくり同じようにしようとしていたのだ、ということです。
マンションの立体駐車場には屋根があるから、新居の駐車場にも屋根が必要。
お風呂の湯舟がマンションのものより少し狭いから、同じように足を完全に延ばせるようにしたい。
マンションのキッチンは人工大理石張りで便利だから、新居でも同じものに張り替えたい。
などなど…ほかにも自分たちが使っていた家具を新居でもかたくなに使おうとしたり、とにかく以前の住まいと同じように暮らしたい!という願望が、意識しているのか無意識なのか、二人とも非常に強いように感じられました。
一方で私たち若夫婦は、住んでいるアパートとは何もかも違う新居にむしろわくわくしていました。設備のグレードは当然新居のほうが高いし、多少使い勝手が違っても、義父母だってすぐに慣れるだろうと思っていたのです。
しかしそれは大きな間違いだと気づきました。
年齢の差かもしれないし、単に性格の違いかもしれません。あるいは、それまで家財に費やしてきた金額や手間の違いかもしれません。「これまでの暮らし」というものが、私たち若夫婦にとっては軽く脱ぎ捨ててしまえるものであるのに対し、義父母にとっては新居に移っても守り続けるべき大切な自分たちのスタイルなのです。
私たちは新居に「住み替える」のだと思っていました。古い暮らしを捨て、新しい環境、新しい住まいの形に、すっぽりと自分たちが収まるつもりでした。
しかし義父母は「移り住む」意識でいたのです。自分たちの今までの生活を、なるべくそっくりそのまま新居に移す。
積み重ねた数十年という人生の厚みの違いが、こういう形で現れるのか、とはっとしました。
この意識の違いが、同居に至るまでのトラブルの原因のほとんどだったのだ、と今では思います。
同居を始める当時、このことに気づいて義父母への働きかけ方を工夫していれば、もう少し話し合いをスムーズに進められたかもしれないな…いや、やっぱり義父母は譲らなかっただろうな…と、心は千々に乱れる同居11年目の夏です。
紆余曲折ありながらも、何とかお互い折り合いをつけたリフォーム問題。
次回、いよいよ同居へのカウントダウン、二世帯の引っ越しが動き出します…!お楽しみに!