ケシミニャンの独り言〜天国へ行った祖父【後編】〜
ケシミニャンです!
前回からの続きです、よろしくお願いします!
おじいちゃんありがとう
こうして思い返してみると、おじいちゃんとの思い出がいくつも、いくつも浮かんでくる。
ケシミニャンが小さかったとき、背の高いおじいちゃんが、かがんでケシミニャンの顔を覗き込んだときの笑顔。
小さかったときは、どうしておじいちゃんがそんなに笑顔なのか、よく分からなかった。
けれど、本当に孫のケシミニャンが可愛かったんだね。
それに、お店に遊びに行くと、いつもくれたラムネ。
きっとおじいちゃんは、ケシミニャンが嬉しいと、幸せだったんだよね。
そして、いつだったか夏祭りの帰り、おじいちゃんの広い背中におんぶされたこと…。
いっぱいいっぱい、思い出す…。
おじいちゃん。
本当に、大好きだったよ。
そして、おじいちゃん、こんな孫でごめんね。
ケシミニャン、転職しまくってたから、帰省するたびに違う職業だったよね。
おじいちゃん、すごく混乱したと思う。
自分の孫が何やってるか、よく分からなかったと思う。
ケシミニャン、もっとちゃんと真面目に生きていくべきだったって、反省してる…。
それに、ケシミニャンの花嫁姿も見せられなかったね…。
でも。
きっとおじいちゃんに、そんなケシミニャンの気持ちを話したら、
「そんなことはどっちでもいいよ」、なんて言ってくれるかな…?
きっと「ケシミニャンが元気で幸せだったら、それでいいよ」って、心から笑ってくれるよね。
おじいちゃんが生きているうちに、おじいちゃんに何もしてあげられなかった。
それに、おじいちゃんやおばあちゃんが、どんな人間で、どんな人生を歩んできたか、もっと知りたかった。
もっと聞きたかった。
聞いておけばよかった。
もしも、ケシミニャンが結婚して子供が生まれたら、優しかったおじいちゃんのこと、いっぱい、いっぱい話したいな。
おじいちゃんの優しさ
祖父母は(祖父母の馴れ初めに関しては前編参照)、小さな商店を営みながら、3人の子供を育てた。
祖父は、飲んだくれの父親や、継母に甘えられない家庭で育った。
だから、自分の家族ができたこと。
守るべきもの、自分が心から愛し、信じられる人たちができたこと。
そのことが、とても幸せだったようだ。
商店を経営しながら、3人の子供を育てることはとても大変だったと思う。
祖父も祖母も、お店が忙しくて、あまり子供たちを構ってあげられなかったと言っていた。
ケシミニャンの母が子供の頃の話である。
友達が持っているぬいぐるみを、自分も欲しくなった。
しかし、ケシミニャンの母は、忙しい祖父母たちの姿を見ていたから、なかなか言い出せなかった。
母は祖父母のことを考えて、ずっと我慢していた。
祖父はある日、母が友達の持っているぬいぐるみを、じっと涙目で見つめていたことに気が付いた。
祖父「気づかなくってごめんな。すぐに買ってやるからなぁ。もうそんな思いしなくて大丈夫だぞぉ」
祖父は、自分が子供の頃に寂しい思いをしたから、子供たちが寂しくないか、惨めな気持ちになってはいないかと、いつも気を配る人だったようだ。
祖父自身が寂しい生い立ちなのに、いつも自分より誰かを思う優しさや、誰かに分け与えられる気持ちを持っていたのだと思うと、何だか胸が温かくなる。
きっと、分け与えるたびに、おじいちゃんは幸せな気持ちになったり、満たされた気持ちになっていたんだと、今のケシミニャンには分かる気がする。
最後の別れ
次の日の葬儀。
式が終わり、納棺のとき。
祖父の生前のままの姿を見られるのは、これが最後だ。
そう思うと、涙がどんどん溢れ出てきた。
ハンカチは、ぐしゃぐしゃに濡れてしまった。
涙目で、棺の中の祖父の顔を改めて見る。
昨日よりも、少し頬がこけていた。
葬儀場の人が、棺の蓋を閉めようとした、その時―。
祖母が、手でそれを止めた。
母「おかあさん…」
そうだよね、おばあちゃん。
お別れしたくないよね…。
祖母のその姿に、親族たちの涙がまた溢れた。
おばあちゃん、おばあちゃんの気持ち、痛いほどわかるよ。
ケシミニャンだって、お別れ、したくないよ…。
祖母をなだめながら、火葬場へ行く小さなバスに乗り込んだ。
火葬場にて
祖父の火葬が終わるまで、親族たちで昼食をとる。
ケシミ「おっ、寿司じゃん。ビールないのビール」
母「絶対にトシオおじちゃん(むちゃくちゃ酒癖が悪い親戚)とアンタが飲むっていうと思ったから、絶対に頼まなかったわ」
チッ。
ケシミニャンが仕方なく、ノンアルビールでお寿司を食べていたところ…
親戚のオバチャン「ケシミちゃん!!!ま~久しぶりねぇ~~!!!!あんなに小さかったのに、すっかりお姉さんになっちゃったわね~~~!!!!!!」
絵に描いたようなことしか言わない「ザ・親戚のオバチャン」の登場である。
ケシミ「あっ、ご無沙汰してますぅ…」
親戚のオバチャン「ケシミちゃん、まだ結婚してないんだって~?」
ウッ。
出た。
法事あるある「デリカシーなさすぎオバチャン尋問」。
マジでアラサーになると、こういう風に聞かれることが多くなるな…。
ケシミ「あはははは~そうなんですよぉ~どっかにイイ男、いないッスかね~ハハハ…」
面倒くさすぎて、テキトーに答えるケシミニャン。
親戚のオバチャン「イイ男…?いるよぉ…?アタシ(76)の同級生なんだけどねぇ……紹介する?ガッハッハッハ」
…。
……。
祖父の火葬が終わり、親族たちで骨を拾うこととなった。
白い骨になった祖父は、遺体のときよりも何故か存在感が増して見えた。
骨になった祖父と向き合う。
何故か、不思議と落ち着いた気持ちになっている。
祖父の骨はかなり大きく、そして白く残っている。
ケシミニャンは、父と2人で骨を拾って骨壺に納めた。
骨と骨がぶつかって、ガサッと音が鳴る
今、この瞬間が、その人の人生や親族の歴史の一ページなんだ―
そんな、しんみりした気持ちになった。
人には、順番があると思う。
いつか将来、こんな風に祖母や、そして両親も送ることになるのだろう。
そして自分も、いつかはこんな風に死んでいくのだ。
ケシミニャンが死んだとき、こんな風に誰かケシミニャンのことを思い出してくれる人はいるのだろうか。
祖母の手
火葬場から、自宅に帰るまでの車の中。
式が終わった安堵感と、疲れた気持ちがあった。
祖母は、また記憶がぼんやりしているのか、小声でよくわからないことを呟いている。
ケシミニャンは、祖母の手をギュッと握った。
祖母も少し虚ろな表情で、ケシミニャンの手を握り返してくれた。
しわくちゃだけど、穏やかな温かい祖母の手。
祖父と商店を切り盛りして、子供を3人育てた、働き者の優しい「お母さん」の手。
祖母の手に刻まれたシワの数だけ、ケシミニャンの知らない、祖母の人生―
喜びや悲しみがあったのだろう。
祖母と一緒にいられる時間は、そう長くはない。
そして、もう、認知症の祖母からは、色々な話を聞くこともできない。
だから、今日つないだ祖母の手の温もりを、忘れないようにしたいと思う。
まぁ結局、色々な思いのなか、今日は祖父の弔いだからと、ちゃっかりプレミアムモ○ツを買い、結局飲んだくれました。
おじいちゃん、今はおじいちゃんのお店にあったラムネよりも、お酒の方が好きなケシミニャンになっちゃったけど…。
おじいちゃんみたいに、温かい人になれるように頑張るからね。
そんな思いが溢れた、祖父との別れでした。