ケシミニャンの独り言〜天国へ行った祖父【前編】〜
どうも!ケシミニャンです!
今回は、少し趣向(?)を変えて…。
昨年末に祖父が亡くなった話を、気持ちの整理も含めて書きたいと思います。
祖父の訃報
昨年の年末。
ケシミニャンは仕事納めし、実家に帰省する準備をしていた。
ケシミ「年末年始は浴びるように酒を飲むで!!!!!」
普段から浴びるように飲んでいるが、「年末年始」を言い訳にメチャメチャに酒を飲んでやると決めていた。
そのとき、スマホが鳴った。
母からの着信だった。
ケシミ「もしもし」
母「あっ、ケシミ?おじいちゃん…死んじゃった」
「おじいちゃん」というのは、ケシミニャンの母方の祖父のことである。
御年90歳。
特に大きな病気もなく、健康であった。
ケシミ「えっ…」
母「ケシミ…がんばろうね…」
母が何故「がんばろうね」と言ったのかは、よくわからない。
ケシミニャンの母にとって祖父は、大好きな大好きな父親だった。
その「がんばろうね」は、母が自分に言い聞かせた言葉だったのかもしれない。
祖父の死を聞いたとき、もちろんケシミニャンもショックだった。
しかし、まだ祖父が亡くなったという現実感がなく、どこか実感が湧かないのも確かだった。
年末年始休みの浮かれモードから一転。
ケシミニャンの帰省は、そのまま祖父の葬儀になってしまったのである。
帰省
実家は案外、普段と変わらない雰囲気だった。
父も母も、いつも通りに見えた。
久々の母の手料理。
家族で食卓を囲みながら、祖父が亡くなったときの状況(自宅で突然死だったこと)や、通夜の話などをした。
母が食器を片付けに、台所へ向かったそのとき…
母「うっ…うわああああああああん」
母が、その場に泣き崩れてしまったのだ。
こんなに取り乱した母を見たのは、生まれて初めてだった。
母は、祖父母宅が近くということもあり、週に何度も通って家事をしていた。
昨日まで元気に会話をしていた自分の父親が、高齢とはいえ、突然逝ってしまった。
母は祖父に、もっとああしてあげればよかった…と、後悔の言葉を叫んでいた。
父はずっと母に寄り添い、慰めていた。
二人がこんなに夫婦らしいところを見たのは、なんだか久しぶりだった。
それと同時に、母の悲しみをまざまざと目にして、祖父が亡くなってしまったという現実感が、確かに増してきたのであった。
最期の別れ
ケシミニャンが最後に祖父に会ったのはいつだろう。
確か2年前、帰省のお土産を渡したのが最後だと思う。
祖父は穏やかな性格で、誰にでも分け隔てなく優しかった。
そして、ケシミニャンをとても可愛がってくれて、本当に本当に大好きだった。
記憶の中の祖父は、いつも穏やかな温かい笑顔の姿ばかりである。
祖父は、祖母と二人暮らしだった。
祖父はほぼ健康だったが、祖母は少し認知症気味。
祖母の認知症は「まだら」といって、頭がハッキリするときと、ぼんやりするときがあるようだ。
そして、祖父の通夜。
車で祖母を迎えに行ったが、祖母は認知症のせいで、ケシミニャンが自分の孫だということがわからなかった。
ケシミニャンの思い出の中では、優しくて元気だった祖父母。
自分が幼かったときのその記憶が、祖父の死や祖母の老いという、目の前の現実に直面するたび、幻のように揺らいで遠くなるのを感じた。
祖母が、祖父の死を理解できているかはわからなかった。
祖父が亡くなったという現実が理解できないということ―。
そのことが、今の祖母にとって幸せなことなのか、不幸なことなのか。
ケシミニャンにはわからなかった。
祖母は、家族と車の中にいるのに、他人と相乗りしているかのようによそよそしい。
見慣れたはずの町内の景色を、初めて訪れた場所であるかのように見つめている。
斎場に着く。
年末で急だったので、本当に内々の親族葬で済ませることにした。
斎場に置かれた、祖父の棺に祖母を連れていく。
亡くなってからの祖父にここで初めて会う。
ありきたりな表現だけれど、本当に安らかな顔で、眠っているかのようだった。
すると、祖母の頭が少しハッキリしたのだろうか。
棺の中の祖父に、涙声で話しかけ始めた。
祖母「おとうさん…起きてよぉ」
祖父母は結婚して70年経つ。
70年も一緒ということは、お互いがなくてはならない存在というか、二人で一つみたいな感覚なのだろうか。
長年連れ添った伴侶を失ったときの気持ちは、まだケシミニャンにはよくわからないけれど…。
自分の半身がもぎ取られるぐらい、痛くて悲しくて、辛いんじゃないのだろうか。
凄まじい喪失感なのではないだろうか。
祖母は、どんな気持ちで祖父の遺体に「起きてよぉ」と話しかけたのか。
そして、通夜が始まる。
親族たちのすすり泣く声の中、ケシミニャンの頭の中では、祖父との色々な思い出が駆け巡っていた。
そして、昔母から聞いた、祖父母の馴れ初めの話を思い出していた。
祖父の生い立ち
祖父の家は農家だった。幼い頃に実母を亡くし、継母に育てられた。
しかし、この継母が実子ばかり可愛がるので、子供時代はとても寂しい思いをしたという。
祖父は中学を卒業後、高校へは進学せず戦争へ行った。
戦時中、どこで何をしていたかは知らない。
終戦後、どこかの工場で作業員として働いていた祖父だが、ここで事件が起きる。
祖父の父親(つまり、ケシミニャンから見て曽祖父)は、大変な大酒飲みであった。
酒代欲しさに、自分の息子の勤める工場に現れては、息子の給料を前借していったのだ(昔はあまり珍しいことではなかったらしい)。
な、なんてサイテーな父親なんだ…酒代欲しさに、自分の息子が汗水たらして働いた給料を奪っていくなんて…。
本当、大酒飲みは最低だな…。
ん?大酒飲みと言えば、冒頭で
ケシミ「年末年始は浴びるように酒を飲むで!!!!!」
と言っていたケシミニャン。
アカン。
血は争えない。
酒飲みの曽祖父の血が、確かに自分に流れているような気がして、ゾッとした。
その後、祖父は、父親に給料を奪われたくないという気持ちからか、生活雑貨を取り扱う小さな商店を立ち上げる。
ケシミニャンは子供の頃、学校帰りに祖父の商店に寄り道するのが大好きだった。
遊びに行くと、祖父はいつも笑顔で、商品のアイスやラムネをくれたからである。
今でも夏になると、祖父の店で飲んだ、ビー玉を落として飲むラムネのことを思い出す。
プロポーズ
祖父母の出逢いは、祖父が商店を立ち上げて間もなくのことである。
若者たちの間で流行していた、歌謡曲を聴く集いで出会ったらしい。
そして何度か話すうち、二人は互いを強く意識し合うようになった。
祖母は、地元で一番優秀な女子高校を卒業し、銀行員として勤めていた。
当時の女性としては、なかなか凄かったようだ。
しかも祖母には当時、親同士が決めた、医師の婚約者がいたのだ。
カーッ!!!!!!!
おばあちゃん、もったいね~!!!!!!!!!!!
いや、しかし、ここでケシミニャンの祖母が、その婚約者と結ばれていたら…。
ケシミニャンはこの世に生を受けていないことになるので、ここは感謝すべきところか…。
婚約者がありながら、祖父の真面目で穏やかな人柄に惹かれていった祖母。
そして、祖父は祖母にこうプロポーズした。
祖父「おれは学もないし、金もないが…。それでも来てくれるか?」
祖父母が若かりし頃、どれくらい自由に恋愛ができたかどうかわからない。
しかし、祖母は、銀行員という職業も、医師の婚約者も捨て、小さな商店を経営する祖父と結ばれたのである。
(続く)