気取らない、でも手間ひまかけたおいしさがうれしい。広島が誇るオールドスクールなお好み焼き「もり」
旅先でこどもと一緒に行けるおいしいお店を、その土地をよく知る在住の方に紹介してもらう、「こどもと行ける、旅ごはん。」
今回は広島より、「オールドスクール」なお好み焼きのご紹介です。こちらは今年新たに、冷凍のお取り寄せも始めたそう。おうちでもこどもと一緒に楽しめる広島の味、ぜひお試しくださいね!
こどもの頃から食べている、気取らない味
広島生まれ広島育ちの私にとって、こどもの頃は当たり前のように「土曜のお昼ごはん」だった、お好み焼き。
電話で注文し、焼き上がりに合わせて受け取りに行くのがお決まりで、誰が取りに行くかをいつも家族全員でジャンケンして決めた。
おばちゃんがひとりで焼く、小さなお好み焼き屋さん。形は決して「美しい」とは言えないその「肉玉そばイカ天」は、毎週食べても飽きない、わたしのソウルフードだ。
でも、他県と比べても広島にこんなにお好み焼き店が多いことを知ったのは、大人になってからだと思う。
綺麗なまん丸のお好み焼きに、牡蠣やチーズ、餅のトッピングまであることに驚いた。どのお店も個性的で、とてもおいしい。
けれどやっぱり自然と求めるのは、こどもの頃から食べている、気取らない素朴なお好み焼きなのだ。
創業者の祖母の、「ええかげんよ」の引き継ぎを、プラスに捉えて
「お好み焼きもり」は、昭和37年創業の老舗お好み焼き店。広島の中心部、じぞう通りにありながら、その店構えにはあの頃通った地元のお好み焼き屋さんを彷彿とさせる懐かしさがあり、とても落ち着く。
そして35年以上使い込んだ鉄板で手際よく焼き上げるお好み焼きは、こどもの頃から慣れ親しんだあの味に、よく似ていた。
お店を切り盛りするのは、3代目の松岡美穂子さん。「小学生の頃からここで自分の食べるお好み焼きは自分で焼いてたからね。修行といえばそれかな(笑)。」
そう笑いながら慣れた手つきでお好み焼きを焼いていく。人気の老舗お好み焼き店の3代目。さぞプレッシャーは大きかっただろうと問いかけてみると、「継いで3年くらいは先代と比べられることも多かったけど、私自身にそれほど気負いはなかったから。周りの声もあまり気にはならなかったかな」と意外な答え。
お店を継ぐ際、創業者である祖母に生地のレシピを聞いたが、返ってきたのは「そんなもんない。ええかげんよ」だったそう。
「ひどいでしょ(笑)?でも、教えてもらってないんだから味の守りようがない。そこをプラスに捉えて、自分の感覚で作るようにしたんです。」
その日の気温や水の温度を見ながら手探りで生地を作っていくうちに、今の味が好きだと言ってくれるお客さんが増えていった。そして、より自分の味を大切にしようと思えるようになったのだと言う。
シンプルだからこそていねいに作る、「引き算のお好み焼き」
使用するキャベツやもやしは必ず八百屋へ自ら行き、ひとつひとつ触って確かめて仕入れ、ていねいにアク抜きをする。お好み焼きはシンプルな材料で作るがゆえに、そうした手間ひまや調味料で、味は大きく変化するのだ。
もりのお好み焼きは、「引き算のお好み焼き」だと松岡さんは言う。風味づけの魚粉はパラっと香る程度に、塩や天かすもほんの少しに留める。
「見た目はぐしゃぐしゃに見えるけど食べた時に一体感があるふんわりとしたお好み焼きが好きなんですよ。」松岡さんが自信を持つ理想の味は、見えないところで光るていねいな仕事が生んでいる。
ていねいに作られたお好み焼きは、こどもたちにも安心して食べさせられる。鉄板の上でヘラを使って食べるのはちいさなこどもには難しいけれど、テーブル席もあるので子連れにも安心だ。
店主自らが工場で1枚1枚焼く、冷凍のお好み焼きも
そして今年新たに始めたのは、通販にも対応した冷凍のお好み焼き。昔からお持ち帰りのお好み焼きを包んでいた新聞紙をデザインしたパッケージはインパクトも大。冷凍されたお好み焼きは、新設した工場で1枚1枚松岡さん自らが焼いているというから驚きだ。
「うちの名前じゃなくて、うちの味を覚えてもらいたいから。」そんな想いで営業時間外もひたすら焼き続けている。
調理はとっても簡単。電子レンジで5分くらい加熱したところで一旦扉を開け、真ん中の凹みに生卵を落とし、さらに5分。お店で食べるあのトロトロ卵のお好み焼きが、こんなにも簡単におうちで食べられるなんて。遠く離れたあの子に送りたいな、とすぐに友人の顔が浮かぶ。
広島ではそばのお好み焼きが定番だが、「もり」のお好み焼きはうどんが抜群にいい。お店でも、おうちでも、みんなに食べて欲しい、広島が誇るオールドスクールなお好み焼き。
店内は小さな鉄板をコの字に囲むカウンター席とテーブル席、計10席ほど。外に並ぶことも珍しくない人気店なので予約をしておくのがベター。
店舗情報
お好み焼き もり
広島県広島市中区富士見町14-11
082-241-5358
月〜土 11:00〜20:00(L.O.19:30)
日祝 11:00〜14:30(L.O.14:00)
不定休
Instagram https://www.instagram.com/okonomiyaki_mori