「気がついたときから、こればかり食べてる」高槻かなこさん・印度カリー子さん 食への偏愛対談

「スキ」を語る。 特別対談

PEOPLE
2022.07.19

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連載【「スキ」を語る。】の第3回は、声優で歌手の高槻かなこさんと、スパイス料理研究家でタレントの印度カリー子さんが登場。

高槻さんは「サッポロ一番塩らーめん好き」が高じて、製造元のサンヨー食品と公式YouTubeチャンネルでコラボレーション中。そして印度カリー子さんも偏愛を生かして、スパイスカレーの素晴らしさを啓蒙し、活動の幅を広げています。

改めて、お二人にストイックな「食への偏愛」について、語ってもらいました。

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お話を伺った人:
高槻かなこさん

1993年9月生まれ、兵庫県出身。TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン‼︎』で声優デビュー。同作品発グループ「Aqours」のメンバーとして活動中。2018年には第69回NHK紅白歌合戦に出場。2020年10月ソロアーティストデビュー。2022年5月TVアニメ『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』のEDテーマソング「Before the Nightmare」をリリース。

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印度カリー子さん

1996年11月生まれ、宮城県出身。スパイス料理研究家兼タレント。スパイス初心者のための専門店 香林館(株)代表取締役。「スパイスカレーをおうちでもっと手軽に」をモットーに、初心者のためのオリジナルスパイスセットの開発・販売をするほか、レシピ本の執筆など幅広く活動している。

「気づいたら好きだった」塩らーめん、「じわじわ熱が高まった」スパイスカレー

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ーー高槻さんはサッポロ一番塩らーめん、カリー子さんはスパイスカレーと、お二人とも好きなものを極めていらっしゃいます。ここまで夢中になるまでに、どんな過程が?

高槻

私の場合は、気づいたら一番好きな食べ物が「サッポロ一番塩らーめん」になっていたので、とくにきっかけがあったわけではないんです。小さい頃から家にあって、記憶では塩味しか食べたことがないかな。一人暮らしするようになってからも、当たり前のように食べていただけなんです。

ーー貫しているんですね。

高槻

なんだか、癖になるんですよね。疲れた日やがんばった日のごほうびとしてサッポロ 一番を食べるし、反対に手軽に食事を済ませたい時もサッポロ一番。どんな時も食べています。

カリー子

私も高槻さんと似ていて、何か大きなきっかけがあったというよりは、じわじわと熱が高まり続けていった結果みたいな感じ。その熱が高まった理由の一つに、外に向けて発信してきたことがあると思っています。好きを発信していたら、人とつながるきっかけになって、その輪がどんどん広がって、周りが応援してくれて、シェアしたり反応したりしてくれる人がいて…それで、ここまで突き進んできました。

ーーじわりじわり、ときたわけですね。

カリー子

いや、本当に沼なんですよ。沼だと、いきなりドーンとはまることないじゃないですか。それは落とし穴(笑)。沼だからこそじわじわはまっていっちゃうんですよね。

ーー高槻さんも「好き」を意識して発信されてきましたか?

高槻

もともと普通にサッポロ一番が好きで、「一番好きな食べ物は何?」と質問されたら「サッポロ一番塩らーめんです」と答えてきたんですよね。そうしたらファンの方の間でもサッポロ一番好きのイメージが広がって。その愛が伝わったのか、サンヨー食品さんとつなげてもらった感じですかね。

アレンジもいろいろあるけど、サッポロ一番塩らーめんは「素が一番」

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ーーお二人とも、好きなものに一直線ですね!子どもの頃からそうだったんですか?

カリー子

幼少期は、ハンバーグとかオムライス、ナポリタンなんかは好きだったんですけど、ちょっと変わった中華料理とか、香りの強い野菜が苦手だったし、肉まんやケーキも食べられなかった。嫌いなものが多い子どもでしたね。

ーーそこから、スパイスにどう繋がったんでしょうか?

カリー子

19歳の時に姉がインドカレーに異常にはまっていたんです。最初に食べたときは「別に普通のカレーだな」ぐらいしか思っていなかったんですけど。「どうして自分の一番近しい姉がインドカレーをめちゃくちゃ好きになったんだろう?」と。その理由を知りたかったんですよね。それで自分で作るようになったら、いつしか私自身がはまっていたんです。不思議ですよね。もともと辛いものも苦手で、超お子ちゃまな味覚だったのに、いまやスパイスなしでは生きられなくなっている(笑)。

高槻

私は小さい時から、酒のあてみたいなものが大好きでした。煮干しとかイカナゴとか、あとは食感がコリコリしたものとか。渋いものがすごく好きで「あんた、絶対酒飲みになるね!」とずっと言われてました(笑)。

ーー実際はどうなんでしょう?

高槻

はい。酒飲みです(笑)!

ーーYouTubeの動画でも、サッポロ一番塩らーめんに合うお酒を探す回がありましたよね。

高槻

そうなんですよ。ビールは絶対に合うんですけど、意外とテキーラとも相性がいいんです。

ーーサッポロ一番塩らーめんはいろいろとアレンジレシピがあると思いますが、高槻さんのおすすめは?

高槻

結局いつも、何もしない。素のままで食べちゃいます。

カリー子

それ、素晴らしいですよ。素が一番好きって、商品開発者が聞いたら泣いちゃう(笑)。

高槻

リスペクトを持って、何も手を加えない。「そのままの君が一番だよ」と思っています。まあ、卵があったら卵を入れるぐらいかな。

カリー子

卵はゆで卵?

高槻

いや、溶き卵を混ぜるだけです。私は本当にずぼらなので、家で料理をしないんです。家に食材やスパイス、調味料がないので、素で食べます。

カリー子

食事は外食が多めなんですか。

高槻

そうですね。外食か出前か、サッポロ一番です。

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ーーカリー子さんはスパイスカレーのレシピを考案されるなど、お仕事でもカレーと向きあうことが多いと思いますが、リセット食みたいなものはありますか?

カリー子

全然ありますよ!私は仕事でカレーを作っていますけど、自分の食べたいカレーは別にある。仕事でカレーをたくさん作った後に、自分の食べたいカレーを作って、食べたりします。

仕事で作るカレーは簡単なカレーとかチキンカレーなどが多いんですけど、私はそんなに毎日お肉を食べたいわけじゃないので、わざわざ野菜のカレーを作り直したりしています。

ーーということは、気分転換もカレー?

カリー子

そうですね、食べたいものがあれば。ただ、どうしても塩分量が多くなってしまうので、ヨーグルトとドライフルーツで終わる日もあります。自分が食べたいものに従っているので、食べたくない時はカレーも食べません。

感覚を研ぎ澄ますために、空腹状態を意識する

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ーーここまでお互いの話を聞いて、それぞれどうですか?

高槻

カリー子さんの話を聞いて、「カレーって1種類じゃないんだな」と改めて感じます。同じカレーでも、自分が食べたいカレーは別にある、と。私は食事を作りたいという概念がないから、その辺が奥深いなと思いました。

カリー子

逆に浮気しない感じはすごいなと思いますね。私は絶対スパイスを足しちゃうんですよね。やっぱりスパイシーさを求めているのか、クセでスパイスを加えてしまうんですけど、高槻さんはずっと一つのものを好きでいる。変えないままで好きでいられるというのは、すごいですよね。

高槻

私のイメージ的には、お風呂と一緒なんです。お風呂には当たり前のように入るけど、入浴剤入れる/入れないの違いがあるな、ぐらいじゃないですか。サッポロ一番も、お腹がすいたら当たり前に食べちゃう。だからあんまりそのことを意識したことがないんですよ。

カリー子

なるほど。私はいちいち入浴剤入れる派かも(笑)。なんなら、お風呂の前に入浴剤を並べて、どれにしようとか悩んじゃうタイプ(笑)。

ーー高槻さんは、撮影の前日はサッポロ一番をセーブするなどしていますか?

高槻

撮影の前日は特に夜8時以降は食べないようにしています。だけど、終わったらごほうびとして取っておきます。私が一番幸せなのは、二日酔いのときに食べるサッポロ一番で…。

カリー子

うわぁ、しみそ〜!

高槻

あとは次の日が休みのときに、ちょっとお酒を飲んで、寝る前だけど、お腹すいたときに食べるサッポロ一番。あのギルティ感がすごく好きです。

ーー同じメニューでも、食べるシーンによって向き合い方が変わるわけですね。

高槻

全然違いますね。

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ーーカリー子さんはいかがでしょう?

カリー子

今はだいぶなくなりましたけど、私は結構食事を節制していた時期があります。でもその節制期間が終わって、食べる時は、人の5倍ぐらい食べて。つらかったので、今は「コンスタントに食べたいものを食べよう、食べたいカレーを食べよう」と思っています。

それこそ、昔は「撮影のために作ったカレーも食べなくてはいけない」と思っていたんです。けど、今食べたくなかったら、そのカレーは冷凍しておいて、食べたい時に食べようと。それが一番体にも心にもいいなと思っています。


ーーお二人が「食を楽しむ」ために、健康上、気をつけていることはなんですか?

カリー子

食べ過ぎないこと。食べ過ぎると、感覚が鈍って、研究心が衰えるんです。欲望が完全に満たされている状態だと、「さらにおいしくしよう」という欲望が下がるから、レシピが書けなくなるんですよね。だから常に空腹状態にしようと心がけています。

高槻

私は、食べたくないものを食べないことかな。食べることって、生きている上ですごく幸せなことじゃないですか。でも、一日三食しかチャンスがない。一つ一つおいしいものでお腹が満たされたいです。

カリー子

超分かります!食べたくなかったら食べない。「これでお腹いっぱいにさせてやるか!」みたいな。

高槻

人に合わせて食べるのもあまり好きじゃないので、家で一人でサッポロ一番塩らーめんを食べる方が幸せです(笑)。

カリー子

間違いない。なんとなく入ったカフェの中途半端な定食は食べたくない。「なんでこれでエネルギーを取らなきゃいけないんだ!」みたいな気持ちになる(笑)。

高槻

私、結構辛口だと思います。おいしくない時は「こうしたら、おいしいんじゃない?」みたいに言います。

「普通に愛しているだけ。真摯な愛をぶつけているだけ」

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ーー食を通したコミュニケーションとして、サッポロ一番やスパイスカレーがつないでくれたご縁はありますか?

高槻

人としゃべる時の話題にはなります。「一番好きな食べ物は何?」と聞かれて「サッポロ一番塩らーめんです」と言ったら、結構みんな食いついてくれる。そこで「みそラーメンの方がいいよ」とかいろいろ意見があって、みんなが“マイサッポロ一番”を話し出す。それで場がほぐれたり、距離が縮まったりするなぁとは思いますね。

カリー子

私は今回の取材もそうですけど、仕事上のご縁が多いです。それこそカレーがなかったら、高槻さんともお会いすることなかったと思いますし、そういったご縁はすごくありがたいし、嬉しいです。スパイスには感謝してます。


ーー食との向き合い方がお二人とも似ているようで違っていておもしろいです。食をきっかけとして、ご自身の視野が広がったなと感じることはありますか?

高槻

うーん。そういう意味では、あんまり外に発信することはないかもしれないですね。ひっそり楽しみたいものだから。その人それぞれにこだわりがあると思うので、内なる秘密みたいなものですね。

カリー子

やはり、お風呂なんでしょうね。別に「私はこういう風呂に入ってます!こういう湯のくみ方をしています!」と語ることはなくて、本当に自然な行為なんでしょうね。

高槻

そうですね、味しか感じとってないです(笑)。

カリー子

人を好きになるのと一緒ですよね。「めっちゃ好き!」という感情だけでいいという人もいれば、「この条件はOK、この条件OK」と一つ一つ相手のことを調べる人がいるわけじゃないですか。それで条件があったから付き合う、みたいな。

それと食の向き合い方は一緒。好きだから別に語らなくてもいいというタイプもいれば、いろいろ研究して好きを語りたい人もいる。考え方の違いだと思います。

高槻

あと食を楽しむための環境を作ることが大切だと思います。例えば「サッポロ一番」だったら、私は一人でこっそり食べるのが好きです。それから最近だとタコスにもはまっているんですけど、暑くなってきたので、ビールと合わせて楽しむとか、そういう環境を自分で作るのが好きです。

カリー子

それ、分かるかもしれません。私もカフェは結構雰囲気で選びます。食事は大抵おいしいと想定して、雰囲気とか音楽とか、出入りしてる人の感じとか。おうちの中でも、食事の環境、すごく重要かもしれませんね。

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ーー器のこだわりは?

高槻

私はサンヨー食品さんからいただいた、サッポロ一番のどんぶりです。めちゃくちゃ雰囲気が出て、倍おいしくなります!

カリー子

最高です。私はインドに行った時に、やはり安いので、現地で食器を買っています。インド食器にカレーをのせるだけで、もう雰囲気は出ますよね。

高槻

もし食にあまり興味がないな、と思う人には、ぜひ試してみてほしいですね。その料理に合う器を選んでみたり、音楽を流してみたり…。


ーーちなみに「サッポロ一番」に合う音楽は何ですかね?

高槻

サッポロ一番は…シーンとしていることかな。生活音が一番のBGMです(笑)。

カリー子

私もカレーを食べるときは、いつでも無音ですね。情報を鼻と目と口に集中させたいので、耳の感覚をできるだけ最小限にしたい。無音で無言です。

高槻

ストイック〜!

カリー子

ストイックというか、普通に愛してるだけ。真摯な愛をぶつけてるだけなんです。好きだよって。音楽をかけながら好きだよと言われても、なんか微妙じゃないですか(笑)。

高槻

おいしいよ、かわいいよってね(笑)。

カリー子

そうそう、おいしいよ、かわいいよって言いながら食べると、おいしいです(笑)。食との向き合い方は、同居している人がいるのか、一人暮らしなのかでも変わってきますよね。一人なら、自分のために作るものだし、ただただ愛を楽しむものだけど、二人以上いるなら、その人のために作るものに変わるかもしれないし、意味合いが変わってきますよね。

環境も変わるでしょうけど、どのフェーズにおいても、食はきっと楽しめる要素がある。一人で楽しめる食もみんなで楽しめる食もあるから、その瞬間を楽しんだ方がいいですよね!

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取材・編集:小沢あや(ピース株式会社)
文:五月女菜穂
撮影:曽我美芽