お雑煮っておもしろい!"うちのお雑煮"を作って食べ比べ
クリスマスも終わり、もういくつ寝るとお正月。みなさんはお正月準備の真っ最中でしょうか。お正月に欠かせない料理のひとつがお雑煮ですね。ご存じのとおり、具も汁も各地によって、家によって様々に変わります。今回は生まれも育ちもばらばらな4人で、お雑煮を作り合ってみました。(聞き手:白央篤司)
参加してくれた人
今回は「うちのお雑煮を作ってみんなで食べ比べる」をテーマに集まっていただきました。お雑煮って、他の家庭のものを食べる機会がほぼないものですから、楽しみですね。まずトップバッターはきじまりゅうたさん、お願いします。
はーい、うちは祖母の代から東京の豊島区なんで、いわゆる関東雑煮です。鍋に水を入れて日高昆布を加え、柔らかくなるまで置いたら火にかけ、沸騰手前で昆布を取り出す。火を止めて、かつお節をドサッと多めに入れ、沈んだら濾して出汁のできあがり。
やっぱりお正月は出汁を濃いめにしますね、うちもいつもより多くかつお節を入れます。
贅沢な感じがお正月っぽいよね!具は鶏もも肉、かまぼこ、三つ葉、焼いた角餅、ゆずの皮。鶏もも肉は小さめに切って、湯通ししてから出汁に加えて煮ていきます。
えっ、そうなんですか。
脂を落としてあっさりさせる感じ。うちは正月飲みっぱなしで全員いつも二日酔い状態だからそうするのかも(笑)。かまぼこはねじって手綱形にする、こういうのもお正月っぽいね。角餅も焼いたら一度お湯にくぐらせます。こうすると汁吸いがよくなる。
汁吸いがよくなる…なるほど。
出汁の味つけは醤油、酒、塩で。醤油だけでやると汁の色が濃すぎちゃうんだよね。だから塩で塩気を補う。あとは具をお椀に持っておつゆ入れれば完成です!
小さい頃からお雑煮作りのお手伝い、されてたんですか?
いや、それが…うち、祖母も母も(料理研究家の村上昭子さん、杵島直美さん)お正月料理の撮影が毎年あったから、お雑煮やおせちってずっと夏場に食うものだったの(注:おせちの広告などは秋口には世に出るため、夏に撮影されることが多い)。
なるほど(笑)!
本番のお正月は一家で休んで旅行が多かったんです。だから子どもの頃は家で雑煮を食べてないんですよ。最近は母が雑煮を担当してるので今日は母のレシピ本でわが家の作り方を予習してから来ました!
そうでしたか、ありがとうございます(笑)。それでは次にふらおさん、お願いします。ご両親ともに大阪で、ずっと大阪育ちだそうですね。
はい、雑煮といえば白味噌で、それ以外知らないんです。きじまさんのお雑煮を見て「汁が澄んでる…!」と驚きました。出汁は昆布とかつお節で、具は大根、金時にんじん、里芋、そしいて焼いた丸餅です。
私も元々は大阪なんですが、関東に来て「こっちって丸餅売ってないんだ」と思いました。
そうですよね!私は佐賀なんですが、丸餅をめっちゃ探しました。カルディだと置いてあるところもありますよ。
最近は西日本以外でも丸餅を置くところが増えてきたようですね。さてふらおさん、実際に作ってください。
はい、野菜の皮をむいて切っていきます。大阪では年末になると「雑煮大根」という、小さくて細い大根が売り出されるんですが、今はまだ手に入らないので普通の大根で。雑煮大根の場合は輪切りにしますが、今回はいちょう切りに。にんじんも輪切りで、里芋は薄めに切ります。水から下ゆでして、ざるにあげておく。出汁を沸かして、下ゆでした野菜を軽く煮たら、たっぷりの白味噌を溶いて、焼いた丸餅を添えて完成です。
全体が白で、にんじんとの紅白感がハレの日という感じできれいですね。お次は渡邊さん、お願いします。
私は父親が新潟県の佐渡島出身で、正月は父方のお雑煮を食べていたんです。よく練ったあんこをゆでた丸餅にかけるシンプルなものです。
ええっ!お雑煮が?
うちのやり方は鍋に湯を沸かして、さらしあんを入れて混ぜ、砂糖を入れたら塩をひとつまみ加える。あとは好みの加減に練っていくだけ。15分から20分ぐらい練ります。小学生の頃、家族とお客様の分を練るのが私の役割で、それが面倒で嫌だったんですよ(笑)。
お正月なんて、子どもは観たいテレビもいろいろあるのに(笑)。
そうそう。でも毎年やってるうちにコツもつかめて、ある瞬間から混ぜている鍋の中が重たくなって「来た!」って感じで、その瞬間は嬉しかったですね。周囲もみんなこれを食べていると思いきや、親戚のおばちゃんが「いやいや真澄ちゃん、あんたんとこだけやで」って(笑)。
お椀に煮た丸餅を入れて、あんこをのせれば完成です。ああ、でも見た目がいまいち。きじまさん、どうやったらかわいく盛れますかねえ…?
いや、いいんじゃないですかこれで!雑煮の概念が変わります!
いまいちじゃないですよー、とてもおいしそう。
ありがとうございます(笑)。
佐渡島の方に聞いたら、あちらは焼いた角餅でやることが多いよう。渡邊さんの実家はやっぱり佐渡と関西のハイブリッドなのかもしれませんね。さてお待たせしましたハナコさん、ご出身は佐賀県の佐賀市なのですね。
はい、あご(とびうお)のお出汁を使うお雑煮です。それも焼きあごを。具は白菜、かまぼこ、しめじ、ゆず皮、海苔。餅は丸餅で、煮て使います。実はお雑煮って作ってこなかったんですよ。これを機に親に聞いて作ってみたら「ああ、家の味だ!」って懐かしくなりました。
分かるなあ、俺も今回母親のレシピで作ってそう思った(笑)。
焼きあごと昆布は水に一晩浸けておきます。その出汁で、食べやすい大きさに切った白菜、ほぐしたしめじ、かまぼこを煮て、薄口醤油、みりんで味つけ。ポイントは薄口醤油です。濃口醤油だとうちの味にならない。塩気が足りなければ、塩を少々で完成です。
お餅はゆでて使うんですね、私と一緒。あ、お椀に入れるとき海苔をしくんですか!
はい、お椀にお餅がつかないように。でもこれは実家じゃなくて、通っていたお茶の先生がなさったのを真似ています。
私の親は新潟の下越地方の山のほうですが、「お餅が椀につかないように」という同じ理由で、煮た野菜を椀にしいてから餅を入れてました。
さあ、全員のお雑煮が完成しましたね。試食タイムに移りましょう!
ふらおさんの白味噌雑煮
白味噌をお吸い物に使うって初めてで新鮮です。とろっとするぐらいお味噌を入れるんですね。
それなのにしっかりお出汁が香って、上品なおいしさ。
西の料理を食べてる感じだなあ、塩気は白味噌だけなんですよね?
そうです。今回は焼いた餅を添えましたが、しっかり煮ることもあって、そのときは餅がどろっとして、それはそれでまたおいしいんです。
ハナコさんのあご出汁雑煮
魚のうまみが強くておいしい…こうやって続けていただくと、出汁の違いが本当によくわかりますね。
うまみは強いけど、食べやすい。ゆずが効いてますね!こうやってゆず皮を汁物に使うの、いいなあ。
じっくり煮た白菜とあご出汁の掛け合わせがいいね!海苔を底にしくのもいいっすね、ナイスアイディア。
佐賀出身者としてはやっぱり名物の海苔を売らないとと思って(笑)。
きじまさんの関東雑煮
鶏が入るとボリューム感が出ますね、朝からうまみがっつりだ。
うん、おいしい…鶏の出汁がお吸い物にいい風味を与えてて。
かつおと昆布の出汁に鶏が加わると味がこんなに変わるんですね。ゆず皮の香りでくどくなりすぎない効果もある。
しかし本当に出汁っていろいろだねえ、おもしろい!
渡邊さんの佐渡あんこ雑煮
この流れで最後にあんこって嬉しい。あんがねっとり濃厚でおいしいですね!
平皿でよさそうなのに、お椀に入ってるのがおもしろい。
お椀だからこそお雑煮感が出るよね。あんもゆるくなく、ぽてっとしていて、それがお餅にあう。なんだか酒もあいそう。
ああ、うちの父は日本酒を飲みながらこれを食べていましたよ。だからシメのデザートではなく、あくまであんこの「雑煮」なんです。
みんなでお雑煮を作り合う座談会、話は尽きませんでした。
お雑煮って、いろんなストーリーがありますね。地域の味を守る家もあれば、家の好みを優先する家もある。日本の食の多様性と家の伝統がお椀の中にあれこれ見え隠れするのも、お雑煮のおもしろさ。今年のお正月はぜひ、お雑煮を作ってみてください。