今井真実さん・渥美まいこさんと語る「お月見を気軽に楽しむアイディア」
食トレンド研究家の渥美まいこさんと料理家の今井真実さんが2020年から取り組んでいる『OTSUKIMI.』プロジェクト。「イベントとしてまだあまり定着していないお月見を現代風にアップデートし、たくさんの人が楽しめるイベントにしたい」という思いから、十五夜に向けてさまざまな提案をされています。
アイスムではそんな二人をゲストに迎え、「お月見フード&スイーツ大集合!」を開催。読者のみなさんもお招きし、おいしいものを食べながらお月見についてワイワイ語り合うイベントです。
今回は、そんなイベントの様子をレポートします。
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乾杯の音頭は「こよいお月見!」
さっそくですが、みんなで乾杯しましょうか。渥美さんが考案した乾杯の音頭があるんですよね。
はい。お月見って「メリークリスマス」とか「ハッピーハロウィン」みたいなキャッチーなフレーズがないんですよ。だから「こよいお月見」というフレーズを考えました!私が「こよい」と言うので、みなさん「お月見」と言いながら乾杯をしてください。
こよい!
お月見!
それでは、用意したお月見フードとスイーツを紹介しますね。
萩の月
「萩が咲き乱れる宮城野の空にぽっかり浮かぶ名月」をかたどった銘菓。まろやかでやさしい風味のカスタードクリームを、ふんわりとしたカステラで包んだ一品。
ゴディバ オータム コレクション(期間限定商品)
パッケージは「森の動物たちが秋の月夜にお月見パーティーをしているシーン」をイメージ。季節を彩る食材を使った、限定チョコレートなどの詰め合わせ。
天満月
空に輝くお月様とお星様をイメージした、ほろ苦いチョコレートのおまんじゅう。チョコレートとココアパウダーを練り込んだ皮で、卵の風味あふれる黄味餡を包んでいる。
都農ワイン
都農ワインは、宮崎県の尾鈴連山(おすずれんざん)から海側の地・都農(つの)にあるワイナリー。月の満ち欠けに沿った栽培管理によってぶどうを作り、ワインに使用している。
お月見の起源と、さまざまなお月見文化
お月見って昔からあるのに、ハロウィンほどイベントとして定着していないですよね。他の国ではどうなんでしょう?
中華圏では中秋節といって、春節と並ぶ大きな行事なんですよ。台湾などではバレンタイン並みに盛り上がるイベントです。スターバックスとか、いろんなハイブランドからも中秋節の限定グッズが出たり。
台湾では、中秋節に焼肉を食べるらしいですね。
そうです。焼肉のたれメーカーのプロモーションによって浸透したんですって。
バレンタインのチョコと同じ!
お月見が定着しにくい理由のひとつに、「日にちが決まってない」ことがあると思うんです。その年によって日にちが変わるから。
節分になると、スーパーの恵方巻売り場に「今年は南南東!」とか書いてあるでしょ。そんなふうに、スーパーに「今年のお月見は〇日!」って掲示されるようになるといいですよね。そのためにも、節分の恵方巻みたいな定番のお月見フードを作りたいんです。
お月見フードといえばお団子のイメージですよね。でもお団子って夕飯にはならないし、夕飯のあとに食べるには重いし……。
そう、お団子だけだと夕飯になりにくいので…。そこが恵方巻きとの違いですよね。だから夕飯に取り入れられるメニューを発明したくて。
お月見って、もともとは収穫祭なんですよね。
そう。月を愛でる文化は平安時代に中国から入ってきたんですけど、もっと昔の縄文時代から、秋の作物の収穫に感謝する文化はあったんです。その頃はまだお米がなかったので、里芋やさつまいもを食べていたそうですよ。
だからかな、十五夜の月のことを「芋名月」と呼ぶそうですね。
そうなんです。十五夜の月は「芋名月」、十三夜の月は「栗名月」。
十五夜だけじゃなくて、十三夜もあるんですか?
十五夜の翌日が十六夜で、一ヶ月後が十三夜なんですよ。平安時代って照明がないから夜が暗いんですけど、十五夜だけは月明かりのおかげで一晩中遊べるんですね。貴族はそれがめちゃめちゃ楽しくて、もう一回遊びたくて十三夜を作ったんです。十五夜と十三夜のどちらか一方の月しか見ないことを「片見月」と呼んで、縁起が悪いことにしたんですよ。
そうなんだ!逆に、「十五夜と十三夜を両方見たらいいことがある」って考えるといいですね!
お月見ってどこも、ススキを飾ってお団子をお供えするんですか?
地域によって違って、十五夜に綱引きやお相撲をするところもあるみたいです。あと、ハロウィンみたいに、十五夜に子どもがお供えのお菓子を持っていく「お月見どろぼう」っていう風習もありますよ。子どもは月の使者だから、お供え物を持って行かれるのは豊作につながるんだとか。
へぇ、いろんな風習があるんですね。ススキを飾るのには理由があるんですか?
ススキは中が空洞になっていて、そこから悪いものが出ていくという意味があるんです。あと、稲穂に似てるから豊穣を願う意味も。今は本物のススキじゃなくても、それに似た植物を飾ればいいんじゃないかな。
もっと気軽に楽しめればいいですよね。カーテンを開けて、月を眺めながら夕飯を食べるだけでもいいし。子どもが小さいときは、窓際にピクニックシートを敷いてごはんを食べたりしていました。
いつもと気分が変わって、お子さんも喜びそう!
大人だけだったら、近くの公園に行って月を眺めながらカップ酒とか飲んでもいいし。ほら、カップ酒の飲み口って丸くてお月様みたいだから(笑)。
もう、なんでもアリ(笑)。
今井さん考案の生どらアレンジと、みんなのアイディア
使用したのは「いさみ屋」の生どらです。
生どら
長崎と佐世保の間にある和菓子店・いさみ屋。創業者が和菓子職人で、二代目はパリで修行したパティシエ。自家製の生クリーム餡をはさんだ、和菓子屋の生どら。
この生どらに果物を挟むとフルーツサンドみたいに食べられるんですよ。生どらのクリームにレモンを絞るのがおすすめ。
とってもおいしい!生どらにレモン、意外だけどすごく合います!
ワインとかブランデーとか、洋酒にも合いそう。
さっきも言ったけど、ハロウィンとかクリスマスは「それっぽい」ごはんがありますよね。でもお月見はそれがないから、お月見パーティーにぴったりのメニューを作りたいんです。
お月見パーティーって、何を作ればいいんでしょうね?
私の提案はやっぱりおにぎり。ごはんを30gずつ丸く握って、お重に並べるんです。それだけならただの塩むすびだけど、ちょっといい海苔やいくらを使うと、すごく気が利いた感じになります。持ち寄りパーティーにもおすすめですよ。
おしゃれ!持っていく途中で崩れないし、お重を使えるのもいいですね。
渥美さんはお重を推したいんですよね。
そうなんです。おせちのときだけじゃなく、お重がもっと日常的なアイテムになればいいなぁと思っていて。
お重を持ってない人は空き箱でもいいんですよ。お菓子などのしっかりとした紙の空き箱にオーブンシートを敷いたら、お重の代わりになる。
それなら手軽にできそう!
みなさん、お月見メニューのアイディアってありますか?
パンケーキの上に、丸く焼いた卵をのせたらいいんじゃないかなと思います。
それいい!
和にとらわれてたから、洋風は盲点でした。スキレットのまま出してもいいかも!
パンケーキの上に、うさぎの型抜きをしたハムを乗せたらかわいいかも。
そっか、お月様だけじゃなくてうさぎモチーフでもいいんだ!丸くて白いもので、うさぎのしっぽを表現してもいいかも。
ミスドのドーナツポップとか?ココナツチョコレートのドーナツポップだと、丸くて白いですよね。
あれ、好きです!白いのはうさぎのしっぽみたいだし、黄色いの(ゴールデンチョコレート)はお月様みたいじゃないですか?
たこ焼き器を使えば、ドーナツポップみたいに小さくて丸いものが焼けるかも。
たしかに!ホットケーキミックスを使えば丸いカステラができますよね。たこ焼きならぬ「お月見焼き」なんて素敵。
いっぱい焼いて、お月見団子みたいにピラミッド状に重ねてもいいかもしれませんね。
それ、いいですね。お月見団子は本来は「三方」という台に乗せるんですけど、今は三方を持っていない人のほうが多いじゃないですか。だから、脚付きのケーキ台とかで代用したらおしゃれかも。
こうやってみんなでアイデアを出していくの、とっても楽しいですね!
お月見について、みんなでワイワイおしゃべりする楽しみ
亜美さん
どれもおいしかったんですけど、特に都農ワインがおいしかったです。探して買って帰ろうと思います!
sawakoさん
生どらにフルーツをはさんで食べたのがすごく新鮮でした。お月見が平安時代から続いているという話を聞いて、「清少納言や紫式部もこうしてお月見をしたのかな?」と想像しました。千年前に思いを馳せながら月を眺めたいです。
マリナさん
ぜんぶおいしかったんですけど、特に果物を使った生どらのアレンジが今井さんらしくて素晴らしかったです!
ユウカさん
生どらのクリームにレモンを搾ったらとてもおいしくて、想像を超えてきて感動しました!今井さんが淹れてくれたフレッシュミントのお茶もおいしくて、真似したいです。
よしこさん
凝ったお月見は難しいけど、もっと気軽に暮らしの中に取り入れてみようと思いました。やっぱり甘いものだけじゃなく、おかず系のお月見フードがあるといいですね。
みほさん
お月見ってあまり馴染みがなかったので、こうしてイベントとして楽しめて嬉しかったです。お月見フードなんですが、おいなりさんや唐揚げを、お団子みたいにピラミッド型に積み上げるのはどうでしょう?手軽でいいんじゃないかなと思いました。
みゆさん
今までお月見といえばお団子しか思い浮かばなかったけど、今日話していて「丸くて黄色いものならなんでもいいんだ!」と気づきました。ゆで卵の輪切りを使ったグラタンとかでもいいかも。今年はお月見パーティーをしたいです。
さきさん
いつもお月見フードに悩んでいたんですけど、今日はいろんなアイディアをいただけてよかったです。今井さんの小さい丸いおにぎりも、おかずをお団子みたいに積み上げるのも、やってみようと思います。
今日はありがとうございます。2020年から新しいお月見を考える『OTSUKIMI.』というプロジェクトに取り組んでいるんですが、こうしてみなさんからアイディアをいただく機会は今までなかったので、すごく刺激になりました。
お月見について、こんなにもみなさんと一緒に盛り上がれるとは思いませんでした。しっとりと夜空を見上げるお月見も素敵だけど、こうしてワイワイおしゃべりするのも楽しいですね。今後とも、どうぞよろしくお願いします!
お月見の起源や各地の風習から、新しいお月見フードのアイデアまで、みんなでワイワイ語り尽くした今回のイベント。参加者がみなさん終始笑顔で、アイスム編集部も嬉しくなりました!
配信では紹介できませんでしたが、こちらは「秋限定お月見仕立て」の雪見だいふく(ロッテ)。おもちが満月のように黄色く、お月見仕様となっています。溶けないよう、イベントの最後にみんなでいただきました。
アイスムでは今後も料理研究家の方々とさまざまなイベントを開催していく予定です。今後の開催についてはアイスムの公式 LINEアカウントでもお知らせいたしますので、興味がある方はぜひ友だち登録してください。
今後も、一緒に「おうちごはん」を楽しんでいきましょう。