器に助けてもらうと、食卓が豊かになる。いつもの食事をちょっとおしゃれにするフードスタイリングのコツ

アイスム × UXD KURASHI LAB.

LIFE STYLE
2021.09.24

さまざまなレシピ本や広告などのフードスタイリングを手掛けているつがねゆきこさん。家では2児の母として、毎日の食事を作っています。そんなつがねさんのご自宅で、朝食、夕食2バージョンのスタイリングを見せてもらいました。食洗機で洗える器を使ったおうちモードのスタイリングは、取り入れやすいポイントが満載。子どもも一緒に、お気に入りの器での食事を楽しみましょう。
10月2日(土)には、住まいや暮らしに関するテーマを取り扱うコミュニティ「UXD KURASHI LAB.」にて食卓コーディネートのオンラインイベントを開催します!詳しくは記事の最後をご覧ください。

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お話を伺った人:つがねゆきこさん

フードスタイリスト。『ストウブで無水調理』(大橋由香著)『はじめての台湾料理』(星野奈々子著)などの書籍、広告、雑誌などのフードスタイリングを中心に幅広く活動中。店舗や飲食店のスタイリングやディレクションにも携わる。2017年からフォトスタイリンググッズのショップ「&MERCI」を立ち上げ、プロデュースしている。2021年、株式会社goodmoodを設立。アップサイクルなプロダクトを始動。ライフスタイルと向き合い、器や暮らしまわりのものを手がける。夫、7歳の男児と4歳の女児、猫2匹と暮らす。

オーバルの皿は盛り付けが決まりやすい

ーーまずは朝食のスタイリングを紹介してもらいます。フレンチトースト、おいしそう。こんな朝食が出てきたら、朝からテンション上がりますね。

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子ども用はオーバル(楕円)の白いお皿、大人用は円形のお皿を使っています。少し縁の立ち上がりがあるお皿のほうが、フラットなお皿より食べやすいんですよね。家族4人だとしても、4枚同じお皿で揃える必要はなくて、2枚ずつでもまとまりが出るんですよ。

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ーー2枚ずつだと買いやすいですね。お子さんにはプラスチック製などの割れない食器を使わせる、というご家庭もあると思いますが、つがね家はお子さんも大人と同じ器を使うんですね。

プラスチックの食器は軽くて安定しないので、子どもに使わせるのはむしろこわいなと思います。汁物は軽い木製や漆碗を愛用していますが、お皿は陶器で重みがあるほうが安定感あるし、ちょっと手があたっても移動したり倒れたりしないんですよ。幼児の食べる量は少ないので大人の副菜皿や小皿が役立っています。

もちろん、運んでるときなどに割ってしまう可能性もあるんですけど、割れたら割れたで学びになるんです。一度割ってしまうと、お皿は割れるものだとわかって、その後は慎重に扱うようになります。子どもだって自分が食べている器をわざと割ることはないし、大抵は単なるミスなんですよね。

ーーたしかに。このオーバルのお皿はしっかり重みがあって、容易にひっくり返らなさそうです。

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これはアンティークのお皿です。オーバルのお皿は、盛り付けしやすいのでおすすめです。例えば、フレンチトーストを置いたら、余白が1箇所になりますよね。そこを埋めるためにフルーツなどを配置すれば盛り付けが完成します。でも、円型のお皿だと三日月型に余白が残ってしまう。フルーツとミニトマトだけじゃスカスカなので、大人のお皿には作りおきのセロリのピクルスを急遽足しました(笑)。

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ーーこのピクルスの容器、そのまま食卓に出せる素敵なデザインですね。

そうなんです。そのまま出せるものにしておくと楽なんですよね。あと、作りおきは大人用の副菜を作っておくのがラクだなと思っていて。子どもは芋を蒸したものとか、素材のままでも喜んで食べてくれますけど、大人は箸休めになるものがあるとうれしいので。

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これは別の日の朝食です。ベージュのお皿はデザイナーとコラボレーションした有田焼のブランド「2016/」のアイテム。縁の立ち上がりといい、大きさといい、とても使いやすいので、朝食時の定番になっています。定番のお皿があると、何も言わなくても、子どもたちがこのお皿を出してくれるんです。この日はパンケーキですが、トーストやおにぎりなど、どんな料理をのせても合います。

ーーたしかに使いやすそうなお皿ですね。これはどれくらいの大きさなんですか?

18cmです。うちでよく使うお皿はだいたい口径が16cmから18cmくらい。使いやすいサイズがわかってくると、その口径の器を選んで買うようになるので、自然と揃ってくるんですよね。サイズや色、厚みなど共通するところがあると、違う器でもコーディネートしやすいんです。

調理器具を中心に置いて、視線を集める

ーー次は白米と汁物がある夕食のスタイリングです。わあ、せいろがどーんと!

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見た目が豪華で、作った人ががんばった感じに見えますよね。がんばってるのはせいろなんですけど(笑)。

このようにせいろや鍋など、調理器具を食卓の真ん中におくと視線を中心に集めることができて、スタイリングがまとまりやすくなります。あとは取皿や白米などを並べればできあがり。

シュウマイをとる小皿は、すべて違うものを並べています。普段、子どもたちは使うお皿を自分で選んで並べるんです。猫か鳥のお皿を持ってくる率が高いですね。この小皿が箸置きの代わりにもなっています。

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ーー副菜のお皿も、ちょうどいい感じですね。

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これは同じシリーズの色違いのお皿を使っています。少し深さがある小皿は使いやすいんですよね。これより高さがあると食洗機に入れづらかったり、盛ることができるものが限られてきたりするので、このくらいがちょうどいいんです。

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直径8cm高さ3.5cmくらいの小さめのお皿が、副菜用に大活躍

木のボードはお立ち台

ーーああ、ハヤシライスのいい匂い!今度はワンプレートの手軽な夕食です。

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ハヤシライスやカレーのようなおなじみの料理って、ともすれば子どもっぽくなってしまうんですよね。野暮ったく見えるというか。だから器の色を濃い目にして、大人にとっても素敵に見えるようにスタイリングしてみました。

スプラウトやコーンをのせて、少し色味を足しています。こうやってごはんの上にのせると、野菜を避けがちな子どもたちもなんとなく食べてくれます。

ーーついカレーなどは白っぽい器に盛ってしまうのですが、黒っぽい器だと雰囲気が締まりますね。

そうですね、あとは青でもいいと思います。青は黄色や茶色と相性がいいんです。だからパンや卵料理などをのせると映えます

大人用の器は、シリーズでもなんでもない別の器なんですけど、作家さんが一緒なんです。だから少し共通した雰囲気があって、統一感が出ています。

ーー真ん中にはボードが。

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余ったコーンとパセリ、ミニトマトをガラスの器に入れて置いています。あと冷蔵庫にあったチーズ。余ったものを集めた「お好きにどうぞ」ゾーンをつくると、一品増えたように見えて食卓がにぎやかになります(笑)。

ーー木のボードって、持ってるんですけどいつ出したらいいかわからなくて、あまり使っていないんですよね……

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つがね家の年季の入ったカッティングボード。海外製のものは基本的に大きい。のせたものをその場で切ることができるので、ピザなどを出すときに役立つ。

カッティングボードは意外と使いやすいんですよ。でもお皿とは役割が違うし、なくても生活は成り立つので使われないのもわかります。なんていうか……ボードはお立ち台みたいな役割なんですよね。

ーーお立ち台……!?

例えば真ん中にボードがあってパンが置いてあったとします。そのパンは銘々が手元のお皿にとっていくと、なくなりますよね。何もないお皿が真ん中にあったら下げちゃうと思うんですよ。でも、ボードだったら様になる。そのままにしておいて、食後にコーヒーを淹れたらコーヒーサーバーをそこに置くなど、他の用途で使うこともできます。

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人を招いたある日の昼食。中央のボードにパンをのせ、銘々でとって食べるスタイルに。ボードを真ん中に置くことによって中心に視線を集める効果も。

ーーなるほど、鍋敷きにもなる。

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お立ち台とかステージとか、そういう感じなんです。グラスなどを集めて置いてもいいし。カッティングボードというと、持ち手がついているタイプのボードもありますが、食卓の上で使いやすいのは持ち手のないタイプかもしれません。円型も使いやすいです。これはチーズボードとして売られていました。

ここにのせている浅いグラスは、ヨーグルトやフルーツを入れたりするのにも使います。グラスを器として使うと、気分が変わっていいですよ。食卓に高低差や抜け感が出ます。

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小さなグラスに冷製ポタージュや魚介のマリネなどを入れることも。「冷たい前菜を平皿におしゃれに盛るのは難しいんですけど、このグラスに入れると簡単になんでもかわいく見えます。」

良い器を使うことで、生活が豊かに

ーー器の色とのせる料理の色って、組み合わせのポイントはあるのでしょうか。

こうでなきゃいけない、という決まりはないんですよね。たとえばクラムチャウダーなど白い料理は、濃い色のお皿に入れるほうが映えると言われていますが、私は白っぽい器に入れてもきれいだと思います。ポイントにパセリを散らしたりすると、それがまた映えてくるし。

どんな色のお皿に、どんな色の料理をのせてもいいんですよ。白はどんな料理でも合いそうだと思うかもしれませんが、私はむしろ白皿で食卓を構成するのは難しいと感じています。

ーーなぜでしょうか。

白だと料理にがんばってもらわないといけないんですよね。白でも縁の立ち上がりやリムがあれば表情が出やすいんですけど、白の平皿はお料理に目がいくので、普段の食卓で使うには私はお手上げです(笑)。ケーキなんかは映えて素敵なんですけどね。

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ーー白皿が難しいのは意外でした。私はむしろ柄や色付きのお皿のほうが何をのせたらいいのか考えてしまって、結局白っぽいお皿ばかり使ってしまうんです。

柄のお皿も、すごく使い勝手がいいんですよ。例えば台湾で買ってきたこのお皿。

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ベーシックな料理であればあるほど、器は挑戦できるんですよね。このお皿にのせると、じゃがバターや枝豆など、茹でただけの素材であっても映えるんです。いいお豆腐をどかっとのせて、好きなだけすくってねと出すのでもいい。器が助けてくれるんです。白皿だとこうはいかない。

ーー器が助けてくれる、っていいですね。

色もそうです。これは、人を呼んだり、ひな祭りなどで特別感を出したい時に重宝してるお皿。大渕由香利さんという陶芸家の器です。

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カラフルなんですけど、どんな料理でも意外と合うし、料理より器に目がいくので助けてもらえるんですよね。そうめんだけでもすごくきれいに見えます。これくらいの、副菜や銘々で使う小皿で冒険するのはおすすめです。

私は器と服が似ていると思っているんです。柄や色物の器を使うときも、「いつもモノトーンの無地ばかりだから、今日は柄の服を着てみようかな」という気持ちに近いんです。気軽に量販店で買える服もあれば、デザイナーズブランドのこだわりの一着もありますよね。お気に入りの服を着ていると気分が上がるように、気に入っている器でごはんを食べるといい気分になる。器は1日3回使うものなので、使いやすくて色や質感の良い器を選ぶと生活が豊かになりますよ。

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ーーその感覚、よく分かります。つがねさんのお話を伺って、もっと自由に器を楽しめそうな気がしました。本日はありがとうございました!


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オンラインイベントは10月2日(土)開催!UXD KURASHI LAB.のサイトにて参加受付中(無料)です!

UXD KURASHI LAB. は、住まいや暮らしに関するテーマを取り扱うコミュニティです。「暮らしを楽しみ、自分らしい住まいを作っていく」をコンセプトに、暮らしに関する調査や、多種多様なジャンルのプロフェッショナルな方との座談会など様々なイベントを企画しています。参加者同士でアイデアを出し合ったり、アンケートに答えることを通じて、住まいや暮らしについて考えていきます。

アイスムと連動した調理体験会や子育てサロンなど、オンラインイベントなども随時企画しています!

UXD KURASHI LAB.


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取材・文:崎谷実穂
撮影:村上未知