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上田淳子さんに教わる「はじめの一歩」料理マニュアル

特別企画

FOOD
2023.06.06

「今まで料理をほとんどしてこなかった」という読者さんから、料理してみたいけど「はじめの一歩」ってどうしたらいいの、という声を定期的にいただきます。今回はビギナーの方向けの調理に関して研究されてきた上田淳子さんをお迎えして、料理を始めるにあたってのあれこれを教えていただきました。
さらに「作りやすい」をポイントに、初めての方でも作りやすいレシピを考えていただきました。ぜひお試しください。

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お話を伺った人:上田淳子(うえだじゅんこ)さん

料理研究家、兵庫県生まれ。本格的な西洋料理から日本の家庭料理、スイーツやパンまで守備範囲の広さは業界でもトップクラス。自らの料理研究だけでなく、現代人の実際的な生活に根差した「日々どう食べ、どう作っていくか」といった提案にも定評がある。

調理道具、まずはこれだけそろえよう

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こちらは上田さんが使っている調理道具の一部

1. 直径24㎝のフライパン(フッ素加工でふたのあるもの)

ポイントはフライパンの直径です。一人暮らしの方が最初に買うなら、フッ素加工の24㎝のものをおすすめします。20㎝のものはいかにも「一人用」で、肉1枚を焼くぐらいならじゅうぶんなのですが、炒め物などには案外使いにくい。直径26㎝になると、一人暮らし用のキッチンだと流しに入りにくいことも多いです。

価格帯ですが、あまりに安いものはすぐ劣化する可能性が高いです。2500円ぐらいのものを選ぶと長く使えて、結局はお得ですよ。フッ素加工は使っているうちにだんだんとはがれてくるものです。目玉焼きを作ってくっつくようになってきたら、買い替えどきと覚えてください。

フッ素加工のフライパンを長持ちさせる使い方、お教えしますね。

  • 強火にかけない
  • 使い終わってフライパンが熱いとき、水をかけるなどして急激に冷やさない
  • 空だきしない(中に物を入れてない状態で火にかけない)
  • 金だわしなどで洗わない

以上を守るとフッ素加工がはがれにくく、いい状態で長く使えます。

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2. 直径22㎝の深さがあるフライパン(フッ素加工でふたのあるもの)

こちらは鍋としても使うのが目的。味噌汁など汁気のあるものや煮物、カレーなどの炒め煮が必要な料理などを作るときに便利です。インスタントラーメンを作るときにも。

3. 包丁とまな板

料理する上で欠かせないセットですが、ご自宅のキッチンの大きさを考えて選ぶことが大事です。まな板を置けるスペースはどのくらいかを考えて、そのまな板の大きさに合った包丁を選ぶと、使いやすく、動きやすい環境作りにもつながります。キッチンや流しが狭い場合は、包丁ではなくナイフぐらいのサイズでもいいですよ。

包丁は一度買ってしまうと「使いにくいから買い換えよう」というのも大変なもの。できれば3千円前後ぐらいのものから選んでほしいです。材質はステンレスが、さびずに清潔に使えるという点でおすすめ。

包丁も使っているうちにだんだんと切りにくくなってきます。トマトを皮目から切ってみて、切りにくくなったら研ぎどきのサイン。キッチン用品売り場に簡単に使える研ぎ器が売られているので、持っておくといいですよ。ものによりますが、一つ1000円ぐらいで売られています。

まな板の材質もいろいろですが、ポリプロピレン製のものは乾きやすいのでカビにくく、使いやすいですよ。木製で厚みのあるものは包丁のあたりがよく、きれいに切れるという利点があります。

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4. キッチンばさみとピーラー

料理はじめは、この二つが活躍してくれますよ!料理に積極的になれない方って、包丁に慣れず「うまく切れないから」とおっくうになっている人も多いです。キッチンばさみは肉も野菜も切れるし、なんなら出来あがった料理を切ったっていい。ピーラーは皮むきだけでなく、薄切りをするとき使うのも便利です。

安いものだと、どうしてもすぐ切れなくなっちゃうんですね。キッチンばさみなら1000円以上、ピーラーなら500円以上のものを選ぶと、切れ味を長めに保てると思いますよ。

5. ボウルとざる、菜箸、へら

食材を洗って水気を切るためのボウルとざる。直径は18~20㎝のものがいいでしょう。ボウルは耐熱製のものを買うと、そのままレンジに入れて調理することができるので便利です。

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炒め物をするとき、やっぱり必要なのが菜箸。普通の箸でやれないこともないけど、長さのあるほうが安全です。結ばれている糸は切って使います。

へらはシリコン製のものがおすすめ。フライパンに残った汁気や粘度のあるものをかき出すのにも、液状のものを混ぜるときにも使いやすいですよ。

最初にそろえたい調味料

料理をする際に欠かせないものが調味料です。何をまず買っておくといいか、その選び方に関してお伝えします。

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塩も種類があるのですが、「あら塩」というものをおすすめします。計量しやすく、塩味もきつくないという良さがあります。一般的にスーパーで売られている、買いやすい値段の「あら塩」でOKです。

醤油

選ぶなら「使い切りやすい量」のものを。お得だと思って容量の多いものを買うと、なかなか使い切れません。古くなると味もにおいも変わります。

植物油、いわゆるサラダ油が使いやすいです。香りや味にクセがないのがいいところ。買いやすい値段のもので構いません。


さあ、調理道具と調味料はそろいました。では実際に「第一歩の料理」を作ってきましょう。

実践レシピ 1. 焼くだけ!「豚肉炒め野菜のっけ」

今回考えたのは「豚肉炒め野菜のっけ」です。豚肉を炒めて、カット野菜の上にのっけて、好きなドレッシング、あるいはポン酢、めんつゆなどをかけていただきます。

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材料(1人分)

  • 豚こま肉…100g程度
  • カット野菜(キャベツ、レタスなど)…1パック
  • 油…ティースプーン1杯程度
  • 好みのドレッシング…適量

料理のポイントで、経験と慣れが必要なものは「切る」「火入れ」「調味」の三つです。最初はこの三つが手間に感じ、腰が引けてしまいがちですよね。つまりこの三つが少なければ少ないほど、作りやすいレシピなわけです。今回は火入れにあたる「焼く」というプロセスだけのレシピにしました。

豚肉を選んだ理由は「薄さ」です。鶏肉は厚みがあるので、慣れないと火が入ったか分かりにくい。また切るのも手間です。豚肉なら最初から切られているものが多く、薄いので火も入りやすいのです。

それでは、作っていきましょう。

作り方

1. フライパンに油をひいて、中火にかけます。
2. フライパンに肉を入れて炒めます。豚肉の赤いところがなくなったら、火が通ったサインです。
  • ジュワッと音が立つのが怖いようでしたら、油と肉を最初に一緒に入れてからの加熱でもOKです。
3. 器にカット野菜を入れて、焼いた豚肉をのっけて、好みのドレッシングやポン酢などをかけて完成です。

慣れてきたら、好きな野菜をキッチンばさみで切ってもいいですし、豚肉に塩こしょうしてみる、肉と野菜を一緒に炒めてみる、というふうにプロセスを増やしたり、アレンジしたりしていきましょう。

実践レシピ 2. レンジで「ブロッコリーおかか醤油和え」

火を使わずできる副菜も1品、作ってみましょうか。

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材料(1人分)

  • ブロッコリー…5房程度
  • おかか、醤油…少々

作り方

1. ブロッコリーは小房に分けておく。
2. レンジOKの容器に切ったブロッコリー、水少々を入れてラップをかけ、電子レンジ(600W)で2分加熱する。
3. 湯気に気をつけつつラップを取り、容器内の水を捨てて、おかか、醤油をかける。

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冷凍のブロッコリーは最初から小房に分かれていて便利です。冷凍のものを使う場合は、レンジにかけるとき水を入れる必要はありません。

※ブロッコリーの解凍時、水気が出やすいので必ず捨ててから使うこと

知っておきたいレシピ独特の表現
「ひとつまみ」と「少々」の違い

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最後に、レシピを見ながら料理を作るときに、知っておきたい「表現」について伺いました。

レシピには独特の表現もいろいろと出てきます。よく「分かりにくい」と聞かれるものを紹介して、解説しておきますね。

「少々」
塩などを加えるときに用いられます。親指と人さし指の2本でつまんだ量のことです。

「ひとつまみ」
こちらは親指、人さし指、中指の指3本でつまんだ量のこと。軽くではなく、しっかりつまんだ量と考えてください。

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塩ひとつまみは意外と多い

これから料理をしていく上で、レシピ記事を参考に料理してみたいと思われる方は、大さじ、小さじもそれぞれ1本ずつ買っておくといいでしょう。また計量器(スケール)もあると便利です。

計量といえば、レシピでは野菜の分量として「トマト 中1個」「玉ねぎ 小2個」などと書かれることもあります。各出版社やJAなどで大きさの決まりがあり、きっちりグラム数で書くとややこしくもなることから、このような表記になっています。

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トマト 中1個

しかし、野菜の平均的な大きさが分かっていないと返って混乱するかもしれませんね。その場合は手間ですが、「玉ねぎ 中 何グラム」と検索して確認しください。

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玉ねぎ 中1個

「ひとかけ」
バターやにんにくなどを料理で使う際によく出てくる表現です。10g程度、大きさでいうと親指の先ぐらいと覚えておくといいでしょう。

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にんにく ひとかけ

「中1個」といった書かれ方の場合は、厳密に計量しなくても料理の出来にさほどの影響がないから、ざっくりとした表記になっているわけです。
「適量」という表記もレシピではよく出てきますが、「自分にとっての適量」と感じるぐらいでOKなのです。

最初は不安なこともいっぱいあると思いますが、どうか難しく考えすぎないでくださいね!

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取材・文:白央篤司
撮影:千葉諭
イラスト:あきばさやか