リュウジさんの「至高の和風きのこパスタ」を金澤ダイスケさんが作る
料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストは、フジファブリックでキーボードを担当する金澤ダイスケさんです。
前回は金澤さんの「マヨネーズカルボナーラ」を作りました が、後編では金澤さんがリュウジさんのレシピ「至高の和風きのこパスタ」を作ります。フライパンひとつで作るワンパンパスタ、はたしてそのお味は…?
「毎日同じ味を作るのが苦手」など、共通点の多い二人。そんな二人の料理好きトークも見どころです!
至高の和風きのこパスタ
材料(2人分)
作り方
- 1. にんにくを刻み、ベーコンは細切りにする。エリンギは輪切りにして、舞茸としめじは割いておく。
- 2. エリンギと舞茸、しめじをボウルに⼊れ、塩を振って混ぜ10分ほど置く。
- 3. フライパンで油を熱してにんにくを炒め、シュワシュワしてきたらベーコンを炒める。
- 4. きのこを加えて中⽕で炒め、きのこが縮んできたら⽔と⽇本酒、昆布茶を加える。
- 5. 沸いたら具材と⼀緒にパスタを中⽕で5分茹でる。
- 6. ⽔気がなくなったら醤油、砂糖、バターを加えて和え、お⽫に盛って完成。
きのこに塩を振って寝かせるのがリュウジ流
まずはにんにくを刻みましょう。
リュウジさんに見られながらリュウジさんのレシピ作るの、緊張するな~。
上手い人の料理ってね、見てて楽しいんですよ。
ベーコンはどんなものでもOK。なければツナ缶とかでも大丈夫です。
エリンギは具材感が出るので厚めに切ってください。これね、他のきのこでもいいんですよ。しいたけとか。
しいたけでもおいしそう。しめじはどの程度ほぐします?
お任せします。粗くほぐせば具材感が出るし、細かくほぐせば一体感が出ますね。
ここで、きのこに塩を振って混ぜておきます。こうすると浸透圧できのこから水分が出て、きのこの味がキュッと締まるんですよ。あと、香りが出る。
僕はきのこを冷蔵庫に入れるとき、あえてラップをかけずに乾燥させます。そうするとおいしくなる。
たしかに、きのこは乾燥することで味が凝縮されますよね。ドライポルチーニとか乾燥しいたけとか。
数種類のきのこを使うことでより深い味わいに
きのこは、出てきた汁ごと入れてください。
もうきのこの香りがすごい。いい香り!
リュウジさん、このレシピは味の素を使わないんですね。
そうなんですよ。最近は逆に、「味の素なしでどこまでやれるか」みたいなこともやってます。
きのこは何種類か入れたほうがおいしいですか?
なければ1種類でもいいんですが、きのこって複合的な旨味があるから、重ねるとより味わいが深くなりますね。でも、入れるきのこによって変わってきます。たとえば、しいたけを入れたらしいたけの香りが一人勝ちしちゃう。それはそれでおいしいけど。
なるほどね。
麺が汁の旨味を吸うワンパンパスタ
じゃあ、沸いてきたのでパスタを入れましょう。フライパンの上にパスタを立てて、ひねりながらぐっと押し込む感じで。
やったことないな。こうですかね?
おぉ、さすが!これ、一発でできるのすごいですよ。
やった!
ワンパンパスタ、麺が汁の旨味を吸うのがいいですよね。
そうそう。ただ、ワンパンパスタはアルデンテにはしにくいんですよ。
たしかに。麺が柔らかくなっちゃいますもんね。
水分量を減らすとか超強火でやっちゃうとか、アルデンテにするやり方もあるにはあるんですけどね。これはもう好みの問題。僕はそこまでアルデンテにこだわりはないかも。
汁気がちょうどよくなってきたので、仕上げに醤油と砂糖とバターを入れます。砂糖の代わりにみりんでもいいですよ。香りが飛ばないように、最後に入れるのがポイント。
お店の香りがする!
じゃあ、盛り付けをお願いします。
こんな感じかな。
さすが、上手ですね!
お好みで万能ねぎを散らしたら完成です!
おいしそう!これは絶対においしいですよ。
柚子胡椒とポン酢は、いいものを知ったら戻れなくなる?
乾杯!
おいしい!うん、きのこの旨味がすごいですね。
うん、僕のレシピだけあって「旨味好きな奴が作ったな~」って味がする(笑)。
なんかね、ちゃんと麺の中に旨味が入ってる。ワンパンパスタの良さが出てますよね。ソースと麺の一体感がすごい。
これがワンパンパスタと別茹でパスタとの違いですよね。どっちがいいとかじゃなくて別物っていう。
しかも酒飲みの作る味ですよね。日本酒が合いそう。
ワインを合わせてもいいかも。
最近、ちょっと悩みがあって。僕のレシピってみんなに作ってもらってなんぼだから、手に取りやすい食材や調味料しか基本使わないようにしてるんですね。だけど最近、ニッチな食材を使いたい気持ちがあって。
そろそろリュウジさんもニッチな食材や調味料を提案するフェーズに入ってきたのかもしれませんよ。たとえばナンプラーとか薄口醤油とか、普段あまり買わないような調味料でも、一本使い切るところまでリュウジさんがレシピを提案してくれたら、みんな買うんじゃないかな。
たしかに。「みんなが一本使い切るところまで責任を持たなきゃいけない」っていうのはありますね。
柚子胡椒、このパスタに合いますね。
そうなんですよ。でも、柚子胡椒って商品によってかなり味が違いません? チューブと瓶詰めではまったく違う。
わかります、わかります。
僕、ファンの方から京都のいい柚子胡椒をいただいたことがあって。食べた瞬間、あまりのおいしさに「あ、この味を知りたくなかったな」って思いました(笑)。一度いいものの味を知っちゃうと、もう安いものに戻れなくなるから。
そういう食材、ありますよね。
あと、柚子胡椒と同じくらい違うのがポン酢。一度いいものを使うと、スーパーで売ってる手軽なポン酢に戻れなくなる。
わかる。ミツカンのポン酢もおいしいけど…。でも、ごまだれは僕の中でミツカンが一位です。
ミツカンのごまだれ、うまいっすよね!
今まで高級なものも含めていろんなごまだれを使ってきたけど、個人的にはミツカンが一位ですね。多少ジャンクな味だからこそのおいしさがあって。自分で本格的なごまだれを作ろうとしても、どうしてもミツカンを越えられないんですよ。
二人とも、シェフには向かない性格
金澤さんは、外食はどういうお店に行きますか?
安いところから高いところまで。赤坂に行く機会が多いんですけど、赤坂はグルメ街ですね。24時間営業のソルロンタン屋さんによく行きます。
ソルロンタンって何ですか?
韓国の牛骨スープです。スープに15種類くらいの小皿がついてくるの。あと、三軒茶屋にお気に入りのタコス屋さんがあります。けっこう本格的なタコスを出すお店。
いいですね!僕、タコスが大好きでタコスプレス機を買ったんですよ。
あ、僕も持ってる。
えー!自分以外でタコスプレス機持ってる人にはじめて会った!
タコス屋さんって少ないから、じゃあ自分で作っちゃおうと思って。
僕も同じです!
タコスって作るの難しいんですか?
いや、そんなこともないよ。小麦粉だと弾力が出るからプレスできないんだけど、マサだとね…。
僕もマサ買ってる!
そんな人なかなかいない(笑)。マサから作ってる人、料理研究家でもそうそういないから。
「マサ」って何ですか?
マサはトウモロコシ粉で作られた生地の名前です。この言葉を知ってる人はかなり少ないですよ。
金澤さんはご実家がレストランということで、小さい頃からお料理をされてたんですか?
はい、してました。小学生のとき、将来はシェフになりたいなと思って親にそう言ったんですけど、「あんたは同じものを二品と作れない性格だから向いてない」って言われて。
わかる!僕も毎日違うものを作りたくなっちゃうから、性格的に向いてない。どんな日も同じものを同じクオリティでお客さんに提供しつづけるって、すごいことですよね。
シェフに向いてる性格ってどういう人ですか?
少なくとも我々二人ではないですね。100皿作ったら、100皿とも同じ味にできる人。ちゃんとお客さんが主役になれるような。
たぶん僕や金澤さんは、同じものを作るより新しいものを生み出すほうに意識が向いちゃうタイプ。だから、「毎回出てくる料理が違う」ってコンセプトのお店だったら、ギリギリできるかもしれない。
金澤さんは、いつ頃ミュージシャンになろうと思ったんですか?
高2くらいですかね。今、夢がすべて叶ってます。ミュージシャンだし、仕事で料理をする機会もあるし。
たしかに。僕も一時期、ミュージシャンに憧れていたんですよ。声を仕事にしたくて、声優さんかボーカリストになりたかった。でも、性格が引っ込み思案だから…。
リュウジさん、引っ込み思案ですか…?
意外と引っ込み思案なのよ。
でもミュージシャンはね、引っ込み思案の人が多いですよ。プライベートではシャイみたいな。
たしかに、僕の知り合いもそうかも。
ミュージシャンじゃなくても、有名人が歌を出すことってあるじゃないですか。だからリュウジさんももしかしたら…。
いやいやいや(笑)。僕、酒めちゃくちゃ飲むから声が出ない日もあるんですよ。だからやっぱり歌は向かないかな。僕は料理研究家でよかったです。