休日課長さんの「コクうまキムチ鍋」を作る
料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストは、ゲスの極み乙女、DADARAY、ichikoro、礼賛の四つのバンドで活躍するベーシストの休日課長さんです。
ミュージシャンでありながら料理好きとしても知られ、レシピ本『ホメられるとまた作りたくなる!妄想ごはん』(マガジンハウス)が好評の休日課長さん。リュウジさんとはたびたびコラボしており、プライベートでも飲み仲間なのだとか。
今回は、リュウジさんが休日課長さんのレシピ「コクうまキムチ鍋」を作ります。リュウジさんいわく「課長じゃないと思いつかないクセつよ料理」とのこと。いったい、どんなお鍋なのでしょうか?同い年コンビによる妄想たっぷりの恋バナにも注目です!
コクうまキムチ鍋
材料(2人分)
作り⽅
- 1. 長ねぎはみじん切り、⾖腐はひと⼝⼤に切る。しめじはほぐす。 豚⾁は5cm幅に切って、塩(分量外)をふっておく。
- 2. 鍋にごま油を熱し、豚⾁、ねぎ、⾖板醤を⼊れて炒める。豚肉の⾊が変わったらAを⼊れて混ぜ、しめじ、⾖腐、キムチを⼊れる。沸騰したら弱⽕で5分煮る。
- 3. もやしとしょうがを⼊れ、キムチの汁⼤さじ1をかける。 ⽕が通ったら⽫に盛る。
出会いは飲み会。コラボすることも多いふたり

課長とは、共通の知人の飲み会で出会ったんですよね。

だいぶ昔ですよね。

正直言うと、酔っ払ってたから課長の第一印象を覚えてないんです。だけど、「一緒に料理の仕事やりたいっすね」って話になったことは覚えてる。言ったからには実行しないと気が済まなくて、ある企業に企画を持っていったら採用されました。

リュウジさんについていけば間違いないと思いましたね(笑)。

課長、今って忙しいんじゃないですか?

今、ツアー中なんですよ。四つのバンドをやっているので、常にツアーをしています。

それは忙しい。料理する時間ないんじゃないですか?

料理はしたりしなかったり。波がありますね。
材料を切るも…これ本当に2人分?

まずは、長ねぎを粗めのみじん切りにしていきましょう。

斜め切りじゃなくてみじん切りなんですね。鍋にしてはめずらしい。

そう、最初にねぎと豚バラを炒めてから煮るんです。よく行く火鍋のお店でそういう作り方をしていて、おいしかったから真似しました。

ねぎの青い部分は入れますか?

僕は入れる派だけど、そこはお好みで。赤いスープに緑が入ると、アクセントになってうまそうに見えるんですよ。

赤に緑って映えますからね。僕は最近、YouTubeのサムネばっかり気にしてます。サムネ職人ですよ。

どんなサムネだと見られるんですか?

最近は、僕の顔を出したほうが再生回数が伸びるんです。「この人が作ってるんだ」って気持ちになるみたい。

作り手の顔が見えるほうが安心感があるのかな。
しめじの石づきを切り落とし、ほぐす
豆腐を一口大に切る

豆腐は、木綿でも絹でもお好きなほうで。人それぞれ大きさにこだわりがあると思うので、お好みのサイズ感で切っちゃってください。

パックの中で切ってドボンと鍋に入れる派なんだけど、それで大丈夫?

ばっちりです!
豚バラを切り、軽く塩を振って下味をつける

切りものは以上です。

課長、これ多くない?本当に2人分?

2人分と言いながらかなりありますね。僕にとっての2人分、みたいな。

じゃあ4人分ですね。

無意識に分量詐欺してしまったな。
ねぎをスープに溶け込ませるのがポイント
鍋にごま油をひいて中火で熱し、ねぎと豆板醤を炒める

具材を先に炒めるのはチゲっぽいですね。でも、ねぎをこんなに炒める鍋ってあまりないな。これ、使えるかも。僕のレシピで使うとなったら課長の名前を出しますね。

ぜひぜひ。
ねぎがしんなりしたら、豚バラを入れて炒める

ねぎって炒めるとけっこう少なくなりますよね。

「あんなにねぎあったっけ?」って思いますよね。

これは具材というより、ねぎをスープに溶け込ませる感じだな。ねぎ炒めるかどうかでスープの味が全然違いそう。

そうなんですよ。このあと鶏ガラスープの素を入れるけど、もし切らしちゃってたらなくても大丈夫。そのくらい、ねぎの出汁が出るので。
休日課長さんならではのアイデアがいっぱい!
豚バラの色が変わったら調味料を入れる

オイスターソース、けっこう入りますね。

もうこれだけで旨味の玉手箱ですよ。
キムチとしめじと豆腐を入れ、沸騰したら弱火で5分ほど煮る

しょうがは入れないんだ。

おろししょうがは最後です。ラーメンのトッピングに入れるイメージ。

なるほど!これは課長じゃないと思いつかないわ。

僕っぽいですか?

めちゃくちゃ課長っぽい。こんな鍋、見たことない。

リュウジさんって褒め上手ですよね。料理研究家の覇者でありながら、すごく褒めてくれる。

僕は覇者なんかではないですよ。誰しも、一つは得意料理があるじゃないですか。日々料理をしている方に得意料理を出されたら、僕なんてぜんぜん勝てない。まぁ、自分が勝ってるなんて思うと成長できないからね。

意外と謙虚なんですよねぇ。
グツグツしてきたらアクを取る

すっかりねぎがいなくなってる。

あんなにいたのが懐かしくなりますね。
もやしとしょうがとキムチ汁を入れる

もやしは最後なんですね。

はい、シャキシャキ感を残したくて。ある程度もやしに火が通ったら出来上がりです!

これはうまそう!

お腹が空きました。
セオリー通りじゃない「クセつよ料理」

課長、お酒飲みます?

いえ、今日はこの後レコーディングがあるんで、ソフトドリンクでお願いします。

それは残念。この鍋、絶対に酒が合うんだけどな。


乾杯!

今、心臓が飛び出そうなほどドキドキしてます。おいしくなかったらどうしよう。

いや、あの調味料でおいしくないわけはないですよ。

…うまいっ!!

よかった~!

なるほど、こういうことね。

どういうことですか?

基本的にはコチュジャンと豆板醤ってあまり合わせないんですよ。でも、これはすごく味がまとまってる。砂糖を加えてないのにコチュジャンの甘味が効いてるし、紹興酒もふわっと香りを出してる。

ほっとしました。実は、この企画のお話をいただいたときから胃がキリキリしてたんですよ。リュウジさん、おいしくないときの反応がわかりやすいから。

僕、嘘はつけないからね。でも、これは本当に僕の好きな味です。『赤から鍋』のそこまで甘くないバージョンって感じ。モツでも合いそう。

そう言われるとそうかも。『赤から鍋』好きなんですよ。

このレシピのポイントは、ねぎを炒めること、中華調味料と韓国調味料を一緒に使うこと、ラーメンを彷彿とさせる後入れしょうが。ぜんぜんセオリー通りじゃないんですよ。意表を突いてくるから嬉しくなっちゃう。

僕はセオリーを知らないんで。

セオリー通りだと、豆板醤とコチュジャンとオイスターソースってほぼ合わせない。こういう意表をついた調味料の組み合わせ方って、テクニックと勇気が必要なんです。課長にはそれがある。

そこまで分析しちゃいます?

しょうがも、普通は最初に入れますよね。それを最後に持ってきたのが課長っぽい。

単純に、しょうがそのものの味がしてほしかったから最後に入れました。シンプルな考え方ですね。

そのシンプルな考え方をおいしい料理に昇華するのがセンスなんですよ。課長の料理って、センス重視の「クセつよ料理」なんですよね。料理には理論派と感覚派がいるけど、僕は理論派で、課長は完全に感覚派。

僕は基礎がないんで、感覚でやるしかないんですよ。

まぁ、最初に基礎を叩きこんじゃうと形を崩せないこともありますから。僕はガンガン形を崩すタイプですけど。

料理の常識を覆してますもんね。

でも、最近はセオリー通りの料理もしています。最近のYouTubeは、凝った料理のほうが見られるんですよね。みんな「技術が見たい」って気持ちがあるのかも。

流れが変わってきたんですね。

今は凝った料理が流行ってますけど、そのうちまた簡単な料理が流行ると思いますよ。料理もファッションと同じで、流行を繰り返すから。

なるほどなぁ。
恋愛トークでふたりの妄想が爆発!

課長、浮いた話はないんですか?

まったくないです。理想としては、食に関心のある女性と出会いたいですね。

たしかに、食への関心は大事。

僕は食べるのが大好きなんで。食の好みが合うかどうか以前に、食べること自体に興味がない方だとちょっと寂しいですね。

わかる!僕もそう。別に、グルメや料理上手じゃなくてもいいんですよ。ただ、おいしいものを食べたときに「おいしい!」ってリアクションがないと、張り合いがないかも。

レシピトレードで恋バナになるの、めずらしいですね。

僕と課長って同い年なんですよ。タメでお互い独身だから、飲むといつもこういう話になる。

僕、音楽以外の現場ではだいたい恋バナしてます。

それで課長の妄想劇場が始まる。

休日課長さんといえばレシピ本のテーマも「妄想ごはん」ですが、このお鍋はどんなシチュエーションで食べたいですか?

ベタなんですけど、冬のディズニーデートのあとに食べたいですね。一日中ディズニーランドで遊んで帰ってきて、まだ寒がってる彼女にパパッと作ってあげる。ねぎをみじん切りにして冷凍してあるから、すぐに作れるんですよ。彼女は一口食べて「これ好き…!」って言ってくれます。

彼女と食べる前提だからにんにく使ってないんですか?

それもありますね。

あるんかい!

リュウジさんはどういうシチュエーションで食べたいですか?

いや、僕のはいいですよ。課長の妄想だけでお腹いっぱい。

またまた。リュウジさんもなかなかの妄想ニストじゃないですか。

僕はね、キャンプで食べたいな。カセットコンロと切った具材を持って行けば、アウトドアでも意外と簡単にできるんですよ。で、二人で熱燗飲みながらこの鍋を食べて、「あったかいね」「でもまだちょっと寒いね」って会話のあとに…抱きしめますね。

フー!

恥ずかし!課長とコラボすると妄想ネタを振られるからなぁ。

課長、食や料理にまつわる恋の思い出ってありますか?

小3のとき、バレンタインに手作りお菓子をもらったんですよ。それでお返しにクッキーを作ることにしたんですけど、料理好きの親父が張り切っちゃって。親父の手解きを受けてレモンフレーバーとカカオのゴツゴツしたクッキーを作ったら、それがめちゃくちゃおいしかったんです。

いい思い出だ。

それが、女の子にそのクッキーをあげたら、「私があげたやつよりおいしい」って泣いちゃったんですよ。

あらら…。たしかに、小3でそんな本格的なクッキー作ってこられたらちょっとショックかもね。レモンフレーバーとか、普通の小3の発想じゃないでしょ。

僕、恋と料理の思い出となると、悲しい記憶のほうが多いんです。自分の誕生日に仲間内でカレーパーティーをしたんですけど、気になってた女の子がお米をゴシゴシ研いでたんですね。だから「お米はそんなに力入れて研がなくてもいいと思うよ」って言ったら嫌な顔をされてしまって…。僕としてはやさしく伝えたつもりだったんですけど、友達からも「いや、あれは姑みたいだった」とか「目が怖かった」とか言われました。

料理好きならではの悲しい失敗だ…。

『ホメられるとまた作りたくなる!妄想ごはん』
休日課長・著(マガジンハウス)
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