「至高のナポリタン」をはるあんさんが作る

リュウジのレシピトレード #12 後編

PEOPLE
2022.12.19

料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストは、料理家・動画クリエイターのはるあんさんです。

『はるあんのベストおやつ』(ライツ社)が、第9回料理レシピ本大賞・お菓子部門にて準大賞を受賞したはるあんさん。そんなはるあんさんが選んだリュウジさんのレシピは「至高のナポリタン」でした。喫茶店のナポリタンが好きだと言うはるあんさんは、リュウジさん流ナポリタンを気に入ってくれるのでしょうか?

本連載きっての「ほのぼの回」、後編です。

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至高のナポリタン

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材料(2人分)

  • パスタ(1.9mm)…200g 
  • マッシュルーム…4個(100g ほど)
  • ウインナー…6本(100g ほど)
  • ⽟ねぎ…1/2個(100g ほど)
  • ピーマン…⼩ 2個 
  • ケチャップ…⼤さじ8 
  • バター…20g
  • サラダ油…⼩さじ4
  • ⽔…2L
  • 塩…20g 
  • 粉チーズ…少々(お好みで) 
  • 乾燥パセリ

作り方

1. ウインナーを斜め切りにし、⽟ねぎは薄切り、マッシュルームは5mm幅に切り、ピーマンは細切りにする。
2. フライパンに油を熱し、ウインナーを中⽕であまり動かさずに焼く。
3. ⽟ねぎを加えて、少ししんなりするまで炒める。ケチャップとマッシュルームを⼊れたら弱⽕にし、ケチャップが具材にまとわりつくまでしっかり炒める。
4. バターは⾵味を、ピーマンは⾷感を残すために、後⼊れでさっと炒める。
5. 別の鍋に⽔を沸かして塩を加え、パスタを茹でる。ザルにあけたら4に加え、オレンジ⾊になるまで炒める。 

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喫茶店のナポリタンと、至高のナポリタン

リュウジ

今回、なんで至高のナポリタンを選んだんですか?

はるあん

食べたかったからです。あと、前編でバナナケーキを作ったので、ケーキとナポリタンで喫茶店風になるかなと思って。

リュウジ

なるほど!はるあんちゃんは雰囲気作りがうまいよね。

はるあん

妄想が好きなんです。こんなのがあったらかわいいだろうな、おいしいだろうな、って常に考えてます。

リュウジ

はるあんちゃん、ナポリタンがメニューにあるような喫茶店は行くの?

はるあん

行きます。今、喫茶店巡りが流行ってるじゃないですか。この前、長野県の松本へ旅行に行ったんですけど、松本の喫茶店で鉄板ナポリタンを食べました。すっごくおいしかった~。

リュウジ

ナポリタンって冷めてもおいしいよね。冷めると麺がもちっとしてくるから、それがまたいい。喫茶店によっては、茹でた麺を一度冷蔵庫に入れてるみたいだね。

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レシピを確認する二人

リュウジ

喫茶店のナポリタンってだいたい砂糖を使ってるんだよね。だけど、至高のナポリタンはケチャップだけ。砂糖もコンソメも、他の調味料は何も入れない。ひたすらケチャップを煮詰めて酸味を飛ばして、甘味と旨味だけを残すの。

というのも、僕は酸味が苦手なんですよ。最近は大丈夫になってきたけど、これは初期のレシピだから、酸味を全部飛ばしています。

はるあん

ケチャップだけでどんな味になるのか、すごく楽しみです!

動画を撮らない日も、料理は毎日する

リュウジ

じゃあ、まずは具材を切りましょうか。

はるあん

はい!

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⽟ねぎを薄切りにする

リュウジ

さすが手つきが慣れてるね。毎日料理してるの?

はるあん

毎日してます。

リュウジ

動画撮らなくても?

はるあん

動画を撮らない料理のほうが多いです。毎日晩ごはんを作ってるし、よくパンも焼くし。友達が遊びに来て、みんなで一緒に作ったりもしますよ。

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ピーマンを細切りにする

リュウジ

僕はね、ナポリタンはピーマンの香りと緑色があってこそだと思うんだよね。本当はピーマン嫌いなんだけど。

はるあん

そうなんですか?肉詰めも?

リュウジ

肉詰めは好き。肉と一緒に食べれば大丈夫。

はるあん

私、幼稚園児の頃からピーマンの塩昆布炒めが大好きで。あまりに好きすぎて、「お弁当のおかず、これだけでいい!」って言いました。

リュウジ

安上がりな子だな~。

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マッシュルームを5mm幅に切る

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ウインナーを斜め切りにする

リュウジ

斜め切りにすると断面が広くなるでしょ。そうすると、フライパンで焼いたときに旨味が出やすくなるんですよ。

はるあん

なるほどです!

大量のケチャップが味のポイント

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パスタを茹でる用のお湯を沸かす

リュウジ

パスタって、テフロンダイスとブロンズダイスがあるでしょ。今回はブロンズダイスを使うから、お湯はたっぷり沸かしたほうがいい。なぜなら、ブロンズダイスは表面がザラザラで粉が出やすいから、煮汁がドロドロになっちゃうんですよ。

はるあん

いわゆるお手頃価格のパスタのほうが、表面がツルツルしてますよね。

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フライパンに油を熱し、ウインナーを中⽕で焼く

リュウジ

じゃあナポリタンのソースを作っていきましょう。まずは、ウインナーを焼いて焦がして。

はるあん

はい。あまり触らないで、焦げ目をつける感じですね?

リュウジ

さすが、わかってるね。

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⽟ねぎを加えて、少ししんなりするまで炒める

リュウジ

ウインナーがカリカリになってきたら、玉ねぎを入れてください。ちょっとしんなりさせる感じで。甘味と具材感がほしいだけだから、焼き色は付けなくてもいいかな。

はるあん

玉ねぎって、飴色になるまで炒める派とか、いろんな派閥がありますよね。

リュウジ

そうそう。ナポリタンも、料理研究家によってみんな言うことが違う。

はるあん

いろんな料理研究家さんのナポリタンを食べ比べしてみたい!

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ケチャップとマッシュルームを⼊れたら弱⽕にし、ケチャップが具材にまとわりつくまでしっかり炒める

はるあん

ケチャップ、すごく多いですね!この量が味のポイントなんだろうな。

リュウジ

そう、この大量のケチャップをペースト状になるまで煮詰めるわけですよ。この状態だと酸味が強いんだけど、煮詰めて煮詰めて酸味を飛ばすの。

はるあん

じゃあすごく濃厚になるんですね。おいしそう!

ナポリタンにアルデンテは合わない

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パスタを茹でる

はるあん

リュウジさんは、パスタはパッケージに書いてある時間通りに茹でる派?

リュウジ

そのときのメニューによるかな。ナポリタンはね、アルデンテだと合わないんですよ。だからナポリタンのときは表示通りに茹でる。で、ちょっと炒めてクタッとさせる。

はるあん

じゃあ、表示時間通りに茹でますね。

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はるあん

ソースはどうでしょう?そろそろ煮詰まってきましたかね?

リュウジ

まだ水っぽいかな。全体的に、具にケチャップが絡みついてペタペタになるまで煮詰めます。そうしないと酸味が飛ばないから。

はるあん

酸味って意外と飛ばないんですね。ケチャップによっても酸味の度合いが違いそう。

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はるあん

パスタが茹で上がりました!湯切り、行きまーす!

リュウジ

元気だなぁ。

パスタは画角を意識して盛り付ける?

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フライパンにパスタを加え、オレンジ⾊になるまで炒める

リュウジ

パスタをソースの中に入れたら火をつけて。パスタって基本的には焼かないんだけど、ナポリタンだけはちょっと焼きながらやるのね。そのほうが香ばしくなるから。

はるあん

喫茶店の香りがする~!

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バターとピーマンを加えてさっと炒める

リュウジ

最後にバターとピーマンを入れます。最後に入れることによって、ピーマンのシャキシャキ感とバターの風味が生きるんだよね。

はるあん

私、勝手に「ピーマンはよく炒めたほうがいい」って思ってました。たしかに、シャキシャキもおいしそうですね。

リュウジ

ピーマンは生でも食べられる食材だから、さっと火を入れるだけで大丈夫。

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はるあん

リュウジさんのパスタの盛り付け、見てみたいです!

リュウジ

やりましょう。まずは、こういう感じでくるっと盛って、その上に具材を乗せる。

はるあん

素敵!少なめに盛るんですか?

リュウジ

2回に分けて盛るんだけど、一段目と二段目の間にも具材がほしいから。で、二段目もくるりと。こうすると高さが出るでしょ。

でも、YouTubeでは高さを出すと目立たなくなっちゃうんですね。だから僕は、YouTube用の盛り付けは平たくする。

はるあん

それは画角の問題で?

リュウジ

そう、YouTubeはサムネが横広だから。もしも縦だったら高く盛るけど。

はるあん

なるほどです~!

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パセリと粉チーズをかけたら完成

はるあん

おいしそうすぎる!かわいすぎる!

リュウジ

めっちゃうまそう!

丁寧に作ることの大切さ

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リュウジはるあん

かんぱーい!

はるあん

うん、おいしい!

リュウジ

やっぱりこのナポリタンうまいな。

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はるあん

「なんでこんなに深みが出るんですか!?」っていうくらいコクがありますよね。やっぱり煮詰めるからですかね?

リュウジ

うん。あの、ペタペタになるまで炒めるのがいい。

はるあん

このナポリタン、ケチャップ以外の調味料をほぼ入れてないじゃないですか。なのに、こんなに旨味や深みを感じられるのがすごい。ちゃんと味がキリッとしてる。

リュウジ

パスタを茹でるときにしっかり塩を効かせてるから、バランスがいいんだろうね。

はるあん

なるほど。マッシュルームもピーマンも歯ごたえがいいし、ウインナーってこんがり焼くとこんなにおいしいんですね!

リュウジ

丁寧に作るのって大事だなぁって、あらためて思うよね。

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リュウジ

久々に食うな。僕、自分のレシピって食べないんですよね。

はるあん

自分のためにごはん作らないんですか?

リュウジ

作るけど、毎回新作を作るから。一度仕上がったレシピをそのまま再現して作ることがないんだよね。たまに友達にリクエストされて作ることがあるけど、それもちょっとアレンジしちゃう。

はるあん

常に新しい味を探してるんですね。

「今は、誰かに背中を押してほしい時期」

リュウジ

はるあんちゃんって、すごくおいしそうに食べるよね。

はるあん

私、食べることが大好きなんです!

リュウジ

嫌いな食べものはあるの?

はるあん

まったくないです。

リュウジ

すごいね!僕はさつまいもが苦手でさ。昨日、泣きながら「至高の大学芋」を作ったよ。

はるあん

それは、動画でも泣いてるんですか?

リュウジ

いや、動画では自分好みに作ってるからうまいんだけど、試作の段階がキツかった。それでも試行錯誤してたら、最終的にはめちゃくちゃうまいのができたよ。

はるあん

私、さつまいもが大好きなんですよ。揚げても焼いても煮てもおいしい。だから「嫌いな人もいるんだ!」ってビックリしました。

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リュウジ

はるあんちゃんはレシピ本大賞のお菓子部門で準大賞を受賞したけど、次はどんな本を出したいの?

はるあん

うーん、今ちょっと迷っている時期で。次になにをがんばろうか、考えているところです。

リュウジ

せっかくノッてる時期だから、新しいことにチャレンジしてもいいんじゃない?

はるあん

そうなんですよねぇ。なにをしたいのか迷っていて、モヤモヤしてます。今は、誰かに「これやりなよ」って背中を押してほしい時期かもしれない。

リュウジ

僕が相談に乗れたらいいんだけど、邪道なアドバイスしかできないからなぁ。

「はるあんちゃんのこだわりを見てみたい」

リュウジ

僕は、はるあんちゃんの「究極レシピ」を見てみたいな。はるあんちゃんって、初心者の人が手間をかけずに作れるレシピを中心にやってるじゃない。そこがすごくいいんだけど、あえて、ものすごくこだわったレシピを見たい。僕の「至高シリーズ」のはるあんちゃんバージョンみたいな。

はるあん

そのシリーズのネーミングはどうしましょう?なにかいい言葉をください!

リュウジ

はるあんちゃんっぽいのがいいよね。はるあんちゃんは「至高」とか「極み」って雰囲気じゃないからなぁ。もっと柔らかいほうがいい。なんだろう、「至福」とか「天使」とか?…ちょっと弱すぎるかな。

はるあん

すごい、リュウジさんが一生懸命考えてくれてる…!

リュウジ

料理系YouTuberってね、シリーズを一つ持っていると強いんですよ。それでレシピを考えられるから。

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はるあん

私、唐揚げだけはけっこうこだわってやってるんです。鶏肉を電子レンジでほんのり温めてから揚げるんですよ。すると、揚げ時間が短くて済むぶん、サクッと揚がるんです。

リュウジ

鶏肉は人肌くらいまで温めるの?

はるあん

そうですね、ぬるま湯くらいまで。でも、温めすぎると火が通っちゃうから、そこの加減にはこだわってます。

リュウジ

いいね、はるあんの「こだわりシリーズ」。やっぱり料理家ってね、みんなそれぞれ、どこかにこだわりを持ってるんですよ。その人なりのこだわりポイントがあると料理家っぽくなる。

はるあん

そのこだわりポイントも、統一感があったほうがいいですよね。「この人はいつもここにこだわるよね」っていう。

リュウジ

そうそう、好きなスパイスを一つ決めておくとかね。それをなんにでも入れちゃうの(笑)。

夢は発信していくと叶う

はるあん

リュウジさんと話しているとすごく参考になります。他にもなにか、アドバイスをいただけたら…。

リュウジ

動画でもSNSでも、とにかく好きなものをめっちゃ公言するといいよ。「これが好きです!」って。すると、それに関係する仕事が来るかもしれない。

はるあん

私、なにが好きかなぁ。本当に料理しかしないんですよ。趣味も特技も料理。あ、でもお洋服は好きかな。あと、最近は桃鉄が好きです。

リュウジ

桃鉄って意外だな!僕らの世代のイメージだよ。

はるあん

今、54年目です(笑)。

リュウジ

54年目はやりすぎ!

いいじゃん。そうやって発信していたら、いつか桃鉄関連の仕事が来るかも!?僕もよくTwitterに好きなゲームのことを書くんだけど、そのツイートを見つけたゲーム会社からコラボの依頼が来たりするもん。

はるあん

すごい!

リュウジ

だからはるあんちゃんも、好きなものややりたいことをどんどんネットで発信していくといいよ。口に出したほうが叶うから。

はるあん

やってみます。言うのはタダですもんね!

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前編はこちら

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取材・文:吉玉サキ
撮影:村上未知