おしえて!牛乳の人!!牛一頭からどれくらいの牛乳が出るんですか? 〜牛乳工場編〜
食べものにまつわる、こどもたちの「なぜ?」「どうして?」。おうちの方もよく聞かれるのではないでしょうか。そこで、こどもたちからのお手紙を片手に、しゃしん絵本作家のキッチンミノルさんに、実際に工場やお店の方に疑問の答えを聞いてきていただきました!写真と動画で、楽しくリポートします。社会科見学に出かけたつもりで、ぜひお子さんといっしょに楽しんでくださいね!
今回、編集部に届いたお手紙はこちら
こんにちは。
ぼくは、牛乳そのものも好きだし、主にチーズなどの乳製品などが好きです。ぼくは一頭の牛からどれぐらい牛乳ができるのか、また、その中からどれぐらいの量が加工されるのか気になりました。
また、乳用牛はどんなえさを食べ、どれくらい食べているのか気になったので教えてください。
工場ではどのように殺菌をしているのか、そして、どのように製品になるのか気になりました。
これからもおいしい牛乳を楽しみにしています。
楓より
前回は牧場の取材をしてくれたキッチンさん。
今回は、牧場でしぼられた牛乳を追って(株)べつかい乳業興社にやってきました。どんな発見、出会いがあるのか。キッチンさんお願いします!
編集部注)
別海町酪農工場
別海町で取れた牛乳を使った商品を作っている。
通販やふるさと納税でも購入することができる。
門脇牧場長に教えてもらい、向かったのは(株)べつかい乳業興社。町の中心部から少し離れた場所にありました!白を基調とした、まさにミルクの工場。
お〜〜い!キッチンさん!!
あっ、高橋施設部長さん!!おはようございます。
おはよう。ようこそいらっしゃいました。今日は牛乳をパックへの充てんと、「さけーるチーズ」(ストリングチーズ)を作っているので楽しみにしていてね。
さけーるチーズはたてにさける塩味の効いたおいしいヤツですね!
そうだね。
それに、いつも見慣れている牛乳パックが完成する瞬間に立ち会えるなんて、今からドキドキします。
ちょうどミルクローリーが工場に着いたみたいだから見にいこう!
建物からホースが出ていますね!!
そう、あのホースをミルククローリーに直接つなげて、建物内のタンクに貯めるんだよ。
おお〜特大のタンク!!毎日どれくらいの牛乳を受け入れているんですか?
日によって違うけど、3~8トンです。
トン!
トンです。そのうちの60%〜70%が牛乳として出荷されて、残りがチーズやバターなどの加工品になります。
まずはこの大きなタンクに貯めて、洗浄化(ゴミ取り)、計量、そして牛乳の品質に問題ないか10種類以上の検査をして、二階のタンクに移すんだ。
わざわざ二階に?
そう。牛乳にあまり刺激を与えたくないのさ。だから一度二階に貯めて、あとは重力で自然に流れていくようにこの工場は設計されているんだ。
液体は高いところから低いところへ…
流れていくっしょ。
はい!
それを利用するんだね。二階に、楓さんが気になっていた殺菌の機械があるからいってみよう!
二階にもタンク・タンク・タンク!!
二階では使用別にタンクを分けている。これを見てみて。
管と調整弁がありすぎ!!
これによって牛乳を用途別タンクに仕分けているんだ。キッチンさんこっちこっち。これをみて。
牛乳を受入れと同時に遠心分離機を使って目に見えないゴミなどを綺麗に除去するのさ。
牛乳をみがく作業ですね!
み、みがく……。ちょうっとその表現は聞いたことないけど。
いま思いつきました!
え〜と、キッチンさん風にいうと、みがいた牛乳の乳脂肪を、この機械で「均質化」していくよ。
均質化?
「ホモジナイズする」ともいうんだけど、牛乳内の乳脂肪分は、牛さんからしぼったままにしておくと牛乳の表面に固まってしまう現象が起こるのさ。これは乳脂肪分が軽いから。だから、この機械で一度乳脂肪分を細かく砕く必要がある。細かく砕くことによって牛乳の中に乳脂肪分が均等に混ざり、最後まで均一の味(質)で飲むことができるのさ。
それで均質化!
それに乳脂肪分が細かくなるので、消化吸収が良くなると言われているんだ。そしてその隣の長細い箱。
はい。
これが殺菌するための機械。
この四角の箱の中で?見えないけど。
そう。
楓さ〜ん!この中で殺菌してますよ!!!見えないけど。
まぁまぁ、見えないのは申し訳ないけど。牛乳は、受け入れからずっと外気に触れることなくパックに詰めるのさ。衛生管理が大切だからね。
なるほど。ちなみに何度くらいで殺菌しているんですか?
うちの工場では、90℃で30秒殺菌しているよ。130℃で2秒という方法が主流で、この方が日持ちはするんだけど、90℃で30秒の方が牛乳本来の味といわれているんだ(ニヤリ)
なるほど(ニヤリ)
だけど、殺菌するだけじゃなくて、殺菌したら一気に5℃にまで冷やす!!
一気に!?
そう、ぐ〜んと、ぐ〜んと一気に下げる。温度を上げて殺菌したら一気に温度を下げる。これが大事なんだ。
勉強になります!
殺菌した牛乳をまた検査して、合格したらいよいよ牛乳パックに充てんしたり、チーズなどに加工したりしていくよ。まずは一階に降りて、牛乳パックになるところをみにいこう!
はい!
ここが充てん作業をするところだけど、ほら上を見てごらん。
あっ、さっきのタンクがありますね。
あのタンクから下へ自然と牛乳が流れてきてパックに充てんしていくんだ。
牛乳のウォータースライダー的な?
え〜と、ではさっそく見て行きましょう!
まずはパックを用意する。機械に折りたたんであるパックをセットするとあとは自動で開いて底を閉じてくれる。
あっとういうまですね。
早く製品にして出荷するというのがとても大切なんだ。
新鮮な牛乳が私たちのもとに届くように!
新鮮さと高品質はうちの工場の売りなのさ(ニヤリ)
はい!
そしてパックをふっと浮かせて静かに牛乳を充てんしていく。
もう開いている牛乳パックの口を、念の為に開く機械、なんかけなげですね。
縁の下の力持ちだね。
ですね。
そして、閉じたら終わり。
早い!
ありがとうございます。こちらでは小さい牛乳パックの出荷が始まりましたよ。
牛乳パックが生きているみたいでかわいいですね。うしろの牛乳パックに押し出されて、大きな流れに加わるところなんて最高!急いできたのに最後はゆっくり整列して……保育園児から学生に、そして社会人へと成長しているようで泣けてきます。
キ、キッチンさん…泣かないで…このハンカチで涙をふいてください。
グスン、はい。あでぃがどうございばす。フンフンビュー、チーン!!
あ、ああ…そのハンカチはあげます。
ありがとうございます!スーパーに並ぶ牛乳たちもこうやって旅してきているんですね。
はい、たいせつに飲んでもらえるとうれしいです。そろそろチーズの作業が始まると思うので、となりの部屋に行きましょう!
はい。
足の裏もきれいに洗ってから部屋に入りますよ。
衛生第一!
わー!あれ全部チーズですか!!
正確に言うと、チーズになる途中です。
固まっているようにも見えますが、まだ途中なんですね。
そう。チーズの風味になったり、ホエイという牛乳の水分を外に出す作用がある乳酸菌を牛乳に入れて、その後に「凝乳酵素」をいれて固めた状態なんだ。
凝乳酵素?
牛乳を固めるもので、子牛の胃の中にある酵素と同じものをいれているんだ。
へ〜子牛が持っているものと同じものを。
いいかたさになったら、一度かたまりをカットしてホエイがたくさん出るようにして、42℃まで加温する。そしてまたしばらく置いておくんだ。
ヨーグルトを食べる時に表面に水分があるでしょ。あれがホエイだね。
固まり方が毎日ちがうから、何度も確認しながら調整していくんだ。
こうやって伸び方を確認していくんですね。
慌ただしくなってきたからそろそろかなぁ。
いよいよ!
チーズ作りがはじまったよ。
巨大なプールにあったチーズを細くして、お湯の入ったたらいに移し、コネコネしていますね。なんかねんど遊びみたい。お湯も温かそうでいいですね。
温かそうに見えるのかい?
はい、チーズも踊っているみたいで気持ちよさそうです。
あのお湯は80℃。
えっ……ということは、めちゃくちゃに
熱いのさ!!
え〜〜〜
この作業は大変なんだ。キッチンさんもやってみたらいいよ。
アハハ、ここで見学させていただきます。
80℃のお湯でないと、チーズが柔らかくならないんだ。
熱いお湯で柔らかくなったチーズをこねてまとめて……ごくろうさまです!
練ってひとかたまりにして、チーズの表面がなめらかになったら伸ばしていく。
おお〜!まるでチーズとダンスしているような!!
あははダンスはいいね〜。これを一日300kg。800本やるんだ。
……ごくろうさまです!!
伸ばしたら細長い型に入れて…
冷水につけて固めて塩水につけて味付けをし、
固まったチーズを商品のサイズに切り分けたら、真空パックにして完成!
おおおお!ちゃんとさけている〜
牛乳にはストレスを与えず、さけーるチーズは熱さに負けず、全身を使って作っていることを初めて知りました。
ここの工場では他のチーズやバターなどもみんなで作っているんだ。おいしいのでぜひ機会があれば食べて欲しいなぁ。
チーズは、工場のとなりにある「乳加工体験施設」でだれでも作ることができるよ。車でドライブしていると牛が優雅に牧草を食べている風景が広がって、雄大な自然もたくさんあるのでぜひ別海町に遊びにきてね。
編集部注)
農漁村加工体験施設
http://betsukai-milk.com/shisetsu_info.html
お返事のお手紙
楓さんへ
いつもにゅうせいひんをたくさん食べてくれてありがとう。
この工場では一日に3トンから8トンの牛乳が運ばれてきて、
それを牛乳やチーズ、バターなどにしています。
それが楓さんやみなさんのもとにとどいて、おいしく食べてもらっています。
これからもおいしい商品をたくさんつくるので楓さんの家族やまわりのみんなに食べてもらってください。
(株)べつかい乳業興社 製造開発部
高橋克彦
コラム)(株)べつかい乳業興社 チーズ担当 篠原百恵さん
会社に入って16年目になります。最初は牛乳をメインにやっていました。5年目からチーズをメインにやっています。この工場ではさけーるチーズ(ストリングチーズ)とゴーダチーズ、マリボーチーズを作っています。今日はさけーるチーズの日だったので7時に出社して、牛乳を用意し、乳酸菌を加え30分ほど寝かせて、その間に洗い物をしたりしています。時間が経ったら、凝固剤を入れて、また30分寝かせます。固まってきたら、細かく切って42℃まで加温します。ホエーが出てきたら、ホエーを少し抜いてチーズ全体をひっくり返します。この時にだいたい10時になっているので、早めのお昼ご飯です。今日は梅干しのおにぎりを食べました。お昼を食べたらチーズの伸び方をチェックして、問題なければチーズを伸ばして型に入れて、商品を作っていきます。終わったら道具を洗って16時に帰宅します。充てん作業は熱いし、300kgもあるので、チームワークを大事に楽しくやりたいと思っています。大変な思いをして手作りで作っているので、おいしいと食べてもらえた時はすごくうれしいです。たくさんのこどもたちに食べてほしいなと思っています。