おしえて桃屋さん!「ごはんですよ!」の海苔は、どうやってやわらかくしているの?
食べものにまつわる、こどもたちの「なぜ?」「どうして?」。おうちの方もよく聞かれるのではないでしょうか。そこで、こどもたちからのお手紙を片手に、しゃしん絵本作家のキッチンミノルさんに、実際に工場やお店の方に疑問の答えを聞いてきていただきました!写真と動画で、楽しくリポートします。社会科見学に出かけたつもりで、ぜひお子さんといっしょに楽しんでくださいね!第一回は、「ごはんですよ!」で有名な桃屋さんの、松阪工場を訪ねました。
編集部になずなさん(8歳)からのお手紙が届きました。
ももやのみなさんへ
「ごはんですよ!」の、おかずは、わたしの大こうぶつです。
ごはんが出るときに、「ごはんですよ!」のおかずをかけていました。
「ごはんですよ!」は、いろんなときに、つかえて、おいしくて、とっても大好です!!
また、「ごはんですよ!」で、出る、のりは、どうやわらかくしているのか、しりたいです。
これからも、がんばってください。おうえんしています。
なずなより
編集部は早速、しゃしん絵本作家のキッチンミノルさんに相談。キッチンミノルさんは大きな声で答えます。「任せてください!『ごはんですよ!』を作っているところに行ってなずなさんの代わりにきいてみましょう!!」
おお。それは心強い。キッチンさんどうぞよろしくお願いします。

桃屋「ごはんですよ!」
1973年に商品化されてから老若男女に愛される海苔の佃煮。
それでは早速行ってみよう!
ってことで、キッチンミノルはなずなさんのお手紙を携えて、三重県松阪市へ!!
ここは「ごはんですよ!」の桃屋さん松阪工場。
出迎えてくれたのは、工場長(取材当時)の飯沼輝之さん。
「昨日は海苔の養殖をしている湾を巡っていたんですよ」と少し日に焼けた顔で工場に招き入れてくださいました。

今日はありがとうございます。なずなさんからいただいたお手紙を預かってきました。「ごはんですよ!」のおいしさの秘密を教えてください。

はい。もちろんです。なんでもきいてください。

まずは「ごはんですよ!」の原材料はなんですか?

原材料は「青さのり」という海苔を使っています。

「青さのり」というのは、よく目にする四角の黒い板海苔とはちがうのですか?

そうなんです。品種が違います。
みなさんがよく食べている板海苔は、主に黒海苔という海苔で、品種名は「スサビノリ」といいます。火であぶると黒色から緑色に変わるのが特徴で、しっかりした食感の海苔です。

パリパリの海苔ですよね。

そうです。乾燥させて食べるとパリパリしておいしいのですが、これを佃煮にするとゴワゴワとした食感になってしまいます。
青さのりはきれいな緑色をしています。葉が薄くてしっとりなめらかなのが特徴です。佃煮にとてもあっているんです。

なずなさんも気にしていたやわらかさの正体は、海苔の種類を選んでいるということですね。

はい。それもあります。また、青さのりを使う時に、桃屋ではあまり細かく刻まないで海苔の葉を長い状態で使っているのも特徴です。それによってしっとり滑らかな食感を生み出しています。

へ~!!青さのりの特徴を活かすために、細かく刻まないようにしているんですね。

はい。そうなんです。主に伊勢志摩地方で養殖された青さのりの中でも上質なものを選んで仕入れています。

佃煮にあっている品種を選んだ上で、そのなかで品質の良いものを使い、使う長さまで気をつけているんですね。すごい。

はい。海苔も佃煮にあうものとそうでないものとありますから。材料として使うものは佃煮にあうものをしっかり確認して仕入れています。
そしてなによりも、食べ物ですから安全が第一です。
ここ松阪工場では、自然の中で育った海苔にどうしても付着してしまう、青さのり以外の海藻や貝殻などを取り除き、洗浄する作業をしています。
それでは工場の中に入ってみましょう!
まずはコロコロで服についているゴミをとりましょう!

では、こちらに入ってください。

うわーすごい風が!!

はい。工場の中は清潔第一。服についているホコリなどの見えないゴミも、ここで吹き飛ばして中に入ります。

工場内に入った途端、磯のいい香りがしますね!!

ここは工場の二階になります。
海苔は湿度を嫌うので、工場内は水を使う一階と海苔を保管する二階とに分かれています。
そしてここでは原材料の青さのりの鮮度と風味を保つために、マイナスの温度で保管しています。

だからこんなにいい香りがするんですね。

これが原材料の青さのりです。

きれいな緑色ですね。箱から出したらよりいい香りが~~!

こちらの台で海苔を丁寧にほぐしながら、一階の水が溜まっている釜に落とします。

おもしろそう!

ここから下が見えますよ。

本当だ下には水が……下を見ちゃうと落ちそうでドキドキしてきました。

では一階に降りてみましょう。

大きな釜が並んでいますね!

全部、自分たちで開発した機械なんですよ。
左にある煙突みたいなところの上から、先ほど海苔を落としたわけです。
今、この釜の中でゆっくり水と混ぜることによって乾燥前の葉の状態に戻していきます。この作業を「水戻し」といって、二回に分けて行っています。

採れたての海苔みたいですね。

はい。そうですね、採れたての状態に戻していると言えますね。では、次の工程へ行ってみましょう。

水戻しをした海苔が流れてきます!

実はこの赤いベルトに秘密があります。よーくみてください。

(ジー・・・)水の流れと反対方向に動いているように見えますが??

そうです。しかもこのベルトには突起物がついているので、目に見えない細長い海藻などをここで絡みとって、除去していくことができます。
ここが安全安心への第一関門。まだまだ先は長いですよ。
第二関門は、八つの水槽が待っています。

八つも!

そうです。海苔がたっぷりの水の中を流れる間に浮いてくるものと、貝殻のように沈んでいくものを取り除きます。

海苔のプールなんですね。

はい。浮いてくるものを除去する水槽が四つ。沈んでいくものを除去する水槽が四つ。ここをすり抜けるのはなかなか大変です。
いまでも日々、より良い方法を考えて研究しています。

これは?

風を使って浮いてきたものを除去しています。シャワーで海苔を洗浄もしています。

気持ちよさそう!海苔になってこのプールをおよぎたい!!

アハハ、そうですね。どんどんきれいになっていきます。
これは何かわかりますか?

棒が二本…… なんでしょうか。

磁石です。

大きい磁石ですね!磁石まで使って、きれいにしていくんですね。

これで磁石にくっつものがあればすべて除去します。
そして水槽の最後は突起のある長いベルトを流れていきます。

海苔用のウォータースライダーですね。

この後、脱水してから金属検査機に通します。

きれい~。そして、乾燥していた青さのりがフワッフワッですね!!

きれいでしょ!!これがあの食感にも活きてくるんですよ。

なるほど。やわらかいあの食感にですね。
ふ~長い旅でした。

まだまだ終わりじゃないですよ~
次のお部屋へどうぞ。
脱水された海苔が流れてきます。

おおーどんどん運ばれてくる!!

コンベアで運ばれた海苔が、最後の関門に到着です。

ここがついに最後の!

はい。いままでの工程でほとんど除去するべきものは除去していますが、最後は必ず人の目で確認しています。選別という工程になります。

やっぱり最後は人の目なのですね。

そうですね。

ところで工場内に入ってからずっと軽快なJ-POPが流れているのが気になるのですが…誰の選曲なんですか?

作業をされる皆さんで決めています。最初はモーツァルトを流していたんですが、眠気を誘ってしまうと評判が悪くて…いまは日によって変えています。
(工場の入り口に掲げてあった音楽のメニュー表)

集中力と根気がいる作業ですね。

そうなんです。みていてください。

あれ音楽が変わりましたね!?

集中力を切らさないようにと、ずーっと同じ体制になっているのはよくないので、約1時間に一回、1分ほどのストレッチの時間をとっているんです。
それとお昼休憩とは別に10時と15時にしっかり休みをとっています。作業する場所も変えたりもしますよ。

休みをしっかりとるからこそ、集中力が続くのですね。
そうこうしているうちに選別された海苔がたくさんこちらに溜まってきましたね。

はい。選別作業が終わったら計量して、マイナス20度で急冷し、マイナス5度で保管します。

そして冷凍トラックで、埼玉県の春日部工場へ7時間かけて運びます。
春日部工場では調理とびん詰めを見ることができ、そちらにもおいしい秘密が待っていますのでお楽しみに。

ありがとうございました!
コラム 熟練さんにごあいさつ
製造課 主任
田村聡美さん
毎日の仕事は、8:20のラジオ体操から始まります。8:30から作業開始です。お昼休憩以外に10時と15時に休憩があります。16:30には作業を終了して掃除をして帰ります。
年に一回地元のスーパーで試食販売員として店頭に立つんです。直接お客さんとお話しできるので楽しいです。「いつも買っています」と声をかけてもらうと、おいしく食べてもらうために、毎日一生懸命に選別せなあかんな、と思います。
軽く選別をしているように見えますが、海苔は水分を含んでいるのでほぐしにくくて重たいんです。
ほぐし方が上達すると、海苔がフワフワになっていきます。最初は大きくほぐして、徐々に細かくほぐしていきます。台の前に立つと集中力のスイッチが入るのが、自分でもわかります。
「ごはんですよ!」は卵かけごはんに混ぜたり、餃子の餡に混ぜたり、チャーハンに混ぜて「黒チャーハン」にするのも好きですね。
最後に工場長からお返事のお手紙をいただきました。
なずなちゃんへ
お手紙ありがとうございます。「ごはんですよ!」をおいしく食べてくれて嬉しいです。「ごはんですよ!」に使われている海苔は、みんなが知っているおにぎりや、おすしに使う黒い海苔ではなくて、緑色の“あおさのり”という海苔で作っています。この海苔はしっかりとした黒い海苔とはちがって、やわらかい海苔なので、「ごはんですよ!」はなめらかでやわらかくなっているのです。
“あおさのり”は、海でりょうしさんが育ててくれています。海には、落ち葉、砂、貝がら、海苔とは違う海藻などがあり、“あおさのり”にくっついてきます。
桃屋松阪工場では、この“あおさのり”にくっついてきた、落ち葉や、砂、貝がら、ほかの海藻をしっかり取り除いてます。“あおさのり”をきれいにすることで、食べたときによりやわらかく、安心して食べてもらえるようにがんばっています。
これからも、なずなちゃんに、家族と仲良く、おいしく食べてもらえるとうれしいです。
株式会社桃屋 松阪工場 工場長より
「届け!お手紙!キッチンミノルのおうちで社会科見学」では、子どもたちからのお手紙を募集しています!
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応募は、アイスム公式LINEよりご連絡をお願いいたします。
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