運命のスムージーミキサー
目覚めてベッドから起き上がり、窓を開けて朝の光を浴びる。部屋の空気をフレッシュに入れ替えたら目覚めのシャワーを浴び、冷蔵庫から新鮮な果物を何種類も取り出してカッティングボードで手早く切り分け、一人分の小型ミキサーでスムージーを作り、きれいなリビングでゆっくり喉越しを楽しむ…
という、理想の朝の姿が私にはあります。
そう、あくまで理想。
この理想通りの朝を迎えたことなど人生で一度もないのです。
現実の私の朝といえば、ギリギリの時間に這うように起きて、最低限の身支度をし、家族のお弁当を詰める。合間に義母の作ってくれる朝食をなんとか口に詰め込みつつ、子どもたちをせっつきながら駆け足で家を出る…という、シャワーどころか1分たりとも無駄にできない慌ただしい時間です。
この、最後の1分ギリギリまで布団から出られないという悪癖を何とかしたい、と私はずっと考えていました。
朝陽やシャワーを浴びる余裕まではなくとも、せめて朝食はゆっくりとりたい。栄養的にも精神的にも、もう少し充実してゆとりを持たせたい。
そのためにはどうすれば良いか…そうだ、スムージーだ。スムージーを作ればきっと、早起きする気力も湧いておしゃれでゆとりある、素敵な朝を迎えられるのだ。
短絡的な私はそう考えつきました。
通販サイトには、手軽に一人分のスムージーを作ることができるミニサイズのミキサーが何十種類も並んでいます。お値段もピンからキリまで様々です。
機能や価格、口コミなどをじっくり比較し、候補を数品まで絞り込み、ほしい物リストに追加した私は、ふと冷静になりました。
これ、絶対すぐ飽きるんじゃないか…?
もともと、熱しやすく冷めやすい性格の私。今スムージー熱が最高潮に高まっていても、商品を注文して自宅に届く頃には熱が冷め、一回使ったらそのままキッチンの奥にしまわれる運命なんではないだろうか…?
これは慎重なわけでも何でもなく、ただ今までの苦い経験から多少は学んだだけのことです。わが家のキッチンには、私や義母が買っては飽きて使わなくなった大小さまざまなキッチン用品の墓場があるのです。
待て待て、冷静になろう。あと1週間待ってみて、それでもスムージー用ミキサーが必要だと思ったら買えばいいじゃないか。
そう思い直して、通販サイトの決済ボタンを押しかけた指をそっと戻したのでした。
そうして1週間…を待たずに数日後のこと。このコラムのお題を知らせるメールが届きました。「料理が楽しくなるアイテム」、しかもこの際に新しく購入して、とのこと。
なんと…これはもはや運命!運命が私に、スムージーミキサーを買えと言っている。
飛び上がって喜んだ私が、その勢いでミキサーをポチッと注文したのは言うまでもありません。
そんな事情で我が家にやってきたスムージー用ミキサーは、3000円台と比較的お手頃価格で、600mLと400mLの大小2個のカップが付属し、氷や冷凍フルーツにも対応という優等生。
開封してさっそく、家にあったバナナとキウイ、氷と牛乳をミックスしたスムージーを作ってみて、一人分が1分も経たずにあっという間に出来上がることに感動しました。
さらに、コップに移す手間もなくそのまま飲めることに感動。
仕上がりの滑らかさとおいしさに感動。
飲み終わったあとはミキサーの刃のついたキャップと樹脂製のカップをさっと洗えばいいという手軽さにも感動。
大げさなようですが、ミキサーといえば昭和レトロな大ぶりで片付けが面倒なものしかなかった我が家にとって、これは実に感動の嵐でした。
これならいける!
朝スムージーの夢がいま、我が手の中に!
理想の朝(の第一歩)を手に入れるんだ!
そんなわけでワクワクしながら冷凍フルーツなどを買い揃え、満を持していつもより30分早く起き、ゆっくりスムージーを楽しむのだ!と意気込んだ朝。
身支度をし、お弁当を作り、朝食と共にスムージーを作る…はずの…時間がない!
いつもより時間的余裕があるという油断のせいでしょうか。時計を見上げると、いつもと寸分違わずに家を出る時間なのです。
むしろ調子に乗っていた分、朝の通勤バスの時間にギリギリです。
小走りで家を飛び出し、おかしい…こんなはずでは…と内心で叫ぶ私。
朝のゆとりのスムージー時間を楽しむには、あともう少し早起きをしなくてはならないようです。
そんなわけで、残念ながら理想の朝の立役者とはまだなっていないスムージーミキサーですが、家族からは思いがけず大好評です。
新しいもの好きということもありますし、一人分を思い立ったらすぐに作れるという手軽さがいいのでしょう。毎日のように家族の誰かしらが、買い置きの冷凍フルーツやバナナ、ヨーグルトなどを使って、スムージーや生ジュース作りを楽しんでいます。
カルピスと氷、プレーンヨーグルトを混ぜた「カルピスフローズンヨーグルト」や、バナナときな粉、豆乳を混ぜたプロテイン(?)ドリンクなど、オリジナルレシピを考えるのも楽しいです。
スプーンで混ぜただけでは混ざりにくい抹茶パウダーと牛乳、ガムシロップを混ぜた抹茶ラテ、生クリームとバニラエッセンスに氷と牛乳を混ぜたバニラクリームフラペチーノもどきなど、家で作れるとちょっと嬉しいカフェ風ドリンクも手軽に作れます。
ちょっとお高めで買うのを躊躇してしまうフレッシュフルーツも、冷凍品ならばお手頃価格で、さらに日持ちがするのでいつでも楽しめるというのも素敵なところ。ミキサーはものによっては冷凍食品に対応していないことがあるので、そこはじっくりと調べて選びました。結果として大正解です!
果物売り場の隅にある見切り品コーナーで買ってきた少しくたびれたフルーツなども、冷凍してしまえば消費期限を気にせずにいつでもスムージーにできます。
今まではちょっと買うのを躊躇してしまっていた、皮に黒い斑点が出たバナナも、今ではむしろ大歓迎。ジュースにぴったりのちょうど食べごろです。皮をむいてざっくりと切ってラップに包み、そのまま冷凍庫に入れて凍らせればOKです。
ポタージュスープ作りなどにも活用できるとのことで、これから寒くなる季節を迎えても、かぼちゃやじゃがいも、さつまいもの温かいスープなど、まだまだ活用できそうで楽しみです。
あとはもう少し早起きをして、スムージーやポタージュ片手に迎える理想の朝を演出するだけです。
早起きするだけ、そう、わかってはいるんですけどね…
いいんです、いつ飲んでもスムージーのおいしさには変わりないので…!