「来た球を打つ」!6人家族、献立乱れ打ちの日々

わが家の笑顔おすそわけ #37「献立の決め方」〜甘木サカヱさんの場合〜

LIFE STYLE
2023.07.26

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「生姜焼きにするはずだった豚こま切れ肉が1/4パックしかない?なぜか鮭が二切れある?茹でておいたほうれん草がない!白菜が一玉増えてる?」

献立の悩み、と一言でまとめてしまえばそれまでですが、これってご家庭によってかなり内容に差がある悩みなのではないかと思います。

献立のレパートリーが少ないので思い浮かばない、という方もいれば、家族のアレルギーや偏食に悩む方も多いでしょう。家族の年齢や人数によっても、食卓の悩みは十人十色です。
三世代同居、10代から80代まで6人が同じ釜の飯を食べるわが家の献立の悩みは、なかなかカオスな状況です。

まず、わが家の夕飯の献立を決めるのは一人ではありません。週に3〜4日は主婦である私が夕飯を作り、そして私が仕事で帰りが遅くなる残りの3〜4日を義母か、もしくは家庭内アルバイトとして高校生の息子が交代で担っています。

買い物は基本的に週に一回。スーパーの買い物かご山盛り三つ分の肉や魚、野菜や果物類、パンやカップ麺などを私が車でまとめ買いしています。

献立は、その日の調理担当者が食品の在庫を見て決めます。冷蔵品の在庫の消費が最優先ではありますが、作りたい献立に足りない材料や調味料があれば、その都度買い足しに行ってもらうというスタイルにしています。

献立には、どうしても作る人の個性が出ます。わが家の場合、高校生の息子が作ることが多いのは、本人が好きなスパイシーなエスニック料理や、甘辛い韓国料理など。80代の義母は、ハンバーグやカレー、ポテトサラダなどのスタンダードな洋食が得意です。子どもたちが喜ぶようにというのもあるのでしょうが、カレーを作って、さらにトンカツを揚げてカツカレーにするなど、高齢になっても衰えぬその胃腸の強靭さには驚くばかりです。

そして私はというと、週の後半を担当することが多いこともあり、どうしても前の二人の尻ぬぐ…いえ、アフターフォロー的な役割に徹することになります。

材料の在庫も豊富で献立の自由度が比較的高い二人と比べ、私はいわば冷蔵庫の掃除屋。次に来る買い出しの日までに、なるべく無駄なく食材を使い切らなければなりません。
これがなかなかハードルの高い作業なのです。

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こってりしたメニューが多くなりがちな義母と息子ですから、必然的に私が作るのはあっさり和食中心になります。

毎日食卓を囲みながら、今日は厚切り豚ロースが消費されたから明日の夕飯に最優先なのは合いびき肉だな…あじの干物は今日のうちに冷凍しておこう…などと計算をしておきます。

しかし、この計算が非常にしばしば狂うことになるのです。

私は基本的に一汁三菜(たまに二菜、いや一菜のことも多い)、主菜は肉か魚で一種類の食材(例えば、鶏もも肉ひとパック600g)を使いきるという方針です。その方が食材の在庫管理が楽だからなのですが、義母や息子はまた違うのです。

息子はまだ食事作りの経験が浅いこともあり、律儀にレシピの○人前○グラム、を守って作ります。義母はというと、品数を多く作りたい気持ちがありすぎて、親子丼に鶏肉を半パック使い、さらにロールキャベツに合いびき肉を3/4パック…という使い方をするのです。

義母はまた、週の半ばにスーパーへ行き、「これ食べたい!これが安い!」と思うと、あまり食材在庫のことを考えずに買い足してきてしまいます。ありがたい、とてもありがたいのは間違いないのですが…。

義父が家庭菜園をやっており、そこから採れる大量の野菜も献立に直結します。さらに、ご近所の菜園仲間から「お宅は家族が多いから消費できるでしょう」とやってくる頂き物の作物たちも…。

結果として週の後半、私が冷蔵庫を覗くと、冒頭に書いたような中途半端に残った肉や魚、昨日まであったはずなのにない食材(義父母が昼食や朝食に消費してしまった)、大量の季節の野菜、そして突然やってくる頂き物などの存在に頭を悩ませることになるのです。

多人数で、それぞれ自主的に台所をまわしている以上、避けられない事態と言えるかもしれません…。

そんなわけで、私の献立作りは最近はもっぱら「来た球を打つ」スタイルです。期待するから裏切られるわけで、もういっそ夕飯を作る直前になって冷蔵庫を開くまで、すべての期待を捨て、そこにあるものをあるがままに受け入れる境地です。

結果として、
・中途半端に残ったこま切れ肉と野菜室に残った野菜で豚汁
・大玉の白菜を半分使って、たっぷり中華風炒め煮
・消費期限の迫った牛乳と突然現れた塩鮭二切れ、しなび始めたじゃがいもで鮭グラタン
といった、なんともまとまりのない献立が出来上がるのが恒例となっています。

良いのです、栄養のバランスが取れていれば…そして食材を無駄にすることがなければ、献立のまとまりなど…二の次で…。

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しかしやっぱり、たまにはちゃんと筋道の通った(?)献立を作りたい!と思うことも。

そのため、家族の誕生日や記念日など、予算をさほど絞らなくてもいい特別な日には、
「よーし今日の主菜はローストビーフだ、スープはオニオンコンソメにしてサラダにはベビーリーフにラディッシュ、クルトンもかけて、ホースラディッシュも買っちゃえ!」などと、その日のためだけに買い物に行くことを自分に許可し、日頃のちぐはぐ献立のストレスを発散することにしています。

こんなふうに日々、食材の帳尻を合わせるのは、ちょっと損な役回りであるという気はしていますし、例えば一週間分の献立を私がすべて決めて義母と息子に指示してしまえば、こんな悩みも生まれないというのは分かっているのです。

でも、自分の食べたいもの、家族に食べさせたいものを考えて決めるのは、その日の料理を作る人の特権だとも思うのです。

もし私が、その日作るメニューを全部決められていたとしたら、献立を考えなくて良いので楽な反面、料理を作る楽しみも半減してしまうのではないかと思います。

自分が今、食べたいものを作る!食べてもらいたいものを作る!
それこそが台所担当者の喜びではないでしょうか。

とりあえず今は、まるでパズルのような食材の帳尻合わせを苦しんだり楽しんだりしつつ、家族みんなが健やかにおいしく、作って食べて過ごしていけるのが一番だと思っています。

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イラスト:かわべしおん

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