苦手と好きはすごく近い
最近、わが家の子ども2人(4歳と2歳)がとても料理をしたがります。特に長男は、ぼくが持っていた「あれこれたまご」という卵料理の絵本を見てから興味を持ったのか、ぼくが台所に立つと駆けつけてきて「ねぇねぇ卵使う?」と聞いてきます。
ところが、「ちょっと!卵使うの!?」「ぼくも卵割りた~い!」と言うので、一緒に割ってみたところ、力加減が強くて殻は粉々に。割れてとがった部分は手にチクチクするし、何より卵黄が割れてしまったことにショックを受けて泣いてしまいました。
それからしばらく「卵割れちゃうの…」と、料理をやりたがらなくなったのですが、3か月ほどたって、ぼくから誘ってみて再チャレンジ!このときも殻は粉々になってしまったけれど、卵黄はつぶさずきれいに割ることができました。
この成功体験をきっかけに、どんどん料理の手伝いをしてくれるようになり、週末には親子丼と味噌汁を一緒に作るまでに!
そういえばぼくも、料理研究家になったばかりの頃は失敗の連続で、何度も悔しい思いをしてきました。でもその度に試行錯誤をし、解決策を見つけ、いつしか「こうすれば大丈夫」と自信をつけていったように思います。
ぼくは今年で料理研究家を始めて9年目になるのですが、つい一昨年あたりまでみじん切りが大嫌いでした。
急いでカットしても、ゆっくりカットしても、細かく切った野菜がまな板から転がる…転がる!!!この転がることがどうしてもストレスで、一時期は「もうみじん切りをするのをやめよう」と、ぶんぶんチョッパー(野菜を入れ、ふたについたひもを引っ張ると、中の刃が回転して野菜を刻んでくれる道具)を使用したこともあったのですが、あれって本当、加減が命で。
調子に乗ってひもを何度もひくと、野菜が「ペーストかよ!」ってくらいみじん切りされてしまうんです。
それに、容器にかなり野菜がくっつくので、もったいない気持ちも生まれてしまって、結局包丁とまな板に戻すことに。
その際、新たな道具として取り入れたのが丸いまな板でした。これにしただけで転がらなくなるの?と思うかもしれませんが、しっかりまな板の上に具材が残ってくれ、かなりストレス軽減に!
もともとみじん切りの作業自体は好きなので、苦手だったものが一番楽しい作業へと変わりました。
ほかにも苦手なことといえば、ハンバーグを作った後の自分の手や、ボウルについた油分の感触。
洗剤を手に取って洗うんですが、特に牛+豚の油はしつこい!そしてうっかり水で洗ってしまうと、排水溝の網目に油分が詰まって悲しい思いをするんですよね…。
なので、あいびき肉を調理するときは、よっぽどの理由がない限りボウルを使うのをやめ、ビニール袋の中で揉み混ぜることにしました。
また、ハンバーグなどの生地を触る前に、自分の手に油を塗る!こうすることで洗った時に油落ちが良くなるし、油を塗った手でハンバーグの表面を整えることできれいに成形できます。
表面がつるんとした肉だねは、焼いてもひび割れしにくく、肉汁が逃げないジューシーなハンバーグになるので、自信にもだいぶつながったように思います。
他にもいくつか苦手だったものが好きな作業につながったこと、自信につながったことはあるのですが、自分のモチベーションを一番保っているのは、食器のような気がしてます。
最初の書籍を出したころは、使っているお皿が100円均一のものばっかりで、Twitterにレシピと写真を投稿するたびに、「このお皿は○○の100均のお皿ですね!」というリプライがたくさんありました。
最初は、色々ツッコまれてるけど、クイズみたいで楽しいからいっか~(能天気)くらいに考えていたのですが、書籍のお仕事などを重ねていくうちにそうも言っていられなくなってきて、ようやく食器に目を向け始めました。
といってもはじめは何を購入したらいいのかも分からない!店頭やネットショップで「オシャレじゃん」と思っても、実際に料理をのせてみると、照り具合だったり、色味だったり、形だったりが思ったものとは違う…。
でも、おこづかいの範囲で少しずつ少しずつ食器を見ていたら、いつの間にか「これなら料理に合う!」とイメージがつくようになり、好きな窯元や、作家さんにも出会いました。
食器がかわいかったり、美しかったりすると、自然と「このお皿に料理をのせたい!」という気持ちにつながり、調理することがより好きになっていく気がします。
結局、「苦手だ!」と思うことをそのまま続けていっても、決して「好き」にならないんですよね。
だったら苦手なことをしないとか、気持ちが上がるものを取り入れてみるなどの工夫が大事なのではないでしょうか。
もしかしたら壁紙を一変したら気分が上がるかもしれないし、植物を飾ったら料理を置きたくなるかもしれない。ちょっと高級な包丁を購入したら食材を切りたくてたまらなくなる可能性だってあります。それを時間をかけて見つけるのも、料理の楽しみの一つなのかもしれません。