「餃子の日」と初めての辣油作り
アニメ会社に勤めていた頃、ある上司が「今日はカレーだから早く帰るね!」と毎週金曜日は定時に上がっていました。聞けば夫婦でカレーが好きで、金曜日はいろんな種類のカレー作りに挑戦しているとのこと。作る楽しみと食べる楽しみのある「カレーの日」があるだけで、一週間を過ごすモチベーションが変わるのだと教えてくれました。その頃のぼくは上京したてのビンボー暮らしで、彼女の影すらなかったため、楽しそうで温かい家庭がとても眩しく、羨ましく感じていました。
そんな先輩の存在があったからなのか、今、我が家では金曜日に「餃子の日」が設けられています。もともと夫婦揃って大のラーメン好きで、休日にはいろんなお店に足を運んでいました。ラーメンだけでおこづかいがなくなるほどだったのですが、約一年前からのこの状況の中、大好きだったラーメンもなかなか食べに行けなくなってしまいました。
そこで、少しでもラーメン屋の雰囲気を楽しめたら…と、いつも付け合わせで頼んでいた餃子を、週終わりの金曜日に毎週作ることにしたのです。
はじめは王道の「ひき肉+にら+キャベツ」。そこからどんどんいろんな具材に挑戦し、あっさりめで食べたい日には「えび+しめじ+大葉」、うまみたっぷりで食べたい日には「ひき肉+白菜漬け+ニンニク」、ジューシーにしたい日は「ひき肉+蒸しナスのみじん切り+ネギ」など、その日に合わせていろんなバリエーションを楽しむまでになりました。
ある日、いつものように餃子を食べていると、妻が「皮も手作りだったら、更においしいのかな?」とぽつり。な、なんてことを言うんだ…。いや、こ、これは、お互いの幸せのために作るしかないじゃないか!!
というわけで皮作りにも挑戦してみることに。毎週、少しずつ皮の配合を変えていったのですが、配合によって仕上がりがだいぶ変わる!包みやすさも違う!自分たち好みの配合を見つけるのに数ヶ月かかりましたが、おかげでモチモチした食感の餃子の皮を作ることができるようになり、同時に市販の餃子の皮のありがたさ(包みやすく、破れにくく、おいしい)を実感できました(笑)。
こんな感じでどんどん餃子のクオリティは上がったわけですが、実は他にも、前々から手作りしてみたいと思っていたものが一つ。それが「辣油」です。
市販で売っているものは「ほどよいごま油の香りと辛味」で、クセが少なく、色々な料理に合うようにできていますが、実は作る過程で加えるものによって、風味がだいぶ変わるそう。夏頃に一度手作りしようとしたのですが、入れたい材料の一つに陳皮(乾燥させたみかんの皮)があったため、食べたみかんでそれを作ることができる冬に改めて挑戦しようと、タイミングを見計らっていたのでした。
まずは陳皮を用意するのですが、作るのも扱うのも初めての食材なので、ワクワクしながらいろいろ調べてみたところ、細かくすりつぶしてお湯に溶いて飲んでも良いし、入浴剤として入れても良いらしく、使い道には困らなさそうです。
作り方は、食べたみかんの皮を一晩水に漬けた後、屋外でバリバリになるまで乾燥させるだけ。早く乾燥させたい時は、クッキングシートにのせて200wで1分半ずつ様子を見ながら加熱しても作ることができます。
陳皮ができたらいよいよ辣油作り。フライパンに油450cc、ねぎの青いところ100g(1本分)、皮付き生姜50g(5mmスライス)、にんにく5片(潰す)、陳皮15g、シナモンスティック10g、鷹の爪10g、山椒3gをフライパンに入れて、焦げないように弱火で20〜30分煮たら、油を一度濾します。
再度、沸騰するまで油を加熱したら、一味唐辛子60g+ごま油50ccを入れたボウルに、加熱した油を少しずつ投入!(めちゃくちゃ泡立つので注意。)冷めるまで待てば完成です。
作ったその日に早速試食してみたのですが、とっても風味豊か!ねぎと生姜とにんにくがガツンと来る中に、ほのかに感じられる爽やかなみかんの香り。確かにこれは手作りしないと味わえない風味だ…!
個人的に嬉しかったのは、底に沈んでいる一味も食べられるというところ。普通、辣油をつけるとすぐに流れてしまいますが、一味があることでしっかり食品にまとわり付き、辣油そのものを味わうことができます。想像以上の出来に妻も大喜びで、その日はしこたま餃子を食べました。
新しいものを作る時って、毎回「失敗するかも」と不安がよぎりますが、初めての工程のドキドキ感や、うまく作ることができた時の嬉しさを体験すると「また挑戦したい」という活力が生まれる気がします。
今回の辣油も初めての食材を使いましたが、調理の工程が進むにつれて期待が高まっていたし、なにより食べてみたらすごくおいしかった!実際に活用しながら「もっと陳皮を増やしたら、更にフルーティーになるのかな?」「揚げたスライスにんにくを加えたら、もっと食べる辣油っぽくなるかな?」などの感想が出てきたので、ストックがなくなり次第、また配合を変えて作ってみようと思います。
その先には、今よりももっと楽しくおいしい、夫婦での食事が待っていると信じて。