おいしいおにぎりの秘密、徹底研究!

わが家の笑顔おすそわけ #12 「おにぎり」〜5歳さんの場合〜

LIFE STYLE
2021.02.21

「シャケのはいったおにぎりね」

小学校一年生の次男は、いつもそうリクエストする。

なんてことはない、生協でいつも頼む鮭フレークをごはんで包み、サランラップで握るだけのおにぎりである。鮭の塩気があるから、軽く塩をふりかけて海苔で包めば「ハイ出来上がり!」である。このおにぎりを息子は実にうまそうに食べる。そして頻繁に、『いつものあれ』という顔でリクエストをしてくるのだ。

僕も小さい頃、母が握ってくれるおにぎりは特別おいしく感じられた。今でも実家に帰ると母は、僕と、そして息子たちにおにぎりを出してくれる。なんの変哲もないおにぎりだが、やっぱり今もとてもおいしく感じる。

母のおにぎりを食べていた僕も人の親になり、今では握る立場になった。頻繁におにぎりを作るので「どうやったら母のおにぎりを再現できるのか」と握り方についていろいろと研究をしていた。そしておいしいおにぎりを作るのにはちゃんとコツがあることがわかった。 

一番のポイントは、なんといっても米の炊き加減だと思う。

米は3回、素早く研ぐ。夏は30分、冬は60分、水に浸す。そして一度水を切ると良い。

ぶっちゃけ「そんな時間ないわ!」って人も多いと思うんだけど、炊飯は手間をかけるほどおいしくなる。ここには細かく書かないが、全行程を書き出すと説明文だけで2000字くらいになる。

細かいことを抜きにして、とにかく土鍋で炊くという方法もある。確実においしい白米が炊ける。一度土鍋で炊いたごはんを食べると、あとには戻れなくなる人も多い。しかも20分くらいで炊けて、蒸らす時間を合わせても30分でめちゃめちゃおいしいごはんが食べられるので実は時短だったりもする。

一人暮らしサイズの土鍋なら1500円くらいで買える。お金を掛けない幸せな暮らしである。年収をアップさせるよりも、こうやって小さな幸せを探す生活の方が、心豊かな人生を送れるんじゃないかと最近つくづく思う。

話を戻す。おにぎりの話。

ごはんが炊きあがったら、手早くしゃもじでかき混ぜる。こうすることによって米がふっくらとして、おにぎりが握りやすくなる。一人暮らしで、米を炊いたままの炊飯器を放置し、ごはんをパサパサにさせてしまう経験をした人は多いと思うが、炊きたての状態ですぐにかき混ぜてあげると、米の表面のデンプンが空気に触れて一粒ひとつぶが固くなり、白米がおいしくなる。もちろんおにぎりを握ったときにも、米粒が潰れなくなるのだ。

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そういえば小さい頃から、母に「炊きあがったお米はそこからひっくり返すようにしゃもじで混ぜてね、おいしくなるから」と教えられていた。大人になった今、僕は『おいしくな〜れ、おいしくな〜れ』と念じながら、炊きたてのごはんをしゃもじで混ぜている。

ほぼごはんの炊き加減でおにぎりの勝負は決まってしまうのだけど、握る時は「左手は添えるだけ」と、このくらいの気持ちで握る。生きたヒヨコを優しく手で包むくらいの握力である。もしくはシュークリームをギリギリ潰さないくらいの握力。上手く炊けた米粒は、それくらいの力加減で勝手におにぎりの形になるのである。デンプンの粘りこそがおにぎりをおにぎりたらしめる理由なのである。握力などは必要ない。

中に入れる具は、味が濃いものが良いというのがセオリーである。シャケ、ハラミ、明太子、梅干し、オカカ…。一通りの具を握り続けて、僕はあることに気付いた。

「具なしの塩むすびが一番おいしんじゃないか」
まさに原点回帰なのだが、おにぎりの主役は具ではなくて米なのである。

そうするともちろん、お米の品種も重要になる。スーパーに行けば色々な地方のブランド米が並んでいる。青天の霹靂、ゆめぴりか、魚沼産コシヒカリ。人気の品種をすべて食べ比べてみた。日本の米はどれも個性があり、どれもおいしい。品種だけでどの米が一番うまいのか決めるのはとても難しいのだが、僕がたどり着いたのは、山形産の『つや姫』だった。息子たちの舌も正直なものでおいしい米だといつもより多くおかわりしたりする。つや姫は特に食いつきが良くて、すぐにごはんがなくなった。

つや姫の最大の特徴は、冷めてもおいしいところにある。「炊いてほれぼれ 冷めてもおいしい」というキャッチコピーで売り出されているのだが、冷めてももっちり感が消えないのだ。まさに、おにぎりのために作られたお米といっても過言ではない。

土鍋で炊いたお米を、沖縄の海で採れた塩を使い、優しく握る。そうすると最高のおにぎりが出来上がる。

こんな僕のおにぎりに対する熱意と努力を息子たちは知るよしもないのだが、その研究のすえに出来上がった塩むすびを出すと、むしゃむしゃとおいしそうに食べる。

上等な食育をしているような気持ちになるので、僕も満足である。

息子たちも、いつか誰かのためにおにぎりを握るときがきたら、父が握ったおにぎりを思い出してくれるのだろうか。そのときは何気に出されていたおむすびの奥の深さをぜひ知って欲しい。

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こんなことを思いながら、ハッとした。

もしかしたら母の出してくれたおにぎりにも、そんな秘密が隠されていたのかな、と。

あのおにぎりが母の研究の賜物だとしたら、僕がまだ知らぬ秘密も隠されていそうである。僕のおにぎり研究は、まだまだ終わりそうにない。

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