休日の朝の過ごし方

わが家の笑顔おすそわけ #8 「休日の過ごし方」〜5歳さんの場合〜

LIFE STYLE
2020.10.17

「休日の朝」

なんて心地の良い響きだろうか。こんなに優雅な言葉はなかなか存在しない。

多くの人は週末を楽しみにしながら平日を生きている。社会人も学生も土日に恋い焦がれながら人生を過ごしているのだ。

月曜、火曜をなんとかやり過ごし、水曜日からようやくチラチラ見えだす、週末。木曜日は「もうひと頑張り」と自分を励まし、金曜日はゴールに向かってラストスパートを掛けて、土曜日の朝を迎える。

朝、目覚めてスマホを見る、休みだということに気付いて、ホッとしながら二度寝をする。

この二度寝こそが、人生の幸せなのである。人は二度寝の幸せを噛みしめるために日々の生活を頑張っているのかもしれない。

そして、二度寝をしてからもう一度起き、ゴロゴロしながら観る王様のブランチが最高なのである。まさに気分は王様。土曜日の午前中の番組に『王様のブランチ』と最初に名付けた人は天才である。

僕もサラリーマンをしていたときは、週末の『王様のブランチ』を楽しむ一人だった。行きもしないおしゃれなパンケーキ屋さんの情報をなんとなく観ながら「今週もお疲れさんでした」と自分を労い、自分でパンケーキを焼く。KALDIで買ってきたマンデリンのコーヒー豆をミルで挽いて、ドリップする。そしてベランダで鳩の鳴き声を聞きながらコーヒーを飲むのであった。この土曜日の朝の時間こそが幸せであり、一週間のご褒美だった。

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そんな生活が一変したのは自分がフリーランスとして働きはじめてからだった。

さらに今年の1月に会社を作って社長になったわけだけど、そのタイミングで世界が「リモート時代」に突入したのである。

たまにある打ち合わせは早くても11時くらいだし、寝癖だけ軽く直して下半身はパジャマで大丈夫なのだ。最高である。2020年は予期せぬ形で働き方改革が起こってしまったのだ。

しかも社長なので、昼過ぎから働いても誰から文句を言われるわけでもない。始業時間もないので毎日がフレックス出勤である。そもそも自宅が会社なので、出社という概念さえもない。

僕は夜型人間なので、一番エンジンが掛かるのが夜中。21時出勤5時(朝)退勤でちょうど良いくらいだ。しかもこの時間帯は誰からも連絡がこないサイレントタイム。草木も眠る丑三つ時である。「全集中、仕事の呼吸」ができるので圧倒的に効率的である。
それに連絡が来たとしても、午前3時に即レスすると「こんな時間に即レスなんてあの人はいったい全体いつ寝ているんだ!」と、周りからの評価も勝手に上がるのだ。ただ夜に仕事しているだけなのに、24時間働いている人だ!さすが起業家は違うな!と、周りが過大評価してくれる。深夜労働最高である。

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そして朝はゆっくりと起きて、『スッキリ』を観ながらコーヒー豆を挽いている。優雅な生活である。僕もかつては乗車率120%を超える満員電車で通勤をしていた。ぎゅうぎゅう詰めの車内に詰め込まれて、朝から体力の半分以上を削られていたのだ。満員電車で人が感じるストレスは臨戦態勢の戦闘機に乗るパイロットよりも強いということがわかっている。みんな戦闘機乗りなのだ。僕が毎朝戦地に赴いていたのも遠い昔の記憶である。

そんな僕も今では毎日『スッキリ』を観ながら、平日の王様のブランチを楽しんでいるわけだ。だいぶ出世した。

しかしこんなことを書くと「自分も毎日、休日の朝的な生活をしたい!王様になりたい!」と言い出す人も出てくるかもしれない。リモート時代になったと言えども、今日も満員電車に乗り、戦闘機のパイロットよりも強いストレスを感じている人はたくさんいるはずだ。

たしかに自分で会社を始めれば、優雅な朝を手に入れることはできる。しかし「毎日休日のような朝」を手に入れた代わりに、失くしたものもある。

ちなみに経営者に労基法は存在しない。タイムカードもない。極端な話をすればずっと仕事をすることができるし、残業代もつかない。

これはフリーランスといわれる人たちもそうだろう。1月に起業してさっそく8月に倒産の危機を迎えた弊社なのだが、起業準備でせっせと貯金していた300万円はいったいどこに消えてしまったのだろうか。いつの間にかなくなっていた。

そして入ってくるお金は3ヶ月後なのに、支払いは今月しなくてはいけないというパラドックス。このことを知人の経営者に話したら「あるあるあるある〜〜!!」と相づちを打っていたのでどうやら経営者あるあるらしい。

8月危機はなんとか乗り越えたが、9月危機もあった。それもなんとか乗り越えたが「来月は破産かも…」も経営者あるあるらしいです。できれば経験したくない『あるある』である。

僕は毎日王様のブランチができる権利を手に入れた代わりに大きな代償を払っているのかもしれない。しかし人生とは何かを手に入れる代わりに何かを手放さなくてはいけないのだ。すべては等価交換なのである。

なのでこの文章を読んで一瞬でも「毎日が休日のような朝、いいな〜」と思う読者がいたとしたら、その代償についてもよく考えてほしい。

とはいえ僕はこの生活をとても気に入っているので、こっちの世界においでと誘いたくもなってしまう。人生はハイリスク・ハイリターンでもあるのだ。

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月曜から金曜まで頑張って手に入れる土曜日の朝の二度寝も格別だろう。我慢した上で手に入れる報酬だからこそ意味があるのかもしれない。喜びもひとしおだろう。
しかし毎日の二度寝もなかなかな贅沢である。時間の自由を手に入れたからこそ丁寧な生活を送れているのだ。

僕は今日も朝の5時まで働き、朝は遅く起きてゆっくりとしている。そしてコーヒーカップを片手に、スマホで銀行口座を確認している。そして僅かに残っているお金を眺めながら、今月をどう乗り切るか弊社の生存戦略を考えている。

この時間は果たして優雅なのだろうか…コーヒーカップを持つ手が少しだけ震えているが、そんなことは気にしない。

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