「食べたい」と思ったら好奇心のままに作ってみるーー時任勇気さんのおうちごはん
今回お話を伺ったのは、俳優の時任勇気さん。ニュージーランドで生まれ、カナダ留学の経験もあるグローバルな経歴の持ち主です。そんな時任さんに、海外生活での食生活やお父様である俳優の時任三郎さんとのエピソード、料理のモチベーションなどを伺いました。
海外生活で苦手なパクチーを克服
ーー時任さんは海外で暮らしていた経験もありますよね。印象に残っている食生活のエピソードはありますか?
ニュージーランドに住んでいるときは、ずっと「日本のラーメンが食べたい!」と思っていました。インスタントではなく、お店で食べるようなラーメン。当初はお店がなくてお金を払っても食べられない状況だったので、近くにラーメン屋ができたときはすごく感動しましたね。
ーー海外のラーメンは高級品ですよね。
「ラーメンっていう新しいものが来たぞ!」と騒ぐ周りの友達に、「これが日本のラーメンだよ」と大きい顔をして話していました(笑)。
ーー海外では、自炊もしていましたか?
カナダに留学していたときには自炊もしていました。炊いたごはんに、塩こしょうで味付けして焼いたお肉を乗せて食べる程度でしたが…。
ーーちゃんとお肉を焼くだけでもえらいです。
「とりあえず肉があればいいや!」と思って、お肉を大量に買っていました。お肉を4〜5kg買って、友達とバケツサイズのハンバーグを作ったこともあります。
ーーすごい!ちゃんと中まで焼けましたか?
オーブンで焼いているときに、どんどん汁があふれてきてしまって。がんばって取り除いたんですけど、後から「あれ?捨てた汁、うまみなんじゃない?」と気づいて。5〜6時間かけて作ったのに、パッサパサなハンバーグに仕上がりました(笑)。
バケツサイズに挑戦する前に作った、フライパンサイズのハンバーグはおいしくできたんですけどね。「もっと大きくできる!」と、欲を重ねたら失敗しました。
ーー特大サイズの料理は難しいですよね。レシピを倍量にすればいいわけでもないですし。
加熱具合とかも、大きさで変わってきますしね。
ーー海外の食文化に触れたことで、自分の価値観に変化はありましたか?
住んでいた街・バンクーバーは中華料理店が多くて、朝から飲茶を食べることも多いんですよ。日本での朝食は食パン1枚とかで手軽に済ませてしまいがちだったので、最初は「朝から飲茶はヘビーだな」と思っていたんですけど、だんだんそれが日常化していきましたね。
ーー朝からしっかり食べるようになったんですね。
はい。あと、苦手だったパクチーが食べられるようになりました。フォーに必ずパクチーが入っているんですけど、毎回抜いてもらうのも面倒で。がんばって食べていたら、いつの間にか好きになっていましたね。
父と食べた思い出のカップラーメン
ーー今は日本でご家族と暮らされていますが、ご実家でのお食事はどんなスタイルですか? 会話しながら楽しまれるんでしょうか。
食の好みや仕事の予定がそれぞれあるので、食事は個々で用意して食べています。たまにみんなで食事をする際は、僕が会話の中心になることが多いですね。しっかりしている父と、ちょっとゆるい母、僕はその間なので、うまく家族のバランスが保てていると思います。
ーーご家族との食にまつわる思い出はありますか?
子どもの頃は、カップラーメンなど、添加物が多く使われている食べ物を両親に禁止されていたんです。でも父の沖縄ロケについていったとき、全然飲食店があいてなくて…。やむを得ず、二人でカップラーメンを食べたのがすごく印象に残っていますね。「食べていいんだ!」って。空腹も限界でしたし、カップラーメンはずっと禁止されていたので、めちゃくちゃおいしかったです。
お肉料理に欠かせない魔法の粉、五香粉
ーー今はどのくらいの頻度で自炊をされているんですか?
週の半分くらいは作っていますね。しっかり献立を考えるというよりは、冷蔵庫にあるもので適当に作る感じですけど。
ーーよく作るメニューはなんでしょう?
電子レンジで作る茶碗蒸しです。卵、水、醤油、酒、みりんを混ぜて5〜6分加熱するだけでできるんですよ。ネットで「茶碗蒸し レンジ」で調べたらレシピが出てきました。
ーー「茶碗蒸し 簡単」ではなく、電子レンジで作る前提で、調理法から調べたんですね。
そうです。いろんなレシピを試した結果、高ワット数で短時間の加熱だと、気泡がたくさんできてしまうことに気づきました。低ワットで長時間加熱にすると、舌触りが良くなるのでおすすめです。
ーー試行錯誤されていますね。他にもいろんなメニューを作られていると思いますが、料理を成功させるコツは掴めましたか?
やっぱり、ちゃんと計量をすることが大事ですね。適当に入れるのはギャンブルなので(笑)。目分量だと、おいしくできる日もあれば、そうならない日もあって。本当は面倒だから計りたくないな、と思っちゃうんですけど、しっかり計量することで、料理の味が安定しますね。
あと、薬味は抜かない方が良いです。手間はかかるけれど、チューブのしょうがは使わないですし、ねぎもその都度切るようにしています。
ーー薬味があることで味が引き締まりますもんね。他にキッチンや冷蔵庫に常備しているものはありますか?
せせりは常備していますね。歯応えがあってお腹にも溜まりやすいので、好きなんです。あまり売っているお店が多くないので、見かけたときは買い溜めしています。その後に来るお客さんには申し訳ないですけど(笑)。
調味料で言うと、五香粉は切らさないようにしています。シナモンっぽい味で、お肉を焼くときによく使うんです。
ーー時任さんが料理を好きになったきっかけや手応えを感じた瞬間はありますか?
中華にハマって、チャーシューを作ったときですね。五香粉に出会ったのもチャーシューのタレを作っていたときでした。「中華のチャーシューにしかない、あのうまみはなんだ!?」と思って、中華系のスパイスを片っ端から買って試したんですよ。香りを出すためのホールスパイスを、そのまま食べてしまったこともありました(笑)。
ーー探究心がすごいですね!
五香粉さえあれば本当に何でもおいしくなるので、魔法の粉だと思っています。五香粉に出会うための試行錯誤は「この先、楽をするための努力」でしたね。
ーー周りの方に料理を振る舞うこともありますか?
友だちとバーベキューをするときには、漬け込んだお肉を持っていきます。みんなに五香粉の素晴らしさを知ってもらいたくて。
ーー五香粉に絶大な信頼を持っているんですね。時任さんの推しスーパーはありますか?
お肉が好きなので、「肉のハナマサ」によく行きます。店舗によっては業務用のような売り方してるところもあるんですけど、僕の行くところは家庭の焼肉用パックが売っているんですよね。でもせせりだけは「オオゼキ」で買っています(笑)。
効率良くおいしいものが作れたらベスト
ーー料理と仕事に共通する考えはありますか?
料理も仕事も、効率良く最高のものができたらベストだなと思っています。すごくがんばって作っても、食べる頃に自分がヘトヘトになっていたら悲しいじゃないですか。一生懸命がんばって良い結果が出るのはもちろん、その上で効率も良くできたらもっと良いなと思います。
ーー先ほどの蒸し器ではなくレンジで茶碗蒸しを作る話にも通じますね。
そうです。本来蒸し器で作っていたものが、レンジでもすぐに作れるなんて最高ですよね。
ーー時任さんの料理のモチベーションは何でしょう?
「これ食べてみたい」「これを作ったら楽しそう」という好奇心ですね。あとは、さっきの特大ハンバーグのような大きな料理にときめくんですよね。寿司ケーキを作ったこともありました。
ーー特大メニューは材料調達も調理も大変ですし、挑戦する人はなかなかいないと思います。時任さん、大胆ですね!
あまり計画性がないんですよね。料理に限らず、「やりたい!」と思ったら、そのまま突っ込んでしまうタイプです(笑)。
ーー料理の失敗を恐れてしまう人も多いので、そのスタンスは素敵だと思います。
これまで、なんでも気ままに挑戦してきたからこそ、計量の大切さを身をもって体感しました(笑)。みなさんも、普段からもっと気軽に料理に挑戦していいんじゃないかなと思います。