
料理もダンスと同じで「基礎練習」が大事ーーパフォーマー・澤本夏輝さんのおうちごはん
ダンス&ボーカルグループ「FANTASTICS」のパフォーマー、澤本夏輝さんは、テレビ番組などで農業や料理に関するレギュラーコーナーを持つほどの腕前の持ち主。「一人暮らしを始めるまでは、割った卵に殻が混じることもあった」と語る澤本さんに、料理を楽しめるようになったきっかけや、メンバーとの食事などを伺いました。
バイト経験で「料理が楽しい」と思えるように
ーーテレビ番組のレギュラーコーナーを拝見していると、澤本さんが食に真剣に向き合って楽しんでる様子が伝わってきます。食への探究心は、昔から強かったんですか?
僕の母が保育園の調理師で、料理が身近だったんですよね。物心がつく頃から「料理っておいしいものなんだな。おもしろいな」という認識がありました。
自炊することが多くなったのは、上京して一人暮らしになってからです。当時は飲食店でバイトをしていたので、そこからいろいろ学びましたね。どちらかというと、好きというよりは生活のために続けていたら、いつの間にか特技になったという感じです。
ーー料理を楽しめるようになったきっかけは?
上京前も料理はしていたけど、卵を割ったら殻が入っちゃうくらい苦手で。食材を切るのも遅かったんです。でも、バイトの仕込みをしているうちにだんだん速く切れるようになって、そのくらいから「あれ、楽しい」みたいな。
そういえば、当時はフライ返しの練習をしていましたね。ビニール袋に片栗粉を入れて重し代わりにして、フライパンで振るんです。バイト先の店長が上手だったからどうしてもやりたくて。その頃から家での料理が苦じゃないというか、楽しんでできるようになりました。
ーー基礎練習を重ねる発想がパフォーマーらしいですね!澤本さんの料理を拝見するとチャーハンに糸とうがらしをのせてあって。盛り付けが見事だなと思ったんですが、意識するようになったのは、いつからですか。
一人暮らしを始めたころに、母から「盛り付けが下手だ」と指摘されたことがあって(笑)。「料理初心者なら、野菜炒めや焼きそば、親子丼から始めてみたら?」とアドバイスをもらったんです。それで作って写真を送ったら「おいしそうに見えない」って(笑)。そのタイミングで、家でも「きれいに盛るんだ」って意識するようになりました。今では特にカルボナーラの盛り付けにこだわっていて、「卵をのせたらおいしそうかな」みたいなのはよく考えてます。
ーー盛り付けの参考にするものはなんですか?
食事に行った店で、「盛り付けがおしゃれだな」と思ったら真似してみています。後は大葉の切り方とか、「細めだな」「みじん切りにしたほうが、口に入れた食感が好みだな」と気が付いたら随時取り入れています。最初のバイト先がパスタ屋さんだったので、パスタを盛るときのひねり具合とかはそこで学びました。
MV撮影の2日前からストイックなメニューで身体を調整
ーーパフォーマーさんって、いつも身体に気を配ったメニューを食べているイメージがあります。澤本さんは、普段はどんな食生活を送っているんですか?
食べたいものを食べていますね。若い子は体を絞ろうとストイックな食生活になりすぎる傾向があると思うんですが、食べることって僕にとっては生きがいというか。食べるために仕事をがんばっている節があるんです。
もちろん、MVの撮影では2日前から気を付けますよ。でも、鶏ハムとかばかりだとストレスが溜まるから、「終わったらごほうびにラーメンを食べるぞ!」ってモチベーションにしたりして(笑)。食べないとパワーが出なくなって、そうするとパフォーマンスに活かされないし。ダイレクトに食が体に影響するから、食べることって大事だなと気づかされますよね。
ーーラーメンをモチベーションにするところが、澤本さんらしいですね。メンバーと過ごす楽屋の雰囲気はどんな感じなんですか?
皆さんの想像よりきっと普通ですよ。コンビニでゆでたまごを買ってきて食べる人もいれば、お弁当を食べる人もいます。結構わちゃわちゃしていますね。
メンバーの中にはMV撮影の10日前から気を配っている人もいるんです。でもメンバーで食事に行くと、僕みたいにラーメン屋さん3店舗をはしごする人もいる。本人の体質にもよるんでしょうね。筋肉メニューに関しては「こんな食べ方いいよ」と、メンバー間で共有しています。
ーー澤本さんがメンバーに料理を振舞うこともあるんですか?
寮生活をしている時は、ありましたね。カルボナーラとかペペロンチーノとか。最初のバイト先がパスタ屋だったから、パスタが多かったかな。僕も結構食べるので、とにかくパスタをゆでる量がすごくて(笑)。家庭用コンロだから火が回らなかったりして、大変でした。でもおいしかったですね。
パスタの付け合わせにポテトサラダをみんなで作ることもありました。作りながら食べちゃうから、食卓に並べる頃には半分くらいしかなかったですけど。
福島のロケ撮影では道の駅に立ち寄り、地元食材をチェック
ーー番組内コーナー「FANTASTICS畑」(福島中央テレビ)についてもぜひお話を伺いたいです。野菜の生産者に直接お話を聞く番組ですが、もともと農業に興味があったんですか。
畑仕事を見るのは好きでしたね。もともと食材に興味があって、野菜がどうやってできるのかを知りたかったんです。撮影では毎回「こんな野菜があるんだ」と新鮮さを感じながら、福島ならではの野菜とか土づくりを学んでいます。
特に驚いたのがキノコですね。木に生える原木栽培しか知らなかったんですけど、オガクズなどに栄養を混ぜた人工培地で育てる菌床栽培もあるんです。そういうのを知ってスーパーへ行くと、また買い物が楽しくなります。
ーースーパーで買い物する時は、何に注目しますか?産地とか?
産地はあまり気にしてないですね。でも、福島県産を見かけたら、うれしくなって手を伸ばしちゃいます。福島では撮影の合間によく道の駅に寄るんですが、道の駅の野菜って、生産者さんの名前が載っているんですよね。東京のスーパーで買う時は、「福島で見かけたのとは違う生産者さんだな」って思ったりしています。
ーーロケ先で出会った、印象的な野菜はなんですか?
福島県の郡山ブランドの野菜ですね。冬甘菜(ふゆかんな)というキャベツがあって、みなさんに食べてほしいくらい、本当に驚くほど甘いんです。
甘い野菜つながりだと、同じ郡山ブランドに御前人参っていうのがあって。このにんじんをミキサーにかけてジュースにしたら、砂糖も何も入れていないのに野菜ジュースより甘いんですよ。僕の中で衝撃的でした。
ーーその二つって、福島県で開催された「中テレ祭り」で、澤本さんが考案した限定ポトフ「FANTASTIC SOUP」に使われていましたよね。
そうです。地元食材を使う料理をどうするかは、すごく悩みましたね。「そのままでも十分甘いから炒めない方が素材の良さがでるんじゃないかな」とか「でも生で出したら意味がないな」とか、あれこれ考えました。結局、ポトフがシンプルで食べやすいと決めました。
最終的には日本調理技術専門学校のシェフや生産者の鈴木農場の方と相談して、「にんじんをペーストにしたら」とアドバイスをいただいて完成しました。
ーー野菜の特性を理解したうえで調理法を考えるのって、なかなかできないことですよね。
福島の野菜は本当にポテンシャルが高くて、シンプルに素材を味わうのが一番おいしいとロケで学びました。だから僕はポトフ以外に思いつかなかったんです。にんじんのペーストも、調理工程を見ても「これは御前人参じゃないと無理だな」と感じました。ほかのにんじんだとザラツキが出ると思うし、甘さも控え目になると思います。
レシピ通りの完コピを目指さない
ーー澤本さんが作っていて、一番「楽しい」と感じる料理はなんですか?
パスタソースを作っている時が楽しいですね。具材が変わっていく様子を見るのが好きで、「いいぞ、いいぞ」って。煮込んでいる時は「トマト崩れろ!」と念じます。無理やりつぶさない方がいいんですよ。
ーー料理中は、音楽を流したりしますか?
ラジオを聞きながら、ニヤニヤして作っています。芸人さんや星野源さんとかのオールナイトニッポンが好きで、よく聞くんです。メンバーの(中島)颯太もラジオ好きだから「この回、おもしろかったよ」って教えあっています。
動画を流しながら料理をする方もいると思いますが、僕はしっかりと料理を見ているタイプ。アニメとか映画とか観たい作品があったら、料理とは別にきちんと時間を作って観賞しますね。
ーー調理中から食にしっかり向き合うんですね。料理で参考にする料理家さんはいますか?
コウケンテツさんや栗原心平さんのレシピはよく見ます。男性料理家のレシピって、丁寧にする部分とざっくりする部分の緩急がついている印象があって、僕にとって作りやすいです。
ーーレシピ本からオリジナル要素を加えることもあると思うんですけど、澤本さんの「ちょい足し食材」の定番ってありますか?
僕はシンプルな味付けが好きなので、ちょい足しというよりは「ちょい削り」派ですね。食材を揃えるのって大変で、スーパーへ買い足しにいかないといけないこともあるし。料理初心者の方ってそこでつまずいちゃうこともあると思うので、「まずは完コピを目指さない」というのも大切かなと思います。
ーー「これがなかったら料理が成立しない」とか、なかなか判断が難しい気もします。
そういう時に僕が見ているのは、色合いですね。テレビとかで紹介される料理って、色合いも重視されていると思うんです。だから、「これは色合いのための食材だな」「これは食感だな」と見極めるようにしています。例えばズッキーニは色味だけじゃなく食感もあるから、きっと残した方がいいなとか。時にはメインっぽく見える肉がなくても、野菜だけで炒めたらおいしい時もあるんですよ。
冷蔵庫のスタメン食材は納豆と卵
ーー忙しい時の澤本さんの定番メニューも、ぜひ教えてください。
忙しい時は、筋肉のことを考えた料理の方がゆでるだけで済むので楽です。納豆とごはん、ゆでたまご、ブロッコリー、鶏むね肉、ささみとか。後は、プロテインもトレーニングの後と寝る前に摂るように心がけています。
ーー食材は冷蔵庫に常備しているんですか?
納豆と卵は絶対にありますね。あとは冷凍したブロッコリーとか。肉は冷凍すると忘れちゃって冷凍焼けしたりするので、使いたい時に都度買うようにしています。肉は次の日くらいまで考えて多めに買ったりすることはありますが、一度の料理でなるべく使い切っていますね。
僕は作り置きもあまりしないタイプで、夜ごはんとして食べて、残ったら次の日食べるくらいしか作らないです。
ーー調味料のお気に入りなどもありますか?
調味料とは少し違いますが、昔からおばあちゃんに「梅干しを食べろ」と言われていたので、甘いものからしょっぱいものまで梅干しが3種類くらいありますね。朝は梅干しを絶対食べるという生活が続いています。
推しスーパーは「行き慣れた場所」
ーー澤本さんの推しスーパーはありますか?
基本的に、家の近くのスーパーに行きます。やっぱり行き慣れた場所が楽で、疲れている時でも立ち寄って甘いものだけ買って出ることもあります。銘柄はあまり気にしませんが、カスタードと生クリームの両方が入っているシュークリームとか、柔らかめのプリン。後は、チョコレートのエクレアも好きです。
ーープロフィールでは、嫌いな食べものにパクチーをあげています。エスニック料理は苦手ですか?
パクチーが入ってなければ、エスニック料理でもなんでも食べます。昔はフルーツが苦手でしたが、叔母が農家をやっていて蜜たっぷりのリンゴやスイカを送ってくれるので一人暮らしを始めてから日常的に食べるようになりました。
ーー一人暮らしって、食への意識が変わるターニングポイントですよね。
そうですね。そういえば、一人暮らしを始めてから、辛いものも食べられるようになりました。バイトをしているとメニュー全部がおいしそうに見えてきて、ある日辛いものも挑戦しようと思ったんです。それでまかないで作ってもらったら「うまいじゃん!」って。そこから食べられるようになりましたね。好みの味覚が広がるとバリエーションも増えるので、おもしろいなと思います。