食事は義務にせず、楽しむことを大切にしたい――BEYOOOOONDS・高瀬くるみさんのおうちごはん

きのう何作った?

PEOPLE
2022.04.04

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アイドルグループ「雨ノ森 川海」「BEYOOOOONDS」の高瀬くるみさんは、野菜ソムリエの資格を持つほどの料理好き。でも、かつては好き嫌いが多かったそうです。「食事が義務ではなく、楽しいものになったらいいな」と話す高瀬さんに、ごはんについての考え方や、苦手な野菜の克服のポイントを伺いました。

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お話を伺った人:高瀬くるみさん

1999年3月16日生まれ。栃木県出身。「雨ノ森 川海」のリーダーであり、「BEYOOOOONDS」のメンバー。料理好きが高じて、野菜ソムリエの資格を高校時代に取得。2022年4月25日には初の日本武道館単独公演 『BEYOOOOOND1St CONCERT TOUR どんと来い! BE HAPPY! at BUDOOOOOKAN!!!!!!!!!!!!』を開催予定。

初めて自分だけで料理をした時、その楽しさに気がついた

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ーー高瀬さんは、普段作るメニューをどんな風に決めていますか?ブログなどの自炊写真を見ると、ワンプレートや丼物としてまとめることが多いのかなと思ったのですが…。

そうですね。私、昔から一度に食べる量が少なくて、小さい頃は好き嫌いも多かったんです。それで、母が「これはあなたの分だから、全部食べるんだよ」って、私の分をプレートや丼にまとめて出してくれていて。そうやって育ったので、自分で作る時も一つのお皿にまとめがちです。

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プレートにする時は、作りたいものをまず1個決めます。そのメイン料理のジャンルに合わせて、他のメニューを決めることが多いです。あとは純粋に、大人になってから「お子様ランチって素晴らしいな」と思い始めて(笑)。

一つ一つは少なめの量だけど、いろんな種類のおかずが食べられて、全体としての満足感が高いですよね。それがすごく好きだなって思ったんです。だからお子様ランチを意識しつつ、野菜もバランスよく取れるように考えて作ったりもします。

ーー献立のベースがお子様ランチとは、かわいらしいですね。高瀬さんは、品数を増やすための工夫って、どんな風にされてますか?毎回全部作るのは、ちょっと大変ですよね。

料理する時はあまり濃い味にせず、他の料理に活用できるようにしようとは考えています。例えばお子様ランチ用にハンバーグを作るなら、残った分をトマトスープで煮込んでもおいしくなるよう、控えめの味付けにするとか。1個のサイズを小さめにすると、アレンジしやすいです。

その分、冷凍庫はおかずがたまってパンパンになりがちですね(笑)。今だと豆腐ハンバーグや、さっと熱を通した野菜が入ってます。

ーー高瀬さんが、「私、料理できるかも!」と手応えを感じたタイミングっていつだったんでしょう?

中学生の頃、初めて自分だけで料理をした時ですかね。それまでは母と一緒に作ることが多かったんですが、母の帰りが遅くなった日に、「おかず1品作っといてくれない?」と頼まれたことがあって。一人でやってみたら、想像以上におもしろかったんです。

料理を食べた家族には、「え、これくるみが作ったの!?おいしいね!」って言ってもらえて。その時、料理する楽しさと「おいしい」って食べてもらえる喜びに気づきました。そこからより料理が好きになったし、自分から「今日おかず作っとこうか?」って、母に連絡するようにもなりました(笑)。

ーー素敵です……!高瀬家の家庭の味や、思い出の料理って何かありますか?

自炊するようになって、その手間に気づいて感動したのはハンバーグです。ピーマンもにんじんも玉ねぎも嫌いだった小さい頃に、「ハンバーグならよく食べるから」と、母が全部の野菜をみじん切りにして混ぜてくれていて。みじん切りがいかに大変で面倒かを知ってからは、「一回の食事にそんなに手間をかけてまで、野菜を食べさせようとしてくれてたんだ……!」って感動しました。

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あとは、母が学生だった時から作っていた料理に、ごはんに青のりと桜えびを混ぜて、チャーハンみたいに炒めてお醤油で味をつけるものがあるんです。それがめちゃめちゃおいしいんですけど、自分で作るとその味にはならなくて。積み重ねでできたオリジナルレシピだな、すごいなって思ってます。

ご当地調味料や直売所が大好き

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ーー高瀬さん、調味料はいろいろ揃える派ですか?それとも最低限のものでアレンジする派でしょうか?

たくさん揃えてるというわけではないんですが、ご当地調味料がすごく好きです!仕事で行った地域で、ふと目にとまった調味料を何も調べずに買って、帰り道に「これは何に合うんだろう?」って想像を膨らませるのが楽しくて。実際にどう使うかは、おうちに帰ってから調べるんです。

ーーこれまでで、印象に残っているご当地調味料はありますか?

高知県で買った、かつおぶしが入っている調味料ですかね。自分の好きな醤油を入れて作るだし醤油なんですが、「本場のかつおぶしが使われているとこんなにも味が違うんだ!」って、びっくりしました。

調味料とはちょっと違うかもしれないんですが、福岡県で買った「めんツナかんかん」も。明太子の調味液で漬けられているツナ缶なんです。名前がおもしろくて買ったんですけど、今では気に入りすぎて、行くたびに買っちゃいます(笑)。これにごはんとマヨネーズだけでもおいしいんですよ。

ーー濃いめの味付けも楽しまれてるんですね。「オフの日の前日、ちょっとハメを外して楽しむごはん」ってありますか?例えば、香りが強い食材を使うとか……。

私の場合、楽しみなごはんがあるというよりは、「オフの日にいろいろ料理をすること」自体が好きで。お仕事の合間だと、作れても1〜2品。オフの前日、何品も作りたいものを想像して、買い出しのためにスーパーをうろうろする時間が一番楽しいんです(笑)。

ーーなるほど!推しスーパーもあるんでしょうか?

スーパーにこだわりはあまりないんですが、外出しやすかった時は、野菜の直売所にも行ってました。スーパーではなかなか買えない野菜や、その土地の名産品を使った調味料とかも売ってるじゃないですか。

「農家の誰々さんが作りました」って、生産者の細かい情報を見るのも好きで……。「この調味料とこの野菜で、何か作ってみようかな?」って考えながら長居しちゃいます。あらかじめ買うものは決めてるんですが、結局予定の3倍ぐらい買って帰ることが多いです(笑)。

ーー作るものを決めて買い物するパターンと、素材からインスピレーションをもらうパターン、どちらもあるんですね。「これは試しに買ってよかった!」という例があれば、教えてください。

「丸っこくて大きめの形がおもしろいな」と思って買った米ナスですかね。「熱を通すとトロトロになる」と知って、輪切りにしてそのまま焼いたんですよ(笑)。食べてみたら、素材の味だけでも想像以上のおいしさでびっくりしました。野菜って、ちょっとしたことで味が変わるのがすごくおもしろいです。

食事を義務にせず、楽しい場にしたい

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ーー高瀬さんが所属しているBEYOOOOONDSのファンは、働き盛りの方も多い印象です。仕事から帰ってクタクタ、だけど何か自炊をしたいという時に、おすすめの料理はありますか?

オートミール、どうですかね?私もメンバーに勧められて食べるようになったんですが、お水を入れてレンジでチンするだけで、ごはんみたいになってくれるんです。

私自身、疲れたけど何か食べたい日には、オートミールにほうれん草入りのポタージュスープの素を入れて、枝豆とかをプラスして、お湯を入れてリゾットみたいにして食べてます。

ーーすごい、そう組み合わせる発想はなかったです!

本当に疲れた日は、無理せずにすぐ完成するものですませることも、心の健康に必要なのかなって思うんです。よく自炊するからこそ、そこでかかる手間も知っているので。

そんな時でも、お野菜のちょっと入ったスープを選んだり、すぐに使える冷凍食材をプラスしたりすることで、「体にいいことできたかも」って安心感が得られるのかな、とは思います。

ーー高瀬さんの料理って、「なんちゃって豚唐揚げ」「お豆腐ナゲット」のような工夫されたオリジナル料理も多いですよね。お母様から教わったものもあるとのことですが、それ以外だとどういったところから着想を得ているんですか?

私、YouTubeでお料理動画を見るのがすごく好きで。最初は料理の音が好きで見始めたんですが、見ているうちに作りたいものがどんどん増えていくんです。

そのまま真似して作ることもあれば、複数の人のレシピから発想をもらって、新しくレシピを作り上げることもあります。レシピサイトも見ますよ。

「なんちゃって豚唐揚げ」

ーー高瀬さんが、ポテトチップスを使ったオムレツを作っていたのがすごく印象に残っています。野菜ソムリエの資格があり、栄養の知識を持ちつつも、ジャンキーなものも食べるバランスが興味深いなあと。そういうものを作る時は、どういうマインドなんですか?

「作ったらおもしろそうだな」っていうのが一番ですかね。そこを求めて、ちょっと変わったものを作ったり、流行り物を試してみたりしてます。ジャンキーなものだけ食べるとなると、ちょっと体に良くないかもしれないので、野菜の取り入れ方を考えたりもしますが……うーん……。

献立を考える時に、毎日野菜の量を考え続けるのは、大変なことでもあります。「健康志向のごはんを食べなきゃ!」という意識だけになっちゃうと、食事が義務みたいになっちゃいそうなのが、自分としては嫌だなと思っていて。

ーーなるほど。

今は難しい部分もありますが、食事って、誰かと一緒に「おいしいね」って食べたり、ちょっと変わったものを作ることで「これどうやって作ったの?」って驚きや会話のきっかけが生まれたりする、楽しい場だと思うんです。

あまり食事に関心がなかった小さい頃に、母が「食事は楽しいものなんだよ」と教えてくれたからこそ、「食事のエンターテイメント性に目を向けたいな、食事がさらに楽しいものになったらいいな」と思っています。

苦手な野菜、食べられるようになるには?

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ーー苦手な野菜も多かったという高瀬さんが、野菜ソムリエの資格を取ることにしたのは、何がきっかけだったんですか?

高校生になった時、母に「一緒に取ってみない?」と誘われたんです。自分も料理をする中で栄養や野菜に興味を持っていたので、一緒に勉強することにしました。

ーーその頃には、もう野菜は克服していたんでしょうか?

資格を取る頃には、食べられない野菜はほぼなくなっていましたね。

小さい頃から母が料理への取り入れ方を工夫してくれたり、「一緒に作れば、達成感も得られて食べられるんじゃないか」と考えて料理の機会を作ってくれたりしたことで、ちょっとずつ食べられるようにはなっていて。

資格の勉強中には、それこそ野菜の直売所にも母と行ったんですよ!それで、私が苦手な野菜や食べたことのない野菜を買って、おいしい調理法を調べて作ってみたりもして。そうする中で、多くの野菜を食べられるようになったし、より好きになりました。

ーーだんだんと料理や食事への愛が育まれていったんですね。かつて苦手だった高瀬さんだから教えられる、野菜が苦手な人も食べやすくなる調理法はありますか?

苦味成分って、本当にちょっとしたことで抑えられることがあるんですよ。例えば、ピーマンなら切り方を輪切りから縦に切るよう変えるだけ、ゴーヤなら中のワタをちゃんと取り除いてあげるだけで、それぞれ苦味が抑えられます。

同じ野菜でも、品種によって苦味成分の量が違うこともあるので、そこをちょっと調べて知ってみるだけでも、食べようって気持ちになれるんじゃないでしょうか。

あとは、BEYOOOOONDSのメンバーを見ていると、競う相手がいると意外と食べられるのかなって、ちょっと思っていて(笑)。

ーー詳しく聞きたいです!

メンバーの前田こころちゃんと山﨑夢羽ちゃんは、グループ結成当初は好き嫌いが多くて、食べられない野菜も似ていたんですね。私はグループ最年長でもあるので、お弁当の時間に「ピーマン、最低でも2個は食べようねー」って言うこともあるんですよ。

そうすると、二人とも「えぇー」とかって言うんですけど、お互いに「私は3個食べたよ!!」ってアピールし始めたりするんです(笑)。

ーーかわいすぎます(笑)。高瀬さん、メンバーの食育までしているんですね。

(笑)。嫌いなものでも、食べているうちに、「意外と苦くないな?」「思ってたよりおいしいかも」と気づくこともあるのかなと思っていて。小さい頃の私もそうですが、先入観で食わず嫌いしていることもあるので、食べてみるきっかけを作ることも大事なんだろうな、と。……なんか、どの立場で話してるんだって感じですが(笑)。

料理が自分を前向きにしてくれる

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ーー高瀬さんは以前、家でしいたけを栽培されたりもしていて。食を楽しむのに全力な感じが、とても素敵だなぁと思います。

野菜ソムリエの資格を取って、BEYOOOOONDSのお仕事でも野菜に関する企画が増えたことで、より食育にも興味を持てるようになりましたね。せっかくなら総合的なアドバイスができるようにしたくて、野菜以外の食材についても勉強するようになりました。

そうやって、食事という生きていく上で重要なことへの関心が高まって、「もっと知りたい」と思えるようになったのは、自分にとってもすごく大きな変化でした。

ーー最後に、高瀬さんにとってのお仕事と料理の関係を教えてください。

私は結構ネガティブで、一度悩み始めると、自分が考えなくてもいいところまで考えて落ち込んでしまうことがあるんです。でも、料理をしている間は料理に集中できる。ごちゃごちゃーっとなっている頭を1回おいておけるんです。

それで料理を作って食べて、「おいしい」ってお腹も満たされたると、「あれ、私がさっきまでぐるぐる考えてたことって、意外としょうもないことなんじゃない?」って気づけたりもする。自分をポジティブに転換させてくれる一つの要素が、料理なのかなと思っています。

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聞き手・編集:小沢あや(ピース株式会社)
原稿構成:佐々木優樹
撮影:曽我美芽