気持ちの込もった料理が、心のとびらを開いてくれたーーベッキーさんのおうちごはん

きのう何作った?

PEOPLE
2021.11.16

img_nanitsuku_030-01

今年、二人目のお子さんが生まれ、仕事に育児にフル回転のベッキーさん。めまぐるしい日々の中で、どのように心のバランスを保ち、離乳食作りを含むおうちごはんを楽しんでいるのでしょうか。ベッキーさん流の料理、育児、家族コミュニケーションについて伺いました。

img_nanitsuku_030-guest

お話を伺った人:ベッキーさん

1984年3月6日生まれ。14歳で芸能界入りし、タレント業のほか、歌手や女優としても活躍。2018年からはアーティストとして個展を開催するなど、活動の幅を広げる。2020年に第1子、2021年に第2子を出産。

料理も育児も、完璧じゃなくていい。大事なのはパンクしないこと

img_nanitsuku_030-02

ーー復帰して、お仕事を再開したばかりのベッキーさん。多忙な日々の中、「がんばる日」と「がんばらない日」をどんな風に分けていますか?

私は性格的に完璧主義者なところがあるので、育児も料理も完璧にしたいと思ってしまうんですが、そう思えば思うほど辛くなってパンクしちゃうんですよね。だから自分の中でセンサーを働かせて何手か先まで計算しています。「もう一品作ったらパンクしちゃうな」とか「料理する元気はあるけど、片付けしたらパンクしそうだな」とか、そういう時は思いきってUberEATSなどに頼ったりして、メリハリをつけています。

ーー自ら決めてできるのがすごいです。自分だけならがんばらずに済ませることができても、お子さんがいらっしゃると、無意識にがんばってしまうこともあるんじゃないかな? と。

本当に、そうなんですよね(笑)。最初の頃は無理して、しょっちゅうパンクしていました。旦那さんは「あまり無理しないでほしい。毎日出前でもいいと思ってるよ」と言ってくれたんです。でも、がんばろうとしてはまたパンクして……。失敗を繰り返しているうちに、ようやく自分から「今日は出前で!」と言えるようになりました。

ーーそれはよかったです。日常的に何品も作る生活ができている方は素晴らしいけれど、「手抜きしちゃった」なんて後ろめたさを感じる必要もないんじゃないかな?と個人的には思うんです。

社会の重圧みたいなのって、ちょっとSNSを見るだけでも勝手に感じてしまいます。料理の写真を載せているママさんたちのインスタを見ると「私はこんなふうにできてない……」って落ち込んじゃって。私は、お昼ごはんは出前か朝ごはんの残りにすると決めています。お昼に料理をすることは、絶対にないです。

ーーお昼は料理しない、とはっきり決めることで余裕が生まれるんですね。

そう決めるのは悔しいし、情けないとまで思ってしまうこともあったけど……私の場合は、勇気を出して手放さないと休息が手に入りませんでした。

ーー一方で、ベッキーさんのSNSを見ていると、味噌や醤油まで手作りをされるなど、食に対するこだわりを持って料理を楽しんでいる印象を受けます。ベッキーさんが料理に目覚めたのはいつ頃からですか?

20歳を過ぎた頃から健康が気になるようになって、いろんな本を読んで勉強して、食生活に気を配るようになりました。でも、自分で味噌を作るようになったのも最近だし、料理は30代からですね。以前はむしろ大嫌いで、ほとんど自炊していませんでした。正直、20代の頃はまったく余裕がなくて。スイッチが入ったのは最近なんです。

ベッキーさん手作りのお味噌

「料理って、気持ちを込められるものなのかもしれない」と気づいた

img_nanitsuku_030-03

ーーお料理スイッチが入った時、最初に作った料理はなんでしたか?

まずは好きなものからと思って、グリーンカレーを作ったんです。ハードル高いんだろうなあと思っていたんですけど、20分くらいでできちゃったんです。よく考えれば、遠い国のおしゃれごはんだと思っていたものだって、その国の家庭の味なんですよね。「もしかしたら、難しそうに感じる料理も、作ってみたら意外と簡単なのかもしれない」と思って挑戦していくうちに、どんどん楽しくなっていきました。

そのうちに「そういえば、お米の正しい研ぎ方って調べたことなかったな」と気づいて、今度は基本を学ぼうと思ったんですね。そうしてお米の研ぎ方やお出汁の取り方を学び、その後は、余った食材で料理本を見ずにアドリブで料理するようになって、少しずつ階段を上がっていきました。

ーー知的好奇心を満たしてくれるところも含めて、料理が楽しくなってきたんですね。

楽しかったですね。あと、すごく落ち込んで元気がなくなっていた時、友達が「大丈夫だよ、私が今から料理しに行くからね」って家に来てくれたことがあったんです。

ーー素敵なお友達ですね……

食欲は全然なかったけど、目の前に並ぶ友達の料理を見たら、自然と「食べたい」と思えたんですよね。その時「料理って、ひょっとしたら気持ちを込められるものなのかもしれない。何かが伝わるのかもしれない」と思って。それからは私も人に「食べたい」と思ってもらえるものを作りたいと思うようになって、人のために料理をするのが楽しくなりました。

ーーとっても素敵なエピソードです。本当に、食べられないほど調子が良くない時でも、あたたかいスープを一口飲んで元気になることってありますよね。そういう時に必ず食べる鉄板ごはんはありますか?

心の元気がない時はチーズですね。普段は乳製品を取らないようにしているんですけど、がんばった日にちょこっとだけ食べるパルミジャーノレッジャーノが大好きです。身体の元気がない時は、簡単だけどおかゆを作ります。人って、自分のために何かをするのは面倒だけど、他人のためならがんばれたりするじゃないですか。疲れている自分を他人だと思って「この人に元気を与えよう」という気持ちでおかゆを作ると、不思議と元気になれるんですよね。

「分解ごはん」「秒速メシ」という概念

img_nanitsuku_030-04

ーーベッキーさんって、これまで何に対しても全力投球だったと思うんです。肩の力を抜こうと思っても、肩の力を抜くことをがんばってしまうんじゃないかと思うのですが……「今日はごはん作るけど、凝ったものは無理!」っていう日は、どうしていますか?

子どものごはんに関しては力を抜けないけれど、でも、旦那さんと自分の分は調節できますよね。だから旦那さん用のメインのごはんとサラダしか作らない日もあります。

ーーサラダをきっちり入れるのがさすがです。

自分のレパートリーの中に、秒で作れる「秒速メシ」がいくつかあって。たとえば、冷奴に高菜を乗せてごま油とこしょうをたっぷりかけるだけとか。これをメインの肉料理とサラダに差し込むだけで食卓には3品並ぶから、それなりに見えるという。

ーーちょっとしたものでも「一品」とカウントしていいですもんね。

そうそう、そうですよ!サラダだって、グリーンリーフとトマトを別の皿に盛って、トマトはスライスしてトリュフ塩をかけると、これだけで2品になりますし。サラダなんかは特に分解した方がいいと思います。

ーー「分解ごはん」!それ、すごく良い概念ですね!やってみます!

いつも旦那さん用の肉料理を大量に作るんですけど、彼はおいしいものをリピートしたがる人で、「明日もこれがいい」と言ってくれることが多いんです。だから、例えば仕事の前日には肉じゃがをたくさん作っておいて、翌日はカレールウだけ入れてカレーとして食べたりとか。普段から2日間に渡って食べることを想定していますね。

ーーちなみに、冷蔵庫に常備している「スタメン食材」ってどんなものがありますか?

キムチ、納豆、味噌……あとはトマト、米粉のシフォンケーキ。

ーーシフォンケーキ?

ビオセボンの「恋する米粉のシフォンケーキ」がおいしくて大量に常備しているんです(笑)。あとはねぎ、チーズ、こんにゃく、旦那さん用のお酒、などなど。結構ごちゃごちゃしていますね。

ーー買い物はマメに行くタイプですか?それとも、まとめ買いして作り置きするとか?

ちょこちょこ買いに行きますね。最近は母に買い物を頼むことも多いです。作り置きがあれば助かるのはわかっているんですけど、今は時間も気持ちも余裕がなくて。作ろうと思っても赤ちゃんがぐずったらその時点で終わりなので……予定を組めない日々なんです。

ーー子どもがぐずって買い物に行けなくなることもあると思います。そういう時、冷蔵庫にあるものだけで作る定番ごはんや、ちょい足しするものなどはありますか?

特にこれ、というものはないけれど、何か一つ乗せるだけでおしゃれな一品になったりしますよね。キムチをそのまま出すのではなく、ごま油をかけて韓国海苔を乗せるとか。そういうちょっとした工夫をしています。

img_nanitsuku_030-05

料理番組を見るだけでも、蓄積されるものがある

img_nanitsuku_030-06

ーーベッキーさんの「推しスーパー」はありますか?

ビオセボンがいちばん好きです。オーガニックなものがたくさんあるし、そこまで高いわけでもないから。最近は品数も増えているのでおすすめです。ちょっと贅沢をしたい時はナチュラルハウス。ネットスーパーの「大地を守る会」も利用していて、毎週お届けがあります。

ーーオーガニックな食へのこだわりが伝わってきます。「推し調理用品」はありますか?

炊飯器ですね。「かまどさん電気」の土鍋で炊ける電気釜を使っていて、保温機能もないし洗うのも大変だけれど、本当においしく炊き上がるのでおすすめです。

ーー保温機能がないのはかなりストイックですね。冷やごはんをおいしくいただくコツってあるんでしょうか?

慣れ、ですね(笑)。でも、おいしく炊ける土鍋のお釜を使っているので冷えてもおいしいですよ。

ーー器はどうでしょう?ベッキーさんは雑貨がお好きなので、そのあたりにもこだわりがあれば教えてほしいです。

自分で作ったお皿やボウルをよく使っています。気持ちを込めて作ったものって、いつまで経っても良いんですよね。作家さんだと、九谷焼の内村七生さんが好きで集めています。

img_nanitsuku_030-07

それから私は、箸置きにメッセージを込めることが多いです。うちには6種類くらいの箸置きがあるんですが、「今日は旦那さんが疲れてるだろうから、癒しの緑にしよう」とか「明日は負けられない試合の日だから、”歩くパワースポット”と言われている湘南乃風のSHOCK EYEさんにいただいた箸置きにしよう」とか。そうやってこっそり気持ちを込めるのが好きです。

img_nanitsuku_030-08

ーー普段、お料理のインスピレーションはどこから得ているんでしょうか?

クックパッドや料理本を参考にすることもあるけど、いちばん良かったのは料理番組でした。料理を勉強し始めた頃、料理番組を片っ端から録画して、とにかく見まくったんです。そうすると「これくらいのチキンにはこれくらいの塩なんだ」というのが映像でわかる。「塩、少々」って書いてあっても、具体的にどれくらいなのか、最初はわからないじゃないですか。

ーーたしかに、そこは最初につまづくポイントかもしれませんね。

でもいっぱい映像を見ると「プロの人って、だいたいこれくらいだったな」という感覚がわかるようになるんですよね。映像で頭に入れておくことはすごく効果的だったので、これから料理をがんばろうとしている人にはおすすめしたいです。ただ見るだけで蓄積になるので!

モチベーションはやっぱり、人に喜んでもらうこと

img_nanitsuku_030-09

ーー過去のインタビューでベッキーさんは「アイスを食べる時も身体を冷やさないように口で溶かしてから食べる」とおっしゃっていて、ストイックに健康管理される方なんだなあと感動しました。ベッキーさん流の健康維持の秘訣はなんでしょうか?

すべての病は冷えからくると思っているくらいなので、身体を冷やさないことが大前提です。最近は、冷たいものを食べる時は、白湯をがぶ飲みしてから食べるようにしています。それから、身体ってありがたいことに信号を出してくれるので、肌の調子などを見てその信号をいち早くキャッチして、食を変えています。

ーー不調にすぐ気づくように自分の身体と徹底的に向き合うんですね。お子さんのごはんについてもお聞きしたいんですが、食育はどのようにしていますか?

味付けをとにかく薄く、素材そのままの味にすることを意識しています。離乳食の時にがんばりすぎてしまったせいか、上の子はレトルト食品をほとんど食べてくれないんです。良いんだか悪いんだか……。

ーー子どもって、マイブームがすぐに変わりませんか?すごくハマっている食べ物があって、良かれと思って作り置きしても、いきなり「ペッ!」って吐き出しちゃって食べなくなったり……

そうそう、いきなり変わりますよね!そうか、みんな同じだったんですね……。そういう時はむなしくなってしまうけど、「いつか食べるようになるから大丈夫」と自分に言い聞かせています。だって、一生海苔しか食べない人なんていないですからね。

ーーそういう時はどうやって心を保っているんですか?

これを言うのはすっごい恥ずかしいんですけど……、落ち込んでしまった時は自分で頭をポンポンって撫でるんです。がんばった自分を労いたいから。そうすると人から頭ポンポンしてもらえた感覚になって、少しだけ心が動くんですよね。……って話しながらちょっと涙出てきちゃうんですけど(涙ぐみながら)。

img_nanitsuku_030-10

ーーその気持ち、少しわかる気がします……

この間も赤ちゃんの一ヶ月検診に行ったら、先生に「体重増えてますね、順調です、お疲れさまでーす」って帰されちゃって。私は「ママすごい、一ヶ月よくがんばりましたね!」って言ってほしかったのに、あまりにもさらっとしすぎていて、涙がたくさん出てしまいました。

その夜、旦那さんに「今日こういうことがあって……恥ずかしいんだけど、もうちょっと褒めてほしいなと思った。だから、たまに褒めてほしい」と話したんです。そうしたら翌日から明らかに態度を変えてくれて。時には身近な人に「褒めて・認めて」アピールをすることも必要なのかもしれないと思いました。

ーーそういう暮らしの中で、ベッキーさんは料理のどんなところに楽しみを見出しているんでしょうか。

おいしいと言ってもらえることです。その瞬間を想像できれば、がんばれる。人に喜んでもらうことが大好きなんだと思います。

img_nanitsuku_030-11

この記事をシェアする

取材・編集:小沢あや(ピース株式会社)
撮影:飯本貴子
文:山田宗太朗