仕事のために、家では優しい味のごはんをーー天竺鼠・瀬下豊さんの食卓

きのう何作った?

PEOPLE
2021.07.21

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激辛料理やバンジージャンプ、サバイバル企画への挑戦など、テレビ番組での体を張った活躍が注目されている天竺鼠の瀬下豊さん。市場の魚屋で6年間働いた経験のある瀬下さんに、魚をさばくときのポイントや、仕事の影響で変化したおうちごはんについて伺いました。

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お話を伺った人:天竺鼠・瀬下豊さん

『キングオブコント』2008、2009、2013ファイナリスト。自身のYouTubeチャンネル「全力戦士セシタマンチャンネル」でファンからの依頼を受けて、悩みやお困りごとを日々全力で解決中。

料理にハマるきっかけは、「めっちゃうまいやん」の一言

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ーー瀬下さんは、ご実家がお弁当屋さんだったんですよね。料理への興味は、幼いときからあったんですか?

そうですね。小学3年生ぐらいから包丁を握って、弁当屋の手伝いをしてました。おかんが料理してるのを見て、「自分もやってみたいなあ」って興味を持ったんですよ。

今でも、スーパーで惣菜を買うときに、作り方や原価を考えちゃいますね(笑)。

ーー原価計算!作って売る人の視点ですね。

「手間はかかるけど、作ったほうが安いな」と思ったら、自分で作ります。閉店前のタイムセールとかでめっちゃ安くなってて、「買ったほうがおトクだな」と思ったら買いますけど、おかずは自分で作ることのほうが多いですかね。

ーー瀬下さんは、芸人として活動しながら、市場の魚屋でも働いた経験があると聞きました。料理の腕が上がったのも、その時期なんでしょうか?

いやー、うなぎのさばき方は覚えましたけど、市場の基本的な仕事は、さばいたり調理したりする以外の内容だったんで……。腕が上がったのは、うわー、いつやろ……(悩む瀬下さん)。結婚してからですかね。

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ーーそうなんですか。どういう流れで?

嫁にお造りを作ることは前からあったんですけど、他の料理も食べてもらいたいなと思ったときに、いろいろ勉強し始めて。やっていくうちに、「自分、センスあるな」と勝手に思ったりして(笑)。実際、出したら「めっちゃうまいやん!」って言ってくれたんですよ。そこから料理にハマり出して、自分用の包丁も買いました。

ーー自分が作った料理を褒めてもらえると、嬉しいですよね。作っていて、楽しい料理は?

豚の角煮はね、作りたくなりますよね。豚のでっかいのを買ってきて、煮込んで縮こまるあたりがすごくいいんですよ。味のしみていく感じとか……。それを薄く切って、ビールと一緒に。最高ですよ。

意外と簡単に作れるおすすめメニューは、餃子かな。

ーーご自宅でもよく作りますか?

作ります、作ります。子どもと一緒に包んだりもして。最初は大体、肉パサパサになるんすよ、餃子って(笑)。それを自分で工夫して、ラードを足したり、あんにこだわったりし始めて。次は肉汁を出したくなると思うんすよ。

ーー餃子を進化させたくなる、と。

そう。どんどん自分で工夫できるから、あまり料理したことない人でも楽しめると思う。焼くのは難しいですけど、きれいに焼けたときってめちゃくちゃ嬉しいし、気持ちいいんで。

ーーいきなりすごい料理に挑戦するよりも、定番料理を自分なりにアレンジしていくのが、料理好きへの近道なんですかね。

そう思います。あと、魚をさばくのってなんとなく難しそうとか、苦手意識を持っている人も多いと思うんですけど、意外と簡単ですよ。

ーーさばくときのコツがあれば、ぜひ知りたいです。

僕の見解ですけど、さばくのがうまくいかない場合は、多分包丁が研げてないんすよ。

ーー料理の腕じゃなくて、道具の問題なんですね!

そう。魚をさばくときは、包丁の先のほうがきちんと入らないと難しいんです。だから、先まできちんと研げるシャープナーや砥石を使ってから、挑戦してみてほしいですね。

ーーその視点はなかったです。初めての人もさばきやすい魚はなんでしょう?

一番簡単なのは、タイですかね。身がしっかりしてるんで。あとは、サバかな。あじは、「ぜいご」ってウロコみたいなのがついてるから、そこはちょっと難しいけど、皮は剥ぎやすいと思います。仕事のために、家では優しい味の料理をしています。

お手製の、あじのなめろう

ーー最近は外食が難しい状況ですが、瀬下さんの食生活にも変化はありましたか? 

やっぱり、かなり変わりましたね。これまでは先輩から誘われたり後輩を誘ったりして、ほぼ毎日飲みに行ってたんですけど。

ーー心境としては、いかがでした?

飲みに行けないのは寂しいですけど、結構ポジティブに捉えてます。最近は、仕事のロケで料理を作る機会も多いんで、そこで出すもののレシピをいろいろ考えてました。家にいると、子どもたちも喜びますしね。

ーーなるほど、次のお仕事の仕込みもされているんですね。

そうですね。食事はするのも作るのも好きだから、料理は続けているんですけど。これまでは食べたいものを自由に作っていたのが、どちらというと胃に優しいものを作りがちになりましたね。激辛ロケも増えたし(笑)。

ーー胃のいたわり、大切ですね(笑)。仕事を意識することで、だんだんと健康志向になったということでしょうか。

そうそう。もともとお酒が好きで、料理も濃い味のものが好きなんですけど、「ちょっと薄味やなあ」と思いながら、減塩してます(笑)。「塩分が強すぎると高血圧につながるな、そしたら仕事に差し支えるなあ」とか、考えてますね。

ーー普段は、どんな風に料理をするんですか?

僕、冷蔵庫にあるものを見て、そこからレシピを考えて作るのも好きなんですよ。なんかゲームみたいじゃないですか?お題!みたいな感じで(笑)。すごく楽しんでやってます。

パートナーが作らないものを自分が作る

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ーー瀬下家は共働きということですが、家事の分担はどのようにされてます?

基本、手が空いてるほうがやりますね。気になったら、相手の家事に口を出すんじゃなくて、自分がやる方針です。部屋が散らかってたら、「ああ、忙しかったんやろうな」って判断して、自分で片付ける。

ーー料理も、お二人でされるんですか?

はい。僕が料理にハマる前は、嫁がほぼ作ってくれてました。

ーーお二人の中で、料理の分担ってあるんでしょうか。

そうですね。嫁は魚をさばいたりはしないので。子どもたちと一緒に食べるときの献立としては、嫁が作らないやつを自分が作ろうとは思ってます。

例えば、子どもたちと一緒に魚釣りに行って、持ち帰った魚をさばくところも見せて、いろんな風に料理したりとか。レジャーも込みの「食」は、主に僕の担当ですね。

ーー食材がどこから来ているかも含めて、まるっと体験できますね。

そうそう。一種類の魚から、お造りや煮物、天ぷらを作って、「こういうものができるんだよ」とバリエーションを見せて。家にいるときは、極力そんな風に料理するようにしてますね。

お造りも自作

「ドチザメ」っていう小さいサメは、東京湾でも釣れるんですよ。子どもと釣りに行って、持って帰ってさばいて、フカヒレを作って、フカヒレスープやサメの唐揚げを作ったこともあります。淡白な白身魚のような味わいで、おいしいんですよ。

ロケで釣ったモウカサメと瀬下さん

ーーへえー!お子さんたちの、料理への興味はいかがですか?

小学5年生の娘は、興味を持ち始めてますね。お菓子作りから入って、今は卵料理をすごい作ってます。

ーー瀬下さんが教えたり、一緒に作ったりもするんですか?

「やりたいんやったら教えるよ」ぐらいのスタンスですかね。料理中も、危ないからやらせないとかは絶対したくないんで。大ごとにならない範囲で失敗して、できるようになっていくのがいいと思ってます。

ホットプレートが演出する特別感

ーー忙しい日にぱぱっと作れるおすすめレシピがあれば、教えてください。

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僕はもう、肉ですね。肉炒めて、焼肉のタレかけて(笑)、野菜もバーって炒めて。そのままどんぶりにかけて、とき卵をピューっとかけるかな。それが一番早い。

ーーいいですね。アイスムは、「がんばる日も、がんばらない日も、あなたらしく。」をコンセプトに掲げていますが、どうしたら日々のごはん作りと気楽に付き合えると思いますか?

僕は、出来合いのものとか冷凍食品とかを活用するのもアリだと思います。気になるなら、透明のパックから出して、皿に野菜を敷いて、その上に乗っけるだけでも十分ですよ。作ったものか買ったものかなんて、織り交ぜちゃえばわかんないと思いますし。

例えばカツ丼を作るにしても、カツから作る必要なんてないので。カツは買ってきて、そこから先を自分でやるようにしてもいいし。限られた時間の中で料理する方も多いと思うんで、ほんと、時間を短縮できるところは短縮して、楽していいと思いますよ。

あとは、ホットプレートがおすすめですね!ホットプレート出せば、子どもは喜びますから(笑)。しかも、洗い物も少なくなるし。

ーーたしかに!それは嬉しいポイントです。

ホットプレートを使うだけで、ちょっと特別感が出るじゃないですか。ただ目玉焼きとソーセージを焼くだけでも、お店っぽい雰囲気が出る。

ーーお祭りの出店のイメージですね。

それだけでも、子どもは楽しんでくれますよ。うちはホットプレートの出現率高いです。

焼き肉もしますし、タンドリーチキンを焼いたりもしますね。娘が、焼いたものをチーズで巻いて食べることもあるから、「ここはチーズの場所」みたいに場所を区切って、チーズを溶かしても楽しいですし。お好み焼きもやりますよ。

「あれ?」と思ったらチーズで挽回!

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ーー瀬下さんは、鹿児島県のご出身です。ご当地スーパーは?

「タイヨー」ですね。肉から魚から、なんでも売っててオールマイティーなスーパーです。鳥刺しも売ってます。だから、大阪に出てきたときには全然見かけなくてびっくりしました。今は前よりメジャーになったと思いますけど、当時は「鳥って生で食べられるん?」って聞かれましたからね。「食べられるよ!生が一番うまいねん!」って言ってました。(※)

ーー他に、鹿児島ならではの料理というと何ですかね。

さつま汁とかのごった煮系は、細かいところを気にしない県民性が出てるなって思います(笑)。さつま汁って、大体みんなが集まる寒い日に、でっかい鍋で作るんですけど。大根とかにんじん、こんにゃくを切って、肉や玉ねぎもバーって入れて、あとはもう煮るだけ。できあがるまでの早さが売りになるんですよ。

ーーそういう、料理に対するある種の豪快さは、瀬下さんも持ち合わせてるんでしょうか。

僕も結構雑ですね。レシピをきっちり見るよりも、感覚重視でいろいろ混ぜて作ったりしますし。最後に味を整えれば、どうにかなります(笑)。

ーー「あれ?ちょっと違うかも」って味になっちゃったときの、定番リカバリー方法ってありますか?

チーズ!辛く作りすぎたけど、味がうまく薄められない料理ってあるじゃないですか。そういうときは塩味(えんみ)のない、まろやかなチーズを使ってやわらげてます。上にかけて溶かすとか。

ーー水分で調整できないときのチーズ、活躍しそうです。それにしても瀬下さん、すごく料理を楽しんでいらっしゃるんですね。話しぶりからも感じました。

僕、料理することがストレス発散になってますもん。

もともと結果がすぐ出るものが好きなんですけど、料理ってできあがるまでの時間が結構短いじゃないですか。自分が「こうやって作ろう」とイメージしたものがすぐにできて、味をみて、「あ、うまいやん」って結果が出るまでが早い。そこがすごく好きです。

「頭に思い浮かべた通りにできた」っていう経験は、自信になる。料理することは、その繰り返しやから。そうやって自信をつけて、自分のコンディションを保ってるところはあると思いますね。

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※編集部注:食肉の生食には食中毒のリスクがあります。鹿児島県では生食用鶏肉に関する衛生基準が設定されています。

取材・編集:小沢あや
文:佐々木優樹
撮影:曽我美芽