ソニンさんの充実ヴィーガンライフ

きのう何作った?

PEOPLE
2021.03.01

img_nanitsuku_015-01.jpg

著名人の方々に、おうちごはんをテーマにお話を聞くインタビュー連載「きのう何作った?」。今回のゲスト、俳優・歌手のソニンさんは、動物性食品をとらないヴィーガン(ビーガン)です。最近は対応商品も増えてきて、以前より注目を集めているヴィーガン。食材を選びながら料理を楽しんでいるソニンさんのおうちごはんについて伺いました。

img_nanitsuku_015-guest.jpg

お話を伺った人:ソニンさん

1983年生まれ。舞台を中心に活躍する俳優・歌手。2012年に文化庁新進芸術家海外研修制度にてニューヨーク留学し、帰国後は第26回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。著書の『ソニンの美・ヴィーガン』が2021年3月22日に発売。(発売記念イベントを3月21日に開催。詳細は東京ニュース通信社HPをご覧ください。)

想定外から始まったヴィーガンライフも、今では大充実

img_nanitsuku_015-02.jpg

ーーソニンさんはヴィーガン生活を、いつから始めたんですか?

2009年からベジタリアンで、2012年からヴィーガンです。

ーーヴィーガン生活って、制約が多い印象ですが、実際はどうなんでしょう。

確かに、少し前の日本だったら、精神的に強くないと続けるのはかなり難しかったと思います。でも今は、ヴィーガン対応食品も増えています。でも、ヴィーガンってまだあまり詳細が知られていなくて。「動物性食品をとらないって、どういうこと?」って、周囲からも聞かれます。

ーーたしかに、実際に何が食べられるのかを把握している人はまだ少ない印象です

「ヴィーガンって何なら食べられるの?お米はOK?」って言われたこともあります。「いやいや、あなた、お米を動物だと思ってる?」って、突っ込んだんですけど(笑)。あと「草ばかり食べているの?」とも言われがち。「サラダしか食べないんじゃないか?」ってイメージを持つ方もいらっしゃるんですよね。

ーー実際は、あんまり我慢している感覚はないんですか?

私の場合は、ある日、いきなり体が動物性食品を受けつけなくなっちゃったんです。だから、我慢している感覚はないですね。

ーーそんなことがあったんですね。

役作りのために減量しようと思って、マクロビを実践していたんですけど、なかなかすぐに落ちなくて。一旦やめて食生活を戻したら、お肉がもう受け付けなくなっちゃったので、ヴィーガンをスタートしたんです。そこから栄養バランスや健康面のことを調べているうちに、ヴィーガンへと定着しました。

ーー困ることはなかったですか?

私がヴィーガンを始めた頃は、食べられるお店も、対応商品も少なかったですね。ヴィーガンと言っても周囲に理解されないし、伝わらない。ベジタリアンだったらギリギリ分かる人がいるかな?くらいの時代でした。

ーーヴィーガンではない人とごはんにいくとき、お店選びに困ることは?

自分は慣れているのでいいんですけど、周りが気を使ってしまうのが苦しいことはあります。周りが我慢したり、楽しめなかったりするのが嫌で。初めて私と食事をする人は困るかもしれないですけど、「本当に気にしないで!」と伝えるようにしています。

img_nanitsuku_015-03.jpg

普通のお店に連れて行かれても、なんとかなるんですよ。居酒屋なら、枝豆とか湯豆腐とかあるしね。でも、最近はホームパーティーをよくやるようになりました。今はなかなか集まれないですけど、ヴィーガン料理を振る舞って。

ーー素敵ですね。ヴィーガンを体験するイベントとしても、面白そうです。

ヴィーガンの料理ってこんなにおいしいんだぞ!と知らしめていますね。みんな「すごくおいしい!」と言ってくれるし、「私もヴィーガンになれるかも」とまで言うんですよ(笑)。

ソイミートを使った酢豚(ソニンさん料理専用Instagramより)

こんなにある、低コストで買えるヴィーガン対応商品

ーー興味深いです。実際、ホームパーティーではどんなメニューを作るんですか?

フルコースです。前菜から始まって、メイン、デザートまで。例えば、高キビを使ったハンバーグ。赤茶色だから焼くとハンバーグの色になるし、食感も良くて、とにかくおいしいんです。食後には、フォンダンショコラなども振る舞います。

ーーおいしそう!でも、バターも使えないんですよね?

豆乳やココナッツオイルなど、バターの代わりになるものを使うんですよ。スイーツ、工夫次第でなんでも作れます。

バレンタインにもカップケーキを作ったのだそう(ソニンさん料理専用Instagramより)

意外なところだと、チーズフォンデュもいけます。ヴィーガンチーズなるものがあるんですよ。普通のスーパーで比較的安い値段で購入できるんです。イオン系のプライベートブランドにもありますよ。

ーーそうなんですね。ヴィーガン対応食材って、高級なスーパーでしか手に入らないものだと思ってました。

最初の頃はネットや値がはる自然食品店でしか手に入らなかったものも、最近だと、ヴィーガンチーズは28品目のアレルゲン原料・動物性原料を使っていない「マリンフードのヴィーガンシリーズ」とか、植物性100%の「相模屋」とか、いろいろな商品が出てきて。

ーー各社でどんどん広がっているんですね。

そうそう、意外なところだと、たこ焼きとかもできますよ!

ーーたこ焼き!?たこは、どうするんですか?

たこ焼きを食べたいときって、たこ自体が食べたいわけではないですよね。求めているのはソース味と、カリッフワッという食感、しょうがとねぎの風味でしょ?たこをこんにゃくに置き換えれば、遜色なく楽しめるんです!

ーーたしかに。工夫次第でなんとでも満たせるんですね。

私はたこではなくて、アボガドとかお揚げとか、好きな具材を入れて、自分なりの「たこ焼き」を楽しんでいます。なんでも作れますよ。

チーズハットグもお手の物(ソニンさん料理専用Instagramより)

ヴィーガンは選択肢の一つ

img_nanitsuku_015-04.jpg

ーーソニンさんとお話をして、だいぶヴィーガンのイメージが変わりました。日々の食を楽しむために、常に冷蔵庫にストックしている食材はありますか?

きのこ類とお揚げはマストですね。きのこは出汁が取れるし、歯応えもいい。油揚げは油分もあるし旨味も含んでくれるので、ジューシー。食べ応えもあるし、タンパク質がとれる。これさえあれば何でも作れると思っています。

ーーどんなものを作るんでしょう?

「名もなき料理」が多いです(笑)。家にある食材やスーパーにあっておいしそうだなと思った食材、安かった食材を勝手に料理するのが好きで。だいたい炒め物か鍋ものみたいなものになるかなあ。それらを何味にするか、考えるのが好きで。

ーー「名もなき料理」、ありますね。各家庭の個性が出ます。ヴィーガンだと、さらに工夫と探求力が鍛えられそうです。クリエイティブ。

限られた食材からおいしいごはんを作るのは楽しいですよ。テレビとかYouTubeでカルボナーラを見ると、「ヴィーガンカルボナーラ作ってみようかな」と研究心に火がつくこともありますね。

ーー卵も生クリームも使えない、となると、料理によっては再現するのが難しそうですね。

まさに、私たちがヴィーガン料理でぶちあたる壁の一つが、卵なんです。卵の役割を再現するためには、めちゃめちゃ工夫が必要!バターや肉は代替品がたくさんあるんですが、卵の役割を他で代用するのって、本当に難しいんです。

たとえば、マヨネーズで使う卵は、油分と固形化させる役割を担っていますよね。それを再現するためには、「まず油を入れて、豆乳と酸を入れることでちょっとドロっとさせて……」みたいに、推測して作っていくんです。ちょっとした実験ですよ。

ーー自分の中の方程式が解けるのも快感ですよね、きっと。

そうですね。納得いくまで、何回も作ります。配合を変えてやってみたり、気になったところをメモしたりして。昔から「今後ヴィーガンレシピは売りになるから、メモしておきな!」とアドバイスされてきたので、意識的にメモはとっていて、今回本を作るときに大いに役に立ちました(笑)。

ーー新刊『ソニンの美・ヴィーガン』はどういう思いで書かれたんですか?

まずは、ヴィーガンに対する偏見を取り払いたいなと。これまで11年間、日本でベジタリアンやヴィーガンを続けてきて、周りとのギャップを感じ続けてきたんですよ。「みんなが思っているより全然変人じゃないし、ライフスタイルの選択肢のひとつなんだよ」って言いたかったけれど、なかなか伝わらない状況が長くあったんですね。

ーーたしかに、「ヴィーガン」という言葉が広まったのはここ最近の話ですよね。

そうですね。世間的にも、認識が変わりつつあります。興味を持っているけど、ヴィーガンの詳細を知らない人のために本を書くには、今がベストなタイミングだと思ったんです。

img_nanitsuku_015-05.jpg
『ソニンの美・ヴィーガン』(東京ニュース通信社)

ヴィーガンって、なんだか不健康というか、ガリガリで肌かさかさで、野菜ばっかり食べている。そんな偏見があるみたいです。でも、実際はみんなが思っているよりも楽しいし、ポジティブな影響もたくさんある。ヴィーガンをもう少しポジティブなイメージに変えたいなと思っています。

img_nanitsuku_015-06.jpg

食には、多様性があります。ヴィーガンも、あくまでたくさんある選択肢の中のひとつ。ヴィーガン以外にも、アレルギーがあったり、宗教で決められていたりと、食べ物に制限がある方も多いじゃないですか。それぞれの背景とライフスタイルをまず知ることが、理解に繋がると思います。

『カレーライスの女』は、実は○○の女だった

ーー最後に、質問してもいいですか?ソニンさんといえば『カレーライスの女』のイメージが強いんですが……ソニンさんご自身は何の女でしょうか。

え、好きな人にどんな手料理を食べさせるかっていう話(笑)?なんだろう……。あ、グラノーラクッキーかな!

img_nanitsuku_015-07.jpg

ーー『グラノーラクッキーの女』!おしゃれ!

これはね、本当におすすめですよ。YouTubeや新刊でもレシピを公開しているんですけど、真似して作ってくれた人はみんな、おいしい!って言ってくれます。


(ソニンさん公式YouTubeチャンネルより)

グラノーラクッキーって、ちょうどいいんですよ。相手にとって重すぎず、手軽に渡せる。いつでも好きなタイミングで食べられるし、おしゃれで、健康的でしょう?良いことづくめですよ。本にも載せているし、研究を重ねて作っているので、大切な人にぜひ作ってみてください。

img_nanitsuku_015-08.jpg

この記事をシェアする

取材・構成:小沢あや
撮影:小原聡太
文:五月女菜穂