ブラジルで作るビーツのカレー
アイスムとnoteによるエッセイコンテスト第三弾では、三名の受賞者を選ばせていただきました。「うちのカレー」をテーマに、オリジナリティあふれる、おうちで作れるカレーをご紹介します。レシピはもちろん、一人一人の料理に込められた物語もぜひ楽しんでくださいね。
今回は、南米ブラジル・サンパウロ在住のKikko_yyさんによるエッセイ「ブラジルで作るビーツのカレー」です。 ジャズピアニストの大江千里さんが奏でるSenri Jazzが大好きで、このビーツカレーが生まれるきっかけにもなったそう。海外ならではの食材を使ったNEWタイプのカレー、ぜひお試しください。
日本人にとって「国民食」とも言える人気メニュー、カレーライス。
基本食材のじゃがいも、玉ねぎ、にんじん、肉、それに市販のルーがあれば、子どもから大人まで調理ができておいしいところが、最大の魅力だ。
カレーライスを、おふくろの味として挙げる人もいるだろう。そういえば、スキー場でいただくカレーライスもなぜだかとってもおいしかった。
学校給食でも人気で、私が通っていた小中学校ではなぜか「カレーシチュー」と呼んでいたっけ。カレーとシチューの中間?それともミルク入りのカレー?数十年経った今でも真相は謎のまま。
大人になって、外食でいただく少しだけリッチなカレーは、サラリとした欧風カレーや、スパイスたっぷりで風味豊かな本格的インドカレーだった。それぞれ、もちろんそれなりにおいしかった。
でも、ときどき無性に食べたくなるのは、なんてことのない市販のカレールーで作る、母の素朴なカレーライスだ。
日本にルーツのあるブラジル生まれのオットも、野菜がゴロゴロ入った、義母の手作りカレーを食べて育ったようだ。とはいえ、オットの子ども時代には輸入品である日本のルーはまだなかったらしい。
それでも、ピリッと辛口のブラジル産のルーで作るカレーは、何よりのごちそうだったという。義母にとっても、昔なつかしい祖国の味だったのかもしれない。
今はブラジル・サンパウロの東洋人街で、日本からの輸入品のカレールーが何種類か手に入る。ただし、値段が問題。年々高価になっている印象だ。12皿分のカレールーを一箱を買うのであれば、同じ値段で、ビュッフェでお腹いっぱいのランチがいただける。
輸入品のカレールーの価格高騰に辟易して、ブラジル産のカレールーを一箱だけ購入した。
オットにはお馴染みのカレールー。名前は「おいしいカレー」という意味の、Bom Curry(ボン・カリー)。
どこかで聞いたことがあるような…?パッケージの写真があまりカレーらしくない。
でも、カレーだからこうでなければ、という決まりはわが家にはない。冷蔵庫にある残りものの食材を使う、という掃除の意味もあり、手軽でおいしくて栄養満点。母が作ってくれた「なんてことない日本のカレー」をベースに、ここブラジルの食材をふんだんに使った、わが家だけのカレーができあがる。
一石二鳥にも三鳥にもなるお助けメニューだが、食べ盛りの若者二人がいるわが家では、大鍋いっぱいに作ったカレーがあっという間に無くなってしまう。ごはんもいつもより多めに炊かないとならない。
小さい頃はそこまでカレーライスに執着していなかった子どもたちだけれど、やはり日本人の血が騒ぐのか…。
そんなわが家のカレーを、半年ぶりくらいに作ってみた。もちろん、たっぷり8皿分。
ビーツのカレー
材料(カレーライス8皿分)
野菜は冷蔵庫にあるもので何でも良い。今回入れた野菜たちはこちら。
カレールーは毎回1/2箱ずつ、大切に使う。本来なら1/2箱で6皿分だが、たっぷりの野菜でかさ増しとなって8皿分くらいにはなる。
今回のビーツはかなり大きめ。
豚フィレミニョンは購入後、冷凍保存しているので、電子レンジで半解凍する。
作り方
- 1. 半解凍した豚肉を、薄切りにする。肉をカットする時は、解凍し過ぎると柔らかくて上手くいかないので注意。
- 2. 野菜はすべて適当な大きさにカットする。大量なのでわりと時間を要する。
- こちらが本日の主役の野菜、ビーツ。
- 3. 鍋にオリーブオイルを引き、玉ねぎ、にんにく、生姜、肉を炒める。後はもう、順不同。
- 4. 鍋のふたをして、しばし材料を蒸し煮にする。水が上がってくるのを確認したら、野菜が浸かる程度に水を足して柔らかくなるまで煮る。(普段はトマトも入れるが、今回はサラダに使ったのでなし。)
- 5. すべての野菜を無造作に鍋へ入れる。
- イタリアンパセリの茎を香り付けにのせてみた。
- 6. 野菜が柔らかく煮えたら一旦火を止め、割ったカレールーとケチャップを加える。ケチャップは隠し味。
- 7. ルーが溶けたら再び火を点けて、良い具合に煮込まれたらできあがり。
- 8. お皿に盛り付けて、サラダを添えていただく。
カレーにビーツを入れるのは、わが家では定番中の定番。「2日目のカレーはより味わい深い」とよく言ったものだが、ビーツ入りのカレーは時間を置くとこんな変貌を遂げる。
そして忘れてはいけない、私が赤カレーを作るきっかけとなったのは、NY在住のジャズピアニストの大江千里さん。私は彼の大ファンで、ブラジルにいながらも千里さんの全公演のライブをオンライン視聴している。その千里さんがInstagramで紹介していたのがビーツを入れたカレーだったのだ。
ブラジルでは、ビーツは季節を問わず安価で手に入りやすい根菜。でも、何となく調理時間がかかるかも?などの理由で敬遠していた。今は臆せず、いろいろな料理に活用している。
生のままおろしてサラダ、スペインのオープンオムレツ「トルティージャ」の具に、肉じゃがに。昨晩は牛ひき肉のミートソースにも入れてみた。「食べる輸血」と言われるくらい、鉄分が豊富で栄養満点なビーツ。
土臭いと感じる人もいるようだが、私は気にならない。わが家では冷蔵庫に欠かすことのできない野菜となった。千里さんに感謝。
Kikko_yyさんのnoteはこちら