A or Bどっちを選ぶ?私の愛する選択肢たち v.04 飛び込み営業やってみる?or 絶対無理、やめる?

2019/02/22 UPDATE

外資IT勤務のユカリと申します。あまり出張がない職種なんですが珍しくアメリカ東海岸への出張をしており、帰りの飛行機でこちらを書いています。(※忙しいのではなく締め切り間近になって焦っているだけ)
緯線とほぼ平行に移動しているような状態なので今窓から見えている光が朝焼けなのか夕陽なのかもよくわかりません。
「人生においては幾つもの岐路があり、自分の選んだ選択肢を愛してあげてほしい」ということを伝えたくてこの連載を書いています。「あっちを選んでいれば!」と後悔したくなることも時にはありますが、でもそれを選んでいたらどうなっていたかなんて一生わからないわけで。わからない何かを望むなら自分の決めた決断を愛したいな、と常々思っています。それが時に自分を苦しめる決断であったとしても。

今回はこの自分の安易な決断に苦しめられた、新卒で入社した会社でのお話です。
当時は「ブラック企業」という言葉は今ほど市民権を得ていませんでしたが、やっぱり今振り返ってもブラックだったな、と思います。

飛び込み営業?どうする?辞める?

「雑誌の編集をしたい」という淡い夢をあっという間に捨てて、4年生になった瞬間内定をくれた会社に入社を決めた。これ以上就活するのも疲れたし、とりあえず社会人になってお金を稼ぎたかった。限度いっぱいに借りた奨学金も重く体に乗っている。営業職での内定だったが、営業なら人並み以上にできるだろうという根拠が全くない自信を持っていた。
そんな強い動機もない状態で入社したシステムインテグレーター(SIer)と呼ばれている会社には新規顧客開拓部隊があった。SIerとは名ばかりで売れるものはシステムだけでなく無数にあり、文房具ひとつから数千万〜億単位のシステムまで何でも商材として持っていた。既存顧客を多く抱えてはいたものの常に新しい売り先の開拓をすることが会社の成長にも不可欠であるという強い理念のもと、これまで何も取引をしたことがない会社にとにかくペン一本でも新たに売ることがとても重視されていた。重視と言うと聞こえがいいが、その部隊が会社のどこの部署よりも厳しく毎日怒号が飛ぶ、絵に描いたような体育会系だった。
もちろんその新規開拓部隊の存在を認識はしていたがそもそも女性が一人もいないし、新卒の女性は既存顧客に対するルート営業か文房具などのオフィスサプライ専門の部署に配属されるだろうと入社時の面接では言われていた。
1ヶ月の全体研修の最終日に配属発表が行われた。蓋を開けてみれば同期350人中たった20人の女性がその新規部隊に配属になった。そして私もその20人の中に入っていたのである。その場で泣き崩れる女子、聞いた話と違うと抗議する女子と様々いたが何故か私はすっと受け入れていた。まぁやってみようと。

圧倒的な向き不向き

部署ごとに分けられた後さらに2ヶ月間研修があり、ついに配属された。後から気づくことだが厳しい会社の厳しい新規部隊の中でも有名なほど厳しい課長の下に配属されてしまう。これまでも彼の下に配属された何人もの新人が潰されていた。
配属されてしまったら最後、自分の担当する既存の顧客と一定の地域を渡されて「行ってこい、名刺を集めてこい、何でもいいから売ってこい」と命じられる。最初の何日かは教育担当になった先輩と一緒に訪問していたがそのうち自分のたどたどしいセールストークを聞かれるのが嫌だったので一人にしてくれと言って淡々と一人で飛び込み営業をした。
配属されて1ヶ月くらいで男女問わず辞める新人社員が続出した。良し悪しではなく単純に向いていなかったんだろう。確かに知らない会社に飛び込んで営業していくのは怖いし断られたり怒られたりするのも怖いいし先輩や上司も怖い。この恐怖で訪問先のドアを開くことができなくなる人は確かにいて、そうなってしまったら早く辞めるに越したことはない。私はとにかく負けず嫌いだったのもあるが、断られても怒られても当たり前であるはずなのに思っていたよりもはるかにお客様は優しかった。社内の人間よりもお客様のほうが優しかったのでよろこんで訪問しているうちに、だんだんと売り上げが上がっていった。

初めて体験するセクハラパワハラ

私が新卒だった頃は今よりもハラスメントの意識がとても低く、今なら絶対に問題になるような言葉を浴びせれられた。誰もが恐れる課長には「数字を作れない新卒が残業代もらうのは間違っている、帰れ」と反論する暇もなくPCの電源を強制的に切られたりした。違う先輩からは「女なんだからおじさんに可愛がられて買ってもらえ」「女なんだからお酌しろ」「もっとちゃんと化粧しろ」などと言われることは常で、営業成績が少しでもよくなれば「そんなに売れるなんて枕営業してるのか」と言われることもあった。一方で体調を崩せば甘えるなと言われ、男性と同じ件数を訪問しろと言われる。月1回やってくる生理に体調を乱されたこともなければ、ヒールのついた靴を履いて歩いたことがない男性から放たれる言葉の一つ一つ全てが理不尽で、しょっちゅうトイレに駆け込んでは泣いていた。

同じ成果を求められるのは当たり前だ。同じプロセスを求められることに納得がいかなかった。男性よりも体力はないし、資料をパンパンに入れた鞄は女性の腕には重過ぎる。ただそういった理不尽を暴力的なほどのモチベーションに変えて絶対にこんな男たちだけには負けたくないという気持ちだけで仕事を続けた。2年目が終わろうとしていた時、私は役職がついていない社員の中で1桁〜10番台の成績を保っていた。同じ営業部の同期の中ではずっとトップで、チームの中では主任や係長といった役職のついた男性たちよりも売上を上げていた。ふと気づくと新規部隊に配属された20人の女性の同期たちのほとんどが辞め、そうでなくても部署異動をしていて、私を含めたたった2人だけがこの新規部隊に残っていた。

今考えれば、面接で言われた条件と違う配属だったら抗議することは間違っていない。セクハラをしてくる社員は片っ端から人事に報告するべきだったし、1年で辞めてもおかしくない環境だった。一方で新規開拓部隊から異動をした女性の何人かはまだその会社で働いている。離れてみて初めてわかったが待遇も給料もいいのでフィットする部署に行けば、とてもいい会社だったと思う。
結局私はちょうど2年で辞めてしまったが何年経っても転職の時に「あの会社のあの部署で2年も頑張れたのはすごい」ととても評価され、信頼してもらえる経歴になった。
職場で納得いく配属や待遇でなくてもまずは頑張ってみるという選択肢があってもいいと思う。その頑張りは無駄にはならない。

何故成績が良かったのに辞めてしまったのかというと、仕事がつらかったからではない。この辺りから「女性としての幸せ」と「自己実現」に悩むようになる。
その話は、次回以降に。

投稿者名

ユカリ

30代独身。都内で外資IT企業に勤務。
ジョブホッパーでメンタルが弱い。
ツイッターではナンパ師、恋愛工学生、「結婚して初めて人は一人前になる
と思い込んでいる既婚者、
キラキラマウンティング港区女子とよく揉めている。 Twitter:https://twitter.com/rita_sia22 note:https://note.mu/an_giee27