しんどいオカマのお悩み相談 その52.オタクをやめられなくてしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回はオタクをやめられない女性からのお悩みよ。
アニメオタクのオカマが毎期全アニメをチェックしていて軽いノイローゼみたいになっているのだけど、オタクも命懸けだとそれはもう「プロ」よね。
【お悩み】
27歳の女性で、販売職です。
結婚を考えている彼氏がおり、同棲の話も出ていてとても幸せです。
ただ、彼に言っていない秘密がひとつだけあります。私は重度のオタクなのです。
俗に言う腐女子というやつで、クローゼットの奥はBL漫画や小説、キャラクターグッズなどで溢れかえっています。
イベントがあれば友人と全国を飛び回りますし、SNSでは毎日狂ったように推しキャラへの愛を語っています。
彼氏の前ではおくびにも出さず普通の女の子を演じているのですが、これから同棲となると、オタクグッズをすべて処分してオタクであることを隠し通すか、彼にオタクをカミングアウトするかの二択となるため、考えただけでも胃が痛いです。
彼を失望させて嫌われたくもないですし、きっぱりとオタクをやめようと思っているのですが、踏ん切りがつきません。
どうすればいいのでしょうか?
オタクはやめようと思ってやめられるものじゃないわよ
年齢を重ねれば重ねるほど、オタクは周囲から冷ややかな視線を送られるものよね。
アタシも休日は引きこもってガッツリとマニアックなゲームにひとり勤しむことが多いのだけど、周囲からは「いい歳してまだそんなことをしているの?」「いいかげん落ち着きなよ」「気持ち悪い」「オカマのくせに」「ブス」なんて言われることがままあるわ。
誰にも迷惑をかけず、自分で稼いだお金を生活に影響のない範囲で自由に使っているのだから、他人からとやかく言われる筋合いはないはずよね。
だけど、とかく浮世はままならぬもの。世間では、オタクは精神的に未成熟で、好きなもの以外にはまるで興味がなくて、コミュニケーション能力が低くて、ダサくて臭くてキモい人というイメージが定着しているのよ。
実際には、ファッションやメイクに気を遣って、清潔感があって、コミュニケーション能力のあるオタクも増えていて、昔のような典型的なオタクは少なくなったのだけど。
それでも、オタクへのあらゆる偏見が完全に払拭されて、胸を張って堂々と生きられる世の中になるには、まだまだ時間がかかりそうだわ。
オタクはこれまで、じっとりとまとわりつくような迫害を常に受け続けてきたの。
そんな中で、あなたのように「オタクをやめたい」と思う人が出てくるのは必然といえるでしょうね。
ただ、たとえ自分がオタクであることにうんざりしたとしても、オタクがオタクをやめることは容易ではないわよ。
たとえば、人が恋に落ちるとき。惹かれる相手が異性だけとは限らないじゃない?オカマのアタシだってそう。男なのに、奇しくも男が好き。それと同じように、人間以外のものを好きになってしまった人たちがいるのよ。そう、あなたたち「オタク」のことよ。オタクは常に恋をしているのと同じなのよね。
相談者のあなたは、彼氏のことを嫌いになれと言われて嫌いになれるかしら?嫌いになろうとしてなれるものかしら?きっとなれないわよね。
あなたが何かを好きだと思う気持ちは、そう簡単に抑えられるものではないのよ。
だから、「オタクをやめる」という選択肢を選ぶのは現実的ではないの。オタクをやめずに、幸せを手にする方法を考えるべきよ。
彼にヲタバレしないためには?
アタシの友人にも重度の腐女子がいるわ。
彼女はファッションやメイクに気を遣っていて、清潔感があるし、誰が見ても「かわいい」と思えるような愛らしい見た目をしているのよね。だからモテる。
腐女子といえば、ニキビ面でスッピンのダサいドブスONLYという偏見がアタシの中にもあったのだけど、彼女はその偏見を見事に払拭してくれたわ。
彼女にも相談者のあなたと同じく彼氏がいて、今は同棲をしているの。ただ、彼氏には腐女子であることを明かしていないのよね。
同棲の話が出たとき、背水の陣となった彼女が取った対策は「BL関連の本やグッズをすべて実家に預ける」というものだったわ。
実家が近所だから、彼氏には腐女子であることを隠しつつ、隙あらばBLを全身に浴びる環境を整えることができたのよ。
でも、この方法はあまりおすすめできないわ。
なぜならば、彼に対して少なからず偽りの自分を見せることになるからよ。
確かに、腐女子であることは「言わなくていいこと」だからあえて言う必要もないのだけど、必ずどこかで大好きな彼に嘘をつかなければならない場面が出てくるわよね。
きっと今だって、何かしら嘘をついているはず。
これはアタシのような同性愛者にも通ずるところがあるわ。
クローズドな同性愛者は、親友や家族、同僚などの大切な人に嘘をつかなければならないの。
どんなに大切に思っていても、偽りの自分を演じなければならないのよ。
そのことに良心の呵責を感じず、完全に割り切れるのならば問題ないの。
ただ、嘘をつき続けることが真の幸福といえるのかどうかは疑問だわ。
そう、だからあなたは、彼にオタクであることをカミングアウトすべきだと思うのよ。
あなたの人生を形作ってきたのは、紛れもなくオタク的要素よ。その一切を封印して彼と付き合っていくのは、あなたの人生そのものを自ら否定し続けていくのと同じじゃないかしら?
でも、いきなりすべてをさらけ出すことはさすがに難しいわよね。
それならば、少しずつでも構わないのよ。「実はアニメが好きなんだよね」というような、軽い告白からでいいの。
もしも、その告白ですら彼氏が引いてしまうようならば、あなたとは根本的に感性が合わないと思っていいわ。
恋人の好きなものを否定するだなんてロクな人間じゃないし、一緒に暮らしていても、いつかはほころびが出てくるはずよ。
そのときは……アタシがいい男を紹介してあげる。
「私は男の子同士の恋愛が大好きです!」の一言までの道のりは遠いだろうけど、彼と感性を共有する道を選べば、ずっと、もっと幸せでいられるのは確かよ。
オタクってそれ自体が魅力なのよ
アタシはゲームくらいしか好きなものがないから、キャラクターグッズを集めたり、イベントで全国を飛び回ったり、そして愛する人がいたりと、好きなものに常に囲まれているあなたが正直うらやましいわ。
好きなものがまったくない人生なんて、淀んで濁って灰色で、とてもつまらないものよ。
燦々と輝いている自分の人生に、どうか自信を持ってちょうだい。その生き方は、あなたの魅力そのものだから。
さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
送り先は、アタシのツイッターアカウント(@BS_dim)のDMか、メールフォーム(okama.onayami@gmail.com)まで。
【お悩み相談内容】と【年齢、性別、職業など簡単な自己紹介】を忘れずにね。いただいた相談内容、個人情報はこのコーナー以外では利用しないし、長期的に保管することもしないから安心して。
そして、ついにお悩み相談が本になったわ。
連載に加筆修正を加えたものに、書籍だけの書き下ろしのお悩みも多数。さらにアタシが異色肌ギャル・浄土真宗僧侶に相談する「逆お悩み相談」のコーナーや、オカマに聞きたい一問一答108問も収録。大ボリュームで絶賛発売中よ!
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