しんどいオカマのお悩み相談 その9.自分ばかりが哀れでしんどい?
しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回はお悩みのオムニバスよ。ねぇ、人生ってどうしてこんなに不条理なの?
【お悩み】
4年前に夫と死別し、息子と娘の3人で暮らしています。もういい歳ですが、将来自分の店を持つという目標を持ってブティックで働いています。
しかし、高齢になった両親の今後や、夫の両親からの干渉、子どもの不登校、未亡人になった寂しさなど、心配ごとばかりで潰れそうです。
しっかりしなきゃと、泣くことすら悪いような気がしています。
いくつもの心配で自分だけがかわいそうに思えたとき、どうやって乗り越えればいいのでしょうか?
悩みはあっても、明るく生きていきたいんです。
花に嵐はつきものよ
悩みの中でも明るく生きていたいとは……。夜もすがら大酒をくらって、仕事かオカマ仲間への愚痴しか言わないアタシに爪の垢を煎じて飲ませていただきたいくらいね。二日酔いによく効きそうだわ。
お悩みを読んでまず思ったのが、オカマのアタシの夢や目標、幸せってなんだろうということ。
人生に大した意義も志も見つからないし、多くの人が喜びを感じるであろう、自分の分身である子どもの成長を見守り、将来を想像する夢を見ることもできない。
それ以前に彼氏すらできないのよね。まぁそれはノンケの尻ばっか追いかけてるからだと思いたいわ。
とある宗教では、他者に愛を与えることが幸せだと定義しているわね。さらに別の宗教では、悩みや苦しみのないことが幸せだと定義しているわ。
親戚の1歳になる赤ちゃんと「ばばばぁー」「ブス」「ばばぁー!」「ババアだと!?このブス!!」という会話を繰り広げているアタシには、何百年たっても手に入れられそうにないものよ。
でもね、自分の店を持つという目標を持ちながら、旦那さんの忘れ形見とも言えるお子さんふたりと一緒に暮らしている現在の境遇。あなたの幸せは、ほんの少し形が変われば、すぐ手の届きそうなところにあると思うのよ。
ただ、お子さんもまだ手がかかるし、不登校は胸が張り裂けるような思いでしょう。ご両親のことも含め、実際問題として大きな責任をともなうし、お金もかかるわ。それらに目を向けず、夢だけに生きることはできないわよね。
どこまで続くのかわからない今の不安な生活を暗中模索のまま続けていくことを思うと、気持ちが折れそうになってしまうのもわかるわ。
そして日暮れて道遠く、夢が、目標がいつ叶うのかもわからない。
最近、友人が「人生を死から逆算したときに、明日死んでも構わないと思える」と言っていたの。
その言葉がずっと心に刺さっていてね。
人の一生の先にはなんにもなくて、虚無の中で生きることを強いられているようなものじゃない?多くの人が傷だらけの足で道ならぬ道を歩みながら、ふらふらと今日へたどり着いてる。
ただね、そうして行き着く人生の先にはなんにもないけど、その道程は決して平坦ではないし、途中で立ち止まることも引き返すことも許されないのよね。だからこそ、夢や目標だけが生きる希望になるのだとアタシは思う。
自分がすべきことのみに囚われず、やりたいことに意味を見出しているなら、それらをどんなことがあっても手放してはならないわよ。
持たざる者は、生ける屍と同じだから。
人が抱えこめる苦悩の重さには限界があるのよ
昔、バツイチ子持ちでオカマになった初老のオッサンと飲んだことがあったわ。
そのオッサンは、家庭では親としての役割を担いながら、外では会社員として働きつつ、オカマとしての顔も持っていたわ。
あなたと比べるのもおこがましいほどの小汚いオカマだったけど、あなたと同じ何足ものわらじを履いての生活に、大変な苦労があろうことは想像に難くなかった。
それでも、誰よりも子どもを愛していると言っていたわね。
かたや、ある日突然、妻と子を捨てて家を出たノンケの男も知っているわ。理由は「若いころに遊んでこなかったから」と言っていた。
自分のために生きることと、自分を必要としてくれる人のために生きることは、その場その時の精神的、物質的な余裕のいかんで、簡単にバランスが崩れてしまうものなのよね。幸福の度合いだって、その人が抱える欲求や置かれた状況によってぐらぐら揺れ動くわ。
ややもすると、責任感だけが肥大化して、最後には一瞬で破裂して、なにもかもなくなってしまう。人の身体はひとつなんだから、抱えこめる苦悩のキャパシティなんてごく限られたものでしかないわ。
責任と苦労を背負えるだけ背負っている今のあなたは、たったひとりですべてを抱えて生きようとしているのではないかしら。
言っておくけど、ひとりで生きようとしている限り、不安や寂しさを埋めてくれるものは手に入らないわよ。だってそんなものを内から生み出したり、探し求めたりするような余裕はきっと、今のあなたにはないのでしょう。
お子さんやご両親に、ご自身の心配ごとを真摯に話したことはあるかしら?
子どもも年寄りも、世代が違えばまるで宇宙人のようで、どこか愚かで考えの至らない人間に思えるものよね。
でもね、それはお互い様なのよ。子どもといえど親といえど、相手は思想を持った人間なの。
よほどの偏屈者でもない限り、どこかで妥協しあえる点、協力しあえる点が必ずあるもの。
あなたの近くにいる人ほど、共生していきたいと願うことは自然の心持ちだと思うわ。
それが家族のありかたであり、人とともに生きることなんじゃないかしら。
オカマだっていつも気丈でいられるわけじゃないのよ
「樫の木と葦」という寓話をご存じかしら?嵐に吹かれて大きな樫の木は倒れたけれど、か細くしなやかな葦は折れずに根を張ったままだった、というお話。
弱さをさらして生きること。それはあなたの信義にもとる行為かもしれないけど、オカマのアタシにはそれそこが信義だと思えるわ。
あなたのような責任感の強い者にこそすがりたくなるのは人の常なのよ。自己憐憫に浸るより、今は心を落ち着かせて、少しでも身を軽くできるよう可能な限り努めましょう。
大丈夫よ、「オカマがノンケの彼氏を作る」よりは、まだ希望があるんだから。
さて、今回のお悩み相談は以上よ。
このコーナーでは読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
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