月刊住むひと vol.06 JR南武線 分倍河原駅 徒歩10分 賃料6.9万円 半地下
この連載はほぼ実在する(ほぼです)ひとつの物件を取り上げて、この部屋に住んでいるひとの人生はどんなだろう、と勝手に妄想していくものです。
北向ハナウタが描く「住むこと」についての漫画とエッセイ、第6話。
交通:JR南武線 分倍河原駅 徒歩10分
賃料:6.9万円(管理費含む)
築年数:築6年
主要採光面:南西
間取り:1K / 22.8㎡
- - -
その他:鉄筋コンクリート、半地下階(登記上地下1階)
カビ、好きですか
秋である。季節の狭間、さぁそろそろと秋冬のコートを解禁しようか、という多少高揚した気持ちを一気に打ち砕くもの。それが服を広げた瞬間現れるカビだ。
皆さんはお好きですか、カビ。筆者は嫌である。
とかくカビというものはヒトを内側から弱らせる。なんというか、「自分はカビを発生させてしまっただらしない、ふがいない人間…」というような惨めな気持ちにさせてくるのだ。
筆者が5年ほど前に住んでいた物件がとにかく湿気に弱く、常にあのどんより感に悩まされていた。梅雨時などひどいもので、気を抜くとすぐに家のあちらこちらでカビが産声をあげる。何しろクローゼットが狭いため服も満足にかけられない。ハンガーにかけた服と服の隙間がなくなり空気が通らずオギャー、置き場がないからと段ボールにしまうと箱の中からオギャーとカビの出産ラッシュである。
部屋自体も広くなかったため除湿機を置くこともできず、苦し紛れにそこかしこに置いた除湿剤は一瞬でタプタプに満杯、という有様。ほぼ水中なのだ。
カビの生えやすい部屋がある
そんな嫌すぎるカビが発生しやすい部屋の条件というものがいくつかある。以下が「カビやすい部屋 3か条」だ。
1.日差しが入らない
湿度の多いところに発生するカビは当然、日差しの入らない部屋が大好物である。
2.鉄筋コンクリート造である
鉄筋コンクリートは、耐震性や遮音性があるかわりに湿気を逃がしにくい特性があるのだ。特にマンションやアパートはカビが発生しやすい。
3.物件が低い階数である
地下から上がってくる湿気のあおりを受けやすいのだ。
想像しただけでもカビの迫ってくる音が聞こえるだろう。そしてこれらの条件をすべて満たすのが、お待たせしました、今回の話の舞台であるマンションの半地下階なのである。
筆者が半地底人だったころ
読者のなかに半地下に住んだことのある方はいるだろうか。実は他でもない筆者が5年前に住んでいた部屋が半地下だった。
というか、実は最初の頃はまったく気づいていなかった。下図のとおり普通の道から建物に入ってたどりつく部屋だったため、当然のように自分は1階に住んでいるものだと思っていた。
部屋の表記も「103号室」なのだ、これが「B103号室」とかなら訝しげに思ったろうに
ところが窓を開けても地面の位置が高い気がする。南向きのわりに日差しが半分しか入らない気がする。あと、やたらベランダに砂が溜まる。なぜならこの103号室、半地下だったからである。納得。
冒頭の漫画、最後から3番目の自転車が見えるコマ。何のコマだろうと思った方も多いと思うが、あれが半地下から見える外の景色だ。何を隠そう、昔の我が家から見えた景色をそのまま描いた次第である。
慣れればどうにでもなる
とまぁ、こうしていかにも大変だったかのように書き連ねたが、当時の自分は100点に近いほど満足しており、契約更新までして暮らしていた。窓からの景色も「逆に足元しか見えないから通行人と目が合わなくていいなー」と思っていたくらいだ。
慣れれば意外とどうにでもなるのだ。100点に近いこの部屋を手放した理由(事件?)もあったのだけど、それはそれでまた次回以降、機会があれば。